IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~   作:ぼいら~ちん

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PHASE-21 いざフランス

「今度はシャルと飛行機に乗るとはなぁ…」

 

「兄妹二人旅!!

なんか楽しそうだしいいんじゃない?」

 

「あのなぁシャル…俺達は交渉するために行くんだ

旅行に行くわけじゃない」

 

「わかってるよぉ…」

 

隣に座っているシャルが唇を尖らせて少々不満気味に言う。

今俺達はフランス行きの飛行機に乗っている。

ちなみに二人ともIS学園の制服なのだがそれには理由がある。

その理由は数時間前に遡る…

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「あなた達、フランスに行きなさい」

 

「「へ!?」」

 

生徒会室に入るや否や、開口一番に楯無さんから言われた。

テーブルの上には高級そうなティーカップに入った紅茶が4つ。

一つは俺の、一つはシャルの、一つは楯無さんの、もう一つは生徒会の会計職に就く本音のお姉さん、布仏虚(のほとけうつほ)さんのだ。

ちなみにこの紅茶は虚さんが淹れたものらしい…

…うまい…今度淹れ方のコツを教えてもらおう。

 

「シャルロットさん。

あなたの事情は簪ちゃんから聞いたわ。

それで私は考えた、あなたのお父上と縁を切るにしても復縁するにしてもどちらにせよ一度フランスに行かなければならないでしょう?

だから今回は希くんの先日のトーナメントでのがんばりに免じて生徒会の方で旅費は負担するからフランスに行ってきなさい」

 

「は、はぁ…」

 

「ていうかそんな私情まみれの理由で学校のお金を使ってもいいんスか?」

 

「問題ありません。

すでに学園長からの了承も得ています。

お嬢様の我がままを押し通すのにどれだけ苦労したことか…」

 

「あん

お嬢様はやめてよ」

 

「失礼しました。

ついくせで…」

 

俺の質問に虚さんが答える。

確か本音が言ってたな…私の家はむか~しから更識家のお手伝いさんなんだよ~って。

 

「まあそんな感じで行ってきてよ。

実際希君の方も準備(・・)は出来てるんでしょう?」

 

「俺が夜な夜な設計図書いてるの知ってたんスか?」

 

「知ってたどころか後ろから見てたわよ

確か機体の名前はM……」

 

「そこまで知ってんスか!?」

 

「会長、それは立派な犯罪です」

 

「それで僕達はいつ出発すればいいんですか?」

 

「今でしょ!!」

 

「「は!?」」

 

楯無さんの衝撃発言に驚きを隠せない俺達。

なんか楯無さんのスタンスがセレーネに似てる気がする…

そしてあきれ顔の虚さんが口を開く。

 

「ごめんなさい希君、シャルロットさん。

連絡するタイミングがなかったのよ…」

 

「いえいえ虚さんが謝ることではないですよ。

むしろ悪いのは俺のメアド知ってんのにメールくれなかった楯無さんですから

ね~楯無さ~ん☆」

 

「希くん笑顔が怖い」

 

顔の前で握りこぶしを作って楯無さんに微笑む。

べつに怒ってるわけではないですよ。

べつに。

 

「1時間後にお迎えが来るからそれの指示に従って頂戴。

希くんのいない間の学園の安全はこの楯無お姉さんにまかせなさい!!

あ、ちなみにアポ取ってあるからその辺は気にしないで大丈夫よ」

 

楯無さんの他にもセレーネやムウさんもいるから全く問題なかろう。

 

「じゃあ行ってきま~す」

 

「行ってらっしゃい」

 

楯無さんと虚さんに見送られ俺達は部屋を後にした。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

そんなこんなでフランスに到着。

日本の空港を出た時間が大体10時頃に出て大体今は昼ごろ。

今の場所はデュノア社本社ビル前。

時差ボケぱねぇ…めっちゃ吐きそう…

 

「と…取り敢えず行くッスよ…おえ…」

 

「う…そうだね…うっぷ…」

 

ここに着く前に昼食を取ったが二人して盛大に●●たのは言うまでもない。

 

「ほ~

流石世界3位のシェアを誇るデュノア社の本社。

エントランスがすっげー豪華」

 

まさに豪華絢爛の一言である。

高そうな壺や高そうな肖像画、果てにはシャンデリアが吊るされていたりと庶民の俺には考えられない世界が広がっていた…

 

「エントランスは会社の顔って言うしね~

たぶんここだけで数100万ユーロかかってると思うよ」

 

「日本円でおよそ1億以上!?

あぁりえない…」

 

「驚いてないで行こうよ」

 

「お、おう」

 

エレベーターに乗りシャルがボタンを押す。

受付を無視したのはシャルの顔を受付嬢が覚えていた為だろう。

俗に言う顔パスってやつである。

 

ポーン

 

目的の階に到着。

エレベーターの扉が開くと目の前に社長室とフランス語で書かれた表札付きのドアが現れる。

今回の旅の目的地であり最大の正念場である。

なにが起こるか分からないため右手のビジネスバッグの中には拳銃(楯無さんに渡されたもの)が入っている。

 

コンコン

 

「シャルロットです」

 

シャルがドアをノックし社長からの返答を待つ。

そして突然ドアが開き中からスーツを着た痩せ型で金髪の男性が出てくる。

見た目は40~50歳くらいの人で、表情は硬いもののなにか暖かいものが伝わってくる。

 

「入ってくれシャルロット…

君は…?」

 

「俺は星村希です。

今回はシャルのボディーガード及び交渉人としての任を受けご同行させていただきました」

 

「私はオーギュスト・デュノア。

君が栄子の息子か…この子から聞いたよ。

よく似ている…」

 

「光栄です」

 

そのような会話をして俺達は部屋の中に入る。

 

「どうぞお座りください」

 

「ありがとうございます

ところで、この部屋に盗聴器などが仕掛けられている心配性は?」

 

「大丈夫です。

私が最も信頼を置いている部下に確認させました故そのような危険はないです」

 

「じゃあ早速ですが本題に入らせていただきます」

 

俺はバッグの中からクリアファイルを取り出す。

挟まれている紙の表紙には「第三世代型IS設計図」と書かれている。

 

「これは…?」

 

「あなたの会社を倒産の危機から救う可能性を秘めている紙きれです。

俺から出す条件を呑んでいただければこれは無償で提供、さらに設計図の著作権などもそちら側に移譲しましょう」

 

「…まずは条件を聞きましょう」

 

「一つはあなたがシャルを男装させてIS学園に入学させた理由を聞かせていただきたい」

 

「なぜ?」

 

「決まっているでしょう。

シャルの為でありあなたの為でもある

事実、俺もシャルもそれを知りたがっている。

俺はシャルの兄として、シャルはあなたの娘としてね」

 

「…わかった…

シャルロットが私の愛人…栄子との間に生まれた子であることは知っているね」

 

「はい」

 

「彼女が死んだ時…ちょうど2年前だったかな

私はシャルロットの父親として彼女を引き取った。

しかし今思えばそれは間違いだったのかもしれない」

 

「…というと?」

 

「私がシャルロットを引き取った日、私の本妻…イザベルと顔を合わせたんだ。

その時…『泥棒猫の娘が!!』と言ってシャルロットを殴ったんだ」

 

「なんでそんな女と結婚したんですか!?

結婚したとしても離婚も出来たでしょう!!」

 

「私とてそうしたかったさ。

でもあの女はそんなことを認めなかった。

だからシャルロットが中学校を卒業した際に私は思った。

『この子をあの女の手の届かない遠くに行かせれば安全だ』と。

君や織斑一夏のこともありシャルロット自身の適性も高かったから専用機を持たせてIS学園への入学手続きを進めた。

しかしまたあの女からの邪魔が…」

 

「そこまでよオーギュスト」

 

ドアが蹴破られ中にスーツ姿の筋肉質な男が3人と一人の女が入ってくる。

 

「イザベル…」

 

「それ以上言えばここであなたを殺すしかない。

当然あなた達もよ」

 

「他に条件は?」

 

「そうねぇ…そこの設計図も渡してもらおうかしら」

 

「これをどうするつもりなの?」

 

シャルが怒気のこもった口調で質問する。

 

「決まってるじゃない!!

これを使って私の会社を設立するのよ」

 

「嫌だと言ったら?」

 

俺はカバンの中の拳銃を取り出す。

 

「そう…じゃあ死になさい!!」

 

イザベルが俺に拳銃を向け引き金を引く。

大きな炸裂音と共に銃口から煙が上がっている。

しかし怪我をした人間はだれ一人としていない。

コトンという音と共に俺とイザベルの間に何かが落ちる。

よく見ると二つの銃弾が落ちていた。

 

「まさか…

銃弾に銃弾を当てたって言うの!?」

 

「それが出来るから俺はニュータイプとかコーディネーターって呼ばれてるんスけどね」

 

「だ、黙れ!!

あんた達やれ!!」

 

「おらっ!!」

 

スーツの男の一人が俺に向かって殴りかかってくる。

 

「遅い」

 

「なっ!?」

 

しかしそれをあえてギリギリでかわし、勢い余ってつんのめった男の背中に裏拳による殴打を加え意識を奪う。

 

「まず一人目…

どうしたあんたら?

もう終わりッスか?だらしないな」

 

「舐めやがってこのクソガキッ!!」

 

「動きが読める」

 

今度は二人がかりで俺に攻撃を加えようとするがこちらの攻撃範囲内に入るのと同時に攻撃を加え最初の男同様に意識を刈り取る。

 

「さて…残るはアンタ一人だが…どうする?」

 

「あ…あぁ…」

 

自分のボディーガードがただの高校生相手に立て続けにやられたのに驚いたのかイザベルは腰を抜かしておりその手には銃を持ってはいるもののブルブルと震え照準が合っていないため全く脅威にならなかった。

 

「逃げるか?

それならそれで構わないッスけど」

 

「うるさい!!

死ね!!」

 

照準の合わない銃の引き金を引く。

しかしそれは明後日の方向へと飛んでいき壁に穴をあけるだけに終わった。

俺はイザベルの眉間に拳銃の銃口を当てる。

 

「や、やめて…死にたくない…」

 

「怖いか?怖いだろ!!」

 

「やめて希っ!!」

 

バァーン

 

炸裂音とともにイザベルの手に持たれた拳銃が砕け散る。

 

「シャルも同じくらい怖い目に遭ってんだよ…アンタのせいで!!

わかったならさっさとここから居なくなれ!!」

 

「は、はいぃ!!」

 

イザベルは部屋から一目散に逃げて行く。

残った男達も目を覚ますが勝ち目がないことを悟ったのか降伏の意をこめて両手をあげる。

 

「心配すんな

俺はジャンク屋だ。人殺しはしない。

そのかわりにこれからはオーギュストさんに忠誠を誓い彼のボディーガードをやってくれ」

 

こくこくと頷く3人の男。

状況を察してくれたのかそそくさと部屋の外へと出て行った。

 

「君は…一体…?」

 

「ただの臆病な退役軍人ですよ

ところでオーギュストさん、もう一つ条件があるのですが…」

 

「なんだい?」

 

「時間を作ってシャルと遊んであげてください。

こう見えてこいつさびしがり屋っぽいんで」

 

「わかった…」

 

「お父さん…」

 

シャルとオーギュストさんが抱きあう。

二人の間のわだかまりが解消されてよかった…親子の愛っていいよねぇ…

 

「…設計図についてですが…説明を始めてもよろしいですか?」

 

「はい」

 

俺はカバンから少し大きめの端末を取り出し、それを操作するとホログラムでできたISが現れる。

 

「この機体の名前は『M1アストレイ』。

武装はビームライフル、ビームサーベル、シールドのみです」

 

「それでは他企業の機体と大差がないのでは?」

 

「まあまあ最後までお聞きください。

この機体の武器は全てビーム兵器であり、必然的に燃費は悪くなります。

それを解消するために機体の武器系統に使用するエネルギーとシールドエネルギーを独立させるために機体背部に大容量のバッテリーを装備させています。

これで他企業の機体との差別化を図ることができます」

 

「おお!!」

 

「でも…これだけシンプルだと専用機にしたときの装備があまりぱっとしないよねぇ…」

 

シャルがもっともな発言をする。

先ほどまで驚いていたオーギュストさんの顔も「あ…」とでも言っているような顔になる。

 

「そんなこともあろうかと

M1開発のベースになった機体の設計図もあります。

これならわがままなシャルさんをもうならせることも出来るでしょう!!」

 

端末を操作すると別の機体のホログラムが現れる。

その機体を見てシャルは思わず「あ…」と言ってしまった。

 

「これ…スウェンのノワール?」

 

「そう。

この機体は『ストライク』。スウェンの機体はこれに『ノワールストライカー』っていう換装パックを装備したもの」

 

「へ~」

 

シャルが納得したように頷く。

 

「この機体の装甲素材はVPS装甲。実弾装備を無効化する代わりにエネルギーを消費する装甲です。

ちなみにこの機体にもM1と同じ規格のバッテリーが使用可能です。

基本装備は対装甲ナイフ『アーマーシュナイダー』、ビームライフルとシールド、そしてバズーカです。

特筆すべき点は先ほどの会話からご察しのように『ストライカーパック』と呼ばれるパッケージを換装するという方法であらゆる距離での戦闘に対応できるということです。

高機動型の『エールストライカー』、近接格闘戦用の『ソードストライカー』、遠距離砲戦用の『ランチャーストライカー』があり、そして全てのパックを装備した全領域ストライカー『マルチプルアサルトストライカー』があり、これを装備したストライクを『パーフェクトストライク』と呼びます。

この機体のテスターはシャルにやってもらう予定ですが高速切替(ラピッド・スイッチ)砂漠の逃げ水(ミラージュ・デ・デザート)があれば問題なく運用可能でしょう」

 

端末を操作しストライクが各パックを装備した姿を表示させる。

しかしマルチプルアサルトストライカー映像を投射したときシャルが口を開く。

 

「ねえ、このパック…滅茶苦茶燃費悪いでしょ?

それに機体重量の増加が目に見えてるしそれに多機能過ぎてむしろ使い勝手が悪くなってる気がする」

 

「……」

 

思わず黙り込んでしまう俺。

 

「シャルロット、希君に失礼でしょう。

すみませ―――」

 

「一緒だ…」

 

「はい?」

 

「キラと全く一緒の事をシャルが言ってる」

 

「キラって希の友達の英雄さん?」

 

「そうだ

そしてこのストライクの初代パイロットでもある。

ていうかお前とキラで結婚しろ。

お兄さん権限で許す!!」

 

「ま、待ってよ!!

僕には好きな人が!!」

 

「はっはっはっはっ」

 

「お父さんも笑ってないで何か言ってよ!!」

 

こうして俺達の交渉は成功という形で幕を閉じた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

夜。

場所はフランスのデュノア社の傘下のホテル。

なぜかわからんがオーギュストさんが宿の準備をしていてくれたらしい。

しかし俺とシャルは相部屋。

曰く「兄妹なら過ちを起こしはしないだろう」ということである。

 

「は~疲れた~

まさかシャルのおかんがあそこまで過激なことするとは思わなかったッスよ」

 

「あれは僕も驚いたよ…アハハ」

 

俺は冷蔵庫からペットボトルに入ったオレンジジュースを二本取り出しその一本をシャルに渡す。

 

「ん、ありがと」

 

「お気になさらずにっと

さてさて…ストライクの設計図を見て使えそう?」

 

「う~ん…

常にパッケージの換装とかの事を頭に入れながら戦わないといけなくなるのは難しいね…

かなり玄人向けの機体かも」

 

「まあ俺もあの手の機体は使ったことないからね~

機体が出来上がったらムウさんにコツとか聞いてみたら?」

 

「そうだね」

 

沈黙…飛行機に乗っている時にもこんなことがあったがこんなにも気まずくなるとは…

なにもすることがなくて天井を見ていると突然何かが胸にぶつかり押し倒される。

ぶつかってきたものを確認するとなんとシャルだった。

 

「しゃ、シャル!?

な、何をする―――」

 

「ありがとう…」

 

「へ?」

 

「希にも一夏にもすっごく感謝してる。

会社を助けてくれたり…僕達親子の仲を取り持ってくれたり…」

 

「いいっていいって

俺はみんなの笑顔が見れればそれだけで満足ッス」

 

「希ってやっぱりいい人だね…

こんな兄妹が居ることがすっごく幸せだよ」

 

「で空は?

アイツも俺達の兄妹だろ?」

 

「……変態淑女」

 

「あいつの扱いだけ酷くね!?」

 

その夜、俺達は他愛もない話をたくさんした。

その時のシャルはいつも以上に笑顔が輝いていた…




誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。

次回
そらの奇妙な買いもの

お楽しみに~
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