あれはまだ新魔導王が誕生して間もない日の事。
かの土地のドンにナザリックNPCの2人が殺されたあの日。
パンドラズアクターは追手から逃げのびナザリックへと帰還する。
新たにナザリックの傘下に加わった1人のプレイヤーが新魔導王パンドラズアクターを裏切り、かの土地のドンに情報を流したことによって窮地に追い込まれた。
それを知った魔導王パンドラズアクターは殺すことはせず話し出す。
『面倒見てきたでしょう?』
それを聞いた裏切り者のプレイヤーは
『面倒だと?お前はまだこの世界では新参者だ。傘下に降ったとは言え、俺の事を一度でも考えたことがあるのか?指図ばかりしやがって。それはあいつにやらせとけ、城にはあいつを迎えにやれ。俺はお前よりも先にこの世界に来たんだ!俺にだって出来る。俺は馬鹿じゃない尊敬されたいんだよ!』
そもそもプレイヤーの中でもレベルもカンストでは無く出来損ないと言われていたこのプレイヤー。
このプレイヤーが所属する傘下ギルドのギルド長と父アインズは仲が良かった。
だからこの裏切り者のプレイヤーもパンドラズアクターは等しく接して来たつもりだった。
しかし、この裏切り者のプレイヤーはナザリックの重要な仕事から外され疎外感を抱いていた。
その心情を、パンドラズアクターにぶつける。
それを聞いたパンドラズアクターは非情に言い放つ
『もう終わりです。あなたはこれよりナザリックの、アインズウールゴウンの関係者でも友達でもない。あなたのギルド長に会いたければいつでも訪ねてくるといいでしょう。その時は席を外すようにします。』
メッセージ
『父上。パンドラズアクターです。相談が御座います。すぐに向かってよろしいでしょうか?』
『うむ。』
『ありがとうございます。では、即座に。』
『父上、このパンドラ、御身の前に。』
『うむ。相談とは?』
『はい。父上と仲がよろしかったあのギルド長が束ねるギルドのプレイヤーが裏切りました。』
『ふむ。して、息子よ。お前はどうする?』
『あのプレイヤーは父上が仲がよろしかったあのギルド長の仲間ですが、、、』
『よい。話してくれ。』
『はっ。すぐにでも抹殺すべきかと』
『ふむ。まぁ待つのだパンドラズアクターよ。仮にもそのプレイヤーはギルド長の仲間だ。
既に裏切っているのであれば身の危険を感じ隠れているだろう。
せめてもの情けにギルド長が生きているうちは生かしといてやれ。
あいつが悲しむ顔は見たく無いのでな。
ギルド長が死ぬまではヤツの身は安全だ。
裏切った事もギルド長には内密にしとくように。』
『おおっっ!おおっっっっ!なんと!父上の慈悲深さはいつになっても御健在で!』
『うっ、うむ。』
アインズとの密談が終わるとパンドラはすぐにメッセージを送る。
『デミウルゴス殿、あの裏切り者のプレイヤーにはまだ手を出さないで下さい。今あれが死んだらあれのギルド長が悲しむので。ギルド長が死んだらあの裏切り者を消して下さい。それからこの話はギルド長には極秘に。』
『御心のままに』
それから数年後、パンドラズアクターは年老いたかの土地のドンを訪ね、この地で活動する事の承認を求める。
かの土地のドンからギルド名を尋ねられたパンドラズアクターは、耳元で自らの素性を小声で明かし、驚くかの土地のドンに子分を呼ぶ隙を与えず『お返しだ!』と、ナイフを突き刺し腹を切り裂いて見事復讐を果たす。
それからまた数年後。
あの裏切り者のギルドの長が亡くなった。
彼の葬儀にアインズをはじめ、ナザリック勢と五大ファミリー、傘下ギルドの主だった面子が出席した。
あの裏切り者のプレイヤーも出席したがタイミングを見計らってパンドラはその場を離れていた。
パンドラに面会を求めるも側近のデミウルゴスは拒絶する。
パンドラは未だにこのプレイヤーを許しておらず、彼と顔を合わせるのも嫌がっていたのだ。
それもそのはず。せめてもの情けにヤツのギルド長が生きている間は生かしてやっていただけに過ぎない。
葬儀が終わってアインズはパンドラに顎をしゃくる。
その瞬間、あの裏切り者の命は終わる事となった。
そう抹殺の合図である。
かの土地のドンや反乱分子を始末して勝利したものの、パンドラが一人きり玉座に座っている。
その顔は卵のような何の変化も無い顔だか、孤独と虚無が滲み、まるで魂を失ったかのように虚ろだった。
なお、カルネオーレ村は今日も平和だった。