Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。
5話目の投稿になります。
あいも変わらずのったりしてます。


堕天使と布屋さん

誰にだって、自分が普通の人間とは違って、すごい存在なんだと思いたい時がある。

それはなにも若い時だけでなく、どれだけ歳を取っても、その感情は存在する。

しかし大人は、生きていく上で大事なのは、むしろ調和の能力なのだということに気づくのだ。

それはとても大事なことであり、横に倣えで生きていくことができるのは、本当に素晴らしい能力である。

 

逆に。

それができない人間を、人々は『おかしい人』というのだ。

 

 

※

 

 

「やっぱり私、おかしいのかしら…」

「逆に、おかしくないと思っているのかい?」

 

ため息まじりにそんなことを言っているのは、津島善子ちゃん。

通称、善子ちゃん…ではなく、ヨハネちゃん。

 

洗礼者ヨハネ。

旧約時代最大の預言者と言われるほどの預言者だ。

イエスの到来を告げる役割を担っていたとされる、旧約時代の重要な人物である。

そのイエスの弟子にもヨハネはいる。

使徒ヨハネと呼ばれるその人は、こちらは新約聖書に登場する聖人だ。

そして、俺の目の前にいる彼女は、堕天使ヨハネなんだそうだ。

 

「今日はどうしんだい。まさか、そんな話をするために来たのかい?」

「そんなって!私にはとても深刻なの!」

 

机を叩いて主張するヨハネちゃん。

その机は商品ではないけど、俺の大事な作業台なんだ。大事にしておくれよ。

 

「私、来年から高校生なの…」

「ああ、そういえばそうだったね。どこの高校に行くんだい?」

「浦の星女学院よ。すぐそこの」

「おや、そうだったのかい。今後もうちをご贔屓に頼むよ」

「って、そういう話じゃなくて」

「ああ、君が深刻な中二病だって話だったね」

「そうだけど!」

 

話を聞くと、どうやら中二病を直したいらしい。

中学の時、その尋常じゃない中二っぷりを発揮して見事に学校で浮いてしまったことはすでに聞いている。

学校にも少し行けない期間があったほどだ。

俺と交流があったのは、この中二病が関わってくる。

いかにもな中二服というのは、店で買うと結構な価格になったりする。

小物も多く、中二病なのに、中二にはなかなか手が出にくいものも多い。

そこで彼女がした判断は、自分で作ることだった。

素材を買い、そこから自分で裁縫する。

手先が器用だった彼女ならではの発想だろう。

実際、作られた作品のクオリティは高く、思わず舌を巻くほどだった。

 

だが。

高校生からは中二病を立派に直し、リア充になりたいんだそうだ。

 

「だったら直せばいいじゃないか。幸い、学校には中学の知り合いは少ないんだろう?だったらあとは、君の振る舞い次第だと思うがね」

「それは…そうなんだけど…体にそういう振る舞い方が染み付いちゃって、ほとんど反射的に出ちゃうのよ」

 

なんだそれは。

こちらとしては普通に面白いな。

よし。

 

「ああ!あっちから大天使ミカエルが!」

「なんですって!?…ふふ、ついに天から逃げた私を追って来たのね…」

「これは重症ですわ」

「何させるのよ!」

「いや、どれくらい染み付いているのか気になっちゃって」

 

ほとんど条件反射のレベルのようだ。

これを直そうと思ったら、相当手間がかかるだろう。

 

「もうそれ、直さないほうがいいんじゃないの?」

「はあ?」

「今の善子ちゃん、面白いし。高校の人たちは、案外そういうのも受け入れてくれるんじゃないの?」

「適当言わないでよ…。中学の時はそれで浮いちゃったんだから…」

 

落ち込んだ表情になる善子ちゃん。

どうやら、結構深刻に悩んでいるらしい。

 

「じゃあやっぱり、取り繕うしかないよ。人と付き合っていくには、自分を殺さなきゃいけないことも多くあるんだ。その練習ってことで受け入れるしかないんじゃないかな」

「そう…よね。自分でも、それはわかるのよ。けど…」

「不安かい?」

 

驚いたようにこちらを見る。

自分を隠しても、条件反射のように出てきてしまう本当の自分。

それが不安なんだろうというのは、想像に難くない。

 

「不安になる気持ちはわかるよ。でも、どうせあと一月以内には学校に行かなきゃならないんだ。だったら、その時までは正直に生きたらいいんじゃないかい?」

「自分を隠す練習をしろとは言わないの?」

「それで何とかなるならするといいさ」

「…ふふ。どうにもならなさそう」

 

苦笑いでそう言う。

 

「なあに、心配はいらないよ。それで学校に行けなくなったら、またここに来るといい。勉強は教えてあげるし、話しくらいなら付き合うからね」

 

さすがに堕天使ごっこに付き合うのは無理だが。

実際、高校の子たちがどう受け取るかは本当にわからない。

面白い子だと受け入れられるか。

はたまた、変わり者だと煙たがられるか。

どちらも、そこに善意はあっても悪意はない。

変わり者に近づかないのは、人の本来の姿だから。

 

でもそれは

 

「変わり者同士、仲良くしよう」

 

この子を面白いと思ってる自分も、大して変わらんだろう。

 

善子ちゃんは、キョトンとしている。

かと思えば、さっきまでとは違い、はっきりと笑顔になった。

 

「ふふ。ほんと、変わった人ね」

「よく言われるよ」

「私、リア充になれるように頑張るわ」

「うん、頑張っておくれ」

 

 

※

 

 

夕日が空を赤く染める。

善子ちゃんが帰ってから2時間ほど経過した。

今日も今日とて、お客は少ない。

そういえば、千歌ちゃんと曜ちゃんはいつ帰ってくるんだろうか。

そのへん、聞き忘れていた。

暇だし、メールでも送るか。

 

そう思っていたとき。

作業台にケータイがある。

商売中に自分のケータイは出さないので、これは俺のではない。

 

「…善子ちゃん、忘れてったのかな?」

 

真っ黒なケータイに、髑髏の紋章。

ほぼ確定だが、一応、自分の電話から善子ちゃんのケータイに着信を入れる。

目の前のケータイから、聞いたこともない呪文みたいなものが詠唱された。

 

「…これ、着信音なのか…」

 

…善子ちゃん。

君はリア充になれても、中二病卒業は無理そうだよ。




ご視聴ありがとうございました。
今回はヨハネちゃんこと善子ちゃんでした。
結局、この後ヨハネちゃんがどうなったかは、アニメ本編にある通りです。
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