IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~   作:ぼいら~ちん

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PHASE-20 告白とキスとあの人の処遇

「「お邪魔しまーす」」

 

「おおノゾミと譲ちゃん…じゃなかった、簪だっけ?」

 

「はい…であなたはだれ?」

 

「あれ?

言わなかった?」

 

保健室の扉を開けると出迎えてくれたのは長い金髪で顔に傷を持つ男性。

俺が最後に会った時より少し若いけど彼がムウ・ラ・フラガであると言うことを判断するには十分と言っていい程の情報だった。

 

「俺はムウ・ラ・フラガ。

オーブ軍の一佐で第2宇宙艦隊所属だ」

 

「ちなみに自称不可能を可能にする男、他称エンディミオンの鷹ッス」

 

「ぷっ…

中二臭い…」

 

「あのなあ…

俺だってエンディミオンの鷹なんて名前で呼ばれてるんじゃないんだよ…」

 

「ところで…ステラは…?」

 

「御覧のとおり眠ってるよ…」

 

ムウさんは近くにあるベッドに目を向ける。

そこには先ほどまで俺達と戦っていた黒いIS―ガイアの操縦者、ステラが寝ていた。

特に目立った外傷もなく、苦しんでるようでもないので少し安心。

 

「薬物のせいで体はボロボロだったんだが…ここの設備って凄すぎるな

一瞬にして有害な薬物の効果を消すんだもん」

 

「じゃあ…大丈夫なの…?」

 

なんだかんだ言って一番ステラの事を心配してたのは簪だったもんな。

きっと同じ女の子として見過ごせなかったのだろう。

 

「大丈夫だよ。

あとは目を覚ますだけなんだが…」

 

「よかった…」

 

「カンザシ、アンシン!アンシン!!」

 

「だめじゃないハロ…

今は静かにしてなさい…」

 

「う…ネオ…?」

 

ベッドで寝ていた少女がむくりと起き上がる。

 

「ああ!!

まだ寝てなきゃダメッスよ!!」

 

「アウル…?」

 

「は?」

 

「アウル!!」

 

「はいぃ!?」

 

いきなりステラが俺の胸に向かって飛んでくる。

抱きついて来てなかなか離れない…

 

「えらく気に入られたな~

お前の声ってアウルによく似てるからな~」

 

「希…ステラとはどういう関係なの…?」

 

「や、やめてください簪さん!!

それにステラ!!俺はアウルじゃなくて希!!

星村希だ!!」

 

怒り心頭の簪。

背後から黒いものが見えているのはきっと気のせいではない…

ちなみにステラは…

 

「アウル~」

 

頬ずりしてくる。

俺はステラによっぽど気に入られたらしい。

とりあえず放っておこう…飽きたらムウさんのところに飛んでいくはずだ…きっと…

 

「ところで、俺はどうなるんだ?

ISってのを動かせる男って珍しいんだろ?」

 

「それについては私から説明しよう」

 

「失礼しまーす」

 

声のした方向をむくとドアのところに千冬さんと空が立っていた。

 

「あんたは?」

 

「私は織斑千冬。

このIS学園の教師だ」

 

「ちなみにボクは星村空。

そこにいるバカ兄さんの妹です」

 

「ノゾミって妹が居たのか…

知らなかったぜ」

 

「まあ向こうでボクのこと知ってるのはアスランとキラぐらいだしね~」

 

「実際、シンにしか言ってないッスからね」

 

「話を逸らすな」

 

「「すみませんでした!!」」

 

千冬さんが鬼の形相でこちらを睨んでくる。

怖いよぉ…

 

「ところで俺とステラはこれからどうなんの?」

 

「貴様にはここで教師をしてもらおうと思う」

 

「教師!?

俺、教員免許なんて持ってないぞ」

 

「ムウさんってオーブでMSとMAの教官やってんじゃないですか」

 

「それとこれとはわけが違うだろ…」

 

若干呆れ気味で言うムウさん。

 

「大体一緒ッスよ。

教えるのはMSの操縦じゃなくてISの操縦ってだけで」

 

「配属先は4組、セレーネのクラスで副担任をしてもらう」

 

ここ数カ月で2件もとんでもない事件が起こったんで「もうやってらんねぇ!!」とのことで4組と2組の副担任の先生が辞めてしまったらしい。

それにムウさんとセレーネはオーブ軍が『星の扉』を調べる際に面識があるので問題ないだろう。

 

「…いいぜ。

しかし二つ条件がある」

 

「どうぞ」

 

「一つはステラに危害を加えないこと。

もう一つはステラも4組に転入させること」

 

「理由は?」

 

「ステラは見ての通り明るい女の子だけどかなり情緒不安定だからな。

俺が近くで面倒をみる」

 

真っ当な理由だ。

ステラは人体改造を施された生体CPUと呼ばれる連合軍のMSやMAの部品(・・)として扱われていた。

そして彼女たちは時折暴走を起こすようでそれを制御するために『ブロックワード』という特殊な暗示が施されており、それに設定された言葉を偶然耳にするだけで恐慌状態に陥ってしまう。

ステラの場合は『死』というフレーズ。先ほど暴走したのはクルーゼの『死んでしまうよ』という言葉に反応したようだ。

ちなみにスウェンも同じように扱われていたようで、洗脳や投薬が行われていたらしいがステラ達より前の世代であり程度が軽かったためほとんど生活に支障はないらしい。

 

「いいだろう

星村兄と更識はあとでフラガ先生(・・)のことを案内してやれ」

 

「はい

あと千冬さん」

 

「なんだ」

 

「ムウさんって千冬さんより年上だと思うッス」

 

「そうなのか?

私は24だ」

 

「俺は28だな」

 

「なん…だと…!?」

 

実際、ムウさんは31歳だが、髪の長さや顔の傷はそのままに若返ってしまったらしい。

髪が短くて顔の傷がなかったら第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦当時と全く同じだ。

 

「まあ気にすんなよ

よろしくな千冬」

 

「そう言えばラウラは?」

 

「隣の部屋で寝ているぞ。

先ほど目が覚めたのでな、あっていくといい」

 

「了解です」

 

ムウさん達と共に保健室を出る。

しかし俺にはまだ問題が残っていた。

 

「…ステラ…いい加減に離れてくれ…」

 

「ノゾミ~」

 

やっと俺の事を希と呼んでくれたのはいいがなかなか離れてくれない…このまま連れて行くか…

と思ったら…

 

「ステラ、隣の女の子に挨拶だ。

彼女は簪、ステラの新しい友達だ」

 

「私、ステラ。

よろしくね、簪」

 

「うん…よろしくね…ステラ…」

 

ステラが自己紹介をするために俺から離れ、握手を求める。

それに応えて簪がステラの手を握る。

 

「じゃあ、俺とステラの案内よろしく!!」

 

「先に行ってるね…」

 

「ほーい」

 

「またねノゾミ!!」

 

「おうまた後でな!!」

 

そう言ってムウさん達と別れる。

そして空と共に隣の部屋のドアを開いた…

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

教官が出て行ってから数十分。

部屋のドアが突然開き、そこから中に一組の男女が入ってきた。

 

「星村空と星村希か…」

 

「大丈夫?」

 

「ああ、問題ない」

 

「本当に?」

 

「本当だ」

 

空が執拗に問いかけてくる。

結構心配性なのだろうか…

 

「星村希、貴様は何故軍人になった?」

 

「なんでそんなこと聞くの?」

 

「私は軍人になるために『生み出された』ようなものだ…

そうでもないお前が何故軍に入ったのか…何故戦うのか疑問に思ったんだ」

 

「…なんで戦うのか、か…

やっぱり守りたいものがあるからかな?」

 

「守りたいもの…?」

 

「俺は星彩(こいつ)に出会って1年後、6年振りに友達と再開したんだ…戦場でね…

そいつもコーディネーターなんだけど、中立コロニーに居たから戦いなんてものはわかんなくて。

んで、その友達を守るために俺はそいつと一緒に戦った。

それで成り行きで軍に所属したけど、色々あって別の軍に籍を移して…気付いたら偉くなってて…

確かに最初に乗った時よりも強くなった…でも…守れなかったものは沢山ある…

それでも、守りたい人が俺の周りにいるからそのために戦う…状況が状況なら人を殺す覚悟だってしているさ」

 

私の質問に答える希の顔はいつもの明るい表情と打って変わって酷く悲しそうだった…

守れなかった自分に対する怒りが抑えられないのか…逆に守れなかった者達を思って悔やんでいるのか…

 

「答えはこれでいいッスかね…?」

 

ああ…むしろ自分の予想以上のことが聞けて良かったとおもうぞ。

 

「星村希!!」

 

「は、はい!!」

 

「星村空!!」

 

「ほえ?」

 

「貴様らを今日から私の義兄弟にする!!

異論は認めん!!」

 

「ほえぇ!?」

 

「ははっマジスか…

だったら…条件をつけよう

義兄弟になるんであれば俺達のことをちゃんと下の名前で呼んでくれ」

 

「い、いいだろう。

兄の頼みなら仕方ない…

よ、よろしく頼むぞ…希…」

 

「ボクもボクも!!」

 

「そ…空…義姉さん…?」

 

「ズッキューン!!

ボクはは君に心奪われた!!」

 

そう言って私に抱きつく空。

そこそこに大きい胸が顔に当たって…く、苦しい…

 

「はいはいそこまで

じゃ、俺らは用事があるからこの辺で失礼するッス

また明日な」

 

「う、うむ…またな…希…」

 

「兄さんやめてよ!!

まだラウラニウムの補給が済んでないんだから~」

 

空を私から引き剥がし奥襟を掴んで引きずりながら部屋の扉を開け希は出て行った。

 

「ありがとう…

お前達のお陰で楽しく自分探しができそうだ」

 

自分以外いない部屋に私の声が響く…

その声は次第に消えてなくなった……

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「あれ~?

まだ来てないね」

 

「そうッスね」

 

ラウラとの話を終えて俺達は食堂に来ていた。

簪曰く、「みんなでご飯を食べよう…」とのこと。

テレビには『トーナメントは事故で中止になりました』という放送が流れている。

 

「おっ

希に空じゃん」

 

「一夏とシャル!!

二人ともだいじょぶだったか?」

 

「うん!!

あ、一夏七味取って」

 

「はいよ~」

 

「ありがと」

 

「じゃ、俺らもなんか買ってくるわ~」

 

そう言って券売機へと歩き出す。

今回は空は迷うことなくかき揚げうどんを選び、俺はカレーライスの食券を買う。

 

「お前ら早いな~」

 

「ノゾミ~!!」

 

「ムウさんにステラに簪!!

遅かったッスね」

 

「いや~ステラを探すのに戸惑ってね~」

 

「本当はステラが探すのに戸惑ったの」

 

「うん…ムウさんが迷子…」

 

「……」

 

まんざらでもない顔をしてるムウさん。

滅茶苦茶恥ずかしいようだ。

 

「?

その人たち誰?」

 

水のお代わりを貰いにに来た一夏が質問する。

隣のシャルも首を傾げている。

 

「こっちの男はムウ・ラ・フラガさん

明日から4組の副担任になるらしいッス」

 

「じゃああなたが簪を助けてくれた金色のISの操縦者なんですか?」

 

この世界中探してもあそこまで目立つ機体はないだろう。

 

「ああそうだ。

俺はアカツキのパイロットだ

えっと…織斑一夏とシャルル・デュノアだっけ?

よろしくな」

 

「で、隣の女の子がステラ・ルーシェ。

可変型IS『ガイア』の操縦者で4組に転入するんだって」

 

「ステラはステラっていうの。

よろしくね」

 

「おう、よろしくなステラ」

 

ステラは一夏とがっちりと握手をする。

そんな中、俺は自分たちの後ろに数名の女子が居ることを確認する。

 

「優勝……チャンス……消え…」

 

「交際…無効…」

 

「「「うわああぁぁぁぁぁん!!」」」

 

大泣きしながら女子勢は食堂から走り去って行った。

どうなってるんだ?

 

「実はね…今回のトーナメントで優勝したら、希達の誰かとつ、つ……」

 

簪が小声で耳打ちしてくる。

しかし「つ」のあとの言葉が聞こえてこない。

 

「つ?」

 

「付…き合えるらしかったの…」

 

誰がそんなこと許可したのか知らないがそういうことになっていたと納得してしまう。

だから箒もセシリアも鈴も血眼で特訓してたのか…

 

「簪は誰と付き合いたかったんだ?」

 

「ふぇ!?

そ、それは…!!」

 

「誰なんスか?」

 

「か、顔近いぃ…ふぇぇ…」

 

「か、簪!?大丈夫か!?」

 

俺の質問に顔を赤らめる簪。

これは面白いと顔を近づけると簪は顔を真っ赤にして蒸気機関車のように頭から煙を出して倒れてしまった。

助けを乞おうとまわりを見るが、一夏はなぜか箒に昇●拳食らってるし、ムウさんはそれを見て「うまい具合に打ち上がったなぁ」なんて言ってるし、空とステラはシャルに二人して抱きついてるし当然のことながらシャルは二人を引き剥がそうと砲丸投げよろしくぐるぐると回っているというカオスな状況が出来上がっていた。

ちなみに食堂には他に生徒や職員はいなかった…

 

「帰るか…」

 

そう言うと俺は気絶した簪をおぶって自分の部屋に向かって歩き始める。

案外簪って軽いのな。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

翌朝。

朝のSHRが始まるので自分の席に着くと全員座っているはずなのになぜか二つ席が開いていた。

一つはラウラの席。

先日の疲労や怪我がまだおさまってないのだろう。こればかりは仕方がない。

そしてもう一つはシャルの席だ。

今朝あった時には先に行っててと言われたので今に至るわけだがシャルが遅刻とは珍しい。

二度寝でもしているのだろうか。

 

「み、みなさんおはようございます…」

 

これはゾンビですか?いいえ山田先生です。

それくらいの質問が来てもおかしくないくらいに山田先生の顔はげんなりしていた。

 

「はい…これから皆さんに転校生を紹介します…

紹介は済んでいるんですけどね…どうぞ…」

 

言っていることの意味がさっぱりわかんない。

既に山田先生は錯乱してるんだろうか。

教室のドアが開き、一人の少女が入ってくる。

長い金髪を桃色のリボンで束ねている。

いつもこの教室では男子生徒を演じているはずの彼女は今はなぜか女子生徒用の制服を着ていた。

 

「シャルロット・デュノアです。

みなさん改めてよろしくお願いします」

 

前で自己紹介をしている少女はとうとう自分が女子であることを公にした瞬間であった。

事情を知っている俺や一夏は動じないが空と他の女子生徒はざわざわしていた。

 

「シャルちゃーん!!」

 

「うわ!?」

 

空がシャルの胸にダイブ!!

なんか恒例行事のようになっている気がするがきっと気にしたら負けなんだろう…

 

「やっぱりシャルちゃんはなに着ても可愛いねぇ!!

流石我が妹!!」

 

「「「「えええええええ!!」」」」

 

こっちの新事実にもみんな驚きを隠せない様子だ。

レオスなんて驚きすぎて目からハイライトが消え失せてる。

 

「ていうか昨日、男子が大浴場使ってなかった!?」

 

「一夏ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

壁を破って只今推参☆という感じで甲龍を展開した鈴が登場する。

そして一夏に向かって衝撃砲をぶっ放す。

 

「死ね!!」

 

今この状況で思ったことは…取り敢えずこの場にステラがいなくてよかったなぁってことだけだ。

衝撃砲の弾丸が一夏に直撃…と思ったが、一夏の前にはシュヴァルツェア・レーゲンを纏ったラウラがAICで衝撃砲の威力を殺していた。

 

「あれ?

ラウラ、機体直ってんじゃん」

 

「コアは無事だったのでな。

余剰パーツで組み上げた」

 

「流石我が義妹!!」

 

「助かったぜラウ―――」

 

一夏の言葉はラウラによって遮られる。

問題はその方法だ。

なんと一夏にキス(マウストウマウスの)したのである。

そして決め台詞は…

 

「き、貴様を私の嫁にする!!

決定事項だ!!異論は認めん!!」

 

流石我が義妹!!

どのへんが流石かわかんないけど。

 

「アンタねぇぇぇぇぇ!!」

 

鈴とそれに便乗してセシリアがISの武装を展開し教室が壊れるのも時間の問題かと思われた。

その時…

ピンポンパンポーン

 

『1年1組星村希くん、1年1組シャルロット・デュノアさん。

大至急!!生徒会室に来てください。

生徒会長命令です』

 

「あ、お姉ちゃんの声だ~」

 

アナウンスに本音が反応する。

灰色の鱗殻を展開する寸前のシャルも我に返ってこちらをむく。

何か言われるのかなぁ…とでも言うような今にも泣きそうな表情でこちらを見てくる。

 

「大丈夫ッスよ!!

行くッスよ!!」

 

「う…うん!!」




誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。
気付いたらUA数が10000超えてた!!
みなさんありがとうございます!!

次回
いざフランス

お楽しみに~
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