お祭りの後半になります。
一通り食べたいものを食べた俺たちは、食べ物以外の屋台を楽しむ事にした。
「射的に輪投げに、金魚すくいにヨーヨー釣り…案外、食べ物以外にもたくさんあるのね」
「缶落としなんかもあるね?善子ちゃんは祭り、あまり行かないのかい?」
「し、知り合いに会ったら嫌でしょ…」
「ああ…」
切実な悩みだ。
「ちょっと、本気で同情するのやめてよ。余計哀れになるでしょ」
「いや、うん、すまない」
「だからそれをやめなさいってば!」
少しして、光る玩具のお店を見つけた。
光る腕輪や、剣の形を模しているのであろう玩具。
こういうものは、なぜかいい歳になっても惹きつけられるものがある。
使い道など微塵もないのだが。
「こ、これは!」
「どうしたんだい、善子ちゃん?」
「闇の紋章だわ…!」
「…そうだね」
善子ちゃんが手にしているのは、髑髏の描かれたワッペンだ。
気合の入った学ランとかの裏に刺繍されてそうなやつだ。
「…それ、ほしいのかい?」
「べ、別にそんなことないわ」
目が泳ぎまくってる。
隠す意味はないな。
「…おじさん、これ一つ。あ、袋はいいです」
「あ」
「ほれ。嘘をつくなら、もう少し上手につくことだよ」
「…ん。ありがと」
嬉しそうにしてくれる善子ちゃん。
まあ、このためなら安いもんだろう。
「さて、次に行こうか」
「「はーい」」
〜射的〜
「やったー!当てたずらー!え?倒さないともらえない?ガーン」
「射的あるあるだね」
というか、この手のやつは倒すことなど本当にできるのか?
ゲーム機など、微動だにもしないんだが。
「私も、当てたけど倒せなかったわ。あれ、絶対倒れないわよ」
同感だ。
「わ、私はまず当てることができるかどうか…」
「そんなに気張らなくていいよ。好きなものを狙うといい」
「は、はい。じゃああのぬいぐるみを…えいっ」
『ポス』
そんな音と共に、ルビィちゃんの狙いだったリスのぬいぐるみが倒れていく。
お、取れたじゃないか?
などと思った瞬間だった。
『ポコ…バタン』
「「「「あ」」」」
倒れたぬいぐるみがまさかの方向に転がり、横にあったゲーム機を倒した。
おお。
ああやって倒すのが正解だったのか。
「おおー!ルビィちゃん、すごいずら!」
「え、え?あれ?あれー?」
「あれ、ちゃんと倒したことになるのよね?」
「ダブル取りはありって書いてあるよ」
というか、こうしないと倒せないんじゃないか?
「お嬢ちゃん、やるじゃないか」
「あ、えっと、ありがとうございます」
店員さんは感心しているようだった。
逆にルビィちゃんは苦笑いだった。
ダイヤちゃんもルビィちゃんも、ゲームはやらないはずだが。
結局、善子ちゃんのうちに預けておくということになった。
「別にあげてもいいんだけど…」
「さすがにもらえるわけないでしょ」
善子ちゃんは複雑そうだ。
〜缶落とし〜
「やったー!缶倒したずら!え、今度は落とさないとだめ?ガーン」
「これは缶落としあるあるだね」
「こんなのもあるのね」
缶落としは、積まれている空き缶に向けてボールを投げつけてそれを崩すゲームだ。
ボールといっても、お手玉のようなものを投げるのだが。
積まれた空き缶は、倒すだけではダメで、机の上から落とさなくてはならない。
落とした空き缶の数に応じて、商品がもらえるのである。
「場所によっては、単に的当てと言ったりもするらしいね」
「ルビィ、これ苦手です…」
「そうなのかい?」
「狙ったところ、全然行かないから…」
ルビィちゃんの場合、そのパワー不足も影響がある。
缶を落とさなくてはならないので、投げる際にある程度力を入れる必要があるのだ。
「ふふふ…ここは私に任せなさい」
「善子ちゃん、得意なのかい?」
「やるのは初めてよ!でも、コントロールはそこそこ自信があるの」
顔を片手で覆う善子ちゃん。
中二っぽいポーズだ。
そういえば運動神経結構いいねよ、善子ちゃん。
「見てなさい!魔界から魔力を受けし私の、ナイトメアボール!」
「うん、わかったから声には出さんでくれ。こっちまで恥ずかしくなるから」
とてつもなく恥ずかしいことを叫びながら放たれたお手玉は、見事に全ての缶を落とした。
まじでか。
「ふっふっふ。どう?」
「おおー!善子ちゃん、すごいずら!」
「善子ちゃんすごいね!」
「ヨハネよ」
ヨハネちゃんはドヤ顔だ。
ちなみに商品としてもらっていたのは、巨大なエアガンだった。
どう考えてもヨハネの武器ではないよ、それ。
〜ヨーヨー釣り〜
「今度こそ、丸が活躍する番ずら…」
「ヨーヨー釣りで活躍ってなによ」
「が、がんばって!花丸ちゃん!」
和紙で作ったような紐の先端に揺れるフック型の針。
その針が、花丸ちゃんの手の動きに合わせて右へ、左へ動き回る。
ヨーヨー、この場合は水風船だが
こいつは別に動かないのだから、狙いを定めてゆっくり釣ればいいものを。
思わず苦笑いをしてしまう。
「よ、よし、ひっかっかったずら!このまま…」
ようやく針に引っ掛けたヨーヨーを、慎重に持ち上げていく花丸ちゃん。
ああ。
濡れた紐をそんなにゆっくり持ち上げたら…
『ボチャン』
無情にもプールに帰っていくヨーヨー。
花丸ちゃんの手に残っているのは、使い道をなくした紐のみ。
「あー…やってしまったずら…」
「惜しかったんだけどね…」
どよーんとした空気が漂う。
なにも、ただのヨーヨーすくいでそこまで重くしなくても…。
「ちょっと、なんとかしてよ」
「どうしろって言うんだい」
「わかんないけど。やりづらいじゃない」
「そう言われても…あ、ほら、残念賞でちゃんと一個もらってるじゃないか」
「でも、なんか元気ないわよ」
少し遠くから見ていた俺と善子ちゃんのところに戻ってきた、花丸ちゃんとルビィちゃん。
ヨーヨーはもらったはずだが、どうにも花丸ちゃんの表情は浮かない。
「花丸ちゃん、どうしたんだい?」
「…丸だけ活躍できてないずら」
「…なるほど」
「丸も何かでいいとこ見せたいずら!」
「そんなこと言ってもねえ…」
いいとこ…か。
なんでかはわからないが、要するに格好をつけたいわけだ。
難しいな…
そもそも、お祭りとはそういうものではないし。
「…あ」
「「「?」」」
「…カレー、余ってたんだ」
※
「おかわりずらー」
「花丸ちゃん、そんなに食べても大丈夫?」
「大丈夫ずら!」
「いくらでもあるから、ゆっくり食べてくれ」
「もう少し辛くても良かったんじゃない?」
「タバスコならあるよ」
「いただくわ!」
「ごめん、冗談なんだ」
「わ、私はこれくらいの辛さでいいかなって」
まあそれが普通だろう。
昨日、なんとなく食べたくなったのでカレーを作ったのだが、作りすぎてしまったのだ。
その処理に困っていたので、3人を呼んだわけである。
期待通り、花丸ちゃんがよく食べてくれている。
「でもよかったんですか?晩御飯までもらっちゃって」
「良いもなにも、こっちから頼んだんだ。余らせるのはもったいないしね」
一人暮らしにおいて、カレーの作りすぎは、焼きそばのフライパン直食いや雨の日に洗濯物を取り込み忘れるくらい定番の出来事なのだ。
「これがずら丸の活躍の場なの?」
「実際大活躍しているじゃないか」
「まあそうだけど」
苦笑い気味の善子ちゃん。
でも
「おいしいずら〜」
カレーを頬張る花丸ちゃんを見て、微笑みを見せてくれた。
「美味しそうに食べ物を食べる姿が、花丸ちゃんのいいところだよ。可愛いじゃないか」
「ずらっ!?」
善子ちゃんに言ったつもりだったのだが。
花丸ちゃんに聞こえていたらしい。
「そ、その、おいしいからつい…」
「ん?そのまま食べてくれて構わないよ?」
「そ、その、ちょっとはずかし…」
あれ?
手が止まってしまった。
ああ、そういうことか。
「すまないね。食事中にあまりジロジロ見るのは礼儀がなかったよ」
「え?あ、いや、そうじゃなくて…」
?
違うらしい。
顔も赤くなっているし、もしかして体調でも悪いのか。
そう思い、花丸ちゃんのおでこに手を当てる。
「ちょっと熱いね。大丈夫…」
「ふ、不意打ちはだめずらー!」
メコッ。
そんな音ともに、顔面に強い衝撃を感じる。
「自業自得ね」
「ハルさん…鈍感は相変わらず…」
意識を失う直前に聞いたのは
2人のそんな呟きだった。
ご視聴ありがとうございました。
そろそろ本編に則った話しも考えてます。はい。
それでは、何かありましたらお願いします。