ストライクウィッチーズ ~ドゥーリットルの爆撃隊~ 作:ユナイテッド・ステーツ・オブ・リベリオン
――果たしてドゥーリットルの祈りが天に届いたのか、あるいは単に運がよかったのか。
危惧された、ネウロイの大規模な反撃は発生しなかった。
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そして占領から半日しか経っていないにもかかわらず、キールは大規模な軍港として再生しつつあった。
艦砲射撃で穴だらけにされた滑走路は、連合軍の工兵によって完全に復旧している。B-17戦略爆撃機によって掘り返されたカールスラント軍の基地跡も、リベリオンのブルドーザーが平坦にしている最中だ。屋外格納庫の組み立ては7割が完了し、大型車両がコンテナを運び込むことで機体の整備を可能としている。
(なんというか、呆れるしかないな。これは……)
格納庫の一角で、バルクホルン大尉は整然とならぶ戦車を見つめ、呆然としていた。
(たった半日で、仮設とはいえ基地を復旧させてしまうとは……かつては人類同士で争っていたというが、リベリオンが付いた側の勝利は間違いないな)
カールスラントにおける物資運搬の主力は、いまだに馬車牽引だ。馬は速度が遅いうえに重い火砲などは分解する必要があるため、移動や準備に時間がかかる。
これは運用上の大きな制約となるばかりか、作戦の自由度を大幅に低下させてしまう。さらに車両は貴重品であり、主に前線の部隊に配備されて工兵には充分にいきわたっていないのが現状だ。
そうした重機の不足は現状、前時代的な人海戦術による非能率的な方法で長時日かけて補うしかない。前線基地に至っては、時と場合によってはウィッチが手伝う事もある。
対して、リベリオンでは牽引車からトラック、ブルドーザーにケーブル式ショベルまで何でもござれ、だ。高度に機械化されたリベリオン工兵は、他国なら前線部隊に優先配備される車両ですら建築用の重機として普通に利用する。もちろん、それが設営能力を大幅に向上させている事は言うまでもない。カールスラント軍が2か月かけて造成できる基地を、リベリオンであれば2週間で完成させられる。この差が持つ意味は、地味だが大きい。
(前提条件が根本的に違う。ここまで国力に違いがあれば、戦略や戦術も変わってくるという訳か)
確かに、これで共闘するのは難しいかもしれないな……と思考が後ろ向きになっている事に気づき、バルクホルンは首を振った。
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一般的に言って、大半の兵士は死傷率の高い前線勤務を忌避し、安全な後方勤務を望む傾向がある。
ところが、何事にも例外というものは存在する。例えば、典型的なカールスラント軍人たらんとするマルセイユ大尉にとって、前線勤務は名誉であり喜ぶべきものであった。
この世界において、唯一ネウロイに対して効果的な攻撃が行える存在――それがウィッチだ。彼女たちは人々の憧れであると同時に、「人類の盾」として重い責任を背負っている。辛い事も多いが、それゆえネウロイと戦って勝利した時の達成感は何物にも代えがたい、とマルセイユは考えていた。
「「「――それでは、改めてよろしくお願いしますっ!」」」
今、キール郊外に建設中の防衛陣地にいる彼女の前には、3人の新人ウィッチたちの姿がある。彼女たちがぎこちなさ満点の敬礼を終えると、隣にいたカールスラント空軍の連絡将校が口を開いた。
「大尉、見ての通り彼女らは士官学校を卒業したばかりのひよっ子だ。しかし訓練をきちんと行えば、充分に戦力として活用できる」
(またテキトーなこと言って……)
ため息を隠そうともしないマルセイユ。彼女に与えられた任務は、新人の訓練という地味な任務だった。あからさまに嫌そうな表情をする彼女に、連絡将校はダメ押しのように告げる。
「そう嫌そうな顔をするな。君と彼女たちは予備扱いとなっているが、いざという時には実戦投入されるんだからな。きちんと教育をしておかないと、あとあと苦労するぞ?」
そう、新人と一緒の部隊になるという事は、彼女たちに教育も施さなければいけないという事になる。そしてその分だけ負担は増える上、隊全体の平均錬度の低下は生存率の低下に直結するのだ。
(ライーサがいれば……)
無いものねだりをしてみるが、どうしようもない。カールスラント軍では同じ相手と長くペアを組むことが重視されており、互いを知り尽くした阿吽の呼吸によって高いチームプレーが行えるのが強みといえる。
逆にいえば新人が入ったりメンバーの入れ替えがあると連携がとれず、それだけ死のリスクも高まってしまう。
「新人に実戦が務まるとは思えません」
「ああ。だからマルセイユ大尉、君には教官を務めてもらう。そのため、一切の前線勤務を解くそうだ」
「はぁ――!?」
「上層部は君の経験と知識を高く評価している。それを未来ある後輩にも伝えておいてくれ。幸い、今は人員に余裕もある。エースであろうと休みは必要だろう」
必要な物資はすべてこちらで用意する、そう言い残して去っていく士官。残されたマルセイユはチッと地面に唾を吐く。
(つまりベテランを教官にして訓練に集中させれば、すぐに部隊全体の能力底上げが出来るって訳か。そのうえ仮に戦闘になっても傷つくのは補充の用意な新人で、貴重なベテランは最後まで温存できる……)
確かに合理的だったが、あまりにも冷酷な戦術。すんなり納得できるはずもなかった。
しかしマルセイユの意見は受理されず、「感情論」と一蹴されてしまう。腹いせに通常の2倍の物資を要求したところ期日通りに全ての物資が到着し、マルセイユは更に不機嫌になった。
「物質主義者め……!」
ドゥーリットルのやり方は、つまるところ「全て上層部に任せろ」という方式である。よく言えば保護が手厚く、悪く言えば自由がない。
その全てが悪いとは思わないが、少なくとも自分には合わないなとマルセイユはひとりごちた。
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