ガールズ&パンツァー 逸見エリカの苦労日誌   作:まもる

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 これで、黒森峰戦は終わりです。


黒森峰戦 交差する姉妹の思い

 

 私が撃破された後、回収車によってティーガーⅡはガレージへと運ばれていた。

 

 私はガレージに着くまでの間、小梅にティーガーⅡにある救護キットの中にある包帯で頭を巻かれていた。ただ、おでこをペリススコープの角にぶつけてパックリと切っただけなのに小梅に泣きながら治療をしてくれたのだ。そして、泣き止んだと思ったら怒り出していたのだった。

 

 まぁ、小梅が泣きながら怒るのも判るが・・・・

 

 「エリカちゃん、試合が終わったらみほちゃんと一緒にお説教だからね!」

 

 私に味方は居ないのだろうか?

 

 既に、私はみほからのお説教のフルコースが待っている。

 

 そこに、小梅のお説教が加わったら間違いなく凹むだろう。

 

 普段はほんわかしているみほだが戦車喫茶でもそうだが、怒らせたら一番恐いのだ。蛇足だけど、まほさんよりみほの方が何倍も恐いのだ。

 

 

 「小梅、分かったわよ。だから、モニターで試合を見るわよ」

 

 私はごまかすように小梅と一緒に試合中継か見られるモニターへと向かった。

 

 そこには、レイラも見ており真剣な表情で見ていた。

 

 「レイラ、試合はどうなっているの?」

 

 「・・・・・エリカちゃん、今は凄いことになって居るよ」

 

 こうして、普通に話しているのは久しぶりだと私は思う。レイラからは許さないとは言われたが、レイラはみほの様に心優しい子なのだ。

 

 だからだろう。

 

 三人一緒に話して居られるのは・・・・・

 

 「久しぶりだね。レイラちゃん」

 

 「小梅ちゃんも居たんだね。見事な砲撃だったよ。あ、あ~あ、悔しいな。やっぱり、狂犬と与一のコンビには天地が逆さまになっても勝てないね。皆が居なくなってから死に物狂いで訓練したのに、まさかさ2500mの距離を正確無慈悲に狙撃されて、おまけにショットトラップをやってくれるんだもん」

 

 「私もレイラと同じ意見よ。最近はみほに追いつこうと授業以外で訓練はしているけど、紅白戦の度に負けているわ」

 

 「えッ?エリカちゃんもなの?」

 

 「自慢じゃないけど、今の小梅はパンターF型の照準器で3800mは当てるわよ」

 

 「何それ!?第二次世界大戦のドイツの戦車兵並じゃない!チートよ!」

 

 でも、みほ達が不利な状況なのは変わらない。

 

 モニターからでも判るが二両のティーガーⅡに次々と撃破される大洗女子のパンター小隊。

 

 大洗女子は残るのはフラッグ車であるみほのティーガーⅡと愛里寿のセンチュリオンの他にアンチョビのティーガーⅡだけになっていた。そして、黒森峰はフラッグ車のティーガーⅠにティーガーⅡが二両、パンターが三両のままだった。

 

 そして、やっと合流を果たした矢先、アンチョビのティーガーⅡが動きが何故か変だった。マフラーからいつもの煙りより黒煙が出ていて攻撃を受けてない事からエンジンの不調になったのだろうか?そのまま走行不能でリタイヤとなった。

 

 もしかしたら、負けてしまうかもしれない状況の中、私は見る事しか出来ない自分が悔しかった。

 

 握りしめる拳からは血が滲みでていた。

 

 レイラがニヤリと笑いながら言っていたが正直なところ分からない。

 

 「エリカちゃん、どうやら黒森峰が勝ちそうね」

 

 「でも、あの二人ならやってくれるわ」

 

 私が言える唯一の言葉。今まで、そんな言葉を私から聞いた事が無かったレイラは目を丸くしていた。

 

 「だって、たった二両で何が出来るの?もう、詰みじゃない!」

 

 レイラの言う通りかも知れない。

 

 黒森峰に居た頃の私だったら、そう諦めていたかも知れない。

 

 あれを見たら正直、愛里寿を黒森峰戦に出したくなかった。

 

 試合開始前の愛里寿の表情には曇りがあった。

 

 やっぱり、あの試合を思い出してまた大怪我をするんじゃないかと、怖がっていた節もあったし、前のみほの様に自分の流派を汚してはいけないと思っているのだろうか。

 

 それは、私には分からない。

 

 今は、どうだろうか?

 

 審判席に居た、蝶野さんが騒いでいるみたいだったが、モニターからは両者の通信がオープンにされていた。私もレイラも小梅も釘付けになって映像をみる事にしたのだ。

 

 映像は愛里寿に変わり、試合前の表情とは変わっていた事に気付いた。

 

 何だろ。

 

 なんかの本で読んだが思い出せない。

 

 あんな、ウキウキした愛里寿は一緒に生活をしていて見たことがない。

 

 そうか、愛里寿は過去のトラウマとお別れをしたんだ。

 

 そして、明るくなった愛里寿は久しぶりに聞く、あの歌を歌っていた。

 

 『やってやる、やってやる、やってやるぞ!嫌なあいつをボコボコに 喧嘩は売る物  堂々と・・・・・』

 

 「えッ?何これ・・・・・」

 

 それを見ていたレイラは口を開けたまま固まっていた。

 

 確かに、あれはトラウマになるだろ。

 

 実際には聖グロリアーナのダージリンやルクリリにローズヒップまでもが、あの歌のトラウマになっている。あの歌を聞かされながら追い回されたのだから・・・・・

 

 愛里寿はみほがまほさんとの一騎討ちの邪魔をさせない為に、一両で黒森峰の戦車の相手をしていた。本来の島田流は一対多数を相手にする流派だ。池田流も同じ事が言えるだろう。

 

 愛里寿はセンチュリオンを全速力で走らせて、すれ違い様に十八番の辻切りからパンターを一両を撃破し、ドリフトしながら信地旋回をする離れ業をしてパンター二両を物の数秒で撃破し、ティーガーⅡに至ってはパンターを倒したままの加速を生かして慣性ドリフトをしながら後部に主砲を叩き込み、もう一両は砲塔の側面への零距離での四連射で撃破したのだ。

 

 だけど、愛里寿が駆るセンチュリオンの活動はそこまでだった。

 

 ガッタタタ

 

 『あっ!?』

 

 ボッン・・・ボッシュゥゥゥゥ

 

 『みほ、ゴメン。エンジンがエンジンブローした。後は任せる・・・』

 

 『分かりました』

 

 エンジンを全開まま走らした事でエンジンのピストンが抜けたかどこかが壊れたのだろう。ボッンと音と共にエンジンルームのハッチが吹き飛び、エンジンからエンジンオイルが大量に噴出してエンジンオイルの雨を降らせながら停止したのだ。センチュリオンは白旗が上がってリタイヤしたのだ。愛里寿は吹き出す前に振動で気づき、ハッチを閉めて車内に慌てて逃げていた。

 

 「エリカちゃん、センチュリオンのエンジン。あれは逝ったね・・・・」

 

 「小梅、試合中に頭が痛くなること言わないでよ・・・・また、工房の職人に小言を言われるわね・・・・ティーガーⅡも砲塔がベコベコで頭が痛いんだから・・・・・」

 

 「そうだね。工房のおじさん、腕は良いけどね・・・・でも、いっそのこと愛里寿ちゃんにティーガーⅡに乗せちゃったらどうかな?」

 

 「それが一番だわ。整備班がセンチュリオンの整備に四苦八苦していたし・・・・・」

 

 最後に残ったのはみほとまほさんだった。

 

 フラッグ車同士の対決だった。

 

 総統府の前で噴水を挟んで対峙する姉妹。

 

 これが、ドイツの戦車兵なら絵になる光景だろう。

 

 しかし、二人の姉妹はそんな空気ではないだろう。

 

 モニターから聞こえる姉妹の会話。

 

 『お姉ちゃん・・・・』

 

 お互い、キュポーラから半身を乗り出し見つめ合う二人。

 

 『みほ、受けて立つ・・・・』

 

 一気に加速するティーガーⅠとティーガーⅡの二両。

 

 そして、必殺の88ミリ戦車砲を放つ両者にそれをギリギリで交わしていく二人。

 

 そこは、私が立ち入れる領域ではなかった。

 

 「ねぇ、エリカちゃん。もし、私達がやられずに居たら邪魔になるよね?」

 

 「なるわね。下手したら、姉妹に瞬殺されるわよ。邪魔って言われながら・・・・」

 

 「うん、想像出来るね・・・・」

 

 私とレイラは想像してしまった。

 

 もし、私が乗るティーガーⅡとレイラが乗るパンターで邪魔したら・・・・・

 

 私はまほさんに速攻で主砲を叩き込まれ、レイラはみほに体当たりされ側面装甲に叩き込まれて私とレイラは速攻で白旗が上がるだろう。そして、何事も無かったかの様に姉妹の戦いは続くだろうと思ってしまった。

 

 「エリカちゃんもレイラちゃんも顔が真っ青だよ?」

 

 私とレイラは小梅の肩に手を置いて言ってしまった。

 

 「「先にらやられて良かった・・・・」」

 

 「エリカちゃん、この事も含めてお説教だね。レイラちゃんも一緒だからね?」

 

 「えッ?」

 

 小梅の右手に握られていたのは一枚の黒森峰の外泊届。それを見て更に顔が真っ青になるレイラ。

 

 そう、外泊届の名前を書く欄には楼レイラと書かれていたのだ。

 

 「こっ、小梅ちゃん!それ、黒森峰の外泊届だよ?どうしたの?」

 

 「私、物持ちが良いから黒森峰のこういう書類は全部保管してあるよ。だから、試合が終わったらまほさんに渡せばオッケーだよね?」

 

 「私、お持ち帰り決定なの?私、副隊長だから厳しいよ?」

 

 「大丈夫だよ。渡したら、飛行艇に押し込むだけだからね」

 

 「いっ、いやぁぁぁ!」

 

 「レイラ、小梅の冗談よ」

 

 「えッ?冗談・・・・ほっ・・・・・」

 

 「でも、一度は大洗女子を見た方が良いわよ。何故、みほの下に集まるのか、何で元黒森峰の生徒がいきいきと学生生活をしているのか判るわよ」

 

 「そうね。楽しみにしてるよ」

 

 「待っているわ」

 

 「・・・・・でも、本気だったんだよね・・・・レイラちゃんのお持ち帰り・・・・・・」

 

 「えッ?」

 

 私は再び、モニターに目を向けたのだ。

 

 

 総統府の前では両者の激戦は続いていた。

 

 撃ち合う主砲。

 

 弾け跳ぶ、戦車の備付けの備品やサイドアーマー

 

 だけど、みほの戦い方に疑問を持った。

 

 先程から、みほは島田流で学んだ技をほとんど使っていなかった。使っていたのは西住流での戦い方で追い詰めて行ったのだ。

 

 『お姉ちゃん!そんなの間違ってるよ!』

 

 『みほ、確かに私はやり方が間違っている事は分かっている。だか、今の黒森峰の機甲科とOGを変える為にはこうするしかない!』

 

 『どうして!』

 

 『私の単なる妹があんなことをされた逆恨みかも知れない。だが!」

 

 『そんなの私は気にしてない!』

 

 『みほやエリカ達の黒森峰での未来を奪われてもか!』

 

 『でも、私は良かったって思えてるよ!やっと、戦車道が楽しいって思えたから!』

 

 『それでも、私は後輩達の為に膿を取り除く必要がある!』

 

 姉妹は主砲を撃ち合い、それを交わす為にドリフトやブレーキを駆使して交わしていく。

 

 二人だけのワルツを踊るかの様に思えたが・・・・

 

 『そんなことしたら、私に制裁をした先輩達と変わらないよ!で、何!持ち出し禁止の書庫から閲覧禁止の本を持ち出して試してみたら上手く行ったからって続けて。今回は相手校に怪我が無かったから良かったけど愛里寿ちゃんの時みたく重傷者が出てもおかしくないんだよ!』

 

 『西住流を離れたみほに言われたくない!』

 

 『離れたんじゃない!破門にされたんです!お姉ちゃんの石頭!戦車道では尊敬出来るのに、普段は口下手の天然阿保娘!』

 

 『口下手の天然娘はみほだろ!それに、石頭はみほだ!子供の頃、私に頭突きしといて良く言う!』

 

 『天然は認めるけど、お姉ちゃんほど口下手じゃないもん!えっ、何?石頭の意味も分からないの!小学生からやり直したらどうなの!』

 

 『お姉ちゃんに向かってそれは無いだろう!』

 

 何だろ。この状況・・・・・・

 

 正直に言ってカオスだ。

 

 二両戦車は歩みを止め、双方の戦車が隣同士に止めるとキュポーラから身を乗り出した二人の口喧嘩に変わっていた。そして、最後の方は姉妹揃って熊本弁での口喧嘩に変わっていたが割愛しておこう。(だって、熊本弁が難しいので・・・・)

 

 それを聴いていた蝶野さんは・・・・

 

 「あっはははははは!何これ!砲撃の応酬じゃなくて、口撃の応酬!傑作だわ!ベリーグッジョブよ!あぁ、お腹が痛い・・・・」

 

 蝶野審判長、お腹抱えて爆笑してないで何とかして下さい。

 

 蝶野さんはお腹抱えて大爆笑しており、来賓席にいる島田師範と西住師範は何故か頭を抱えてぼやいていた。

 

 「ねぇ、しぽりん。かなり見苦しい試合ね」

 

 「これも、西住流よ。多分・・・・」

 

 「多分って、言わなかった?」

 

 「気のせいだ。ちよきち」

 

 モニターを前に唖然とする私達。

 

 喧嘩は犬も食わぬとは言ったものだ。

 

 こんなやり取りに困惑する私はどうしたら良いのか分からないでいた。

 

 「レイラ、こういう時どうしたら良いのよ?」

 

 「エリカちゃん、あれは諦めた方が良いかも・・・・・だって、ああなった隊長とみほちゃんは止めるのはねぇ・・・・」

 

 「そうだね。姉妹で滅多に喧嘩しないだけにレイラちゃんが言いたい事は判るかも・・・・」

 

 そう、二人は

 

 『ちょっと待て!確認するが、私はそんなに口下手か?』

 

 『うん、普通に勘違いされる位に酷いよ!』

 

 『そっ、そうなのか・・・・』

 

 ガックリとうなだれるまほさんだったが、いつの間にか姉妹の会話に戻っていたのだから・・・・・

 

 『さて、姉妹喧嘩は終わりだ。決着を付けるぞ!』

 

 『うん!決着を付けます。パンツァーフォー!』

 

 再び、動き出す二両の戦車。

 

 だけど、言いたい事を吐き出した二人は合図と共に戦車を加速させていた。だけど、先程のみほの動きとは打って変わっていた。

 

 『なっ、何だ!西住流とも島田流とも違う!?』

 

 『そうだよ!さっきはお姉ちゃんに間違いに気付いて欲しかったから、西住流で戦ったんだよ!でも、今度は違う。私の全てをお姉ちゃんにぶつけます!』

 

 『なら、みほ来い!』

 

 『麻子さん、あれをやります』

 

 『隊長、分かった』

 

 『みほ、ティーガーの装甲は簡単には抜かせないぞ!』

 

 『つっ!?・・・今度は、あれです』

 

 さっき、愛里寿が見せた島田流のバミューダトライアングルの応用である慣性ドリフトしながら信地旋回して後部を狙うと見せ掛けて、途中で急加速からの辻切りをしたが正面装甲を信地旋回をやられて前面装甲で弾かれ、池田流の喧嘩殺法の秘技の体当たりをしてティーガーⅠを吹き飛ばし、その反発した力を利用して側面装甲に主砲を叩き込もうとしたのだが・・・・

 

 『甘いぞ!撃てば必中・・・・』

 

 「なっ、何なのよ!普通に有り得ないわよ!」

 

 「うん・・・流石に隊長車の砲手だね・・・」

 

 「えッ?私、自信無くしそう・・・・」

 

 私が見た光景はみほが止めに側面装甲に主砲を撃ったが、同じタイミングでティーガーⅠも主砲を放ち、みほのティーガーⅡの主砲の砲弾を相殺したのだ。思わず叫ぶ私に何故か納得するレイラ。そして、涙目で俯く小梅だった。

 

 『えッ!相殺された・・・』

 

 『みぽりんのお姉さん、マジで凄いですけど!』

 

 『流石は西住流です』

 

 『わたくしも燃えて来ましたわ』

 

 『で、どうする隊長?』

 

 主砲を相殺された動揺はみほ達にも達していた。

 

 私でも、正直なところ精神的に堪えるだろう。

 

 やはり、まほさんの戦車道の根幹は西住流だと再認識させられる。

 

 それでも、まほさんを倒さないといけないみほの重責。

 

 再び、膠着状態に戻される今の現状。

 

 私は気がつけば、爪を噛んでいた。

  

 私にはどうにもならないのだ。

 

 それが悔しいのだ。

 

 だけど、みほは勇敢にも姉と決着を着けようとしていた。

 

 『麻子さん、燃料の残量はどうですか?』

 

 『ここで決着を着けないと足りなくなるぞ』

 

 『大丈夫です。ここで決着を着けます。華さん、精密射撃は行けそうですか?』

 

 『静止時間をコンマ3秒を頂ければ行けます』

 

 『向こうの砲手との集中力勝負になります。すみませんがお願いします。優花里さん、装填速度を今の半分の装填時間で行けそうですか?』

 

 『西住殿、2秒間隔なら最高5発までならいけるであります』

 

 『分かりました。では、行きます。パンツァーフォー!』

 

 同じくして、まほさんでも同じ事が起きていた。

 

 『原田、燃料は持ちそうか?』

 

 『隊長、はっきり言って持ちません。燃料の噴射率をマニュアルで下げましたが、これ以上下げるとエンジンが止まりそうですし、履帯も足回りも感覚的に限界です』

 

 『そうか・・・・山田、タングステンの徹甲弾はまだあるか?』

 

 『さっき、撃ったので最後です。後は通常弾頭だけです』

 

 『分かった。原田、最後の賭けをやる。ティーガーⅡの背後に回れるか?』

 

 『隊長、足回りが壊れますよ?』

 

 『フラッグ車を撃破出来れば構わん。伊藤、お前の腕に全てを賭けるぞ』

 

 『『了解』』

 

 『では、行くぞ!』

 

 そして、みほのティーガーⅡの砲撃を皮切りに再び開始されたのだ。

 

 ティーガーⅠもティーガーⅡの背後に回ろうと加速するが、みほも取らせまいと噴水の周りを走り逃げる。

 

 『今です!』

 

 みほが叫ぶとティーガーⅡはナポリターンをした直後に主砲を放ち、まほさんがキュポーラ内に待避したのを確認してティーガーⅠに突進したのだ。

 

 『正面を向いたか!伊藤、防楯下を狙え!』

 

 『掛かりました。麻子、華さん、今です!』

 

 『はい』

 

 『任せろ』

 

 まさか、みほが狙ったのは・・・・・

 

 『はっ!?まずい!伊藤、撃て!』

 

 『隊長、スコープにはティーガーⅡは・・・・』

 

 ティーガーⅠも主砲を放つが当たる事は無かった・・・・・

 

 何故なら、ナポリターンして加速した直後にドリフトしながら前進させた為に、ペリススコープから見える目の錯覚で正面に向いていると勘違いさせたのだ。そして、みほのティーガーⅡは連射してティーガーⅠの右側の履帯を転輪ごと吹き飛ばし、二射目で側面に無理矢理向けさせて三射目で側面装甲に叩き込んで仕留めたのだ。

 

 キュポーラから身を乗り出して唖然とするまほさん。

 

 『何故、ティーガーⅡが正面に居ない?』

 

 『お姉ちゃん、島田流の中伝の陽炎だよ』

 

 『そうか・・・・私は負けたのだな・・・』

 

 まほさんは瞳を閉じて負けを悟ったのだった。

 

 そして・・・・

 

 『黒森峰女学院、フラッグ車走行不能!よって、大洗女子学園の勝利です!』

 

 私達は黒森峰に勝利したのだ。

 

 

 

 しかし、このまま終わる事は無かった。

 

 試合も終わり、トラックの荷台に乗り込んで帰ろうとする黒森峰の生徒達にアンチョビが待ったを掛けたのだ。

 

 「お前達、ちょっと待ったぁぁ!」

 

 振り返ったのはまほさんだった。

 

 「なんだ、アンチョビ居たのか?」

 

 「まほ、私は試合に出てたぞ!」

 

 「そうだったか?」

 

 「ティーガーⅡに乗って居ただろう!」

 

 確かに、アンチョビはキュポーラからは身を乗り出して居ない。出ていても分からないのは当然だと私は思う。

 

 「隊長、エンジントラブルでリタイヤしたティーガーⅡですよ」

 

 「確かに居たな・・・・」

 

 「やっと、思い出してくれたか!私が居るのに帰れると思うか?まほ!」

 

 「いや、帰る。帰って、反省会だ」

 

 「まほ、高校最後の青春ぐらいは謳歌してもバチは当たらないぞ!それに、みほ達と少しは会話しろ。見ててこそばゆいぞ」

 

 「そうか?」

 

 「だから、ドゥーチェアンチョビが席を用意してやろじゃないか!」

 

 私にはただ、宴会をしたいとしか思えなかった。

 

 だけど、私達は過去との清算をするタイミングなのだろう。

 

 アンチョビはまほに有無さえ言わせずに命令したのだ。

 

 「さぁ、宴会だぁ!諸君、湯を沸かせ!パスタを茹でろ!」

 

 「「「おぉぉぉ!」」」

 

 アンチョビの号令の元、アンツィオ高校の面々が移動型の厨房を運び込みパスタやイタリアン料理を始めたのだ。だが、それだけでは無かった。

 

 「我々、傭兵部隊も後に続くぞ!湯を沸かせ!ソーセージを茹でろ!ジャガ芋を蒸せ!そして、キンキンには冷えたノンアルコールビールを出せ!」

 

 「「「おぉぉぉ!」」」

 

 そして、飛び火は黒森峰と大洗女子に来ているアンツィオ高校の元黒森峰の生徒に移り、大量のドイツ料理を作りはじめたのだった。

 

 帰るタイミングを失い、唖然とする黒森峰の生徒とまたかと諦める大洗女子の生徒は苦笑するしか無かったのだ。

 

 

 

 結局、黒森峰との交流会と私達の過去へ清算は時間が許される限り続き、元黒森峰の生徒にまほさんは一人ひとりに謝ってまわり戻らないかと聞くが今の学園に馴染んだからと断るられたが逆にまほさんへ責める者も去年の決勝についてみほを責める者は居なかった。

 

 そして、今まで遊びを知らなかった黒森峰の生徒も元黒森峰と交流することで和気藹々とした空気に私達は過去へ清算をすましたのだった。

 

 

 帰り道、私はあんこうチームとワニさんチーム、レオポンチーム、マングースチームを晴空に乗せて学園艦に一足先に戻っていたのだ。

 

 「いっ、逸見!学園艦ではなく大洗に行けないか!」

 

 操縦室に慌てて入って来たのは麻子だった。

 

 「どうしたのよ?」

 

 麻子は何故か顔が真っ青だった。

 

 「おばあが倒れた!」

 

 身内が倒れたらしい。

 

 「分かったわ。麻子はとばすから席に戻りなさい!」

 

 「ありがとう」

 

 麻子が席に戻ると沙織さんに通信を入れて貰ったのだ。

 

 「沙織、悪いけど大洗埠頭の管理局に晴空が行く旨を緊急信で伝えて!」

 

 「うん、任せて!」

 

 『機長の逸見から皆へ、学園艦への飛行を取りやめて大洗埠頭に向かいます』

 

 操縦桿を引き、大洗へと矛先を向けた途端に

 

 ガッタン

 

 「いったぁぁぁ」

 

 備付けのロッカーから簀巻き状態の幼なじみが出て来たのだ。

 

 「えッ?何でレイラさんが居るの?」

 

 目の前に落ちてきたみほは首を傾げてレイラに聞いている。

 

 「えッ?ここ何処?何で、みほちゃんが目の前に居るの?」

 

 「レイラさん、ここはエリカさんの飛行艇の中だよ?」

 

 「えッ!じゃあ、私は小梅ちゃんにお持ち帰りされたの?」

 

 そう、ロッカーから出て来たのは黒森峰に帰っているはずのレイラだった。

 

 副操縦席に座る小梅はルンルン顔だった。

 

 「小梅、まさかレイラをお持ち帰りしたの?」

 

 「うん、したよ。ちゃんと、外泊届を出して来たから大丈夫だよ」

 

 「小梅ちゃん!私を降ろして!帰って反省会なんだよ!」

 

 「レイラちゃん、大丈夫だよ。ついでだからまほさんには短期転校届も渡して置いたよ」

 

 「小梅ちゃん!小梅ちゃんが大丈夫でも私は大丈夫じゃないよ!」

 

 みほはまほさんに電話をしていたが

 

 「どうやら、お姉ちゃんの仕業みたいだよ。大洗に行って勉強してこいだって・・・・」

 

 「マジ?」

 

 「うん、本当みたいだね」

 

 「レイラ、諦めなさい。ここから降りても構わないけど、今の高度は5000mあるわよ?」

 

 「エリカちゃん、分かったよ。でも、決勝が終わるまでだからね!」

 

 「えぇ、分かったわ」

 

 大洗へと私達は向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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