ストライク・ザ・ブラッド―真祖の守護者―   作:光と闇

16 / 18
古城の夢は書いてるので、今回は雪菜の夢です。………短いですが。


悪夢の剣巫

 雪菜は悪夢にうなされていた。原因は、レイの口から告げられた〝彼女〟というキーワードによるものだった。

 

 

 

 

「………?ここは?」

 

 雪菜は何もない真っ暗な―――虚無の空間にいた。

 雪菜は、なんでわたしはこんなところに?と疑問に思いながらも、果てしなく続く漆黒の空間を歩き始めた。

 ………あれからどれくらい歩いたのだろうか。時間の感覚などなく、雪菜はただひたすらこの終わりが見えない闇の中、前に歩みを進めていく。

 すると、不意に雪菜の目の前に闇を貫く一筋の光が射した。雪菜はその光を追い求めるかのように、我を忘れて駆け出していた。

 

「………っ!」

 

 だが、雪菜は幾ら走ってもその光の下へは辿り着くことができなかった。

 次第に疲れていき、遂に走れなくなった雪菜は、その場で立ち止まり、遠ざかっていく光を呆然と眺めた。

 すると、そんな彼女の肩をポンと誰かが後ろから優しく叩いてきて、

 

 

 ―――雪菜。

 

 

「………え!?」

 

 その懐かしい声に雪菜は驚愕の表情を見せた。そして、その表情のまま振り返ると其処には―――〝彼女〟が優しげな表情で立っていた。

 

「………!!〝――〟様ッ!?」

 

 雪菜が〝彼女〟の名前を呼ぶと、〝彼女〟はニコリと微笑み雪菜の頭を優しく撫でてきた。

 雪菜は〝彼女〟の優しく、温かな手に撫でられて、とても嬉しそうな笑みを浮かべ瞳を細めた。

 ………会えた。もう二度と会えないと思っていた、〝――〟様にまた会えた………!あの時、伝えられなかった言葉を、お礼を言おう。それから、〝彼女〟と色々な話をして―――

 雪菜はそんなことを考えながら、まず〝彼女〟に触れようとした。が、

 

「………え?」

 

 雪菜の手は〝彼女〟に触れることができず、空を切る。

 ―――ッ!?どうして!?〝――〟様はわたしに触れられるのに、わたしは〝――〟様に触れられないの!?

 理解できない、というような表情で〝彼女〟を見つめる雪菜。しかし、雪菜は気づいてしまった。〝彼女〟の身体が消えかかっているということに。

 

「〝――〟様!?そんな―――!嫌っ!消えないでください………ッ!」

 

 雪菜は必死に手を伸ばして、身体が消えかかっている〝彼女〟を強く抱き締めようとする。このまま〝彼女〟が消えてしまわぬように。が、その行為は虚しく雪菜の身体は〝彼女〟をすり抜けて、前に倒れてしまった。

 ―――そんな、〝――〟様ッ!!お願いですから、わたしの前から、消えないで………!

〝彼女〟が光の粒子へと変化していくなか、雪菜は必死に、『消えないで!』と強く願った。

 そんな雪菜の想いに気づいたように、〝彼女〟は優しく笑って告げた。

 

 

 ―――大丈夫よ、雪菜。きっとまた、直ぐに会えるから。

 

 

「………え?」

 

〝彼女〟の意味深な言葉に、雪菜はきょとんとした表情で見上げた。すると突如、光が闇を照らし出したかと思ったら、〝彼女〟の頭上に神々しい黄金を全身に纏った少女が舞い降りてきた。

 その少女の背には、純白の美しい翼があり、頭上には光の輪が浮かんでいる。

 ―――!?彼女はまさか………〝神の御使い〟………本物の天使!?

 雪菜が驚いている間に、その天使の少女は〝彼女〟の下へと舞い降りると、〝彼女〟の手を取り、翼を羽ばたかせて天へと導いていく。

 

「―――ッ!?や、やめてください!〝――〟様を、連れていかないで………!」

 

 雪菜は懇願し、天使の少女が天に連れていこうとする〝彼女〟へと手を伸ばす。が、天使の少女に引かれて天へと昇っていく〝彼女〟には、雪菜の手は届かない。

 届かない………けど、雪菜の必死な想いが伝わったのか、天使の少女はふと上空に留まると、雪菜を見下ろしてきた。

 

「―――――ぇ?」

 

 雪菜は、一瞬時が止まったかのように身体が動かなくなった。

 雪菜の見た天使の少女。その容姿を見て、雪菜の血の気が引いていく。

 黄金の輝きを纏った少女の髪は()()、真っ白な薄布を纏った―――()()()()()()()()()を持つ幼い天使。

 その天使の少女の正体は紛れもなく雪菜の知っている………()()()だった。

 

「どうして………どうして、あなたが………!?」

 

「……………」

 

 しかし、雪菜の質問に白い天使の少女は答えない。代わりに、声にならない言葉を、唇が紡いだ。

 

 

 ―――ごめんなさい、と。

 

 

 白い天使の少女は、何処か悲し気な表情で雪菜にそれだけを伝えると、〝彼女〟と共に天へと昇っていってしまった。

 そして、光を失ったこの空間を、再び闇が黒に染めていく。その純黒の空間にただ一人、取り残された雪菜は涙を流しながらポツリと呟いた。

 

 

「……………どうしてなんですか………()()、さん―――」

 

 

 雪菜の悪夢は其処で終わりを告げて、新しい朝を迎えたのだった。




レイが『―――』した〝彼女〟を天に導く―――というシーンですが、雪菜視点だと、レイが〝彼女〟を連れ去ろうとしているんですよね。だから雪菜がレイの行為に、どうして?と思ってしまっているわけです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。