Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。

たまには1対1のお話にしようと思って書きました。
千歌ちゃんと布屋さんの、なんでもない1日です。



橙な少女と布屋さん

「やっほー、ハルくん」

「こんばんは、千歌ちゃん」

「この時間にここにきてるの、珍しいね」

「十千万旅館から発注をもらっていたんだ。正真正銘、お仕事だよ」

「やっぱり珍しいことじゃん!」

「俺が仕事をしているのはそんなに珍しいかい」

「うん!」

 

なんかボロクソに言われている気がするが、反論できないのが悔やまれる。

 

現在はうちの店の営業が終了している時間だ。

発注依頼のあったものは、この時間に届けてもらえればいいというありがたい言葉をいただいたので、この時間に持ってきた次第である。

 

千歌ちゃんとそんな話をしていたら、志満さんがこちらへやってきた。

 

「ありがとね、ハルくん」

「いえいえ。こちらこそ、ご利用ありがとうございます」

「そういえばハルくん、晩御飯まだだよね?」

「ええ、そうですね」

「じゃあうちで食べてってよ。千歌ちゃんも喜ぶだろうし」

「あ、いいんですか?助かりますよ」

「ハルくんも今日は一緒なの?やったー!」

 

そんなわけで、今日は高海家で晩御飯をいただくことになった。

いやはやありがたい話である。

 

「じゃあ、ご飯できるまでは千歌の部屋で待っててねー」

「あ、手伝いますよ?」

「いやいや。千歌ちゃんの相手してあげて。その方が喜ぶだろうから」

「し、志満姉!///」

「まあ、志満さんがそう言うならそうさせてもらいます。すいませんね」

「気にしなさんな。お姉さんに任せなさーい」

 

どっかの漫画にでてきそうなセリフとともにキッチンの方へ行く志満さん。

あの人は要領もいいし、確かに俺がいると逆に邪魔になるだろう。

 

「さて…それじゃあ部屋に行こうか」

「そ、そうだねっ」

「ん?どうかしたのかい?」

「な、なんでもないよ!」

「それならいいんだけどね」

 

なんというか、若干ぎこちなさを感じる。

どうかしたんだろうか。

 

 

(よ、よくよく考えたらハルくんと部屋で二人きり…///これまでも二人きりはあったけど…今思うと、自分の部屋に二人きりって///)

 

 

「おや?千歌ちゃん、顔が赤いよ?大丈夫かい?」

「だ、大丈夫だからー!先に部屋片付けてくるー!」

「あ、ちょっと…行ってしまった」

 

すごい勢いで走って行った。

部屋に見られたらまずいものでもあったのだろうか。

 

確かに、年頃の女の子の部屋に男が入るというのはいささか気が引けるものがある。

うーん…

 

「とりあえず、部屋の前で待つことにしよう」

 

そう考え、千歌ちゃんの部屋に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「は、入っていいよー」

「ん。じゃあお邪魔するよ」

「ど、どうぞ」

「なんで君が緊張しているんだい。部屋の主は千歌ちゃんだろうに」

「…むしろ、ハルくんが普通すぎて複雑だよ…」

「?」

 

なんのことだろうか。

 

「はあ〜。もういいよ、ハルくんは考えなくて。なんか、緊張してた私がバカみたい」

「そうかい。…ふむ。部屋、思ってたよりだいぶ片付いているね」

「私だって女の子なんだよ?部屋くらい片付けるよ」

「…さっき、美渡さんの部屋がチラッと見えてね」

「一緒にしないでよ!」

 

いや、それは少し失礼…でもないか。

 

「しかしあれだね。こういう時、視線をどこにやればいいか悩むね」

「どういうこと?」

「部屋、じろじろ見渡すのも失礼だろう」

「さっき、片付けがどうとか言ってなかった?」

「さっきのはパッと見の印象の話さ」

「そういう変なとこは気遣いできるのは、本当に変わらないよね」

「ほめ言葉として受け取っておくよ」

「はあ。もういいよ、それで」

 

呆れられたらしい。

おかしいな、気を使ったはずなんだが。

 

「視線とか気にしなくて良いから。こっちじっと見られてる方が落ち着かないし」

「そうかい、それは助かるよ」

「あ、飲み物とってくるからちょっと待ってて」

「お構いなく」

 

そのまま部屋を出て行く千歌ちゃん。

 

何気なしに、机の上に視線をやる。

 

そこにあったのは、一枚の写真。

 

あれって…。

 

 

 

 

 

数分もしないうちに千歌ちゃんが戻ってきた。

 

「ただいま!」

「おかえり。随分早かったね」

「志満姉がもう準備してくれてたんだー」

「なるほど。さすがだね」

 

晩御飯を作っている最中だろうに。

さすがの手際の良さである。

 

「あ、あとこれもどうぞって」

「みかんだね。…ご飯前なんだけど、大丈夫なのかい?」

「まあまあ、一個くらいならいいでしょー」

「まあ、もらえるならありがたくもらうけどね」

 

机の上に、みかんが幾つか入った箱が置かれた。

随分色のきれいなみかんだ。

 

みかんを受け取り、皮をむく。

この時、なんとなく切らないように剥きたくなってしまうのは俺だけではないはずだ。

 

「ハルくん、見てみてー。浮くみかん〜」

「小学生か、君は」

「ノリが悪いなー」

「くだらない事やってないで、さっさといただこうじゃないか」

 

いただきます。

 

心の中で呟いてみかんを一つ口に放る。

うむ。甘くて美味しい。

 

「おいし〜。やっぱこれだよね〜」

「そういえば千歌ちゃん、一番好きな食べ物なんだっけ、みかん」

「そうだよ!千歌と言ったらみかん!くらいに覚えておいてくれていいからね」

 

なぜか誇らしげである。

自分の髪色についても、オレンジではなくみかん色というくらいだし、何か思い入れがあるのかもしれない。

 

「そんなわけで、二つ目をいただきます」

 

そう言って、机の上のみかんをとって皮を剥き始めた。

 

「いやいや、二つはさすがに食べ過ぎでしょ。本当にご飯入らなくなるよ」

「大丈夫だって!みかんは別腹だから」

「いや、それ、食べる順序逆だから」

「ご飯が別腹?」

「志満さんに怒られるよ」

 

俺の制止もどこ吹く風。

美味しそうに二つ目のみかんを頬張る千歌ちゃん。

 

…どうなっても責任はとらないよ。

 

 

 

 

 

「…それで、ご飯が食べられなくなったと」

「……はい。ごめんなさい」

「あっはっは!ばっかだねー千歌は」

「うう…」

 

志満さんがお説教モードで、美渡さんはその横で笑っている。

まあ、こればっかりは美渡さんに同感である。

 

「ハルくぅ〜ん…」

「そんな目で見られても、今回ばかりは俺も止めたからね。自業自得だよ」

「そんなあー」

「ほーら千歌ちゃん。まだまだご飯は残ってるわよ〜。ちゃーんと食べてねー?」

 

直接怒っている様子は見せていないが、逃がさないぞというオーラを感じる。

 

お残しは絶対に許しません。

 

そんな雰囲気を放っている。

怖い。

 

 

「ご、ご、ごめんなさーい!」

 

 

千歌ちゃんの声が木霊した。

 

 

 

 

「うう…もう、何も入らない」

「ああ…うん、お疲れ様」

「もう…しばらくみかん食べない」

「そうかい」

 

多分明日には懲りずに食べているのだろうけど。

 

二人で、海岸沿いを歩く。

消化のために外を少し歩こうという話になったのだ。

 

お腹がプンタプンの状態で歩くのはきつくないかいと聞いたが、大丈夫と言い張っていた。

 

だが、さすがにちょっと顔色が良くない。

 

「千歌ちゃん、どう考えても消化に影響出てるよね?」

「だ、大丈夫だよ」

「何を意地になっているんだい」

「だ、だって…最近は、ハルくんと二人きりなんて、滅多にないし…」

「なんか言ったかい?」

「何もないですー!うぷ…」

「ああ、もう。そんな声を出すから。ほら、ちょっと向こうで休もうか」

「う、うん」

 

防波堤に、二人で腰を下ろす。

千歌ちゃんの背中をさすろうかと思ったが、よく考えたら吐かせたいわけではないのでやめておく。

 

「こうして二人でゆったりするのは久しぶりだね」

「そうだね。夜の海でってなると…本当にいつ以来かな」

「うーん…何年かぶり?」

「…まあ、俺もそこまでちゃんとは覚えてないけどさ」

 

二人で、夜の海を眺める。

そこに会話はない。

 

響く音は、時々通る車の音と、波の音だけ。

 

でも、心地よいものだった。

 

「私が中一の時にさ」

「ああ」

「ハルくんがここで励ましてくれたの、覚えてる?」

「…うん。覚えてるよ」

 

思い出したのは、さっきだけどね。

 

「自分が普通すぎるって言って悩んでたんだよね」

「あはは。そこまで覚えてるんだ」

「なんとなくね」

「…曜ちゃんたちが、部活とかで輝くの見てさ…自分の普通っぷりに苦しんでた」

「そうだね」

「それを励ますために、ハルくんがここで叫んでくれたんだよね」

「…そうだったかな」

「ふふ。覚えてるでしょ?」

「どうだろうね」

「まあいいんだ。私は、ちゃんと覚えてるから」

 

 

絶対、忘れないから。

 

そんな風に、千歌ちゃんが言った気がした。

 

 

叫んだ内容。

 

もちろん、覚えているさ。

 

千歌ちゃんが、自分は普通すぎるってあんまり言うから。

 

俺が、つい叫んだのだ。

 

 

『普通星人なら!ここにもいるぞおおおおおおお!」

 

『高校生にもなって、何も自慢できることもなくて!』

 

『部活も委員会も目立ったことはやってなくて!』

 

『よりによって自分の婆ちゃんには、お前に才能はないなんて言われるような!』

 

『そんな!史上最強の普通星人が!』

 

『千歌ちゃん!君のすぐ側にいいいいいいいいい!』

 

 

今思うと…若かったなあと思う。

というか馬鹿すぎる。

 

まさしく黒歴史だ。

ああ、恥ずかしい。

 

「あの日から、私は、自分を普通星人って笑えるようになったんだよ」

「そうだったのかい」

「うん。だって…」

 

そこまで言って、千歌ちゃんが少し歩く。

そのままこちらに振り返って、言葉を繋ぐ。

 

 

「普通星人は、私とハルくんだけの、お揃いだから」

 

 

その時の千歌ちゃんは、笑顔だった。

 

彼女の背景に浮かぶ、無数の星々。

 

明かりの少ないこの街は、星が空を満遍なく照らす。

 

それでも。

 

その笑顔は。

 

どの星よりも、綺麗な輝きを放っていた。

 

「…普通星人…ね」

 

今の君は。

 

星より綺麗だよ。

 

 

 

 

「お邪魔します」

「お邪魔しまーす」

「お茶とみかん取ってくるから、曜ちゃんと梨子ちゃんは適当に座っててー」

「うん。ありがとう」

「ヨーソロー!」

 

『ドタドタドタドタ』

 

「ふふ。そんなに急がなくてもいいのに」

「千歌ちゃん、今日はなんだか嬉しそうだね」

「何か良い事でもあったのかしら」

「んー…あれ?これって…」

「写真…よね」

「前からあったっけ?」

「どうだろう。そこまでよく見てなかったから…」

「写ってるのは…千歌ちゃんとハルくん?」

「制服、浦の星のじゃないわね」

「ああ、これ、私と千歌ちゃんの中学のだよ」

「へえー…なんか書いてあるわね」

「本当だ。えーと…」

 

 

「「普通星人…コンビ?」」

 

 

 

 

 

「懐かしい写真があったなあ」

 

若気の至りで叫びまくったあの日。

 

千歌ちゃんと一緒に写真を撮ったのだ。

 

普通星人コンビ誕生記念とかなんとか言っていた。

 

「あれを見ると、その度に思い出すからなあ…」

 

できれば人目には映らない位置に置いといてくれと言ったんだが。

 

あそこにあったら、友達とか来たら見られてしまうだろうに。

 

「はあ…捨ててくれないかなあ…」

 

誰にでもなく呟く。

 

その声に、もちろん応えるものなどいなかった。

 

 

 




ご視聴ありがとうございました。

千歌ちゃん、自分を普通普通というけど、あんな可愛い時点で明らかに普通じゃないですよね。

そもそも、千歌ちゃんのバストサイズは見た目的にC程度ですが、全国統計によれば静岡県の平均バストサイズはBらしいので、その時点で静岡県の普通からは外れているのであって…

すいません。
興奮しすぎました。

それでは何かありましたらお願いします。
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