やったね。
文月学園
生徒達の学力向上とシステムの運用実験の為、オカルトと最先端化学と偶然の産物の『試験召喚システム』が試験的に導入されている学園である。
ここのテストは少し特殊で、解答時間一時間・問題数無制限なので、時間内であれば何点でもとれる仕組みになっている。
テストの点数はそのまま召喚獣の強さになっており、高ければ高いほど有利であり、0点になれば『戦死』扱いで、試召戦争が終わるまで魔の補習を受けさせられるという地獄が待っているのである。
そして、年間最後のテストが『振り分け試験』である。二年次からは、前学年最後のテストの『振り分け試験』の点数でA~Fのクラスに振り分けられる。Aクラスは高得点の人が集まるクラスであり、クラス備品も、教育の場とは思えないほど豪華な物だ。逆にFクラスは学年順位の下から50人ほどを集めた成績最低クラスであり、クラス備品は逆の意味で教育の場とは思えない物になっている。
☆
「アンタ、本当にいいのさね?」
「あはは…。大丈夫ですので。一人だけ受け直すのも、不公平ですし」
今の時間だと、ちょうど試験が終わった頃だろう。
私は諸事情があり学園長室にいるので、振り分け試験は受けていない。
「でも、これだと問答無用でFクラスだよ。アンタなら、Bクラス…うまくいけばAクラスも狙える学力があるというのに。あの、バカの巣窟Fクラスにねぇ」
「ふふっ。それは楽しめそうですね」
「まあ、アンタがいいって言うならいいさね。今日は助かったよ」
☆
季節は春真っ盛りと言っても良いだろう。暖かな日差し、桜吹雪がとても綺麗だ。そして、私にも綺麗に為し遂げたい事があった。
「久留米、何こっそり入ろうとしているんだ?」
「……あはは」
私こと、久留米薫は今絶賛困っているのであった…。
私を呼び止めたのが、全身を筋肉のアーマーで覆っているとしか思えない教師の西村先生なんだからだけどね。
「今、とてつもなく失礼な事を考えてないか?……まあいい。それはそうと遅刻だぞ」
「あはは…やだなぁ。私は遅刻なんてしてませんよ?」
「ほぅ」
筋肉アーマーがドスを一層強く効かせて睨んでくる。ここは言い訳を考えないと!
「私が遅刻だと思って無いから、遅刻じゃ無いんです」
「よし、久留米。歯を食いしばれ」
筋肉アーマー西村先生が、私を殴ろうとするよ!私は始めのうちは抗っていたが、圧倒的な戦力差により西村先生の鉄拳から逃げるのを諦めかけた時、少年の怒鳴り声が聞こえた。
「て、鉄人!あんた最低だよ!まさか女の子に手をあげるなんて…!」
「おい、吉井。お前は勘違いしているし、遅刻だ」
「ほぇ?」
先ほど、吉井と呼ばれた少年が間抜けな声をだす。
そして『鉄人』は、この筋肉アーマー教師に対する生徒の間での渾名だったりする。
そして、私は女の子ではなかったりもする。
「あのぉ、私一応男の子なんですよね」
「┐┐★+=☆┌→∩=+/&€/<"&/@[/>|&")♪^☆"!?」
「えっ?どうしたんですか!?」
吉井クンが……トチ狂っちゃった!? え? 私なんかへんな事言ったっけ?などと、考えていると西村先生が助け船を出してくれた。
「いや、大丈夫だ久留米。コイツは処理落ちしているだけだからな。ほら吉井。落ち着け」
西村先生が軽い動作で吉井クンの頭を叩く。軽い動作に見えたのに、吉井クンは反動で転けそうになっていた。流石にトライアスロンが趣味なだけある。
「がはっ。……僕はいったい今まで何を…。そして、頭がとてつもなく痛いよ」
「あはは…。大丈夫ですか?吉井クン」
「付き合って下さい(大丈夫!これくらい、いつもの事だしね)」
「吉井。言っている事と思っている言葉が逆になっているぞ。そして、何度も言うが久留米は男だ」
「この僕が鉄人の妄言に耳を貸すと思ったか。僕はこの目で見るまで信じないよ!」
あはは…はは。吉井クンは冗談が本当に大好きな人なんだなー。ちょっと泣きたくなってきちゃったよ。そりゃあ、今は少しばかり身長が低くて、少しばかり顔が童顔で、少しばかり髪の毛が長いから勘違いされたんだろうなー。違うよ。普段はもっと男前なんだよ…。多分。
「それはそうと、お前らのクラス分けの結果だ。まぁ、久留米はもうわかっていると思うがな」
「うーす。鉄人」
「吉井は補習をお望みなようだな。安心しろ、吉井。思う存分堪能させて殺る」
「すいません。鉄村先生。あなたの筋肉談義だけは勘弁して下さい」
「あはは。混ざってますよ?そして、反省して無いですよね…吉井クン」
吉井クンは西村先生から小さな茶封筒を貰い、中身を確認しようとする。茶封筒には、『吉井 明久』と書かれていた。
「吉井。俺はお前を一年間見てきて、もしかしたらバカなんじゃないかと思っていた」
「そんな台詞を吐けるなら、まだ西村先生もただの人ですね」
「ああ。そうだな……」
吉井クンが茶封筒の中から、小さな白い紙を取り出す。そこには、こう書かれていた。
『 吉井 明久 Fクラス 』
「…お前は、疑う余地も無い大バカだ」
これが私のクラスメイト1号の吉井明久クンとの出逢いだった。
久留米の心の中が凄い事になってしまったぜ。
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