戦闘開始から15分が経ち、両者の体力はどちらも5割削られ、必殺技ゲージはどちらもMAXに達していた。
そして彼女が下がり刀を鞘に戻し必殺技の名前をコールする。
「レンジレス・シージオン!」
そして放たれた刀から高威力の斬撃が繰り出される。
だが、必殺技を放った後の大きな隙を見せたとこを俺は見逃さなかった。
俺は此処でクラリネット・クロック最大のポテンシャルでもある時間停止アビリティを発動させた。
必殺技ゲージがMAXだから、大体10秒間連続して止められる。
ギャラリーを含め全てが静止した世界の中、俺は必殺技の斬撃をヒョイっと避けるとそのままコバルト・ブレードの所まで走り、跳躍した。
そして、彼女に向け飛び回し蹴りをし、当たる寸前でアビリティを解除、俺の蹴りは彼女の首にクリティカルヒットし、彼女は体力ゲージの残り5割中3割が吹き飛び、彼女自身も左へ吹き飛んで、壁に激突する。
そこでまた体力ゲージが削られ、もう普通のパンチでなくなるくらい体力になっていた。
そして最後のパンチを繰りだした瞬間、目にも止まらぬ速さで女武者が動き、俺の右腕が切断され、体力が残り2割を残して吹き飛んだ。
そして刀の先は俺の首筋に向けられ、必殺技ゲージは空っぽの状態だった。
「降参、負けたよ」
俺が両手を挙げて負けを認めると、彼女は刀を下ろし、顔を俺の耳に近づけた。
「貴様、加速世界に復帰するのか?」
と尋ねてきたので、俺は戸惑いつつも「あぁ」と応える。
「お前はこの5年の出来事を全く知らぬであろう?」
俺はそれにも「あぁ」と応えると、彼女は驚きの提案をしてきた。
「では新宿駅近くの喫茶店に来い」
「ちょ...それって...」
俺の発言を遮って彼女は俺の腹に刀を刺し、対戦は終了し、俺は現実世界に戻った。
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対戦が終わり、新宿駅近くにの喫茶店にやって来た。
だが、俺は此処で5分程入るかどうか迷っていた。
何故なら、ブレイン・バーストを含む全てのゲームで、リアル割れは最大の禁忌とされている。
通常ゲームは、女アバターにホイホイついて行ったら不良でカツアゲされたりだが、ブレイン・バーストの場合は、自身のトラウマ等で自動的に生成されたアバターなので、その様なことはないが、人気の無い所に連れ込まれ『リアルアタック』をされる確率がある。
《リアルアタック》...いわゆるPKは、直結対戦で、ギャラリーも無くグローバル接続を切ることも、プラグを外すことを出来ない。
それはそれを実行する前に、対戦が始まるからだ。
それで全損した人も少なくは無い。
だが、誘われたら以上、行かなければ彼女はずっとこの喫茶店で待ち続ける事になる。
それに、彼女の性格的にそんな事は無いだろうし、俺に姿を見せるということは、彼女にも同じ危険があるので、これは信用してもいいのだろうか?
決意を固め喫茶店のドアを開けるとカランコロンっと懐かしい音が響いているのを聴きつつ、俺は彼女のいる席を探した。
店内に入り、周りをキョロキョロと見回して見ると、私服姿のツインテールの美少女が1人で座っている姿が目についた。
これは安直過ぎないでしょうか。
確かにコバルト・ブレード
ホントにこれ?ねぇこれどう見分けるの?
とどうするか悩んでいると、彼女はクラリネットのストラップを机に置いていた。
多分あれだ。とりあえず俺に場所を知らせる為のあれか。
俺は彼女の反対側の席に何気ない顔で座ると彼女は一瞬驚いた顔をみせ、直ぐに冷静を取り戻す。
そして彼女は直ぐに長めな直結用ケーブルを取り出し、自分のニューロリンカーに刺すと、片方のケーブルを俺に手渡した。
恐らくじゃなくとも、これは刺せという事なのだろうが、異性の直結って普通交際相手とかとやる奴なんすが。
ほら!周りの女性達がコチラをみてざわざわしてる!
まぁ堪忍して刺す訳だけど...
カチッと音がし、視界内に警告が出た後、彼女は思考発声で俺に話しかけてきた。
『貴方がクラリネット クロックですね?』
彼女の問いにこくりと頷くと、彼女は自己紹介を始めた。
『私の名前は高野内 琴、中3 、知っての通りコバルト・ブレードです。』
彼女は言い終えると、にこっと微笑む。
彼女の印象としては、なんかもっとお固い人なのかと思ったが、以外にも彼女のリアルは清楚という言葉の似合う大人しそうな女性だった。
それと装甲凄いっすね。
思考発声しないよう気をつけつつ考えたその思考を振り払い、俺も自己紹介を始めた。
『俺は倉部 涼太、同じく中3。それと、リアルまで晒したんだからちゃんと答えて貰いますよ、この5年間に起こった出来事を』
『はい、では何処から話しましょうか』
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それから彼女から聞いた出来事はあまりに衝撃的だった。
レベル9、《王》の誕生。
サドンデスルール。
赤の王レッド・ライダーの退場に《ネガ・ネビュラス》の解散、及び黒の王ブラック・ロータスの失踪。
そして、《新生ネガ・ネビュラス》の誕生に、黒の王の子の飛行アビリティ持ちのシルバー・クロウに擬似ヒーラーのライム・ベル。
6代目災禍の鎧事件に、突如現れたメタトロン。
計4時間に及ぶ説明が終わる頃には、もう4時半になっていた。
『なぁ、最後に聞かせて欲しいんだが』
『何ですか?』
この3年間の出来事は良くわかったが、それなら何故わざわざリアルを割ったのかが疑問に残った俺は彼女に聞いてみた。ちなみに、話の途中で加速世界と同じ感じで喋って欲しいそうだ。
『なんでわざわざこんな事したんだ?上でも良かっただろ』
『えぇと...』
?何故か分からないが慌ててる。
『それは...あっあれです!』
『あれ?』
俺が更に首を傾げると、彼女は慌てながらに説明する。
『貴方をレギオンに誘おうと思ったんです!』
いや、それも上とかでいくない?
口には出さないがそんな事を思いっていると、俺はその数秒後遅れて衝撃を受けた。
『えっ!?俺が!?レオ二に!?』
彼女はコホン、と言いつつやっと落ち着き、俺に説明を始めた。
『貴方は能力も腕っぷしも良いですし、他のレギオンに取られる前に誘おうと、どうですか?』
『うーん、確かに俺は無所属だし、昔はレギオンに入ってたから断ってたけど、今別に断る理由は無いし...』
すると彼女は、少し表情を明るくして
『本当ですか!?』
『うん、本当』
そうして俺はレオニーズに所属する事になった。
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そして、5時が過ぎ、そろそろお開きなった所で、俺はふと彼女に尋ねた。
「そう言えば、どこ中?」
これは流石に答えたくれないかなーと思っていると、
「中野です。〇〇中」
へぇ、〇〇中かぁ、知ってる知ってる、俺も通ってるもん。
...................................................ん?俺も?
「同じ中学!?」
こうして、俺のブレイン・バーストは再開したのだ。