Aqoursと沼津市の布屋さん   作:春夏秋冬2017

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はじめましてこんにちは。
肝試し編前編になります。



キャンプと布屋さん3

夕方。

 

みんなが美渡さんを手伝って夕飯の準備をしている頃。

俺は、山道を歩いていた。

 

理由は、肝試しの準備である。

 

アスレチックレースにてぼろ負けを喫した俺に与えられた罰ゲーム。

それは、肝試しの驚かせ役をやることであった。

 

肝試しのコースは数百メートルの山道。

登りは緩やかだが曲がりくねった道が非常に多く、また明かりもほぼないという、肝試し御用達のコースである。

 

山道だけあって、木があちこちに生い茂っているので、驚かせるスポットは沢山ある。

しかし、驚かせ役が俺一人。

 

定番である後ろから声をかけるとか、物を叩いて音を出すとか、そういうのをやるにはある程度人数がいてこそだ。

 

「さて…どうしたものか」

 

一通りコースを見てみたが、やはり難しそうだ。

共用荷物の中に肝試し用品があったのだが、いずれも人力で起動するものだった。

 

「…驚かせるたびに、次のスポットまで走って先回りするのを繰り返すか…」

 

体力に自信はないが、それしか思いつかない。

そう思い、音を立てずに先回りできるようなコースを探すことにする。

 

 

 

 

「…あれ?」

 

気付いたら、見知らぬ場所まで来ていた。

どうやら、道を探すのに夢中で森の中に入りすぎたらしい。

 

こんなことで遭難はあまりに馬鹿馬鹿しいので、道を引き返そう。

 

そう思ったときだった。

 

 

人がいた。

 

白装束を着た、髪の長い人。

 

シルエットだと女性に見えるが…。

 

今日は貸し切りだったはずだ。

 

迷い込んでしまった人かな?

 

 

俺は。

 

その人に声をかけることにした。

 

 

 

 

「よーし!できたー!」

「おー!ナイススメール!」

「おいしそうだねー」

 

ハルが肝試しの準備に行っている間。

私たちは晩ご飯の準備をしていた。

 

作っていたのは、キャンプの定番料理、カレーライス。

カレーの担当は主に2、3年生。

ご飯の担当が主に1年。

 

と言っても、私はあまり料理は得意じゃないから、物運びとかの力仕事担当だ。

 

「かなーん!ちょっといいー?」

「はーい、今行くー」

 

鞠莉に呼ばれたので、そちらに向かう。

 

「ハルってまだ戻ってきてないわよね?」

「ハル?うん、見てないよ」

「遅くない?」

「うーん…確かにそうだね。様子見てくるよ」

「1人で大丈夫?」

「大丈夫大丈夫。遅くなったら先食べてて」

 

 

 

 

そんなわけで、山道にハルを迎えにきた。

 

「おーい!ハルー!いるー?」

「あー、果南ちゃーん、聞こえるかーい」

 

案外すぐ声が返ってきた。

すぐ近くにいるらしい。

 

気をかき分けて、向こうからハルがやってきた。

 

「どこまで行ってたの?心配したんだから」

「いや、申し訳ないね。ちょいと野暮用があってね」

 

そんなことを言いながら近づいてきた。

そして、ようやくその姿が見える。

 

 

 

「もう、遭難でもしてるかと…思った…………」

「ん?どうしたんだい?」

 

思わず、言葉を失った。

 

木をかき分けて出てきたのは、紛れもないいつものハル。

 

でも。

 

一つだけ。

 

本当に一つだけ、大きく違うところがある。

 

それは。

 

「あ、あの、ハル?」

「さっきからどうしたんだい。そんなに驚いて。俺の顔に何かついてるかい?」

「いや!顔じゃなくて背中!背中についてる!というか憑いてるから!」

 

そう。

 

背中に。

 

黒髪の女性が、覆いかぶさるように乗っかっていたのだ。

その様は、明らかに生きている人間のそれじゃない。

 

「背中?虫でもついているかい?申し訳ないがはらってくれるかい?」

「祓う!?無理、無理だって!」

「え、君でも無理なサイズなのかい?」

「だ、だって人間大だし…」

「でか過ぎじゃね!?」

 

とりあえず、これだけ普通に会話ができるということは、今の所害は無さそう。

 

「と、とりあえずみんなの所に戻ろう?晩御飯、もう出来てるよ」

「おっと。そうだったかい。それはありがたいね」

 

背中にとんでもないものを背負ったままのハルと一緒に、みんなの所へ戻る。

 

どうやら、ハルには見えてないらしい。

でも、この…多分幽霊だけど…この人は、私のことをはっきりと認識しているみたいで、さっきからめっちゃこっちを見てる。

 

これ、みんなにも見えるのかな…。

 

 

 

 

「もう!ハルくん遅いよ!」

「本当よ、まったく」

「すまなかったね。肝試しの準備が大変だったんだ」

「そ、そんなに気合い入れて作っちゃったの?」

「うう…」

「大丈夫だよ、ルビィちゃん。丸がついてるずら」

 

みんながあたり前のようにハルと会話している。

誰一人として、ハルの背中に張り付くそれにコメントをしない。

 

私にしか、見えていないらしい。

 

ハルも戻ったということで、すぐに食事の時間になった。

みんなで作ったカレーライス。

 

美味しい。

とても美味しいのだけど…。

 

「あれ?果南どうしたの?なんか顔色悪いよー?」

「…うん、ごめん、気にしないで」

「体調が悪いなら早めに言うのですよ?」

「2人ともありがと」

 

鞠莉とダイヤが声をかけてくれた。

親友2人は、こういう時は本当によく気付いてくれる。

 

「果南ちゃん、大丈夫かい?」

「ごめん、ハルは黙って」

「あれ?」

 

ハルもこういう所は気付いてくれる。

原因がハルそのものだけど。

 

「ハルくん、気合い入れてくれたんだねー。自信はどう?」

 

そんな質問をしたのは曜。

ニコニコしている。

ハルの仕掛けたものくらいでは驚かされないだろうと思っているんだろうなあ。

 

「正直、君らを驚かせられるほどの自信はないよ。まあ雰囲気だけでも楽しんでくれ」

「一人じゃそんなもんだよねー」

「本物の幽霊でもいれば、それで存分に驚かせるんだけどねえ」

「「あっはっはっは」」

 

いるじゃん!

幽霊!

自分の背中に!

 

その幽霊は、笑っている曜をじっと見続けている。

普段は幽霊なんて気にしていない私だけど、明らかにおかしな光景にさすがに動揺してしまう。

 

だというのに。

 

みんなは、何事もないかのように笑っている。

楽しそうにしている。

 

 

 

「はあー…」

 

ごちそうさまを済ませ、しばしの休憩時間。

頭を冷やすため、私は一人で川のところまで来ていた。

 

せっかくのキャンプなのに。

 

ハルの背中に幽霊を見つけてからと言うもの、ペースを乱されっぱなしである。

 

そんなことを、考えてしまう。

 

考えて、思った。

 

 

「…あれ?」

 

 

ハルの、背中?

 

私ですら、そうそう何度も味わえない、好きな人の背中。

 

それを。

 

そんな場所を。

 

あの幽霊は、何時間も独占しているの…?

 

腹が、たってきた。

 

 

『バシャッ』

 

 

顔に、思い切り水をかける。

 

気を引き締める。

 

 

「幽霊相手でも、ハルは譲れないや」

 

 

ねえ。

幽霊なんかに。

 

その背中、いつまでも預けておけないんだよ。

 

 

 

 

「ねえハル」

「ん?どうしたんだい、果南ちゃん」

「あの…肩とか背中とか、重くない?」

「おお、よくわかったね。実はさっきから妙に凝ってね」

「見てたらわかるよ。ほら肩もんであげる」

「おっと、助かるよ」

「あら、果南優しいのねー」

「ふふ。急にどうしたのですか?」

 

鞠莉とダイヤにそんなことを言われてしまう。

確かに、普段の私らしくないかも。

 

でもね、普段の私に戻るために必要なことなんだよ。

 

ハルの後ろに立つ。

 

そこにへばりつく幽霊は、私の方をじっと見ている。

 

怖くないかと言われれば、そんなことはない。

 

けど。

 

「…そこはねえ…君らの場所じゃないんだよね…」

 

つぶやいて。

 

左手で、ハルの肩を揉む。

 

そして。

 

右手は。

 

 

幽霊の顔面を、思い切りつかむ。

 

 

『!!!???!?』

 

 

声は出ていないものの、幽霊が驚いていることがわかる。

訳も分からないといった表情のまま、徐々にその姿を消していく幽霊。

 

「お〜。すごい軽くなったよ。マッサージ上手だね、果南ちゃん」

「運動する上で、こういうのは大事なことだからね」

「さすがだ」

 

幽霊の姿は完全に消え去った。

成仏、したのかな。

 

「あれ?こんなとこにソルトなんてあったかしら?」

「片付け忘れていたのでしょう。戻しておきますわ」

「あ、それは私がやっとくよ」

 

幽霊って、食塩でも効くんだね。

ポケットに塩の入った瓶を入れながら、そんなことを思ったのだった。

 

 

 

 

「よし、じゃあこの組み合わせで、一組ずつコースを回ってきてくれ」

「ハルさんはどこにいるずら?」

「仕掛けのために、ある場所に留まっているよ」

「こ、こんなに暗いのにすごいですね…」

「まあ大人だからね」

「わ、私は大人になっても平気にはならなさそう…」

 

いや、ハルは幽霊に対してまで鈍感だから平気なだけでしょ。

そう思ったけど、さすがに口にはしない。

 

15分後に最初のペアがスタートということを伝えて、ハルは持ち場に向かっていった。

 

「ハルくん、どういう仕掛けしてるんだろー。楽しみだねー」

「る、ルビィはどちらかいうと不安です…」

「大丈夫!この曜さんに付いてきなさい!」

「お、お願いします!」

 

最初のペアは、曜とルビィの組み合わせ。

くじ引きで決まったので、特に理由はない。

 

「そろそろ時間ですわ」

「ヨーソロー!」

「い、行ってきますっ」

 

懐中電灯を持って、山道へ入っていく2人。

 

本物の幽霊は成仏させたし、よっぽど大丈夫でしょ。

 

そんな考えは、甘かったらしい。

 

 

『ピギャアアアアアアアアアアアアアア』

 

『ひゃあああああああああああああああ』

 

「おおー!いい悲鳴!」

「オー!ナイスボイス!」

「うう…行きたくない…」

「くくく…堕天使とゴースト…本来は相容れぬ存在が、今宵交錯するのよ」

「…善子ちゃんは楽しそうでいいずら」

「ヨハネ!」

 

…曜が、悲鳴?

声のトーンからして、楽しんでいた悲鳴には聞こえなかった。

 

あのハルに、曜が本気で怖がるようなものが作れるの…?

 

無理だね。

絶対無理。

 

じゃあ…あの悲鳴は…

 

そこまで考えた時だった。

 

 

山道入り口に、人の姿が見えた。

 

それは、先ほど私が成仏させた人にそっくりで。

 

一瞬だけこっちを見たかと思えば、そこには挑発するかのような笑みを浮かべていた。

 

まだ、終わっていなかったんだ。

 

 

「…上等だよ…」

 

最初にあれを見た時とは違う。

 

成仏させる方法はわかったんだ。

 

そっちがその気なら。

 

「この勝負、受けて立とうじゃん」

 

ポケットに入っている食塩の瓶を握り、そう呟いた。

 

 

 

 




ご視聴ありがとうございました。

果南ちゃんがちょっとおかしな感じになってきました。
でも果南ちゃんならこれくらいはできると信じてます。

それでは何かありましたらお願いします。
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