Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。

前回に引き続き日常の一コマをお送りします。


普通の1日と布屋さん2

 

「衣装サイズの寸法?」

「そうよ。ここで測らせてちょうだい」

 

夕方。

閉店して間もないこの時間。

 

いつものようにお店にはAqoursの子達がやって来ていた。

本日のお客さんは1年生組である。

 

「そりゃあもちろん構わないけが…部室にメジャーはなかったかな?」

「ついこの前壊れちゃったんです」

「壊れたって…そんなに使い込んでいたのかい」

「いや…千歌ちゃんと善子ちゃんが遊んでたら壊れたずら」

「…メジャーでどうやって遊んだんだい君達は」

「そ、そんなのどうでもいいでしょ!ほら!メジャー貸してよ!」

「壊さないでくれよ」

「わかってるわよ!」

 

そう言って箪笥からメジャーを取り出す善子ちゃん。

 

「善子ちゃんメジャーの場所、よく知ってるね」

「手馴れてるずら」

「ぐ、偶然よ!」

「いやいや。昔からここでよく裁縫をしているからだろう」

「ちょ、ちょっと!」

 

中二グッズの裁縫をよくここで行っていた善子ちゃん。

その時から道具の場所は変わっていないので、自然に手が伸びたのだろう。

 

「善子ちゃん、ここでああいう衣装作ってたんだね」

「道具が揃ってるからよ!ほ、他に理由はないわ!」

「本当にそれだけずら?ハルさんの近くで作業したかったとか…むぐ」

「ず、ら、ま、るう〜」

「む、むぐむぐ」

 

花丸ちゃんが何かを言おうとして善子ちゃんに口を押さえられる。

つい最近見た覚えのある光景だ。

 

「ほらほら、採寸するんだろう」

「そ、そうね!ほら、ルビィもずら丸も、さっさと済ませるわよ!」

「も、もがもが」

「よ、善子ちゃん、手は離してあげて…」

 

まだ口を押さえていたのか。

いい加減顔色が悪くなり始めている花丸ちゃんを解放し、3人は奥の部屋に向かっていった。

 

もちろん目的は衣装のための採寸である。

最初は俺も手伝おうかと思ったが、よくよく考えるとセクハラ扱いされそうなのでやめておいた。

 

しかし、サイズというのはそんなに簡単に変わっていくものなんだろうか。

少なくとも彼女たちは、夏祭りのための衣装作りで一回寸法は取っているはずだ。

 

それからまだ1ヶ月足らずなんだが…

成長期だからかなあ。

 

そんなくだらないことを考えつつ、読書に励もうかと思った時である。

 

 

「ちょっ、ずら丸、あんたまた大きくなったの…?」

 

「う、うらやましい…」

 

「んん?特に変わってないずらよ?」

 

「いや、数字がちゃんと物語ってるのよ」

 

 

そんな会話が聞こえてきた。

 

…まあその、身長の話だよね。

まさか俺に聞こえるような声で、胸の話とかをしているわけではあるまい。

 

 

「ウエストは全然変わってないのにバストだけ…っく!どんな生活してたのよっ」

 

「どんなって…普通に生活してただけずら」

 

「花丸ちゃん、あんなに食べてるのに…」

 

「全部胸に行ってるってこと…?ぐぬぬううう」

 

「ま、まる、なんか悪いことしたずら?」

 

 

…さて。

どうしたものか。

 

いや、聞こえてきて嫌なことではない。

なんとなく心踊る会話ではある。

 

しかし…。

盗み聞きしているみたいで、ちょっと気が引けてしまうのも事実である。

 

とりあえず、聞かなかったことにして読書に集中するとしよう。

幸い、読んでいるのは物語だ。

熱中して読めば、外の音など耳には…。

 

 

「あんたこれ、ちょっとは分けなさいよ!」

 

「ちょ、よ、善子ちゃん、やめるずらー。あ、あははは。くすぐったいずらー」

 

「よ、善子ちゃん、あんまりあばれちゃだめだよ」

 

 

…だめだ。

まったく集中できない。

 

「はあ…」

 

ため息を一つつき、椅子から腰をあげる。

仕方ないから注意することにしたのだ。

 

声が大きいとだけ言えば、その意図は彼女たちに伝わるだろう。

 

そう考え、襖の前に立つ。

ノックはできないので、外から掛け声で存在を知らせる。

 

「おーい、3人とも。さすがに声が大きいから、ちょっとボリュームを下げてくれるかな」

 

「あ、は、ハルさん?わ、わかりましたー。ほら、二人とも、ハルさんもそう言ってるから…」

「は、ハルさんずら!?って、わ、わあああー!」

「ちょ、ずら丸、あんたどこ掴んで…ってひゃあああああ!」

「わああ!善子ちゃん、ルビィを掴んじゃ…ぴぎゃあああ!」

 

「え、君たち中で何を…」

 

そこまで言った時だった。

 

俺の声に驚いたのだろう。

中途半端に衣装を着ていた花丸ちゃんが転倒。

それに巻き込まれて善子ちゃんも転倒。

さらにそこでとっさに掴まれたルビィちゃんも転倒。

 

三人が一気に倒れこんだ衝撃で、俺と彼女たちを隔てていた襖が外れこちらに倒れてきた。

 

一瞬、下着姿の花丸ちゃんが見えた気がしたが、残念ながらその時の記憶はあまり鮮明ではない。

 

なぜなら。

 

倒れてきた襖の骨組みが俺の頭を直撃。

 

俺の意識はそこで闇に落ちたからである。

 

 

 

 

翌日。

 

善子ちゃんから

 

「ずら丸の下着、見てないわよね?」

 

そんなことを聞かれた。

 

もちろん。

 

「三途の川しか見てないよ」

 

そうやって返すのだった。

 

俺のそんな一言に、1年生3人がバツの悪そうな顔をしたことは、言うまでもない。

 

 

 

 

『コンコンコン』

 

「どうぞ」

 

3回ノックをし、中の返事があってから扉を開ける。

 

「こんにちは、ダイヤちゃん」

「ええ。こんにちは、ハルさん」

 

やってきたのは、浦の星女学院生徒会室。

頼まれていた物品の配達である。

 

台車に3つの段ボールを積み、ここまで運んできたのだ。

 

「暑い中でご苦労様ですわ」

「仕事だからね。とりあえず確認をお願いするよ」

「ええ」

 

そんな話をしていた時だ。

 

『バッターン』

 

そんな音ともに、ノックもなく生徒会室の扉が開けられた。

 

「シャイニー!ダイヤー!って、あれ?ハル?」

「こんにちは、マリーちゃん」

「こら鞠莉、ちゃんとノックしないとまた怒られるよ…って、ハルじゃん」

「果南ちゃんもこんにちは」

 

やってきたのはマリーちゃんと果南ちゃん。

 

「ハル、何か用でもあるの?」

「うん。物品の配達だよ。君たちこそ、ダイヤちゃんに何か用だったかな?」

 

大事な用事だったりするなら、早々にここを立ち去らないといけないが…

 

「ノー。教室じゃ暑いから涼みに来たんだでーす」

「あはは。まあそういうことだよ」

 

立ち去る必要はなさそうだ。

 

「まったく…ここは生徒会室であって遊び場ではないのです。涼みたいなら図書館でもどこでもあるでしょう」

「図書館じゃトークができないでしょー」

「ここもそういう場所ではありませんわ!」

「そんな堅いこと言わずにー。ほら、ダイヤだって私たちが来て嬉しいんでしょー」

「なあっ。そ、そんなことありませんわ!」

「あはは。ダイヤは分かりやすいなー」

「ぐぬぬぬ…」

 

ダイヤちゃんが唸っている。

まあ、この二人を相手に口先勝負は分が悪いだろう。

 

マリーちゃんも果南ちゃんも、ダイヤちゃんの扱いは大層心得ているわけだし。

 

「まあまあ、ダイヤちゃん。せっかくだし仕事の手伝いでもしてもらおうじゃないか」

「ハルさんまで…はあ。分かりましたわ。他の生徒に示しがつきませんから、あまり騒がないようにしてくださいね」

「シャーイニー!」

 

言いながら備品の箱を元気よく開けるマリーちゃん。

ダイヤちゃんの話は聞いていなかったらしい。

 

「さ、わ、が、な、い、で、く、だ、さ、い、ね」

「ジョークジョーク」

 

鬼の形相のダイヤちゃん。

これはマリーちゃんが悪い。

 

その後、物品確認を4人で行い、俺の本日の仕事は終了した。

ダイヤちゃんがお茶を出してくれたので、今は生徒会室でお茶を飲んでゆっくりしている時間である。

 

「んー。お茶美味しいでーす」

「そうだね。喉も渇いていたから尚更だね」

「いくらエアコン効いてても、さすがに作業すると少し汗かくもんねー」

「この部屋はエアコンは弱めにしてありますからね。少しだけ強くいたしましょうか」

 

そう言ってエアコンのコントロールパネルに向かうダイヤちゃん。

なんとなくその後ろ姿を眺めていたら、マリーちゃんに小声で話しかけられた。

 

「ハル」

「なんだい、マリーちゃん」

「ダイヤ、シャツ透けてる」

「………………急にどうしたんだい」

「いや、なんとなく」

「なんとなくで男に振る会話じゃないね、それ」

「この時期は気をつけないとねー。まあ下着じゃないからいいんだけどね」

「俺の話を聞いてくれよ」

「鞠莉とハル、何コソコソ話してるの?」

「どうせ大したことじゃないんでしょう」

 

ダイヤちゃんが戻ってきた。

 

「否定できないね」

「大事なことなのにー」

 

内容については俺の口からは話せないので、適当に流すことにする。

 

「あ、ダイヤ、お茶の二杯目もらっていい?」

「ええ、ちょっと待っていてください」

「ああいいよ。それくらい自分でやるから」

 

そう言って席を立つ果南ちゃん。

その後ろ姿を見ていたら、またしてもマリーちゃんに声をかけられた。

 

「ハル」

「今度はなんだい」

「果南、下着透けてる」

「……………」

 

いやいや。

 

「て、Tシャツの見間違いじゃないかな?」

「いやいや、あれブラ線だヨ」

「ほら、キャミソールというやつじゃないかな?よく知らないけど、女性は制服の下にそういうのを着るんだろう?」

「ハルさんと鞠莉さん、何をこそこそ話していますの?」

「またくだらない話?」

 

果南ちゃんが戻ってきた。

 

「もう。くだらなくなんかないよー」

「いや、俺もくだらないと思うよ」

 

ここで深く話を掘り下げると、最悪俺の命にかかわるので適当に流しておく。

 

ブラ透けとかそういうのはね、ばれないように楽しむものなんだよ。

仮に見つけても、それは口にせずに心の中で小さくガッツポーズするのが、紳士の嗜みなのさ。

 

「ハル、なんでドヤ顔してるの?」

「自分の紳士っぷりに感心しているのさ」

「あっはっは。馬鹿みたいだヨー」

「やかましいよ」

 

そんなやりとりをマリーちゃんとしていた時だった。

 

「ああ、そういえば果南さん」

「ん?」

 

ダイヤちゃんがそんな一言を発する。

 

「今日は泳ぐ用事でもあるんですの?」

「そうそう。曜に頼まれて水泳部の練習手伝うんだよ」

「水泳部の練習?手伝うことなんてあるのかい?」

「張り合う相手がいる方がいいタイム出るんだってさ」

「なるほど」

 

曜ちゃんらしいね。

にしても。

 

「ダイヤ、よく果南が水泳の用事あるってわかったね」

「当たり前ではありませんか。水着、ずっと透けてますわよ」

「え?あ、ほんとだー。校則違反だっけ?」

「まったく…あまり感心できた行いではありませんわよ」

「あっはっは。次は気をつけるよ」

 

なるほど。

透けていたのは下着ではなく水着だったのか。

 

残念だったような、安心したような。

少し複雑な気分になった。

 

ちなみにマリーちゃんは

 

「下着をチラ見せして誘惑する作戦じゃなかったのねー」

 

と呟いていた。

 

誰を誘惑したいかは知らないけどね。

心臓に悪いからやめていただきたいものである。

 

 




ご視聴ありがとうございました。

書いてて思ったのは、今回の話、ラブコメ要素ほぼ無いなってことです。
まあ、その、本当に日常の一コマってことでご容赦願います。

それではなにかありましたらお願いします。
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