Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。
果南ちゃんのお話になります。
やっぱりのったりしながら進みますが、読んでもらえれば幸いです。


体育少女と布屋さん

「はい、これで修繕完了」

「ありがとー。おおー綺麗な縫い目。さすがハル!」

「一応、裁縫もサービスの一つだからね、うちは」

 

デザインとか持ってきてもらえれば、衣類やクッションなどの小物の裁縫も受けるのが、うち、淡屋のお仕事だ。

実際は、一から作るよりは、今回のように修繕を求められることの方が多いのだが。

 

今、俺と話しており、修繕依頼を持ってきてくれたのは松浦果南ちゃん。

呼び方は果南ちゃんだ。

浦の星女学院に通い、千歌ちゃん、曜ちゃんと長い付き合いで、彼女たちの一つ上、今年から高校3年生の女の子である。

彼女は小さい頃から随分アクティブに動きまわっており、結構な頻度で服に穴を開けていた。

その度に、彼女の母が服を持ってきていたのだが、いつしか自分で持ってくるようになった。

いい加減に服を大事にしろと怒られたのがきっかけらしい。

そら怒るわ。

 

「果南ちゃん、今回は何したんだい。女の子がシャツに穴開けるって、何してたか想像できないんだけど」

「いや、ランニングしてたら木に引っ掛けちゃって。あはは」

「あー…なるほど」

 

確かに、この町には木が多い。

歩道が狭いとこもあるので、木に服を引っ掛けるというのは、あながちおかしいことではないだろう。

ただし

 

「…穴、背中に開くもんなのか…?」

 

どんなランニングをすれば、背中に木を引っ掛けるのか。

バク転しながら走ったのか?

怖くて聞く勇気はないが。

 

「そういえば学校、まだ休んでいるのかい?」

「…うん。まだお父さん、よくならないから」

「そうかいそうかい。いや、申し訳ないね、こういう話題を出してしまって」

「ああ、いや、大丈夫だよ。ハルが心配してそういう話してくれるの、よくわかってるから」

「俺だけじゃない。千歌ちゃんや曜ちゃん、マリーちゃんも心配はしてる」

「うん。そうやって考えてくれてること、感謝してるよ。お父さんの調子、だいぶ良くなってきてるからね。早ければ5月中くらいには復帰できるよ」

 

お父さんの体調が悪くなり、仕事に支障が出始めたのが去年の冬頃。

自営業の彼女の家は、お父さんが働けないのはかなりの痛手だった。

そこで、一番仕事をよく見てきた果南ちゃんが、急遽代役を務めることになったのだ。

その間、学校は休学となっている。

2年から3年、それも高校。

人生をかけたとても大事な時期だ。

文句の一つも言いたくなるだろうに。

それでも、誰も責めることなく、彼女は本当によくやっていると思う。

 

「って、なんでそんな深刻な顔してるの?復帰できるって言ってるのに」

 

笑顔で言う。

 

「ああ、ごめんよ。ついね」

「そんなに考えなくてもいいよ。多分、ハルが思ってるほど、重いことじゃないし。みんなはちゃんと待っててくれる。…離れたところにいる友達まで、ちゃんと気にしてくれてる」

 

最後の友達というのは、マリーちゃんのことだろう。

2人はかつて、同じグループで活動した、最大の親友だ。

 

「それに」

「それに?」

 

そこまで言って、すぐ近くまで来る果南ちゃん。

人差指をこちらに向けて、彼女は続ける。

 

「勉強は、ハルが教えてくれるんでしょ?」

 

また、笑顔になる。

その笑顔は見ているこっちまで笑顔にさせるような、魅力的な表情だ。

 

「もちろんだよ。俺にできることなら、なんでも教えるさ」

「ふふ。頼もしいね」

「と言っても、正直君に教えられることはだいぶ減ってきているよ。君、飲み込みいいしね」

「そんなことないよ。まだまだ、教えてもらいたいことたくさんあるもん」

「そうかねえ」

 

基礎教科に関しては学校のカリキュラムはある程度教えたし、彼女本人は非常にストイックだ。

必要とあれば自分で進めていく能力もある。

 

「わからないとこ、あるのかい?」

「うーん…そうだねえ…」

 

「保健体育、とか」

 

そう言って、肩をはだけさせる果南ちゃん。

ここまでは走って来たと言っていた。

そのためか、うっすらかいた汗が、彼女の綺麗な肌をより妖艶に見せている。

 

って、ちょっとちょっと。

 

「ダメだよ果南ちゃん。運動して暑いのはわかるけど、まだ冷えやすい季節なんだ。服はちゃんと着ないと」

 

女の子として、色気を出すのも大事だ。

けどここには俺しかいないんだし、そういったことより体調を優先してもらわないと。

 

「…はあ。そういうとこ、ほんとに変わらないね」

「これでも歳上なんだから、君の体調に気を使うのは当然だろう」

「いや、そうじゃなくてね…まあいいや。直接言えない私にも責任はあるし」

「何の話だい?」

「なんでもないよー」

 

何事もなかったように服を着なおす果南ちゃん。

なんだったんだろうか。

 

「…チカたちも、苦労してるんだろうなあ」

「ああ、そうだね。東京は、俺たち田舎民にはかなり疲れる場所だろうからね」

「ああ、うん。もうそれでいいよ」

 

そういう意味ではなかったらしい。

会話が噛み合っていない気がするが、おそらく気のせいだ。

 

「チカたち、いつ帰ってくるって?」

「昨日のメールだと、明日には帰ってくるそうだよ。随分テンションが上がってたみたいでね、文章がめちゃくちゃだったよ」

 

まあ、文体がおかしいのはそんなに珍しくもないのだが。

だが今回は、理由がはっきりわかっていた。

 

「スクールアイドル、見てきたんだそうだ」

「!…そうなんだ…」

「…心配しなくても大丈夫さ。千歌ちゃんたちに、君たちのことは言わないよ」

「本当?」

「俺、嘘はあまり言わないつもりだけど、そういう信用はあるのかな?」

「…ん。そうだね。ごめんね、気使わせて」

「たまには歳上に甘えなさいよ。いつも頑張りすぎるんだから」

「…言われなくても、いつも甘えてるよ…」

 

ん?

最後、声が小さくて聞き取れなかった。

 

「よっし!気持ち切り替えて勉強しよ!教えてくれるんだよね?」

「え、今?まだ仕事中なんだけど」

「え〜。さっき、なんでもするって言ってなかった?」

「ちょっ、そこでそうくるのかい?」

「あはは。冗談だよ。奥の部屋、借りるね」

 

そう言って、奥の和室に行ってしまった。

こういう時、あっさり引いてくれるのが彼女の良いところだ。

良いところだが…

 

「もう少し、わがまま言っても良いんだけどなあ」

 

時刻は昼の3時半。

予約があった分の商売は、すでに済ませた。

 

入り口のとこの看板を返し、休憩中にする。

 

「さて…。暇だし、勉強でもしようかな」




ご視聴ありがとうございます。
これで、アクアの8人目と主人公の関係が描かれました。
最後梨子ちゃんですが、転校生というのもあって悩んでいます。
苦情等ありましたら、お願いします。
それでは。
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