Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。
ようやく、最後のメンバー、梨子ちゃんの出番になります。
梨子ちゃん、可愛いですよね。


転入生と布屋さん

千歌ちゃんの家の隣に、お引越しでやってきた家族がいるらしい。

そんな情報を聞いたのは、千歌ちゃんたちが東京へ行く1週間ほど前だ。

 

「ここに引っ越してくるって珍しいよねー」

「そうだねー。どれくらいの歳の人なんだろう」

 

そんな会話を、千歌ちゃんと曜ちゃんがしていたのを思い出したのは、ついさっきのこと。

今日、あの2人が東京から帰ってくる。

お土産を今日中に持ってきてくれるらしいが、おそらく夕方だろう。

そう考え、今の内にダイヤちゃんに依頼された物品を届けに行くことにした。

 

荷台に荷物を乗せ、校門のあたりに来たところで、別のお客さんを見つける。

あたりをキョロキョロしているが、何か用事でもあるのだろうか。

しかし気になるのが…

 

「制服、ここのじゃないようだけど…どこの高校だったかな」

「わっひゃあ!」

 

ものすごい驚いて飛び退かれてしまった。

ちょっとショックだ。

 

「ああ、えと…驚かせてしまったかな。申し訳ない」

「え、あ、いや、すみません、こちらこそ」

 

そこにいたのは、ワインレッドの髪をした女の子。

これまた、随分かわいらしい女の子だこと。

 

「改めて、こんにちは。自分、この町で布屋をやってますアワイと申します。あそこの店ですね。そちらは?浦の星の生徒ではないようですが…」

 

そう言って、うちを指差す。

こうしてみると、お世辞にも現代的な建物ではないなと改めて思う。

とりあえずここは敬語だ。

どう見ても目の前の女の子は俺より年下だが、それは敬語を使わない理由にはならんのだ。

 

「布屋さん…?あ、すいません。私、桜内といいます。えっと…来月からここに通うんです」

「なるほど。その下見ってことですか?」

「はい。でも、入っていいかもわからなくて」

 

それでキョロキョロしていたのか。

 

「だったら、一緒に来ますか?ちょうど自分も、ここに用があって来たので」

 

その提案に、一旦キョトンとした表情を見せた桜内さんだが、すぐにほころんだように笑みを見せてくれた。

 

「ありがとうございます。ご一緒させてもらいます」

 

人生初のナンパ成功。

これは嬉しい。

目的地が学校でなければ、確実に逮捕事案だが。

 

台車をガラガラしながら、生徒会室に向かう。

とりあえずは、校内探索の許可を会長にもらうことにしたのだ。

俺の目的もダイヤちゃんなので、ちょうどいい。

 

「布屋さんって言ってましたけど…アワイさん、何歳なんですか?」

「20歳です。今年21になりますがね。そちらは…3年生ですか?」

「いえ。今年で2年生で…私、そんなにおばさんに見えますか?」

「いやいや、対応が随分落ち着いてますから。大人っぽく見えたんですよ」

 

冗談を言ってくれる程度には、心を開いてくれたらしい。

そんな、なんてことはない雑談を交わすこと数分。

はっきりとわかったのは、この子がとてもいい子だということだった。

 

 

 

 

「…と、こんなもんですかね」

「…ええ、頼んでいたものはこれで全部ですわ。ご苦労様です。それと…桜内さん、でしたっけ?」

「は、はい」

「この方に、何か破廉恥なことはされませんでしたか?」

 

生徒会室にて。

持ってきた備品の報告をダイヤちゃんに済ませるのと同時に、桜内さんをダイヤちゃんに紹介した。

流れとして、正しい大人の行いのはずなんだが。

 

「ダイヤちゃんは俺をなんだと思ってるんだい?」

「毎朝女子高生を見て楽しむ男、ですわね」

「否定はできないけど、手は絶対出さないよ」

「…的を絞って、出していただきたい手もあるんですけどね…」

「商売の話かい?最近は確かに、いろいろ手を出している気はするが」

「はあ…。そうではないのですけど」

「あはは…えと、私は何もされませんでしたよ」

 

苦笑い気味の桜内さん。

こういうときにドン引きしないだけでも、性格の良さが伺えるというものだ。

 

「それじゃ、俺はそろそろ仕事に戻るよ」

「あら?仕事中でしたの?」

「うちは月曜定休で、それ以外は毎日開店中だよ」

「あなたを見ている限りは…いえ、なんでもありませんわ」

「今日はなかなか辛口だね、ダイヤちゃん」

 

まあ言い合うつもりはない。

というか、言い合って勝てる土俵じゃない。

非常に悲しいことだが、ダイヤちゃんは間違ったことは言ってないのだ。

 

「それじゃあ。桜内さんも、機会があれば」

「あ、今日はありがとうございました」

「いえいえ。貴重なべっぴんさんとの会話ですから。店番より有意義な時間でした」

「べっぴんって…///」

「はあ…またそうやって、女性を口説くのですね」

 

などというダイヤちゃんの言葉はひとまず聞かなかったことにして、桜内さんに話しを続ける。

 

「それと」

「は、はい!」

 

いや、そんな畏まらなくても。

 

「敬語、使わなくていいですよ。というか、敬語だと落ち着かなくて」

「え、でも歳上の方にそれは」

「歳上なんて意識しなくていいですわ。ハルさんの周りは、みんなそんな感じですし」

「そうそう。それに、敬語だと妙に距離感を取られてるみたいで落ち着かないんです」

「じゃ、じゃあその…ハル、さん?そっちも、敬語はなしにしましょう」

「おっと。そう言ってくれるならそうしよう。桜内ちゃん?」

「梨子です」

「じゃあ梨子ちゃんだね」

「ふふ。名前、親以外に呼ばれたのは久しぶり」

「そうかいそうかい。お暇なら、いつでもうちに来るといいよ。君くらいの歳の子、うちに結構来るんだ」

「ええ。私、手芸も結構好きだから。いろいろ買いに行くわ」

「それじゃ、今後とも、ぜひご贔屓に。もちろんダイヤちゃんも」

「ええ、また」

 

手を振ってくれた2人を背に、帰り道を歩く。

実に幸せな時間だった。

これで、明日からも頑張れるというものだ。

 

 

 

 

店に戻ってきた。

とりあえず看板を営業中に返そうとしたとき、後ろから声が聞こえてきた。

 

「ああー!やっと帰ってきたー!」

「ハルくんどこ行ってたのー!」

「いや、どこって…」

 

思いの外、彼女たちは早く帰ってきたらしい。

しかも、どういうわけかご立腹の様子で。

 

「商品のお届けに行ってたんだよ。立派なお仕事」

「だったら先に言ってよー!」

「いやなんでやねん」

 

身を乗り出してくる千歌ちゃんに軽いチョップを入れる。

外回る度に報告してたらキリがないわ。

 

「それで、どうしたんだい。東京行ってたんだろう?」

「あ、そうそう」

 

要件を思い出したのか、千歌ちゃんと曜ちゃんが何か入った袋を手渡してくる。

 

「はいこれお土産!」

「私からもだよ!」

「わざわざありがとう。でも、明日でもよかったんじゃないのかい?」

「そ、それは…その…」

 

なにやら言い淀んでいる。

千歌ちゃんがはっきりとものを言わないのはちょっと珍しい。

 

「千歌ちゃん、昨日のハルくんのメールで、すごい喜んでたんだよー。それで、明日は真っ先にお土産持ってこうって…」

「わー!わー!よ、曜ちゃんこそ昨日、『私の方にはメール来ないのか〜…』って言ってため息ついてたのにー!」

「ちょ、ち、千歌ちゃん!それは内緒って約束だったのにー!」

 

なんかよくわからないが、とりあえずは昨日のメールを受けてお土産を真っ先に持ってきたらしい。

つまりはあれか、催促していると思われたのか。

 

「2人とも、店先ではあんまり騒がないでおくれ。お礼と言ってはなんだけど、お茶くらいは出すよ?寄ってくかい?」

「いいの?わーい、それ、私も食べたかったんだー」

「ヨーソロー!」

「あれ?お土産を開けるつもりはなかったんだけど…」

 

まあ、彼女たちが買ってきたものだ。

よしとしよう。

 

春休みが、間もなく終わる。

 

各々の思いを胸に。

 

新たな1年が、始まる。




ご視聴ありがとうございます。
次回から、本編に合流していきます。
キャラ同士の呼び方、未だにわかっていない組み合わせとかあるので、そのへんご意見があればお願いします。
それでは。
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