Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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初めましてこんにちは。
今回は一年生三人とのお話になります。



駄弁るAqoursと布屋さん8

『ミーン ミーン ミーン』

 

「あっつ…」

「あついずら…」

「あ、あはは…うゅ…あついですね…」

「…気持ちはわかるけど、あまり連呼しないでほしいね」

 

机に伏せたり椅子にだらしなくもたれかかったりしているのは、本日うちへやってきた一年生三人組。

みんなうちわを持ってはいるのだが、蒸し風呂のような暑さになっているこの部屋では、扇いだところで焼け石に水でしかない。

 

気温がまだまだあっつい夏の午後1時。

雲一つない青空でなお、その存在をこれでもかと主張する太陽。

 

うちのお店は現在臨時休業中となっているのだった。

その原因は、この暑さ。

 

「最初、暑いから休業って何事かと思ったけどね」

「エアコン壊れちゃったって聞いて納得しました」

「でも、扇風機まで一緒に壊れたのはなんでずら…?」

「それは俺が聞きたいんだがね」

「くっくっく…それこそ堕天使の呪い…」

「電気機器になんの恨みがあるんだい、その堕天使は」

「地球温暖化の天罰ずら?」

「ずいぶん地球に優しい堕天使だね」

 

灼熱の気温に、エアコンと扇風機の故障。

正直、こちらとしてもまともな接客などできそうにないし、お客さんにもこの中で商品の話などしたくないだろうと考え、本日は臨時休業にしたのである。

 

当然、店の扉にも『本日臨時休業』と書いて紙を貼っておいた。

その上で、暑さを凌ぐためどっか涼しい所にでも行こうと思っていた所に、一年生三人組がやってきたわけである。

 

「いよいよ経営が成り立たなくなって、閉店するのかと思ったわ」

「さ、最初は焦りました」

「びっくりしたずらー」

「俺はすごい形相で入ってきた君たちにびっくりしたんだけどね。というか、休業って書いてあっただろう。閉店なんて書いた覚えはないよ」

「あんたの休業って、そのまま再開しないパターンになりそうじゃない?」

「善子ちゃんは俺をどう見てるんだい」

 

なんて話をしている間も、気温が下がることはもちろんない。

冗談を言い合うのもいいけど、まずはこの蒸し風呂空間から出なくては。

 

「さっきも話したけど、エアコンの修理が終わるのは明日のお昼らしいからね。ひとまず気温が下がる夕方まで俺はどこかに行くよ」

「行く当てでもあるの?」

「喫茶店とかカラオケとか漫画喫茶とかかな。別に公園とかでもいいんだけど…」

「この時間だと、屋外はどこでも暑そうですね」

「そういうこと。だからどこかエアコンの効いた場所にでも行こうと思ってるよ」

「ふーん」

 

できればあまりお金がかからない所がいいんだけど…

どこにしようかな。

 

図書館とかも悪くはないかな。

 

などと思っていた時だった。

 

「丸たちも、ついていってもいいずら?」

 

花丸ちゃんからそんな質問を投げられた。

思わぬ質問だ。

 

「君たちもかい?そりゃあもちろん構わないけど…どこに行くかも決まってないよ?」

「もともと暇つぶしで来てるようなものなんだから、暇が潰せればそれでいいわよ」

「わ、私もご一緒したいですっ」

 

善子ちゃんとルビィちゃんもわりと乗り気みたいだ。

一人でいるよりはもちろんこの子達といた方が楽しいし、こちらとしてはありがたい話である。

 

「君たちがいいならぜひ頼むよ。俺の暇つぶしに付き合っておくれ」

 

 

 

 

「…まあ、確かに涼しいには涼しいと思うけど」

「おおー!綺麗ずらー!」

「人が全然いないですけど…いい場所ですね」

「穴場スポットだからね。俺含めて、一般の観光客の人はほとんど来ない場所だよ」

 

眼前に広がる海。

全力で日光を降り注ぐ太陽に対して、海面もまた真正面からその光を反射する。

 

綺麗に輝く海面とこの暑さは、今海水浴をするのに十分適切な条件だということを目と肌で感じさせてくれる。

 

「あの会話から海に来るとは思わなかったわ。喫茶店行くとか言ってなかった?」

「もともと一人でどっか行くつもりだったからね。四人だったらここがいいかなと」

「別に不満があるわけでもないんだけどね。びっくりしただけで」

「それはよかったよ」

 

正直、善子ちゃんの言うように行く場所としてはあんまり適切な感じはしない。

とはいえ、本当に行き先に困ったのも事実。

 

そんな時、ふとこの場所を思い出したので、これも縁だと思い彼女たちを連れてきたのだった。

嫌な顔されたらまた別のとこにでも行こうと思っていたが、思いの外評判は悪くなさそうだ。

 

「ハルさんもこっちくるずらー!」

「波、冷たくて気持ちいですよー!」

「ってあんたたち、水着着てないんだからあんまり濡らしちゃダメよ!」

「ちょっとくらい大丈夫ずらー」

 

ちなみに、来る途中にみんなのおうちに寄って水着は持ってきてある。

一般的な海水浴スポットではないので更衣室は近くにないので、車の中か岩場の陰を使ってもらうことになるかな。

 

「って、うわー!スカートが水浸しずら!」

「言わんこっちゃない。ほら、もう早く着替えるわよ」

「あ、私も」

 

そんな会話の後、スカートの端をつまんだ花丸ちゃんと善子ちゃんルビィちゃんの二人が戻ってきた。

 

「そんなわけで着替えるわ」

「うん。それがいいと思うよ」

「スカート、結構濡れちゃったずら」

「と、とりあえず乾かそうね」

「ただでさえ服も薄着なんだから、透けちゃったらどうするのよ、まったく」

「俺は透けてても一向に構わないよ」

「その時はハルの目を魔術で目潰しするから」

「…先に言っておくけど、砂浜の砂を眼球めがけてかけることを、世間では魔術とは言わないからね」

 

だから手に握った砂を早く放して欲しい。

 

「じゃ、じゃあ向こうで着替えてきますね」

「ハルさん、覗いちゃダメずらよ?」

「うむ。それはフリ…ああ、冗談だから睨まないで善子ちゃん」

 

このままだと握った砂を早くも投擲されかねない。

そんな危機感を感じた俺は、おとなしく口を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

「ハルさーん、待たせてごめんずら!」

「おかえり花丸ちゃん。そんなに待ってないよ。善子ちゃんとルビィちゃんは?」

「よくわからないけど、少し遅れてくるって言ってたずら」

「ほう」

 

どうしたんだろう。

体調でも悪いのかな?

 

そんな心配をしつつ、水着の花丸ちゃんを見る。

 

身長は非常に小柄で、まだ幼さを感じさせる雰囲気。

栗色の髪とオレンジの水着の組み合わせは、なんとなく温かみを感じさせる。

 

そして何より。

 

「…とても高校一年生とは思えないね」

 

あるところを見てそんな言葉が口をつく。

いやまあ、どことは明言しないことにしておくが。

 

「ん?何の話ずら?」

「ただの独り言だよ」

「そう言われると気になるずら」

「…あまり深く聞こうとすると、痛い目を見ることになるよ」

 

俺が。

 

だらだら話をしていたら、やがて善子ちゃんとルビィちゃんもやってきた。

 

黒を基調としたいかにもそれっぽさを感じさせる水着を着ているのが、善子ちゃん。

逆に、なんとなく普段とギャップを感じさせる青色の水着を着ているのがルビィちゃんである。

 

「お、お待たせ」

「お待たせしました」

「おかえり二人とも。ちょっと遅かったね」

「ま、まあね…」

「あ、あはは…」

 

どちらもなんだか複雑な表情をしている。

はて。

 

「二人とも、なんだか様子が変だね。どうかしたのかい?」

「ずら?」

 

何気なくした質問。

だが、質問したら明らかに暗い空気が流れ始めた。

 

ずう〜ん。

 

そんな音が聞こえてきそうだ。

 

「…ずら丸と並ぶのよ」

「…どうあっても自信なくします…」

 

まるで呟くように。

そして呪詛のように、口からそんな言葉を漏らす二人。

 

「…コメントに困るね」

 

先ほど、花丸ちゃんのスタイルに魅力を感じただけに、なおさら言葉に詰まる。

ここは下手なことを言うのはよそう。

 

「まあそうは言っても、君たちだって十分すぎるほど魅力的だよ。かわいいし、よく似合ってる」

「ほ、本当に?」

「嘘は得意じゃないんだ。言葉通りに受け取ってくれ」

「そ、そう?は、ハルも案外わかってるじゃない」

「か、かわいい…。えへへ」

 

思ってたより効果があった。

さっきまでの暗さは結構緩和されたようだ。

 

などと思った矢先。

 

「…ハルさん、丸は魅力的じゃなかったずら…?」

 

もちろんこの言葉の発信源は花丸ちゃんである。

あちらを立てればこちらが立たず。

 

言うまでもなく、みんな魅力的なのは事実なんだけどなあ。

 

 

 

 

「いてて…筋肉痛が…」

「海で遊んだだけで筋肉痛なんて、運動足りてないんじゃない?」

「ま、丸も痛いずら…」

「運動不足はお揃いだね、花丸ちゃん」

「不名誉なお揃いね」

「あ、あはは…」

 

翌日。

体が軋むような動きをする俺と花丸ちゃん。

 

想定してたより海を楽しんだ俺たちは、案の定日頃の運動不足が祟って筋肉痛に襲われているのだった。

 

「花丸ちゃん、Aqoursの練習では筋肉痛あまり起きなくなってきたのにね」

「ストレッチとか入念にしてるからならなかったずら…」

「確かに、準備運動はしたけど、終わってからはほぼしてないね」

「いや、それにしても情けないでしょ」

 

呆れる善子ちゃんと苦笑いのルビィちゃん。

 

しかしながら、その表情に昨日のような不快感の色はない。

修理の完了したエアコンが、部屋の気温を快適に保っているのが理由だろう。

 

「そういえば昨日のこと、ダイヤちゃんたちに話したのかい?」

「ああ、はい。昨日帰ったら、どこに行ってたんだーって聞かれたので…」

 

 

 

『ルビィ、今日はハルさんのとこに行ってたんですのよね?」

『あ、うん。そうだよ。ちょっとはしゃぎ過ぎちゃった』

『ふふ。楽しめる時楽しむのはいいことです。それで、何をしてたんですの?』

『人気のないところでね、遊んでたんだよ』

『……ひとけのないところ?』

『うん!ハルさんが昔から知ってる穴場スポットで、善子ちゃんと花丸ちゃんの三人で遊んだの!』

『…な、なな…!ど、どういうことですの!?』

『え、ええ?いや、ハルさんが、汗だくになっちゃうからちゃんとした場所に行こうって…あれ?お姉ちゃんどうしたの?』

『なんでもありませんわ。ただ鞠莉さんと果南さんに連絡をとっているだけです』

『うゅ?』

 

 

 

「っていうことがありました。お姉ちゃん、なんであんなにびっくりしてたんだろう」

「ダイヤさん、面白いずらー」

「そうね。確かに面白いことになってそうね」

「ちょっと待って」

 

なんかすごく嫌な予感がする。

てか善子ちゃんは勘付いてるよね。

 

「ルビィちゃん」

「なんですか?」

「…俺たちが昨日どこに行ったかはちゃんと話したのかい?」

「どこって、人気のないとこに…」

「海ってちゃんと行ったかい?」

「あ、言ってないかもです」

「かもじゃなくてどちらかはっきりしてくれると嬉しいね。場合によっては俺の今後に関わるんだ」

「いや、この流れだと多分言ってないでしょ」

 

冷静なツッコミは善子ちゃん。

いや、今場合は冷酷とも言えるかもしれない。

 

『ブルルルルルル』

 

タイミング良くか悪くか。

スマホにメールの着信音。

 

表示される相手の名前。

 

『黒澤ダイヤ』

 

タイトルはなく、本文が一言。

 

『鞠莉さんと果南さんを連れて、今からそちらに行きます』

 

 

「案の定誤解されてるわね、これ」

「楽しそうに言わんでくれ」

「まあ、誤解を解くのは手伝ってあげるわよ」

「ほ、本当かい?」

「まあ」

 

「鬼の形相した三人が、私の話を聞いてくれたらね」

 

「………………」

 

 

背筋が凍ったように冷える。

寒気に鳥肌が立つ。

 

エアコン、まだ直す必要はなかったかな…。

 

 





ご視聴ありがとうございました。

アニメ二期が始まってます。
今期も文句なしに面白くて大変嬉しい筆者です。
OP、EDもいいので、未視聴の方はぜひ一度ご視聴を。

それでは何かありましたらお願いします。
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