Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。
アニメ2話後半の話になります。
毎度のごとく、アニメのネタバレを含むことにご注意ください。


作詞作曲と布屋さん

俺が盛大にリバースし、梨子ちゃんが無事に『海の音』を聞けた翌日。

梨子ちゃんは作曲係を正式に受けてくれたらしい。

とはいえ、スクールアイドルをやるというわけではないようだ。

そんな報告を、千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃんで持ってきてくれた。

 

「作曲、受けてくれたんだね」

「ええ。今ならピアノ、少しは弾けそうだから」

「そうかい。それはよかった」

「でもね、まだ問題があるの」

「問題?メンバーかい?」

「それも問題だけどね…それ以上に」

「私、作曲するときはあらかじめある詞をもとにするの…だから」

「なるほど。歌詞…かい」

 

歌の次は詞。

そりゃそうだ。

 

「まあそこは、3人で協力してやるしかないんじゃないかい?」

「ええまあ。それで、3人で集まれる場所に行こうってなったんだけど」

「それならここがいいでしょ?もしくは私のうち」

「その心は?」

「ご飯出てくるし、最悪バス逃しても送ってくれるし!」

「お帰りはあちらだよ」

「ひどい!」

 

うちで作詞をするのは構わない。

頼りにされるというのは悪くないのだし。

でも千歌ちゃんのは、頼りにするというよりは当てにされている気がする。

 

「ハルくん…私からも、ダメ?」

「えと…ごめんなさい、私からも」

 

梨子ちゃんは言わずもがなだが、曜ちゃんもわりと常識人だ。

長年千歌ちゃんに付き合っているだけある。

だからこそ、常識人2人のお願いというのは断りづらい。

 

「はあ…。やるなら奥の和室でね。あと、あまり騒ぎすぎないように」

「「やったー!」」

 

そのまま2人は奥へ行ってしまった。

しまった。

何時までやるのかくらいは聞くべきだったな。

 

「ふふ。なんだかんだ言って、優しいのね」

「俺はもともと優しいんだよ。あ、何時までいるかは決めてるかい?」

「いえ、特には。できるまではいると思うわ」

「…ちなみに、作詞って普通はどれくらい時間がかかるんだい?」

「人によってだいぶ違うけど…3時間くらいは見積もった方がいいと思う」

「はあ…わかった。頑張ってくれ」

 

晩ご飯、今日は4人分作るかな。

材料あったっけか。

 

 

 

 

ハルさんに許可をもらったので、3人で詞を考える。

チカちゃんはどうやら、恋をテーマにした詞を作りたいらしい。

しかし、大分難航していた。

 

「やっぱり、恋の歌は難しいんじゃない?」

「いや!μ'sのスノハレみたいな曲作りたいもん!」

「そうは言っても…チカちゃん、恋愛経験は?」

「うえっ!?いや…あるにはあるけど…」

 

ああそうだった。

 

「ハルさんでしょ?」

「えええ!ち、ちがっ、いや、ちがくないけど!」

「見てれば誰だってわかるわよ。…例外を除いて」

「あー…ハルくん鈍感だもんねー。…私のアピールも、全く気づいてくれないし」

「曜ちゃんも好きなの?」

「え?あー…あはは」

 

曜ちゃんもだったとは初耳だった。

とはいえ、思い返せば確かにその通りと思えることは多々あった気がする。

 

「梨子ちゃんは!?」

「そうだねー。1人だけ内緒はずるいよねー」

「え?私?」

 

私は…

これまでずっとピアノ一筋でやってきたから。

恋愛なんて一度も…。

 

『制服、ここのじゃないようだけど…どこの高校だったかな』

 

『君みたいな美少女を放っておけないよ』

 

『変われるさ、梨子ちゃんなら』

 

「…ハル、さん」

 

つい、口をついた言葉だった。

何も考えずに、言ってしまった。

しまった、と思ったけど。

こういうとき、恋する乙女は鋭いもので。

 

「「ハルくん!?」」

「な、なな、なんですと…!」

「ま、まさかの、ライバル出現…!」

「い、いや、違うの!そういう意味じゃなくて!ほら私、ずっとピアノ一筋だったから、そもそもまともな交流ある男の人ってハルさんくらいだなーって!」

「「私たちと同じじゃん!」」

「だからそうじゃなくてー!」

 

「おーい、ちょっとやかましいよ。もう少しボリュームを下げてだね」

 

「「「うわああああー!!!」」」

 

「…たった今ボリュームを下げろと言っただろう…」

 

そう、多分違うはず。

まだあって日も浅いのに。

恋なんて、してるはずないよ。

 

 

その後、ハルさんが作ってくれたカレーライスをいただき、私たちは作詞の続きに取り掛かっていた。

テーマが恋と知ったハルさんは、とても驚いていた。

 

『千歌ちゃんたちが恋…そうか、千歌ちゃんたちには縁がないものだと思っていたけど、誰か好きな人でもいるのかい?』

『ああ…うん、一応ね』

『私も…一応』

『そうかそうか。今度、どういう男か教えて欲しいね』

『『鈍感でセクハラ発言する最低野郎』』

『…とんでもないのを好きになったね、君たち』

 

そんな会話をしていた。

さすがに、チカちゃんと曜ちゃんがかわいそうだった。

 

『で、でもそれじゃあその男をテーマに詞を書くのは難しそうだね。うーん…そうだな、千歌ちゃん』

『…ん?なに?』

『なんでそんな冷たい目線をしているのかはこの際後回しにしよう。スクールアイドルに対して、ドキドキする気持ちとかはないかい?』

『スクールアイドルに対して?』

『そう。それで詞は書けないかい?』

 

それを聞いて、チカちゃんはハッとした表情をしていた。

 

『書ける!書けるよ!』

 

そして、今に至るのだ。

チカちゃんは人が変わったように、すごい勢いで詞を書いている。

海で語ってくれた、チカちゃんが思うスクールアイドル。

本当に、心の底からスクールアイドルが好きんだろう。

その気持ちを、溢れんばかりに紙に書き連ねている。

 

「千歌ちゃん、すごい勢いだね」

「ええ。これなら大丈夫そう」

 

曜ちゃんとも、そんな会話をする。

ふとコップを見たら、3人とも飲み物が空になっていることに気づく。

 

「私、お茶取ってくるね」

「あ、手伝おっか?」

「んん。大丈夫。チカちゃん、手伝ってあげて」

 

ハルさんから教えてもらったように、冷蔵庫からお茶を取り出す。

一応お客さんにも出せるようにと、良い葉を使っているらしい。

 

「おや、休憩かな?」

 

お茶をコップに注いでいると、ハルさんがやってきた。

手には、空のコップが握られている。

 

「まだお茶はあるかい?」

「ええ、まだ足りると思うわ」

 

お茶を汲みながら、少しだけハルさんと話をする。

 

「作詞、順調かい?」

「ええ。チカちゃん、すごいわ。スクールアイドル、本当に大好きなのね」

「ああ。そうだね。梨子ちゃん、パソコンかスマホは持っているかい?」

「え?そりゃ、持ってるけど」

「そうかい。じゃあこれ、よかったら家ででも聞いてみると良い」

 

そういってハルさんが渡してくれたのは、一枚のメモ。

書かれているのは、歌詞?

メモ帳の一番上には、『ユメノトビラ』と書かれていた。

 

「これは?」

「千歌ちゃんが、俺に最初に持ってきてくれたμ'sの歌だよ。そうやって、わざわざ歌詞を書いてくれたんだ」

「歌詞を?どうして?」

「さあね。それは俺にも全くわからないけど。あの子なりに、スクールアイドルの魅力を伝えようとしたのかもしれない」

 

そういって微笑むハルさんの表情は、とても優しかった。

『ユメノトビラ』

夢の、扉。

 

「基本的には、俺はこういうことはあまり言わないんだけどね。それでも、ここは言わせてもらうよ」

 

表情を引き締め、ハルさんは言った。

 

「スクールアイドル、やってみないかい?今の君には、きっとプラスになるはずだよ」

 

 

 

 

「ハルくんハルくーん!!」

 

『バッタアーン!』

ものすごい音とともに入ってきた千歌ちゃん。

お客の来店を知らせるベルが、もうこれでもかってくらい暴れる。

扉が壊れたらどうするんだい。

 

「どうしたんだい、騒々しいね?」

「梨子ちゃんが!梨子ちゃんがー!」

「うん、梨子ちゃんが?」

「スクールアイドル、やってくれるって!」

 

お!

ほうほう。

 

「そうかいそうかい。それはよかったじゃないか」

「うん!」

 

俺が言った時には、保留にしていた梨子ちゃん。

きっと、昨日の夜何かあったんだろう。

 

多分、心を動かしたのは…

 

「千歌ちゃん、膝にあざができてるじゃないか。一体何をしたんだい」

「え?うわー!」

「鉄棒の上に正座でもしてたのかい?」

「違うよ!手すりの上に乗ってただけ!」

「いや、ほんとに何してるのさ」

 

心を動かしたのは。

 

きっと。

 

スクールアイドルだ。

 

 




ご視聴ありがとうございます。
梨子ちゃんが正式に、Aqoursのメンバーになりました。
何かありましたら、お願いします。
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