IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~ 作:ぼいら~ちん
「一夏が鈴とかセシリアに勝てないのは射撃武器の特性を把握してないからだと思うよ」
「そうなのか?
一応わかってる気でいたんだけど…」
「わかってないから勝てないんだよってボクは思うよ」
シャルが転校してきてはや五日…
先日の一件の事を空に説明したこともあり二人はすっごく仲がいい。
午前中の授業が終わり、午後の自由時間にこうしてアリーナにて俺、一夏、シャル、空の4人で訓練をしているわけである。
「射撃武器の特性の理解か…
なあシャル、実際に使ってみるのが一番手っ取り早くないッスか?」
「それもそうだね
じゃあ一夏、これ使ってみて」
シャルがアサルトライフルを展開し一夏に差し出す。
「え?
他の奴の装備って使えないんじゃないの?」
「ふつうはね
でも所持者が
いま一夏と白式に使用許諾出したから」
シャルが指さした方にホログラムの的が現れる。
「う~ん
俺は火薬銃の扱いはイマイチ苦手なんだよな~」
ビームライフルの方に慣れてしまっている俺は、火薬銃の反動制御がうまく出来ないため狙ったところから少々誤差が生じる。
「へっへ~ん
火薬銃の扱いはボクの専門だからね~」
「そうなのか?」
「クラウ・ソラスのメインはマシンガンですよ?」
「なんで実弾?」
「ボクの機体のモチーフになった人がいましてねえ…2500年前くらいに魔女を倒した陽気なおっさんらしくてねぇ…その人がよく使っていた武器がマシンガンらしいよ
マシンガンと言ってもザクとかギラドーガなんて瞬殺できる威力はあるけどね」
「へ~そうなんスか~」
「ビーム砲とかもついてるけどそれもそのおっさんの武器がモチーフらしいよ」
「おっさんすげーな!?」
「―――基本はこんなもんかな
一夏、試しに撃ってみて」
「おう」
そんな話をしているうちにシャルの説明が終わったようだ。
バァン
一夏が銃の引き金を引く。
シャルのサポートもあり次々に的を狙い撃つ。
全ての的を射抜くと43点と表示される。
ちなみに満点は100点らしい。
「……この間の小テストの点数と一緒……」
「まあ初めてにしては上出来だよ
ボクはこの間やったら89点だったけどね」
「俺のターーーーーン!!
一夏、それ貸して」
「お、おう」
俺は一夏からアサルトライフルを受け取る。
「あ、まだ希には使用許諾を出してないよ」
「ちぇ~」ブン
「銃を投げるな!!」
アサルトライフルを投げ捨てた俺はスぺムエクシギュラムを展開。
銃を構え、狙いを定め引き金を引く。
正確に的の真ん中を捉えていき、俺が打ち終わるとパンパカパーンというコミカルな音とともに100点と表示される。
「いえ~い
まんて~ん!!」
「「なん…だと…!?」」
「まあ星村さんは近接格闘も出来て長距離射撃も出来る万能機に乗ってるのもあるけど
もともと射撃の腕はキラからお墨付き貰ってるからね~」
『満点獲得おめでとうございます。
学園内で3人目です』
「なん…だと…!?」
「……ねえあれってドイツの第三世代型じゃない?」
「……まだトライアル段階だって聞いたけど…」
周囲にいる他の生徒たちの声が聞こえてくる。
振り向くと黒いISを纏った銀髪の少女が視界に入る。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ…」
空が小さな声で呟く…
「織斑一夏…」
「なんだよ…」
「貴様も専用機持ちのようだな。
ならば話が早い。私と戦え」
「やだね。
理由がねえよ」
「貴様にはなくても私にはある…
貴様がいなければ教官が大会2連覇を成しえただろうことは容易に想像できる。
だから、私は貴様を―――貴様の存在を認めない」
千冬さんの大会2連覇…
確かに原因は一夏が誘拐されたことにあるが、一夏を恨むのは筋違いだろう。
むしろ誘拐した組織の方を恨むべきだろう…いわゆる逆恨みってやつだ
「また今度な
それに月末に学年別トーナメントがあるだろ?」
「ふん。ならば―――
戦わざるを得ないようにしてやる!!」
突如ラウラの機体の右肩の砲塔が動き出し大型の実弾砲が火を噴く。
ガキィィン
しかし狙われていた一夏にダメージはない。
一夏の目の前には白い板が4枚並べられており、それが攻撃を防いだようだ。
「ボクさー
いっつも思うんだけどー」
空が若干キレ気味の口調でラウラに話しかける。
その右手にはハイパー・メガ・カノン『クレイヴ・ソリッシュ』が展開されている。
「ユーラシア連邦の軍人も君もさ~どうしてそんなに沸点低いの?
ビールだけじゃなくて頭の中もかなりホットだね」
「貴様…!ふん。
日本の技術力の結晶とか言う機体もパイロットが乗るととても情けなく見えるな」
「実際のところ重要なのは見てくれよりも中身だけどね
味見する?
なかなか刺激的だと思うんだけど」
「いいだろ―――」
『そこの生徒!何をやっている!?
学年とクラス、出席番号を言え!!』
「ふん…」
ISを解除しすたすたとアリーナの入り口に歩いて行ってしまうラウラ。
まあ何事もなかっただけよかったとしよう…
「一夏、大丈夫?」
「おう、助かったぜ
サンキューな空」
空が一夏に声をかける。
「今日はそろそろ上がろうか
空も一夏も希も疲れたでしょ?」
「それもそうだな。
あと、シャルル、銃サンキュな。色々参考になった」
「それならよかった」
「う~ん今日もシャルは可愛いねえ~
流石はボクの弟!!」
「ちょ!?」
空がシャルの胸にルパンダイブを決め込む。
抱きつかれているシャルは少し苦しそうだ。
「お~い早く行くぞ~」
「先に行ってて!!
僕は空をどうにかしてから行くから!!」
「よいではないか~よいではないか~」
ぶんぶんと空を振り回すシャル、しかしなかなか空は離れてはくれない。
「ああ
俺も機体の整備をちょっとしてから行くから先行ってて」
「はーい」
すたすたと歩いて行く一夏。
それとは逆方向に歩いて行く俺。
そしてハンマー投げするみたいに空を振り回しているシャル。
なかなかシュールだな……
◇ ◇ ◇
「お前さ、もう少し自重しろよ。
シャルが可哀そうだ」
「シャルちゃんが可愛いのが悪いんだ!!
ボクは悪くない!!」
機体の整備―――と言っても5分程で終わったのだが―――を終え、更衣室に向かう途中偶然空に会って付きまとわれている。
本人曰く「兄さんがジュース奢ってくれるまでずっとついて行くんだからね!!」だそうだ。
「い、いや…」
更衣室の扉に手をかけた時、中からシャルの声が聞こえてきた。
「つれないこと言うなよ」
「つれないって……」
ドカン
「てめえ…
いい度胸してんじゃねえか…」
「ボクのシャルくんをいじめるな…
ボクは…お前を殺す」
「え!?
俺が何を!?」
「わかってると…」
「思うけど…」
俺と空は握りこぶしを作る。
「「死ぬほど痛いぞ」」
「ギャァァァァァァァァ!?」
ドカッバキッゴリュッメキャッギュイーン
「見たか、これがボク達の!!」
「絆パワーだ!!」
「なにしてるの…?」
後ろから声が聞こえてきた。
振り向くと作業服姿の簪が居た。
弐式の整備を終え、着替えに来たのだろう。
「かんちゃん!!
ちょっと変態狩りしてた☆」
「顔の至る所にかえり血つけながらの笑顔って怖い…」
「まあこんな変態はほっといて部屋に戻ろうぜ
プリン作ったから食べようぜ☆」
「だからかえり血まみれでサムズアップやめて!!」
血まみれの一夏(モザイク必須)を置いて部屋を後にする。
実際のところあれ血じゃなくてケチャップなんだけどね☆
◇ ◇ ◇
部屋に戻ってきて数時間。
プリンを食べ、満面の笑みを浮かべている簪と空。
ちなみにシャルは30分程前に自室に戻った。
シャワーを浴びるらしい。
「ところでお前はいつまで一緒にいる?」
「だーかーらー!!
兄さんがボクにジュース奢ってくれるまでって言ったじゃん!!」
「じゃあニンジンジュースでも作ってやろう
簪、ニンジン買いに行くぞ」
「うん」
「に…ニンジンいらないよ」
空は自分の口に手をあてて首を横にぶんぶんと振り目尻には涙を浮かべている。
ここまで拒否反応を見せるとは…
この通り空はニンジンが大っ嫌いなのだ。
細かく切ったニンジンが入っている料理を出すだけで作った母さんじゃなくて俺に殴りかかってくるわ泣くわで大変だったなあ…
「罪を償えぇ!!ヒャッハハハハハハ!!」
「かんちゃんキャラ変わってる…」
「という冗談は置いといて…
ぶどうジュース買ってきてやる
三人分ね」
「あ、ありがとう…」
「ありがとう兄さん」
「じゃ、行ってきま~す」
部屋を出る。
エレベーターに向かう途中にある一夏の部屋の前を通る。
「きゃあ!?」
「ご、ごめん!!」
部屋からシャルの悲鳴と一夏の声が聞こえてくる。
シャルは確かシャワーを浴びるために部屋に戻った…そしてこの悲鳴…想像できることは…
俺は一目散に部屋に戻る。
「兄さんどうしたの?
血相書いて…まさか…」
「そのまさかだ…
シャルが女だってことが一夏にばれた…」
「「……」」
◇ ◇ ◇
「―――ああ、なんだか話したら色々楽になったよ…
ありがとう。それと今まで嘘ついててごめんなさい」
「……いいのか?それで…?」
「え…?」
「それでいいのか?いいはずないだろ!?
確かに親が居なけりゃ子供は生まれない…
でもそれが子供の未来を操れる権利だってのはおかしいだろ!!
どんな生まれ方をした子供にだって未来を選ぶ権利はあるだろ!!」
「ど、どうしたの一夏?
なんか変だよ?」
「こいつは昔親に捨てられたんだよ。
千冬さんと一緒にね」
「希!?簪に空も!?」
「そ、それは本当なの?」
「ああ
紛れもない事実だ」
「…その…一夏…ごめん…」
「俺の事はいい…俺には千冬姉がいるし、シャルルとか沢山の友達が居るから、それに今更両親に会いたいとも思わない。
それよりもシャルルはこれからどうするんだよ!?」
「どうするって…時間の問題じゃないのかな…
フランス政府もこのことを聞いたら黙ってないだろうし、僕は代表候補生からおろされて…よくても牢屋行きかな…」
「それでもいいのか…?」
「良いも悪いもないよ。
僕には選ぶ権利はないから」
シャルは微笑む。
しかし、その笑みはいつもの明るい笑顔とは程遠くとても痛々しいものだった…
「シャルちゃん減点…
そう言うこと……言うのは減点…」
「え…?」
「罰としてピヨピヨグチの刑だ!!」
シャルに向かって再びルパンダイブする空。
シャルの唇を掴みグニグニといじくりまわす。
「ひ、ひひゃいひょひょら~(い、痛いよ空~)!!」
「悔しいかぁ?
悔しかったらな…ボク達と一緒にここにいろ!!」
「そうだな
それにこの学園にいれば少なくとも3年はフランス政府もデュノア社の奴らも手出しは出来ない」
「ひょうひゅうひょひょ(どういうこと)?」
一夏の言葉にシャルが疑問を抱える。
ちなみにまだピヨピヨグチの刑は施行中だ。
「特記事項第21。
本校における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家、組織、団体に帰属しない。
本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする」
一夏がすらすらと堅苦しい文を口にする。
「つまりこの学園を卒業するまでに方法を考えればいいってハナシッス」
「ぷはぁっ
すごいね一夏は。
特記事項って55個もあるのに」
「勤勉なんだよ俺は」
嘘こけ。
いつも小テストは俺よりも点数下のくせに。
「おい一夏てめぇ…
さっきからなにシャルの胸ガン見してんだよ」
「そうなの…?
一夏のえっち」
「否!!断じて否!!」
「へぇ…いい度胸じゃん一夏…」
「死に晒せ…」
「簪も空もやめてくれ!!」
コンコン
「「「「!?」」」」
部屋のドアのノックされている音が聞こえてくる。
「一夏さん、いらっしゃいます?
希さんと空さんと簪さんもいらっしゃるようですが…
まだ夕食を取られてないようですが、お体の具合がよろしくないのですか?
入りますわよ?」
「ど、どうしよう?」
小声でシャルが話しかけてくる。
「と、取り敢えず!!
早くどっかに隠れるッス!!」
「うん、わかった」
「なんでクローゼットなんだよ!!
ベッドの中でいいから!!」
「あ、ああっそうか!!」
俺は大急ぎでシャルをベッドに寝かせ、布団をかける。
「…って希さん?何をやってますの?」
「AHAHAHAHA
よ、ようセシリアどうした?
こ、これはだな!!シャルが風邪引いたってんで俺が寝かせてるだけだぞ!!」
「ごほっごほっ」
わざとらしく咳き込むシャル。
流石にばれるぞ…
「なにかありましたの?」
「ぜ、ぜぜん」
「そうですか
一夏さんを夕食に連れて行ってもよろしいでしょうか?」
「ど、どぞう」
「シャルルさんもよろしいですか?」
「ごほっごほっ、ごゆっくり」
「ぼ、ボク達も行こうか!
晩御飯まだだったし!!
ね!かんちゃん!」
「う、うんそうだね…
希はシャルくんの看病してて、ご飯は取ってくるから」
「お、おう」
バタンと音をたててしまる扉。
そしてこの空間に俺とシャルの二人しかいない状況が作り出される。
「なあシャル」
「ん?なに?」
「シャルってさ両親のことどう思ってるんだ?」
「…お義母さんは僕の事をいっつもいじめてくるんだ。
でもね、お父さんはとてもいい人だったよ。
いつも僕に優しくしてくれたし…いつも僕の事を気にかけてた…
でも…なんで突然男装してIS学園に編入しろなんて言ったんだろう…」
シャルは目尻に涙を浮かべながら言う。
誰だって裏切られたら泣きたくもなるだろう。
「きっとさ…シャルのお父さんはシャルの事を守りたかったんスよ」
「守る?こんなに酷いことをして?」
「きっとシャルを悪いお母さんの手の届かない場所にいてもらって、全部解決したら迎えに行こうって事だったんじゃないかな?」
「じゃあなんで男装なんかさせたの?」
「企業の広告塔とか俺達と接触させやすいっていう理由をつければお義母さんにも怪しまれずに済むじゃない?
社長はシャルのお父さんだけどこんなご時世だ、実質的な経営とかは全部お義母さんがやってたはずだ」
「そう…なのかな…?
お父さんは悪者なんかじゃないのかな…?」
「信じよう…信じ続ければ思いは必ず届くって」
「そうだよね…
僕、希の言ったこと、そしてお父さんの事を信じるよ」
「それでよし!!
それじゃあ今から楽しい話をしよう!!
シャルってさ…さっきので一夏に惚れただろ?」
「ふぇ!?
そ、そんなことないよ!!」
「はっはーん
絶対に惚れてる」
「も~違うってば~!!」
先ほどとは打って変わっていつも通りの楽しい会話になる。
シリアスシーン苦手なんだよなぁ俺…
誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。
次回
極限の希望と黒い雨
お楽しみに~