Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。

タイトル通り、本当になんでもない1日のお話です。




普通の1日と布屋さん

真夏の昼過ぎ。

外からセミの大合唱が鳴り響くこの時間。

 

『カランカラン』

 

「あっつーい!ハルくーん」

「ヨーソロー!」

「こんにちは」

 

扉のベルが鳴り響き、お客の来店を知らせる。

読んでいる本から目線を動かすまでもなく、誰がやって来たのかは分かる。

 

「いらっしゃい、3人とも。暑い中でご苦労様」

「ほんとだよー」

「もう朝から太陽が元気でねー」

「日焼けしちゃいそうで心配よ」

 

本日やってきたのは2年生3人組。

夏真っ盛りの今日。

 

青空には雲ひとつなく、空は太陽が完全に支配している状態だ。

気温も朝から容赦なく上昇しており、さすがに今日は店でもエアコンをつけている。

 

「あー…涼しー」

「ねー…」

「わざわざエアコンの前に行かなくても、部屋は全体的に涼しいだろうに」

「気分の問題だよ!」

「そうそう。気分気分」

 

そう言って、エアコンの前に陣取って二人で冷風を仰ぐ。

まあ気持ち良さそうなので良しとする。

 

「二人とも、あんまりそうしてると風邪ひくわよ。ほら、先に汗だけでも拭いておかないと」

 

梨子ちゃんがタオルを二人に渡す。

さすが、よく気がきくものだ。

 

「梨子ちゃんありがとー」

「ありがとー」

 

その間に、俺は冷蔵庫へ向かい、アイスを取ってくる。

今日は箱のアイスだ。

 

「はい、お疲れ様のアイスだよ。食べるかい?」

「わーい、食べる食べるー!」

「おおー!カップアイスだね。ハルくん、気がきくねー!」

「えっと…もらっちゃっていいの?」

「もちろんだよ。どうせ一人じゃ食べきれないからね」

「ん。ありがと」

 

箱からアイスを取り出してスプーンとともに手渡す。

味はテキトーに選んだが…どうかな。

 

「ん〜おいしー!」

「ねー。やっぱこの時期はアイスですなあ」

「ふふ。そうね」

 

うむ。

悪くなさそうだ。

お気に召してくれたらしい。

 

「あれ?ハルくんは食べないの?」

「俺はいいよ。あんまりお腹を冷やしたくなくてね」

 

外に出れば暑いのは言わずもがなだが、それに合わせてあちこちでエアコンが効いているし、食べ物もお腹を冷やしてしまうようなものが多い。

この時期というのは、案外体を冷やしやすいのだ。

 

加えて、中学生くらいの頃調子に乗ってアイスを食べ過ぎた結果、お腹を壊したこともあり、人一倍この時期は食べ物に敏感なのである。

 

「ハルくん、そこは相変わらずだねー」

「誰だってお腹が痛いのは嫌だろう?」

「いや、食べ過ぎなきゃ大丈夫だよ」

「どうにもそういう考えにはもっていけなくてね」

「一口くらいなら大丈夫じゃない?」

「一口?」

「ええ」

 

そう言ったときだ。

梨子ちゃんが、スプーンにアイスを乗せてこちらに差し出してきた。

いわゆるあーんというやつだ。

 

「いいのかい?」

「もちろん。ほら、溶けちゃうわ///」

「では失礼して」

 

差し出されたスプーンからアイスをいただく。

うん、おいしい。

 

「美人に食べさせてもらうと、味も数段美味しく感じるね」

「そ、そう///」

「あー!梨子ちゃんずるい!」

「私のもほら、ハルくんあーん!」

「わ、わかったから。口を開けるまで待ってくれ」

 

そんなことを言ってたら、口を開けた瞬間にアイスを突っ込まれた。

これは多分、あーんではないね。

 

しかも、一気に飲み込んだせいで頭痛がやってきた。

これはアイスクリーム頭痛というらしい。

い、痛い…。

 

「か、間接キス…うへへ」

「…梨子ちゃん、よっちゃんからハルくんが絡むとポンコツになるって聞いてたけど…」

「本当みたいだねえ」

 

3人が何か話していたようだが、聞き取る余裕はなかった。

 

 

 

 

「どうかな。たまには紅茶にしてみたよ」

「おいしいです」

「まるはもうちょっとだけ砂糖が欲しいずら」

「はい、これね」

「ありがとうずら〜」

「ふふふ…堕天使にはこっちの方が似合うわね」

「まあ、普段の緑茶じゃあ堕天使っぽくはないね」

 

そんな会話をしながら1年生の3人とティータイムに勤しむ。

本日やってきたのはこの3人だ。

 

喉も渇いているだろうと思い飲み物を用意することにしたのだが、先日、紅茶の茶葉をもらっていたので、今日はアイスティーにしたのである。

 

「適当にお茶請けのお菓子もあるからね。ぜひ食べてくれ」

「あ、ありがとうございます」

「何か今日は妙に羽振りがいいわね。何かあったの?」

「普段からそこまでケチケチしているつもりはないんだがね」

「別にケチだなんて言ってないわ。でも、自分から出してくるのは珍しいなって思ったのよ」

「そうだったかな?」

「そうよ」

 

そうらしい。

これは普段の態度を少し改めないといけないな。

 

「あ、これ賞味期限が明日ずら」

「ほんとだ。あ、こっちは今日だね」

「…それが理由で私たちに出したのね」

「心当たりがないね」

 

ジト目で善子ちゃんに見つめられる。

そんなに見ないでくれよ。

照れるじゃないか。

 

「はあ…まあいいわ。過ぎてるわけじゃないしね。余り物でも美味しくいただくわ」

「いただきます」

「い、いただきます」

「どうぞどうぞ」

 

ちなみに用意したお茶菓子は饅頭とかそういう和風のお菓子だ。

おいしいんだが、足が早いんだよね。

 

「おいしいずら〜」

「そうだね。でも、こんなに美味しいのにどうして余ったんですか?」

「ちょっと買いすぎちゃってね。お客さんにも渡してるし、消費できると思ってたんだが」

「買いすぎたって…なんでそんなに買ったのよ」

「ああ、店員さんが美人でね」

「うわ」

「うわって」

 

善子ちゃんに苦い顔をされる。

引いているのかな?

 

「美人さんだったずら?」

「ああ。綺麗な人だったよ」

「ハルさん、それに釣られちゃったずら?」

「あれよあれよと勧められてるうちにね。気付いたらたくさん買ってたんだよ」

「完全に相手の思う壺じゃない…」

「男の性だからね。味は美味しいし良しとしようじゃないか」

「言ってることはもっともだけど、自分で開き直ることじゃないわね」

「しかも理由が情けないずら」

「うゅ…」

「はっはっは。手厳しいね」

 

でも何も言い返せなかった。

ちょっと傷ついた。

 

「君らだって、格好いい店員さんに勧められたら、思うところはあるだろう」

「ないわ」

「ないずら」

「ないです」

「あれ?」

 

真っ向から否定された。

 

「残念だけど、私…というよりは、Aqoursのメンバーに色仕掛けは効果ないと思うわよ」

「それもそうずらねえ」

「まあ…あはは」

「大した自信だね。何か理由でもあるのかな?」

「…別に…」

「心に決めた人がい…もが」

「ず、ら、ま、るう〜。余計なこと言わなくていいの!」

「も、もがもが」

 

花丸ちゃんが何かを言おうとしていたみたいだが、途中で善子ちゃんに口を押さえられていた。

よく分からないが、イケメンに勧められても買わない理由がちゃんとあるらしい。

 

うーん…

すごいね。

感心するよ。

 

「ハルさん、多分分かってないですよね…」

「何がだい?」

「Aqoursに色仕掛けが効かない理由です」

「君らの育ちが良いからだろう」

「…はあ…」

「あれ?なんでため息?」

 

そんな会話をしていたら、善子ちゃんがこちらに戻ってきた。

 

「というか、ハルが節操なさすぎなのよ。あんた、美人なら誰でもいいわけ?」

「そういうわけではないよ。好印象を持ったきっかけは間違いなくそれだけど、たくさん買った理由はちゃんと他にあるんだよ」

「他の理由?」

「お姉さんが綺麗だったからたくさん買ったんじゃないずら?」

「言っただろう、あれよあれよと勧められたって。話し方がうまかったんだよ」

「なんか言われたわけ?」

「まあうん。ちょっとね」

「き、気になります!」

「ずら!」

「いや、別に大したことじゃないよ」

 

お姉さんがいろいろ説明してくれたが。

切り札となったのは一言のみである。

 

 

『これを食べれば、どんな人でも笑顔になりますよ』

 

『ほう。どんな人でもですか?』

 

『はい。それくらい美味しいんですから』

 

『なるほど』

 

 

「そんな話をしてね。あわよくば君らの笑顔でも拝見しようと思っていたんだよ」

 

仕方ないのでそれを話す。

恥ずかしいので言うつもりはなかったのだが。

 

「…そう///」

 

「…ずら///」

 

「…うゅ///」

 

下を向いてしまった。

 

いや、何か言ってくれよ。

余計恥ずかしいじゃないか。

 

 

それから数分。

 

4人で下を向いたまま黙々とお菓子を食べ続けていたのだった。

 

 




ご視聴ありがとうございました。

なんでもない1日のお話です。
ある意味この作品を象徴するお話ですね。
はい、本来はこういうテイストのお話なんです。

それでは何かありましたらお願いします。
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