IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~ 作:ぼいら~ちん
「来賓の方の席はこっちッスよ~」
6月の最終週、学園がトーナメント一色になり始めた今日この頃…
Bブロックの第一試合に出るはずの俺は準備もせずに来賓の誘導をしている。
なぜか
それは楯無さんに手伝ってとお願い(という名義の命令)されたのである。
あの人が忙しいのは重々承知だ…でも作戦会議をさせて欲しい!!
「お疲れ様、希くん」ドドドドド
「ど、どうも…」
突然後ろから声をかけられる。
振り向くと楯無さんが立っていた。
しかもジョ●ョ立ち。
「の…希…早く行こ…?」
その後ろから慌てふためいたISスーツを着た簪が出てくる。
その右手にはプラカードが握られており『星村希はどこですか?』と大きな文字で書いてある。
「もう行ってもいいッスよね…楯無さん?」
「大方誘導の方も終わったし、いいよ。
ありがとね、お礼として今度生徒会室に来なさい。
ケーキと紅茶でもてなしてあげるから」
「はい。
では、失礼します」
急いで目的の更衣室に走る俺達。
到着するや否や服を脱ぎ捨ていつも通り着替える。
横に簪が居るが、俺はいつも通り服の中にISスーツを着込んでいるので気にしてはいない。
「試合開始10分前…」
「本っ当にすみませんでした!!
以後気をつけます!!」
「よろしい…
対戦相手なんだけど…空ちゃんとレオスのペアみたい…」
「厄介なことになったッスね…」
「それで…作戦なんだけど…」
簪は懇切丁寧に説明してくれた。
要約するとこういうことらしい。
俺が持ち前の格闘戦闘技能を生かし前衛、簪は春雷と山嵐、そして先日完成した
そして空の戦闘能力と機体性能が全くと言っていいほどわからないので取り敢えず先にレオスを倒してそれから二人で空を倒すという俺のようなバカでも数秒で理解できるような単純明快なものだった。
「わかった?」
「オッケー!!
そして簪!!
今大会の目標は?」
「順位は関係ない…二人で一緒にがんばろ…
本気でやったって充実感があれば…次の大会の糧になる…」
「『目標!?』って聞いたら『優勝!!』って答えるッス!!
試合に出るなら勝つ!!
誰だってそう思うっしょ!!」
「優勝…」
「そうそう!!
目標は!?」
「ゆ、優勝!!」
「その意気ッス!!
そろそろ行くッスよ!!」
「うん…
勝とうね…希…」
「おう!!」
◇ ◇ ◇
「星村希、星彩、推して参る!!」
「更識簪、打鉄弐式、行きます!!」
勢いよくアリーナへと押し出される。
そして目の前にはISを纏ったレオスと空が視界に入る。
「あれ?
なんか空の機体、なんか武装増えてない?」
よく見たら先日一夏を弾丸から守った白い板が12枚、翼のようにマウントされている。
それはストライクフリーダムやHi-νガンダムを連想させる…
「これ?
ボクの秘密兵器だよ~
兄さんとかんちゃん相手だと最初から本気でやらないとすぐやられそうだしね」
『試合開始5秒前』
「行くぞ簪!!
目標は!?」
「ゆ、優勝!!」
『3―2―1―』
「行くよレオス!!」
「わかった!!
ニュータイプの力、学ばせてもらう!!」
『START』
ドゴォーン!!
試合開始の掛け声と同時に上空で爆発が起こる。
アリーナの天上に穴が開いており、そこには十体の青いシールドを持った白いISと二十体の黒い大型のバックパックを装備したIS、そしてそれらの前には3機のISが佇んでおり、それぞれ黒、緑、水色にペイントされていた。
「なあスティングー
ここ同じような建物ばっかでどこに目標が居るのかわっかんないよー」
「だったら虱潰しに敵を殺すだけだ。
行くぞステラ」
「わかった…ステラ、あいつら殺す…」
先頭の3機のパイロットと思しき声が聞こえてくる。
「連合のスローターダガーにウィンダム…
そしてガイアとカオスにアビス…
ファントムペインか!?」
「ファントムペイン?」
「説明は後だ!!
空!!お前は一夏達の様子を見てきてくれ!!
あそこだけ雰囲気が異常過ぎる!!」
「了解!!」
「…来る!!」
ガイア、カオス、アビスを筆頭に機体がこちらに攻撃を仕掛けてくる。
「取り敢えずなんとかするか…勘でな」
◇ ◇ ◇
「くっ
なんでダガーがこんなところに!?」
「知るか!!」
ところ変わって第3アリーナ。
俺―スウェンとソルはトーナメントの試合中、突如現れたスローターダガーとウィンダムの大群と戦闘を行っている。
ちなみに対戦相手の女子二人には早々にピットに戻ってもらっているため取り敢えず今は問題ない。
「ガス欠になるのは時間の問題か…」
俺は目の前にいるダガーの頭部をフラガラッハで刎ねながらつぶやく。
動力が核とはいえ変換済みのシールドエネルギーが尽きてしまえば普通のISと同じく強制解除されてしまう。
被弾率はほとんど0に近いが、フラガラッハとビームライフルを使用しているとどうしてもエネルギーを消費する。
「一掃する。
ソル、離れていろ」
フラガラッハを目の前のウィンダムに投げつける。
ウィンダムに刺さったそれにアンカーランチャーを射出し巻きつける。
「邪魔だ」
それを振り子のように自分を中心に振り回す。
みるみるうちに腕やら首やらが飛んでいき敵機体は動きを止める。
「あらかた終わったな…」
「スウェンって結構滅茶苦茶な戦い方するんだね」
「希の影響だな。
残存勢力の殲滅完了。
取り敢えず他の奴らの援護に―――!?」
「あれは…?」
俺達の目線の先には二機のISが佇んでいた。
「あーあ
先遣隊はもうやられちまったか」
「あんたが準備にてこずるのがいけないんじゃない!!」
2機体の名前は『ヴェルデバスター』と『ブルデュエル』
パイロットは…
「シャムス…ミューディー…!?」
俺のファントムペイン時代の同僚…そして一番親しかった仲間…
◇ ◇ ◇
「第一アリーナは…あそこか!!」
一夏達が試合をしているアリーナへ天上から侵入する。
そこにも沢山のダガーとウィンダムが一夏、シャル、そしてマクグリフ先生と交戦している。
「みんなから離れろぉぉぉぉ!!」
ボクは右手に展開した『クレイヴ・ソリッシュ』の引き金を引く。
ビームを照射しながら一夏達にまとわりつく敵をなぎ払う。
光に呑まれた敵機体はみるみるうちに消えて行く。
破壊されていく機体からなにも感じられないからきっとこれらは全て無人機なんだろう。
「一夏、シャル、先生!!
怪我は!?」
「空か!!
俺達は大丈夫だ…
箒も敵が来てすぐにピットに置いてきたから大丈夫だ」
「よかったぁ…
でも…ラウラは?それにあの黒いのは…?」
「あれがラウラだ…」
「な!?」
「空ちゃん、『VTシステム』って言えば代表候補生のあなたならわかるわよね」
「……」
真っ黒の人の形をした何かを見る。
まるで現役時代の織斑先生とその愛機『暮桜』に酷似している。
なにがなんだか正直わからない…でもボクはあることに気づいた…
「これがあいつらのターゲットなのかもしれない…」
「空ちゃん、詳しく聞かせて!!」
「確かにあいつら言ってたんです。
目標は何処なのかって。
VTシステムは敵意を向けられたものに自動的に攻撃を仕掛けるシステム…
軍事転用されてもおかしくない代物です」
「…取り敢えずラウラを救えば戦いが終わるとってことか?」
「確証はないけど…」
ボクは黙り込んでしまう…
なにやってんだろ…ボクの取り柄は明るさだけだってのに…
「やりましょう
この問題を解決することのできる唯一の方法なんだから試してみる価値はあるでしょう?」
先生が言う。
迷っているよりも即行動の方がいいもんね
「…わかりました
行きましょう…一人でも多くの命を救うために…」
◇ ◇ ◇
「よそ見すんなよ青いの!!」
フラタニティとビームランスが交わる。
すぐに鍔迫り合いの状態から抜け出し、再び武器を構える。
あらかたダガー部隊を片づけ、俺はアビスと、簪はカオスと、そしてレオスはガイアとのマッチアップだ。
「お前…
人が死ぬときの感覚を知ってるか?」
「知らねーよ!!
まだ死んだことないからな!!
逆にお前が死ねよ!!」
瞬時加速で接近しビームランスを振りおろしてくるアビスのパイロットもといアウル・二ーダ。
しかし俺は防御も回避もしない。
「堕ちろぉ!!」
しかし俺に攻撃は来ない。
俺とアウルの間にはビームの刃が生じているアラスファンネルがランスを受け止めていた。
「なっ!?」
「人の命を奪う覚悟があるなら、自分の奪われる覚悟もしとけ」
アウルの腹部に蹴りを入れる。
数メートル吹き飛んだアビスに追撃を加えるため俺は瞬時加速で接近する。
「行け!!アラスファンネル!!」
ビームの刃の生じたファンネルがアビスに向かって飛んでいく。
そして幾度にもわたり斬りつける。
「なんだこれ!?
ぐあぁ!!」
そして俺はフラタニティを振り下ろす。
「これで終わりだ!!」
「させないよ」
即座に俺は後ろに下がる。
そしてさっきまで俺が居た場所にビームの雨が降り注いだ。
ビームの雨の射出元を見ると、そこには灰色の機体があった。
「ラウ!!
助かったぜ!!」
「いいんだよアウル。
君はもう下がってていいよ」
「はーい」
「ラウ・ル・クルーゼ…?」
「久しいなノゾミ・ホシムラ…いや今は星村希と呼ぶべきか…」
「なんでアンタが!?
ヤキンで死んだ人間が…どうして!?」
「私とてわからんよ。
しかし、君の母親も、そしてそこにいる3人も同じだろう?」
「アンタなんかと一緒にすんな!!」
俺はクルーゼに向かって突進する。
そしてビームサーベルとフラタニティが交わる。
「私一人をだけを見ていていいのかな?
あの男と同じく私も
「なっ!?」
プロヴィデンスの背部と腰からドラグーンが射出されビームを打ち出す。
その光の雨はカオスと戦闘中の簪の方へと降り注ぐ。
「簪!!」
「ふはははははは!!
食らうがいい!!そして絶望しろ!!」
光は簪を飲み込む。
辺りに煙が立ち込める。
しかし、爆発もなければ悲鳴もない。
そのかわりにこちらに帰って来たのは
「情けないなあオーブの英雄さん?」
「その声は!?」
「また私の邪魔をするか…ムウ・ラ・フラガ!!」
煙が晴れると弐式を纏った簪と黄金のIS―『アカツキ』を纏った男が現れる。
「大丈夫か?
お譲ちゃん?」
「は、はい…」
「ムウさん!!
簪に手ぇ出さないでください!!お姉さんに怒られますよ!!」
「ごめんごめん
取り敢えずさっさと終わらせますか、こんな闘い」
「頼りにしてますよエンディミオンの鷹殿」
「行くぞ!!」
オオワシからシラヌイにパックを換装するムウさん。
そして背部から誘導機動ビーム砲塔を射出、プロヴィデンスに向けて射撃を行う。
「ラウをいじめるなぁぁぁ!!」
ガイアがMS形態からMA形態に変形しムウさんに攻撃を仕掛ける。
しかしムウさんはそれをビームサーベルで受け止める。
「やめろステラ!!
お前はこんなところで戦ってちゃだめだ!!」
「ね…ネオ…?」
「ああそうだ俺だ!!
ネオ・ロアノークだ!!
一緒に帰ろう!!ステラ、アウル、スティング!!」
ムウさんが必死にガイアのパイロット―ステラと他の二人を説得する。
ムウさんの言葉が届いたのかステラは次第に攻撃の手を緩める。
「ダメじゃないかステラ…そんなものじゃ
「死ぬ…死ぬのは…死ぬのはイヤ…イヤァァァ!!」
「やめろステラ!!
くっそ…クルーゼ…貴様ぁ!!」
死ぬという言葉に過剰な反応を見せるステラ…
突然狂ったように攻撃を始め、次第にはムウさんを押し始める…
「クルーゼェェェェ!!」
俺が渾身の一撃を放つが軽々と避けられる。
「目標は達した。
アウル、スティング、帰るぞ」
「りょーかい!!」
「わかった」
「待ちやがれ!!」
「ダメ!!
まずはあの女の子を!!」
「くっ…わかった」
クルーゼ達の機影がどんどん小さくなって行く。
くっそ…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「この裏切り者ぉ!!」
「やめてくれシャムス!!
お前と戦う気なんて…」
フラガラッハとバヨネットが交わる。
その隙に横からブルデュエルによる攻撃が来る。
「あんたがコーディネーターの味方なんてすんのがいけないんじゃないの!!」
「スウェン、下がって!!」
オラージュ・ド・リューヌを展開したスターダストが援護に駆け付けた。
「助かった…」
「お前を殺す…裏切り者のお前を―――はい…わかりました。
けっ命拾いしたな。
次会った時には絶対に殺してやる」
「じゃーねー」
バスターとデュエルは遥か彼方へと飛んで行ってしまう。
どんどん距離が開いて行く…実際の距離も…心の距離も…
「……行こう…被害状況の確認をしなくちゃ」
「そうだな」
俺とソルは機体を駆り、被害状況の確認へと向かう。
◇ ◇ ◇
「一夏!!
エネルギー残量は!?」
「121!!」
織斑ッポイドの猛攻に耐え続け数分。
流石は世界最強のデータを使っているだけあり手ごわい…
「もう弾切れを気にする暇もないってね!!」
クレイヴ・ソリッシュと背部のシールドビットを射出。
シールドビットで攻撃陣形を作り、一斉射撃の準備を整える。
「史上最大の攻撃ぃー!!」
光に呑まれる織斑ッポイド。
しかし、後ろから禍々しい気配を感じ振り向く。
そこには雪片もどきを振りかぶった織斑ッポイドが居た。
「な!?」
思わずこれから来ると思われる衝撃に目を瞑る。
死ぬのかな…ボク…
「空ぁぁぁぁぁ!!」
ガキン
鈍い金属音が鳴り響く。
目を開けるとそこには織斑ッポイドの攻撃を防ぐ一夏の姿があった。
「一夏!?
なんで…?」
「守りたかったんだ…」
「え?」
一夏の言葉に思わず頬を赤く染めてしまう。
「みんなを…仲間を…空を…だからそれに従って動いた…それだけだ…」
「わかった…」
ありがとう…
ボクは腕部マニピュレーターに仕込まれたビームサーベルを起動。
そのまま織斑ッポイドの刀を持っている方の手首を切り裂き一夏を開放する。
「一夏!!」
「わかったぜ、空!!」
二人で獲物を振りかぶる。
「「二人で力を合わせれば!!!!」」
織斑ッポイドの腹部を切り裂く。
その中からぐったりとしたラウラが出てくる。
彼女が気絶する数秒間にボク達と目が合う。
酷く弱っており、まるで助けを求める子犬のようだった…
「お仕置きは勘弁してあげようね、一夏…」
「そうだな…」
そうしてボク達の戦いは幕を閉じた。
◇ ◇ ◇
暗い…真っ暗だ…
そんな中に私はいた。
そしてその暗闇の先の方から二つの光が現れる。
織斑一夏…その男の強さの答え…それと強烈に出会ってしまった…
星村空…男のそれとは別の答え…それに魅了されてしまった…
なぜだ…なぜ貴様らはそんなにも強い…?
『なんでって言われても…』
『ボクが思うには…自分のたった一つの望みに忠実だからかな…』
望み…?
私にもあるぞ…
『なにか大切なものを守りたい…平和だった日常を取り戻したい…戦争をなくしたい…
人の数だけ望みがある…』
『それにどれだけまっすぐに向かい合えるかが強さの源だと思うんだ…
それに俺なんかまだまだ弱い…だから強くなったらやってみたいことがあるんだ…』
やってみたいこと…?
『誰かを守ってみたい。
誰かの為に全身全霊をかけて戦ってみたい』
あの人と同じじゃないか…
お前はどうなんだ…?星村空…
『ボクの望み…やっぱりみんなと一緒に仲良く暮らすことかな…
今までボクは戦争の中で生きてきてその中で大切なものを沢山失った…
だからこそ、目の前にある日常を壊されたくないんだと思う』
しかし…力がなければ大切なものは愚か…自分の身でさえ守れない…
『だからボクは強くなりたい…
今まで失ってきたものの為に…いなくなった人たちが託していった思いを無駄にしないためにも…
託されてきたから歩き続けるんだ…どんなにつらい道であっても…』
そうか…ありがとう…空…一夏…
誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。
次回
告白とキスとあの人の処遇
お楽しみに~