Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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初めましてこんにちは。
今回はマリーちゃんと花丸ちゃんとのお話です。



駄弁るAqoursと布屋さん5

 

「成績?」

「イエース」

「ハルさん、高校の時はどんな成績だったのかなーって」

「どんなって…特に語る事のない普通の成績だよ」

「成績で普通って何よー」

「平均通りの成績ってことずら?」

「そんな感じだよ」

「いやいや。順位ならともかく内申点とかで平均なんてないヨ」

「全国の高校生たちの内申点で平均点をとれば、俺の内申点と一致する自信があるよ」

「なんか違うけどすごいずら!」

 

7月の終わり。

つい先日、いよいよAqoursに3年生が加わり、あるべき姿になったかかと思えば、その数日後に学校が終業式を迎えた。

 

それから数日後の今日。

遊びに来ていた彼女たちと、なんとなく学校の成績のお話をしているのだった。

 

「ハルの成績って、案外聞く機会ってなかったよねー」

「そうだったずら?」

「付き合いこそ長いけど、歳の差が3つだから中学以来同じ学校で生活するという事はなかったからね」

 

俺が中学の時は彼女たちは小学生。

俺が高校の時は彼女たちは中学生。

 

そんな感じで、同じ教育課程にはいなかった俺たち。

 

中学生と高校生で成績の話をする事自体は可能なわけだが、その二つでは成績に対する価値観が異なってしまい、単純な比較はできなかったりするのだ。

 

そのため、なんだかんだで俺は彼女たちと成績の話をした事がなかったのだ。

 

「もっとも、単純に成績の差がありすぎて、話す意味がなかったというのも大いにあるとは思うけどね」

「でも、ハルさんだって平均はあったずら?」

「『平均はある』という考え方と『平均しかない』という考えには、そもそも天と地の差があるんだ」

「あー…なるほど」

「もう。そんなこと気にしなくていいって言ってるのに。大体、そんな事言ったら果南は平均ないよー」

「学校休んでた期間が長いからさ」

「休む前からお世辞にもいいとは言えなかったけど」

「…コメントは控えておくよ」

 

まあ、確かに果南ちゃんの成績はお世辞にも良いとは言えないが…。

でも、うん、赤点取るほど悪いわけでもないから大丈夫。多分。

 

「ちなみに花丸ちゃんはどうなのかな」

「丸は…文系は悪くないと思うんだけど、理系が苦手で…えへへ」

 

苦笑いでそう言う花丸ちゃん。

いかにも花丸ちゃんといった感じで、ちょっと微笑ましい。

 

「苦手があっても得意があるならそれで十分さ。苦手もまた個性ってね」

「おやおや〜。じゃあ苦手がない私は個性がないですかー?」

「苦手がないこともまた個性さ。というか、やっぱり君は苦手教科はないんだね」

「いえーす」

「す、すごいずら…」

 

お忘れの人も多いとは思うけど、マリーちゃんは学園の理事長さんなのだ。

ともすれば、学業は確実にものにしなくてはならない。

 

そう考えれば、彼女はきっちりと自分のやることを全うしているわけだ。

本人は涼しい顔をしているが、それは並大抵の努力でできることじゃないだろう。

 

「ん?どうしたの、ハル」

「いや、素直に感心していたんだよ。すごいなと思ってね」

「そ、そう?ふふ。そうでしょー」

「ああ。本当に、大したものだと思うよ」

「そ、そっか…ふふふ」

 

いつもとは違う、微笑むような笑顔を見せてくれるマリーちゃん。

綺麗だななんて思っていたら、再びマリーちゃんが口を開いた。

 

「ほら、ハル。そんなに褒めてくれるならやることがあるでショ?」

「やること?」

「イエース。ほら」

 

そう言って、自身の頭を指差すマリーちゃん。

 

なるほど。

うん、さすがの俺も、これは何をすべきかわかった。

 

「えっと…これでいいのかな」

「あ…ん。正解でーす」

 

彼女の髪型を崩さないように頭を軽く撫でる。

というよりは、ほとんど頭の上に手を載せているだけかな。

 

何はともあれ、正解だったようで何よりだ。

 

「むー…鞠莉さん、羨ましいずら…」

「ん?どうしたんだい、花丸ちゃん」

「なんでもないずらっ」

「…なんでもないのになんで怒っているのさ」

「つーん」

「…?」

 

怒っている…というほどでもないのかな。

でも、確実に機嫌を悪くしている。

 

はて。

 

「ふふ。そうですねー。確かにこれは、私だけずるかったですねー」

「なんの話だい?」

「国語で平均点のハルには厳しいでーす」

「それは困ったね」

「だから、私の言うことを聞けばいいのです」

「…なんか腑に落ちないけど、まあここはおとなしく従うよ。どうすればいいのかな」

「その空いた左手、それをちょっと上にあげるのでーす。あ、右手はこのままダヨー」

「うむ」

 

言われるまま、左手を持ち上げた直後。

今度はマリーちゃんが手招きで花丸ちゃんを呼んだ。

 

「ほら、丸ちゃん」

「え?」

「え、じゃないでしょ。こっち、おいでよ」

「あ…う、うん…お、お願いするずら」

 

そのまま、左手の下にやってきた花丸ちゃん。

マリーちゃんと同様、こちらも頭の上に手を置いて軽く撫でる。

 

花丸ちゃんが怒っていたのは、自分も頑張っているのにマリーちゃんだけが褒められたことが原因だったのかな。

 

「んー…半分正解かな」

「やっぱり鈍感ずら」

「人の考えを当然のように読むんじゃないよ」

「手から伝わってきてまーす」

「君たちの頭からは考えが読めないんだけど」

「国語の勉強が足りないずら」

「国語万能だね」

 

人の心を読めるようになるとは知らなかった。

 

その後、十数分間頭を撫で続け、俺の思考を読まれ続けるのであった。

 

 

 

 

「ハルの成績は全部平均点だったの?」

「5科目と呼ばれるような主要科目に関しては、テストも内申点も平均ど真ん中だったね」

「もう逆に才能ずら」

 

ちなみに、中学の時は国数英理社の5科目に加えて、保健体育、技術家庭科、音楽、美術の4科目で計9科目で構成されていた。

高校はもう細分化しすぎて覚えてないけど、とりあえず4科目は保健体育以外なかったのは憶えている。

 

「てことは、高校の成績は完全に平均通りだったのねー」

「一応体育もあったんだけどね。そこも平均通りだったよ」

「ハルさん、よく体育で平均がとれたずらね」

「保健科目で稼げるからね。自慢じゃないけど、相当いい点を取ってたよ」

「コメントに困りまーす」

 

両手をあげて呆れる様子を見せてくれるマリーちゃん。

花丸ちゃんは苦笑い気味だ。

 

「中学の成績もそんな感じだったずら?」

「そうだね。高校のときと大差は…ああ、一つ大きな違いがあったよ」

「違い?」

「そうそう。一つだけ得意な科目があってね」

「初耳でーす」

「何が得意だったずら?」

 

中学の時、5教科に関してはほぼオール3だった俺。

しかしながら、4教科の中には一つだけ5しか取っていなかった科目があるのだ。

 

それが何か。

布屋さんの孫ということを考えれば、自然とわかるだろう。

 

「技術家庭科は、ずっといい点だったよ」

「え?なんで?」

「ハルさん、家庭科目得意だったずら?」

「…君たちはこのお店を何のお店だと思ってるんだい」

「「雑貨屋」」

「あっはっは。涙が出てきそうだよ」

 

久しぶりに少し傷ついた。

確かに、この子達の目につくとこではあまり仕事はしてないかもしれないけどさ…。

 

「ソーリーソーリー。ジョークだよー。私がそんなの忘れるわけないでしょー。ね、花丸ちゃん!」

「え?…も、もちろんそうずら!わ、忘れるわけないずら!」

「……」

 

花丸ちゃんは忘れてたようだ。

いや、うん、いいんだけどさ…。

 

「ほ、ほらハル!技術家庭科の点よかったんでしょ!その話してよ!」

「そ、そうずら!」

「なんか釈然としないけどね。…まあいいか」

 

強引な流れではあったけど、せっかくなので俺の成績自慢をさせていただく。

 

「布屋さんってこともあってね、裁縫関係はまあ人より詳しいわけだよ」

「そうだねー」

「で、ご飯作ることが多かったから、調理関係の方も得意だった」

「ハルさんの作るご飯、おいしいずら〜」

「そんなわけで、基礎になる知識がもともと多かったこともあって、家庭科は人より得意だったんだ」

「なるほどー。あれ、でも技術科目は?」

「丸は機械とか苦手だから、そっちは本当にダメだったずら」

「うん、電子辞書をパソコンっていうくらいだしね」

「ハンドドライヤーを普通のドライヤーみたいにして使うくらいだもんねー」

「そ、それは忘れるずら!」

 

顔を赤くしてあわあわしてる花丸ちゃん。

可愛い。

 

「技術系科目に関しても、婆さんができない分俺が憶えてたんだよ。婆さん、機械まともにできないくせに機械の恩恵は受けてたからね」

「機械の恩恵?」

「エアコンとかパソコンとか…洗濯機とかかな」

「普通の家電ですねー」

「壊れたら直せって無茶を言われることも少なくなくてね。弄れるとこは自分で弄ってたんだ」

「す、すごいずら…」

 

そんなもん中学生に頼むなよといつも思っていた。

ていうか今でも思う。

 

「まあそういうわけで、技術科目までできるようになったというわけだよ」

「そんなとこまでバーバの影響があるのねー」

「すごいお婆さんだったずらね」

「うん…そうだね。すんごい婆さんだったよ」

 

人使いの荒さが。

 

「でも得意科目が技術家庭科と保健かー…変わってるねー」

「確かに、そういう人はいなかったずら」

「珍しいタイプだとは思うよ」

 

ちなみに。

それを理由に一つとんでもないあだ名をつけてくれた方がいらっしゃった。

 

そのあだ名というのは…

 

「その得意科目を見て、『下ネタと機械を一緒に煮込んだ男』って言ってくれた人がいたよ」

「おー!ハルっぽい!」

「ハルさんっぽいずら!」

「あれ?バカにしてない?」

 

笑いながら合ってる合ってると連呼する彼女たち。

 

今一度、彼女たちが俺をどう認識しているのか問い正す必要がありそうだ。

 

そう思う日だった。

 

 

 

 

5年ほど前。

 

「うわー…ハルくん、また技家に5ついてるよ」

「美渡さん、勝手に通知表見ないでくださいよ」

「まあまあ気にしないで。それより、技家、すごいじゃん」

「唯一の得意科目ですからね」

「保健体育は3…ああ、保健でとったのね」

「俺が体育で点をとったという可能性を考慮してください」

「あっはっは。ありえないでしょ!」

「…ノーコメントです」

「しかしあれだね。これだけ得意科目が偏ってると…何かあだ名をつけたくなるね」

「いや、勘弁してください」

「…なぜあだ名を聞く前に否定するのさ」

「碌な予感がしないからです」

「まあまあ、そう言わずにさ」

「…できる限りまともなものにしてくださいよ」

「オッケー!んー…保健が得意…エロい…下ネタ…」

「おい」

「技術…電気…機械…」

「中学生の連想ゲームですか」

「家庭科…料理…焼き料理、煮込み料理…」

「あなたは家庭科で何を学んでるんですか」

「よし!3つの特徴を混ぜて、『下ネタと機械を一緒に煮込んだ男』にしよう!」

「長いし言いにくい!全然あだ名として機能してないじゃないっすか」

「じゃあ略して『下ネタ』」

「保健の先生に謝ってくださいこの野郎」

 

夕日が差し込む店内。

くだらない話をするその二つの影。

 

終わりも意味もないそのやり取りは。

その後もしばらくの間続いていたのだった。

 





ご視聴ありがとうございました。

今回は学校の成績のお話でした。
成績の話って、原作だとあまり触れていないので、ほとんどイメージです。
まさか花丸ちゃんが、文系より理系の方が得意ってことはない…はず。
マリーちゃんはおちゃらけてるけど、理事長だし勉強はできる…はず。

それでは何かありましたらお願いします。
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