呂堺ト天使   作:雪亜

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別の小説投稿サイトで全然読まれなかったのでこっちで掲載します


今の世界と昔の過去

今から五十年前、日本に天使たちが降りたと言うニュースが流れた。

舞い降りた天使たちは自分のテクノロジーを教える代わりに機械について詳しく教えて欲しいと要求し、見事和解した。

そして人と天使の手で中型装甲兵器「呂堺機(ロカイキ)」が生まれ、武装国家 日本へと発展した。

 

だが人は呂堺機を不要に使い燃料となる木材や石炭が不足するに陥った、そのため森林伐採が多く行われ福島、新潟、山形、宮城、秋田、青森、岩手、北海道以外の殆どの森が消滅した。

 

 

そんな中山形の山中に森に囲まれた村が有ることを知った政府は呂堺機の資源となる木を得るために直ぐに買収を試みた、だが村長で地主の夜森快晴(やもりかいせい)は一切動じず頑なに断り続けた、理由は村民が、息子がまだ森や山が好きで居てくれるからだ。

そして息子である夜森葉棟(やもりはとう)に訪れる羅堺機との戦い、学園生活、そして天使…これは命懸けで生きることを望む青年の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふー…この辺りの伐採は終わったかな?」

痛み腐食がし始めている木をチェーンソーで切り、回りの木に養分が行くようにする作業を日課にするが日差しがひどい日はあまりしないようにしている。

 

「よし、疲れたから一回帰るか。」

丸太からロープを外しチェーンソーをしまう、この森は昔から入っているので殆どの隠れ場所や道具を隠している場所もわかる。

 

「よいしょっと…そろそろ店を開けるかなぁ…いや、まだ早いな。」

店とは父親が営んでいた定食屋の事で村唯一の食事処である、そして最近は俺に任せっきりになってしまい趣味に余り時間を削げなくなってしまっていた。

そして少い趣味の中で唯一続けているのがチェーンソーと錐(きり)、そして鐫(のみ)を使い木で鷹や虎などのを木造作って売り出す。

だけどこのままだとあまり売れないので友人に頼んでヤスリで削り漆を塗ってもらう、そしたら3000円で売れるので半分に分けて小遣いに当てる、だけどここは相当な田舎だから使い道がなく、殆ど駄菓子屋でお菓子を大量に買い漁り大食い対決をしたりして笑い合えている、それだけで幸せだった。

 

ただ呂堺機の存在が一番邪魔だった、母親は呂堺機の研究にとても深く関わっていたとのことで母親目的で黒いスーツの男が辺りで徘徊しているのがチラチラ見えていた、そのため父親は気に入らなくて一升瓶片手にしばらく帰って来なかったことも有った、家族を奪い、生活を狂わせ、人殺しの兵器なんかを普通に作り当たり前のように使う都会の人間も大嫌いだった。

 

「あー…なんかムカムカしてきた、帰ったら速攻で店を開けちまおう。」

もう呂堺機なんて物は、消えてしまえよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鯖味噌定食と醤油ラーメンお待ちどうさま。」

小麦粉を間違えて仕入れてしまったのでラーメンを作ってみたところ予想以上に売れるので結構内心焦っていた。

「大変だねぇ、おばあちゃんも手伝おうかい?」

「松さんは腰痛めてるからしっかり休んでよ。」

「すまないねぇ、それに比べてうちの孫は…」

「雛屋か…あいつ、どこでほっつき歩いてんでしょうね。」

「廻利はねぇ…あっちに親と行ってから帰ってこなくなってしまってね、一人だと寂しいもんだよ。」

「…松さん、雛屋が帰ってくるまで死ぬんじゃないよ。」

「お前は優しいねぇ、まるで本当の孫みたいだよ。」

「ははっ、じゃあ俺は戻るからなんかあったら言ってくださいよ。」

雛屋廻利(ひなやまわり)、小さい頃の幼なじみで結構しっかり者だけど頭が少し弱い位の女の子だった、ちょうど小学六年の頃に親の事情とかで都会の何処かに行ったと言っていたが恐らくは「逃げた」のだろう、俺らから賠償金がいつ来るか分かったもんじゃないしな…まぁ全然とる気もなかっただけに結構ショックを受けたなぁ…雛屋自体はどう思ってたんだろ?あいつは…。

 

 

 

 

 

 

「本当に、何してんだろうなぁ…。」

そして閉店し、もやもやするから山に散歩しに来ていたが、やっぱり気が張れない、こんな時は…。

 

「よし、鷹でも作るか。」

村から離れた山中にてチェーンソーで木を削りながらもやもやを解消する、特には破壊衝動は無いためただの憂さ晴らしだ。

だけど今日は何かもやもやが晴れない、何か本能が忠告している気がする、山も何か…。

 

「っ…何だ…いきなり強風が…何だよ…これ、呂界機じゃないぞ…。」

 

目の前に現れたのはコウモリ型の呂堺機みたいだが呂界機では無いものだった。

「…認証開始…完了、夜森麗葉(うるは)の息子、夜森葉棟であることが確認できました、これより身柄を確保します。」

「身柄を確保…?何でそんなことをする。」

「…抵抗せずに大人しく付いてくると言う手もあります、貴方はこのままでは…。」

「冗談抜かしてろっ!」

チェーンソーを空回りさせ土煙を起こす、これで三秒だけでも時間を稼ぐ。

 

「今のうちにっ!」

「…ターゲットが逃走、これより追跡します。」

鈍い音をたてて今度は蜘蛛形に変形する、仕組みはどうなっているんだ?

だが考えている暇もなく結構なスピードで追ってくる、だが山の中は把握しているからいくら早くてもこちら側が有利だった。

 

「このままじゃこっちの体力が無くなる一方だな…よし、あの土砂崩れで出来た窪みを使って反撃してみるか。」

チェーンソーを起動させ立ち止まる。

 

「…諦めて下さ…!?」

「やぁぁぁぁ!」

足元が少し崩れバランスが崩れた瞬間に関節にチェーンソーを叩き込む。

 

「くっ…体制を…。」

その時木をアームで掴むがアームの力が強すぎて木がへし折れてしまい近くに居た野犬に倒れてしまった。

 

「っ、大丈夫か…早く持ち上げなければ…よいしょっ…!ぐっ、この木は重たいタイプだったか…どうにかして退かさなきゃ…。」

「……。」

どうする、このまま見捨てるわけには…。

 

「…これで話を聞いてくれますか?」

いきなり軽くなったと思えば呂堺機(?)がアームで木を持ち上げていた。

 

「え…。」

「犬の保護、兼ねて治療をお願いします。」

「あ、はい。」

犬にはそこまでの怪我はなく、かすり傷ですんだ。

 

「…話くらいなら聞くから、その機体から降りて貰って話をしたい。」

「…良いですよ、ハッチを開けま…。」

突然空から砲撃が撃たれた、まだ完全にハッチが空いていなかったから恐らくは軽傷で済んだだろう。

 

「…悪魔め、まだ人を引き込もうとするか!」

「…ダメージ76%、まだ戦闘は出来ます。」

「青年、無事か?」

「ろ…呂堺機…だ…呂堺機が…砲撃を…。」

「何だ…?妙に呂堺機に怯えて…。」

「…無理もありません、その青年は適正値ssクラスの血脈を持っている夜森麗葉の息子ですから。」

「何だと…貴様…!」

「彼の母親からの言伝てで保護を命じられているので退くわけにはいきません。」

「!!?、母さんから何を…。」

「…こちらに来て下さい、全ての真実を…。」

「エリアルカノン!」

言い終わる前にど真ん中に砲撃が撃ち込まれる、関節はほぼへし折れ頭から潰れていた。

 

「…悪魔は全て私が掃討する、それが私の任務だ、だから…潔く死ね、そもそも夜森麗葉は数年前に行方不明だ。」

「え…行方不明…だって?」

「知らなかったのか?結構なニュースになったはずだぞ。」

そんな…母さんは…行方不明に…。

 

「ううっ…。」

「っ!大丈夫か!」

 

目の前に現れたのは俺より若い女の子だった。

「放っておけ、悪魔は…。」

「悪魔だの天使だのどうだって良いっ!目の前で死ぬところなんて見たくねぇんだよ!」

「…貴方は、やはり夜森麗葉の息子だ、言っていることが…ほぼ…同…じ…。」

「しっかりしろ、直ぐに村の診療所まで…。」

「…人の努力を救うのも天使の勤めだ、捕まっていろ。」

「え?ちょっ…。」

「加速する!」

その時、あまりのスピードに気を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……これは、小学四年の頃の…俺?確かあの日は、一人で相当腐食が進んでいる木を切りに行ったんだっけ…。

 

 

 

 

「…チェーンソーは重いから鉈とロープと…よし、忘れ物は無いな、さっさと終わらせてしまおう。」

「っ…練(れん)ちゃん、どうしてここに?」

「雛屋、お前こそ…何だ、山菜採りか。」

「えへへ…沢山採れたから後でお裾分けに行くね。」

「助かる。」

 

そっか、昔俺は素っ気ない性格だったんだ、よくひねくれて喧嘩して、森に逃げてたなぁ…それと雛屋はずっと練(れん)と棟(とう)を間違えて居たな…自分でも分かんなくなったときもあったよ。

 

「…練ちゃん、聞いて欲しいことがあるんだ。」

「何だ?出来れば手短に…雛屋危ないっ!」

「えっ?」

 

…あの時、腐食した根本が抜けて雛屋の方向に倒れて、ギリギリ突き飛ばすことが出来たんだっけ、だけど木の枝が何本か突き刺さって倒れた木を退かせなかったんだよな…。

 

「練ちゃん!まずは止血を…。」

「…そこの鉈を取ってくれ、それと村の大人を出来れば呼んできて欲しい、どうにも…痛っ!…木が重くてな、身動きが取れないんだよ。」

「え、でも…。」

「安心しろ、この刺さっている枝を切っておくだけさ。」

「…うん、じゃあ直ぐに呼んで来るから待っててね。」

「…行ったか、結構血溜まりが出来てるな…何だか…意識が朦朧に…なって…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後目を覚ましたのは村から離れた大きな病院で、突き刺さった枝を手術で摘出したらしい、だが全部摘出した訳でもなく難しいところに残ってしまったと言うのだ、もう金も無くなってしまったのでこれくらいは大丈夫だろうと思っていた、だけど現実はそう甘くなかった。

スポーツを出来るのは最長30分、走るのは50分、それ以上運動すると足に残った刺が刺激し刺さった直後の痛みを脳が再現すると言う物だった。

自分で言うのも何だが運動神経は誰よりも良かった、色々なクラブや試合に呼ばれることなんて珍しい事ではなかった、だからこそ運動を出来ないショックは大きく、少しノイローゼになりかけてしまって家に閉じ籠った、その時俺に会いに来てくれたのが友人である東戸盃詩(ひがしどはいし)と夢張累夏(ゆめはりるいか)である、いつもは「四人」でバカやったり遊んだり少ない人数で共に学んだりしていた、その内の一人の雛屋が来てないと言うことはアイツもアイツで悩んでいるのだろうと思っていた、だけど裏にはこんなカラクリが隠されていた。

 

雛屋は先輩三人組に命令されて俺を動けないようにしろと脅され木に薬を撒き金槌で叩き脆くし俺に倒れるように仕組んだのだ、だが素人の手ではそんな芸当は出来るはずは無く自分に倒れてくることを仮定してなかった故に全く反応することが出来ず俺が突き飛ばしてやっと回避できた、それくらいギリギリだった。

だがこの事を知った時は雛屋が転校してこの村から居なくなって半年くらいだったのだ。

 

 

「…それで、雛屋は何て言いたかったんだろうなぁ…もし助けを求めていたら俺は助けられた…いや、これはただの自惚れか、雛屋の家は結構離婚の危機だったしなぁ…。」

 

…そろそろ目覚めるだろ、いい加減夢なんて見ている暇は無いもんな、天使だの悪魔だのワケわかんないことを完全に放置して学校に行く、それから問題を片付けよう、天使でも悪魔でも生きていることには変わらないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 「旅立ち」


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