Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは
アニメ本編3話の後半になります。
未視聴の方は、まずそちらのご視聴をお勧めします。


ライブ当日と布屋さん

浦の星女学院スクールアイドル、Aqours。

まさか、この名をもう一度目にし、耳にするとは思わなかった。

ずっと歳下の子供だと思っていた千歌ちゃんたちが、まさかこうして、再びこの名を表に出してくれるとは、夢にも思わなんだ。

俺には、人を呼ぶことはできないし、ましてパフォーマンスに関わってやることはできないけど、大人にやれることを、全力でやるとしようじゃないか。

 

「おーい、ハルくん。注文したやつ、できてるかい?」

「こんにちは、鈴木さん。できてますよ。はい、一応確認してください」

「ありがとうね。お、こんなポスターここにあったかい?」

「ああ、これ。今度の土曜日に、そこでライブがあるんです。よければ、見に行ってやてください。」

「ライブ?ハルくんがやるのかい?」

「いやまさか。自分のよく知る子がやるんです。内容は保証しますよ」

「そうかいそうかい。ハルくんがそこまで言うなら、行ってみようかねえ」

「そこにチラシもあるんで、よければ持ってってください」

 

チラシを10枚ほど持ってってくれた。

これで、ちょっとでもお客さんが呼べればいいのだが。

 

 

 

 

いよいよ当日。

ダイヤちゃんに頼まれた発電機の整備は、きっちり終わらせてある。

大きな故障もなく、ほとんど掃除しただけで終わったが、ありがたい額の報酬をいただいた。

体育館のステージ、照明機材の整備も問題ない。

 

天気は、雨。

天気予報では雷の予報も出ていた。

 

「もうちっとだけ、頑張ってくれよ」

 

空に向かって、思わずつぶやいた。

 

 

 

今自分は、沼津駅のあたりにいる。

珍しく、沼津駅あたりの宿泊施設から注文が入ったのだ。

この辺りの宿泊施設は、まだまだ元気なところも多い。

できるかぎり仲良くしておこうと、配達もこちらが受け追うことにしたのだ。

 

ポスターに書いてある開場時刻まで、あと5分くらい。

開演はそのさらに30分後。

開場直後にお客さんがやってくるということもないだろう。

車で行けば、そこそこいい時間になるだろう。

店の看板は、すでに『本日休業』となっている

 

と、その時気付いた。

自分のスマホに、SNSのメッセージ受信ランプが点灯している。

なんとなく、嫌な予感がして。

普段はこんな時間には開かないSNSアプリを起動すると、そこには千歌ちゃんからのメッセージが記されていた。

受信時刻は、今から1時間ほど前。

そのメッセージは

 

『今日の開演、13時半だよ!絶対来てね!私がんばるから!』

 

…開演、13時半?

 

今の時刻は、13時25分。

 

開演、5分前。

 

ポスターには、14時開演とはっきり示されている。

 

時間が30分前倒しになった?

 

いや、そんな話は聞いてない。

 

…まさか

 

「開演時間と開場時間、間違えてる?」

 

いやいやいやいや。

いくらなんでも、2人もついてるんだ。

そんな間違い、するわけがない。

でも、もし2人も気づいてないんだとしたら。

いや、逆だ。

気づいたとしたら、千歌ちゃんから訂正のメッセージくらいあるはずだ。

 

慌てて、車を走らせる。

Bluetooth機能を使い、運転に支障がないように電話をかける。

その電話相手は

 

『はい、もしもし?』

「あ、ダイヤちゃんかい?今どこにいるかな?」

『今?…一応、学校ですわ。彼女たちが、問題を起こさないように…って、なんか慌てているようですけど、何かあったんですの?』

「千歌ちゃんたち、何してる?」

『何って、そりゃあ準備を…ちょっと早いですわね』

「ダイヤちゃん、ちょっと聞いてくれ。実は…」

 

ダイヤちゃんに、俺の考えを話す。

千歌ちゃんが、時間を勘違いしている可能性があること。

周りの2人も、それに気づいていない可能性があること。

できれば、それを2人に伝えて欲しいこと。

 

『なるほど…。事情はわかりましたわ』

「じゃあ…」

『ですが』

 

そこでダイヤちゃんは、俺の話を遮って進める。

 

『時間管理も、本来はアイドルの立派な仕事ですわ。それを誤ったなら、そのツケも自分で回収していただかないといけません』

「なっ、それはっ」

『ハルさん』

 

ダイヤちゃんが、声を出す。

そうして、続ける。

 

『彼女たちは、ここで何かしないと、スクールアイドルとしてやっていけなくなるのですか?あなたの信じた子たちは、お客がいないと心が折れるような子たちですの?』

「…それは…」

 

スクールアイドルのことを、それはそれは楽しそうに語っていた。

自分も、ああなりたいと話していた。

今日まで、全力で努力もしてきた。

そして

 

あの子は今

 

一人じゃない。

 

「…わかった。こっちも今から向かうよ。あの子達を、頼む」

『…ええ。急いでいらしてください。そうじゃないと』

 

『ハルさんが入る場所、無くなってしまいますわ』

 

そう言って、ダイヤちゃんが電話を切った。

最後のは、どういう意味なんだ?

 

そんな疑問の答えは、会場に着いてすぐわかった。

 

考えるまでも、心配するまでもなかった。

 

 

学校は

 

お客さんでいっぱいだった。

 

車を停める場所なんてなくて

 

仕方ないから店の方に車を置いて

 

体育館まで走った。

 

到着したのは

 

本来の開演1分前。

 

立つ場所が、本当になくて

 

やっと探しだしたその場所には、ダイヤちゃんが立っていた。

 

 

「時間、ギリギリですわ」

「はは…。そうだね。どうやら俺は、とんでもないバカ野郎だったみたいだよ」

「それは、いつも言ってるではありませんか。バカでセクハラ野郎で鈍感で、そして」

「そして?」

「いつまで経っても、過保護ですわ」

「そう、みたいだね」

 

ステージの上を、踊り

 

ステージの上で、歌う。

 

なんだ。

 

「みんな、輝いてるじゃないか」

「当たり前ですわ。みんな、いつまでも子供ではないのです。彼女達も、私たちも。いい加減、見方を考え直した方がいいのではなくて?」

「ははは。違いない」

 

いつまでも子供だったのは、俺の方だったらしい。

これは、彼女たちに対する態度を、改めないとな。

 

その後。

ダイヤちゃんが、終わった直後の千歌ちゃんたちに何か言っていた。

俺はその場を動けなかったから、何を言っているかは聞こえなかったけど。

あの子達の輝きは、まだ目に残っていた。

 

 

 

 

「で、今後は君たちを大人扱いするから、食事代をとることにしたよ」

「「ええええー!!」」

 

ライブの後、ボランティアで片付けをやっているときの会話である。

 

「なんでなんで!よくわかんないー!」

「横暴だー!ハルくんの横暴だー!」

「ええいやかましい。自分は子供じゃないって、日頃言ってたじゃないか。大人扱いなんだ、喜びなさいよ」

「ごはんくれないなら私子供でいいからー!」

「私もー!」

「子供か君たちは」

「「うん!」」

「いや、そうじゃなくてね」

 

どうやら何を言ってもダメなようだ。

と、梨子ちゃんが妙に大人しいことに気づく。

 

「あれ?梨子ちゃん、どうしたんだい?」

「あ、いえ。さすがに私はそこまでできないので」

 

苦笑い気味の梨子ちゃん。

この子は割と大人だな。

 

「…梨子ちゃん、何か食べたいものあるかい?」

「え?」

「がんばったからね。何か食べに行こうじゃないか。もちろん、俺が出すよ」

「で、でも」

「いいんだ。こういうときは甘えないと、もったいないよ」

 

梨子ちゃんの頭に手を乗せる。

 

「…あ///」

「おっと。すまない。昔の癖で」

 

千歌ちゃんたちには昔、よくやっていた。

そういえば最近はあまりしなくなっていたが、つい出てしまった。

まずいことをした。

そう思ったのだが。

 

「だ、大丈夫。その、嫌ではないから」

「嫌ならちゃんと言ってくれていいよ。ほんと、申し訳なかった」

「だ、大丈夫だから。びっくりしただけ。その、むしろもう少し…」

 

ん?

声が小さくて聞き取れなかったのだが。

そう言おうとしたら

 

「ずるいずるい!私もー!」

 

横から千歌ちゃんが割り込んできた。

 

「癖でやっちゃうなら、私でもいいでしょー」

「ハルくん、私でもいいよ!」

「いや、だからその癖を直そうとしてるんじゃないか」

「「直さなくていいの!」」

「君たちが俺のことを、セクハラ野郎というから直すことにしたというのに…」

 

その呟きは聞こえていないのか。

ものすごい形相で迫ってくる2人。

頭を撫でられる顔じゃないだろう。

 

まったく。

 

「大人になったって、思ったんだけどなあ」

 

 

浦の星女学院スクールアイドル、Aqours。

 

その初ライブは

 

大成功で、幕を閉じた。

 

 

 

 

 




ご視聴ありがとうございました。
ちょっとシリアスが多くなってしまいました。
ご意見等ありましたらお願いします。
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