ストライクウィッチーズ ~ドゥーリットルの爆撃隊~   作:ユナイテッド・ステーツ・オブ・リベリオン

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Chapter.2:鋼の空
Vol.8:上陸作戦


                        

 バルト海に面した港湾都市・キールは、再び灰塵と化していた。今度はネウロイの手ではなく、その都市を築いた人の手で。

 

「――こちらゴライアス03! 4時の方角に、地上型ネウロイ多数発見!」

 

「――ゴライアス02了解した! 04はいったん陣地まで後退し、増援と合流して防衛戦闘に努めよ!」

 

「――了解した! 逆襲は任せたぞ!」

 

 

 郊外へと続く路上を進んでいた一個戦車中隊――18両のM4シャーマン戦車が進路を変える。リベリオン軍の車両は全てに無線機が備え付けられており、それが迅速な兵力移動を可能としていた。

 

 

「――前方から発砲あり! ネウロイの攻撃です」

 

 

 一瞬後、一両のシャーマンが被弾、爆散した。さらに連続する爆発。揺さぶられる車体。直後、至近弾が炸裂し、轟音が砲塔に響き渡る。

 

「クソッ――全車両、一斉射撃の後で煙幕を張れ! 煙に紛れて後退する!」

 

 一斉に後退する戦車中隊。発煙弾発射機から、各々の姿を眩ますための煙幕が展開される。

 

「――大隊司令部。繰り返す、大隊司令部へ。こちらピースキーパー、聞こえるか」

 

「――こちら大隊司令部。ピースキーパー、何があった?」

 

「――現在、ポイント・アルファにて地上型ネウロイから襲撃を受けている! 至急、火力支援を求める!」

 

 

 **

 

 

 バルト海に浮かぶエセックス級空母『ホーネット』………今回の作戦における機動部隊の旗艦であり、リベリオン海軍の空母の理想像を具現化した力の象徴でもある。

 

 その中でにある戦闘指揮所で、ドゥーリットルは戦況表示板を眺めていた。偵察機と現場の各指令所から逐一送られてくる情報をもとに、リアルタイムでの戦場把握を実現している。

 

「――第一海兵師団、揚陸および橋頭堡の確保を完了。陣地構築のための資材を送ります」

 

「――第4独立戦車大隊が小型ネウロイ群と接触。砲兵の展開が完了していないため、艦隊による艦砲射撃をもって支援します」

 

 各種機材から届けられる報告をもとに、迅速に対応するオペレーターたち。戦況表示板を見ても、作戦はおおむね順調に推移している。

 

(すでに橋頭堡にはウィッチと航空機の突入に続いて、3個の師団が上陸済み……被害は2個中隊っと)

 

 砲兵部隊の展開が遅れているため、火力支援はもっぱら航空機による急降下爆撃と艦砲射撃が中心となっている。航空機は継続した火力投射ができないため、水上打撃部隊の補助に回る形だ。

 

(スケジュールでは、日没までに40キロの縦深を確保することになっています。まずは橋頭堡の拡大を優先して、その防衛を固めるのは明日から)

 

 ドゥーリットルは予定を反芻しながら、進捗状況を確認する。

 

(ブリタニア軍の揚陸作業は9割が完了、一部の部隊は小規模な地上型ネウロイを蹴散らして掃討中――さすが、というべきでしょうか)

 

 ブリタニアは伝統ある海軍国だ。こういった揚陸作戦では他国にひけはとらない。対してリベリオンは一歩及ばず、といったところか。とりあえずはスケジュール通りに作業を8割完成させてはいるが、弾薬消耗量は予想の2割超えている。もう少し節約してほしい、というのがドゥーリットルら上層部の本音だった

 

 数と装備では追随を許さぬリベリオン軍だが、その大部分はネウロイ戦争が始まってから徴兵された兵士で構成されている。兵士が素人なら指揮官も素人、どうしても経験不足は否めない。それを力技で押し切って、なんとか予定通りに進めているのが現状だ。

 

(となると、やはり問題は残りの欧州連合部隊ですねー)

 

 その他の部隊はというと、平均して予定の6割、一番遅れているオストマルクの部隊に至っては、4割も完成できていない。なにせヴェネツィアとロマーニャを除けば、欧州連合軍の大部分は祖国をネウロイに蹂躙されているのだ。軍もリベリオンやブリタニアの物資援助で辛うじて維持できている状態であり、力不足感が否めないのは仕方がないことだった。

 

 

 装備充足率の他に問題となっているのは、ドゥーリットル自身が決定した国籍別の編成だ。

 

 軍団規模で編制されているリベリオンやブリタニアの部隊と違って、残りの国々はほとんどが師団規模の編成止まりである。小国であるベルギカなどに至っては一個歩兵連隊しか派遣できなかったため、戦車すら存在しないという有様だ。

 

 このため軍団なら受けられる砲兵師団の大規模継続砲撃支援や、空軍・海軍の火力支援などが受けられない。進捗状況が悪いのはそのためでもある。

 一応、スオムスなどの小国部隊には占領の容易な地区を優先的に割り当て、共用の支援部隊を司令部直轄として利用できるような工夫はしてある。

 

 しかしそれでも、いちいち連合軍司令部を通さなければ利用できないという事は大幅なタイムロスに繋がり、また小国同士の支援砲撃の奪い合いなども発生してしまう。

 

 

 

(欲を言えばヴェネツィア海軍とガリア海軍にも動いてほしかったんですが、あちらさんは地中海の制海権維持で手一杯でしょうし)

 

 

 かつてリベリオン、ブリタニア、扶桑に続く世界第3位の海軍国だったガリア、そして4位のヴェネツィアはどちらもネウロイに奪われた国土を奪還したばかりであり、海軍も再建途上にある。

 

 リベリオンおよび扶桑から送られるレンドリースの海上輸送網の護衛、そして地中海の制海権維持に関しても疎かにできない以上、今ある兵力でやりくりするしかないのが現状だった。

 

 

 **

 

 

 もちろんドゥーリットルもそうした問題点を、事前に想定できなかったわけではない。しかし政治的・技術的な問題もあり、共同作戦は事実上不可能となっていた。

 

 なにせ武器も違えば弾薬のサイズも異なり、更に軍事ドクトリンすら異なる部隊が一緒に行動しているのだ。一緒に動ける訳がない。

 

 

 特にドクトリンの違いは致命的で、たとえば“予期せぬ遭遇戦”にあった場合、リベリオンやガリアの教本では「無秩序な乱戦を避けて後退せよ」とあるが、カールスラントやオラーシャでは「先制攻撃をかけて機先を制し、主導権を握れ」とあり、ブリタニアや扶桑にいたっては「現場で臨機応変に対応しろ」と当事者以外には予測不能という有様だ。

 

 こうした場合、共に行動してもむしろ混乱を広げるだけで、下手をすれば同士討ちすら発生しかねない。微妙な外交バランスの上に成り立つ合同作戦で、無用な政治リスクを冒すことは避けたかった。

 

(せめて、弾薬の規格統一だけでも出来ていれば良かったんですが……)

 

 規格の違う砲弾や銃弾を同じ集積所に保管しようものなら、間違いなく確率論的に発生する人為ミスで、規格の合わない銃弾や爆薬が前線に届けられるだろう。そういったリスクを避けるには、前線部隊から兵站まで統一するしかない。必然、国籍別の編成しか選択肢は残らなかった。

 

 

 『 計画の大半は裏目に出るが、かといって計画しないわけにもいかない 』

 

 

 目元を押さえながら、ドゥーリットルは上司であるアイゼンハワー元帥の言葉を思い出す。

 

 個々の問題点をあげればキリがないが、トータルでみれば今のところ作戦はうまく行っている。願わくば、こうしたリスクが顕在化する前に作戦を完了したい――ドゥーリットルは切実に願いながら、作戦の成功を祈った。

   




 「いろんな国の兵器を買って良いとこどり!」ってのは兵站や教育の面で負担が大きいので注意
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