魔導国の噂を耳にし、彼の国から亜人の群れが逃げるように魔導国の元へ慈悲を求め動き出したのはいつからだろう。
ふとミノタウルスは過去を思い返し苦虫を噛んだような顔をする。第三者から見れば表情はあまり変わってないんだが。
あのヤルダバオトのせいで・・・
やっとの思いでかの有名な三重城壁の最外壁が見えてきた。
そしてそこにたたずむ立派な門。
ただし、ミノタウルスの目を奪ったのはどちらでもない。目を奪われたのは門の左右に立つ、超巨大像だった。
それはおぞましいほど、ヤバそうな杖を持つアンデットの姿だ。
魔導国の王はアンデットだとは聞いていたが・・・
ミノタウルスがスケルトンが何故?と口に出した瞬間、街の衛兵とおぼしき人間の兵士が震えながら近付いて来た。
きさま!今何と!? くっっ!
もう1人の衛兵がその先を止めに入ったが、こちらからも同じような殺気がくつくつと煮え繰り上がってるのが見て取れた。
ミノタウルスは最初の1人を見て笑った。
人間のくせに俺を見ても怖がらないのか?魔導国に命を乞えば亜人も、どんな種族も繁栄が約束されると聞いて、最後の頼みとばかりに頼ったのが間違えだったか。人間が門番という時点でなめくさってやがる。
さぁ、来なさい。
ふと1人の衛兵が何かを呼んだ気がした。
馬鹿な!あれは!
ミノタウルスが叫んだ。
それはまごうことなき異形であった。その体格は大きすぎそのシルエットは邪悪過ぎた。
そんな者たちが計2体。
敵意は皆無。
警戒し戦闘態勢をとるミノタウルスをあざ笑うかのようだった。
ミノタウルスは真っ青な顔で膝をつく。真っ青かは第三者には分からないが。
1人の衛兵が先程とは嘘のような気配で現れた。
ようこそ、魔導国都市エ・ランテルに。ミノタウルス殿はこちらにいらしたのは初めてのようですね。
それでは今から講習を行います。と、その前に。
衛兵は近付くなり小声で話し出した。
この偉大なる魔導国の絶対君主、魔導王陛下の事をスケルトンだの間違っても口にしてはいけません。陛下は気にするなとおっしゃいますが、(たしか昔、リザードマンの1人が言葉遣いがなってなく、コキュートス様が言葉遣いに気をつけるよう言おうとした時も陛下は怒らなかったと伝え聞いたが、最後まで話を聞いたらなんと部下思いか。一語一句私は忘れません。そう、「しかし、ゼンベルよ。これだけは忘れるな?お前の言葉遣いを恥じ、コキュートスが私に対して罪悪感を抱いていることを」その後のコキュートス様の椅子事件はと言うと、、それが在るべき姿なのだ。)・・・他の方が聞いたらあなたの命など一瞬です。あなたの命だけで済めばよろしいですが種族ごとこの世になかったものとされます。いいですか?私も含め、陛下はこの魔導国に生きる全ての者の救世主様なのです。慈愛に溢れた陛下のもと我々は日々幸せに暮らせているのです。その陛下の事を侮られては例え相手が誰であろうと許しはしません。
話はそれましたが一番大事な事ですのでお忘れなく。
ミノタウルスは自分が置かれている立場を思い出した。
今までの傲慢さのツケが回って来たかと再度認識させられた。
講習を聞き終えてミノタウルスは有難いという気持ちと魔導国の素晴らしさを認識した。
この講習がなかったら、この国に来たものは皆死んでしまうであろう。
この街を闊歩するアンデット達は伝説以上のまさにお伽話に出てくるようなアンデット達だ。身の危険を感じて間違って武器を抜いたらそれで終わりだ。瞬殺されて終わりだ。
あれほどのアンデットを支配している魔導王とはいったい・・・
話では配下の方々も超常の力の持ち主ばかりらしい。魔導王陛下が守られているこの都市こそが世界で一番安全な場所だと皆が言う。
ふと凄まじく豪華な馬車が、馬が引いてるから馬車だよな?っっ!なんだあの馬のアンデットは!あれはヤバイ。とてつもなくヤバイ。あの一体でこの世の半分は支配出来るであろう最強最悪のアンデットだ!
しかもそれを馬車に?何と言う事だ。何と言うことか!
ミノタウルスは既に立っていられなくなりその場に崩れ落ちた。
馬車からカツン、カツンと近付いてくる音で我にかえり目を開けると、そこに白いかんばせが。
(おっ、このミノタウルス始めて見た!デミウルゴスが言っていた珍しいミノタウルスとはこいつだな。なかなかレアだな。コレクター魂がくすぶるぞ。)
あなた様が!あのた様が!
(うおっ、びっくりした!)
まだ耳は遠くなってないんだが・・・
(そうだった、俺の冗談はこの世界でもあまり好評ではなかったこと忘れてた)
無礼者!
良い。
アインズがアゴをしゃくるとデクリメントが威圧的な声で発する。
「ミノタウルス、拝謁を許す」
アインズと2人の時とはまるで違った態度だ。
冷徹で出来る女と言う雰囲気だ。
通常、宮殿などでメイドがそんなことを言えば不快に思う者は多いだろう。そもそも王の横に立つのがメイドだという事実に伏せた拝見者の顔には笑いが浮かんでいるかもしれない。はたまたメイドにそのような役目を担わせる魔導国の人材不足を憐れむかもしれない。しかしながら、この国に入国する者は講習を受けているお陰でNPC達の地位がどんな高レベルのシモベよりも高いと知っている。よってデクリメントの態度に何も思うところはないはずだ。
アインズはデクリメントを通してミノタウルスに立ち上がるように告げる。
(面倒だよな。こんなことせずに普通に話せばいいじゃないか、とは思うんだが、郷に入っては郷に従えとはまさにこのことだな。)
命令に従ってすっとミノタウルスが身を起こした。
正直ミノタウルスの違いは今まで分からなかったがこいつだけは違うと確信出来る。ツノとヒヅメが金色に輝いていた。
アインズはデクリメントに名前を聞くように命じる。
「アインズ様が名前を名乗る事をお許しくださいました。」
はっ!ありがとうございます!ミノタウルス族長、ミノモンタナと申します!ミノタウルス族の長は口だけの賢者の時代から代々この名を受け継いで居ります。
(ふむ。たしか以前デミウルゴスの報告書にそう書いてあったな。多分だが)
アインズは鷹揚に頷き話を進める。
アインズはデクリメントに訪問理由を聞くように命じる。
(この流れ、めんどくさ!)
するとミノモンタナは額を地につけて魔導国にて慈悲を乞いたいと懇願した。
顔を上げよ。我が魔導国のもと、そなたらを国民として受け入れよう!
単発ばかりですがこれからもよろしくお願いします。