ライブ後の後日談です。
今回はアニメにはほぼ無関係です。
大成功に終わったライブ翌日。
俺たちは、有名な遊園地に来ていた。
沼津から車で3時間ほど。
朝の6時に出発し、ついさっきようやく到着したのだった。
「おおおー!とうちゃーく!」
「ジェットコースター!見てるだけでワクワクするね!」
「2人とも、駐車場ではしゃぐと危ないわよ」
「というか、門すらくぐってないこの段階で、なぜああもテンションを上げられるのか」
「えっと…ごめんなさい。本当は仕事だったのに…」
「ん?いやいや、それは構わないよ。もともと、今日は店を開けるつもりはなかったしね」
※
「…遊園地に行きたい?」
『ええ、そうみたいなの。車でみんなを送ってくときにね、話してたの』
ライブが終わって、みんながそれぞれの家に着いてからしばらくして、千歌ちゃんのお姉さんである志満さんから連絡があった。
「自分はいいですけど、明日ですよね?」
『うん。ご褒美ってことで。お金はちゃんと個人で出させるから、送迎やってくれないかな?』
「あの子たち、体力持つんですか?」
『それは大丈夫。ハル君が誘えば、すぐ回復するだろうから』
「そんなもんですかね?」
『そんなもんだよ。あ、千歌ちゃんに変わるね。千歌ちゃーん、ハル君から電話だよー』
『バタバタバタバタ、ドタドタドタ、ガッチャーン』
『いったあーい!』
「…あの?大丈夫かい…?」
『あ、もしもしハルくん?』
「ああ、こんばんは」
『どうしたの〜?』
「あー、うん。眠そうだね」
『そりゃあ、さすがに疲れたよ〜』
案の定だ。
これで誘って大丈夫なのか?
「いや、今日、千歌ちゃんよく頑張ってたからさ」
『う〜ん…』
「明日、遊園地でもどうかなーって…」
『行く!!』
耳が、耳がキーンって、キーンってなった。
まさかこんな音量が来るとは…!
「明日だよ?大丈夫なのかい?」
『うん!全然平気だよ!』
「…そうかい。わかった。明日、早いけど頑張って起きてくれ」
『うん!』
「じゃあ時間だけど…」
※
そんなわけで、3人を連れて遊園地にやってきたのだった。
「お店って、そんな簡単に休めるものなの?」
「どうせお客さんはほとんどいないんだし、大丈夫じゃない?」
「それは大丈夫なのかしら?」
「大丈夫じゃないから。お店の状況も俺の心も」
千歌ちゃん、笑いながら言うんじゃないよ。
わりとデッドラインぎりぎりなんだから。
そんな会話をしつつ、ゲートのところに並ぶ。
すでにゲート前には、開園をまだかまだかと待っている人で溢れている。
「さすがに休日だと人多いねー」
「そうだね。だから、入園するまでは勝手な行動は控えるように」
「曜ちゃん梨子ちゃん、写真撮ろうよ、あっちで!」
「ヨーソロー!」
「あ、ちょっと待って!」
「話を聞けー!」
これは、なかなかに大変そうだ。
『楽しんでってくださいねー』
お姉さんにチケットを切ってもらい、ようやく入園できた。
さて、座りやすそうなベンチを…
「やっと入れたー。何から乗るー?」
「やっぱ景気付けにジェットコースターじゃない?」
「後だと並びそうだしね。私もそれでいいと思う」
「決まりだね。どれ乗ろうねー」
最初はジェットコースターか。
それなら。
「俺は外で見てるから、好きなものに乗ってきたらいいよ」
「ええー!ハルくん乗らないの?」
「なんでなんでー!?」
「もしかして、絶叫系苦手なの?」
「もしかしなくても苦手だよ。船もまったくダメだっただろう。あんな感じになるんだ」
思い出すだけで酔いそうだ。
飛行機や車はいいのだが、船と絶叫系は本当にダメだ。
「そうなんだ。それは大変ね」
「ハルくん、昔からそうだもんねー」
「そっかー…」
3人から明らかに元気がなくなる。
え。
いやいや。
なんで?
まさか俺と乗りたかったのか?
いやいや、死んじゃうって。
でも、明らかにテンションが下がっている3人。
ここで引き下がっていいのか。
頑張った3人を労うためにやってきたのに。
その3人を悲しませることを、俺がやっていいのか。
ここは…!
「ハルさん、大丈夫?」
「あー、うん…うぷっ」
「全然大丈夫じゃなさそうだね…」
「もー。無理するから」
「でも珍しいね。ハルくんが無茶するの」
「俺も、今日はいけると思ってたんだ」
「いや、最初は乗らないって言ってたじゃん。いけるとは思えなかったよ」
千歌ちゃんが苦笑いでそう言う。
結局、限界まで耐え続けた俺は、人が少ないうちに並ぼうという3人について行って、絶叫系を5つほど乗った。
結果、この惨状である。
「すまないね。ここで休憩してるから、みんなで楽しんできてくれ。大丈夫、一時間もすれば復活するから」
「うーん…あ、そうだ!2人とも、ちょっとこっちきて」
なんだか、3人で集まって話を始めた。
作戦会議だろうか。
耳には入ってくるが、理解するほど脳が働いていない。
彼女たちの言葉が、耳に入っては素通りしていく。
だめだ、ちょっと意識が…。
「じゃんけん?」
「うん。勝った人が、ここに残ってハルくんの面倒をみるの」
「勝った人?負けた人じゃなくて?」
「その方が、お得感あっていいでしょ?それに…ハルくんと、2人きりだよ。勝った人の方が、いいと思わない?」
「「!!」」
(千歌ちゃん、なんという提案を…。確かにここに残れば、ハルくんと2人きり)
(最近胸にあるこの思い。これがなんなのか確かめるためにも、ハルさんとは2人きりになりたかったのよね)
(そりゃ、帰ってからその気になれば2人きりにはなれるよ。でも、それはあくまで妹のような状態。今この状態なら、弱ったハルくんを介護できる。頼りにされる側になれるんだよ)
(((負けられない!)))
「じゃあ、いくよ」
「「「さーいしょーはぐー、じゃーんけーん…」」」
空が、見える。
さっきまで、絶叫系を乗り回して…
ああそうだ。
酔ってそのまま寝てしまったのか。
あの子達は、ちゃんと楽しめているだろうか。
そう思った時だった。
「あ、目、覚めた?」
「…曜ちゃん?」
「うん。おはよー、ハルくん」
「ああ、おはよう」
「体調はどう?」
「少しマシになってきたよ。…千歌ちゃんたちは?」
「千歌ちゃん達はアトラクション並んでるよ。さすがに3人とも行くわけにはいかないからね。1人はここに残ることにしたんだー」
「そうかい。それはありがたいけど、悪いことをしてしまったね。もう大丈夫だから、遊んでくるといい」
「今更どうするのさ。1人で、なんて嫌だし、並んでるところに割り込むわけにもいかないでしょ」
言われてみればそうだ。
相当頭は回ってないらしい。
「確かに、それもそうだね。いや、本当に申し訳ないよ」
「いいのいいの!それよりどう?曜さんの膝枕は?」
言われて気づいた。
自分は今、膝枕をされている。
場所も、ベンチではなくどこかの広場みたいだ。
移動した記憶すらないのだが。
「ああ、最高の気分だよ」
「…本当にそう思ってるの?」
「本当本当。感動で涙すら出そうだよ」
「はあ…。だったらもうちょっと喜んでくれてもいいのに」
「酔いのせいでテンションは上げられないんだ。すまんね」
「いいよ。体調、まだ良くなさそうだし」
そんなことを言いながら、髪を撫でられる。
どうにも恥ずかしい。
が、面倒をかけたのだ。
これくらいは我慢しよう。
「こうしてるとさ」
「ああ」
「…こ、恋人に、見えたりするのかな?///」
「んー…見えるんじゃないかい?曜ちゃんには悪いけどね」
「ハルくんは、嫌じゃないの?」
「そりゃあ構わないよ」
「え!なんで!?」
「見えたところで事実とは違うんだ。あまり気にしないよ」
「ああ…そういうこと…はあ」
なぜか少し落ち込む曜ちゃん。
おかしいな。
やはり恋人に見られるのは嫌ということなのか。
「どうせまた、間違ったこと考えてるんだろうなー」
「い、いふぁいいふぁい。ふぁにするんふぁい」
「なーんーでーもー」
ほっぺを摘まれてしまう。
さっきから何なんだい。
「ねえ、ハルくん」
「なんだい?」
「…好きな子、いる?」
「女子高生」
「即答…ねえ、私も、女子高生だよ」
「知ってるさ。だから君も好きだよ」
「嬉しいのにすごく複雑。…ハルくんのバカ」
なんでさ。
「…はあ」
もう何度目かもわからない曜ちゃんのため息。
せっかくの遊園地だというのに、随分ため息が多いものだ。
「あんまりため息をつくと、幸せが逃げてしまうよ」
「誰のせいだと」
「君は笑顔の方が可愛いんだ。笑った方が得だよ」
「…へ?」
「高校入ってから、君はますます可愛くなったんだ。もっと笑ってた方がいい」
「ちょ、ちょっと待って」
「笑ってる曜ちゃんは、本当に綺麗なんだから」
「〜〜〜〜〜〜っ///」
あ、真っ赤になった。
まあ、ため息よりはいいか。
なんて思った直後。
「ハルくん」
「ん?」
「今、こっち見ないで」
「ああ。じゃあ、目はつむって」
「潰しとくね」
「…はい?ぶべっ」
瞬間。
チョップが入った。
い、痛い!
め、目が開けられない!
「しばらくそのままにしてて」
「言われんでもそうなるわ!」
俺の目が再度利用可能になるまで、実に10分の時間を要した。
なんだったんだ、本当に。
ご視聴ありがとうございます。
曜ちゃんがあまり出てこれていなかったので、こんな展開になりました。
ご意見等ありましたら、お願いします。