IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~   作:ぼいら~ちん

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PHASE-27 紅い椿とうさぎ耳

「ふわぁ…っつ…」

 

頭が痛い…私が起きて最初に思ったことはそうだった。

昨日の夜に原因があるだろう…ええっと…

マクグリフ先生からぶどうジュースを貰って…飲んだらぽわぽわしてきて…それから…

部屋に戻って…希に…

 

「んぁ…?」

 

「!?」

 

「おぉ…簪…起きてたのか…

おはよう」

 

「お、おはよう…」

 

希と同室であることを改めて認識した瞬間、心臓の鼓動が早くなる…緊張してるだろう…

 

「だいじょぶか?

表情カタいッスよ」

 

「だ…だい…じょう…ぶ…」

 

緊張のあまりカタコトになってしまう…

 

「ダイジョばないじゃん。

そうだ!!まだ朝飯まで時間あるし、海見に行こうぜ!!」

 

「う、うん…」

 

私のことなどお構いなしで…彼は全く気にしてない…寧ろ普段以上にマイペースだ。

でも…それはつまり…私といると気が休まることで…そう考えてみると…

 

「…悪くないかも」

 

「なにが?」

 

「ふぇ!?

な、なんでもないよ!!」

 

「そう

なら良いんスけど」

 

そう言って希は外へと繋がるふすまを開ける。

そこから太陽の光が差し込んでくる。

二人で廊下へと出る。

暫く歩くと希が突然立ち止まった。

 

「おいぃ…」

 

「どうしたの?」

 

「これ…」

 

希が指さす方向には地面に突き刺さったうさぎ耳。

うさぎ耳と言っても何処となく機械っぽい印象を受ける。

そのうさぎ耳の背後には「ひっこ抜いてのーくん!!」と立て看板付きである。

 

「のーくんって誰?」

 

「俺の事だね…

まあ言われた通りにしましょうか」

 

「手伝う…」

 

希がうさぎ耳を持ち、その希の腰に手をまわし私も手伝う。

 

「せーの!!」

 

キュポン

 

妙な効果音と共にうさぎ耳を引き抜き勢い余って尻もちをついてしまう私と希。

すぐさま立ち上がりなにが起きたか確認しようとする。

 

キュイイィィン…

 

「なにか音がする…」

 

「簪!!避けろ!!」

 

どごぉぉん

 

希に押し倒された直後、何かが地面に落ちてきて土煙りが上がる。

 

「な、なに!?」

 

「相変わらず派手な登場の仕方ッスねぇ…」

 

煙が晴れるとそこには巨大なニンジンがそびえたっていた。

きっと空ちゃんが見たら半狂乱状態で逃げだすだろう。

 

『やあやあの~くん!!

久しぶりだねぇ!!』

 

バカン

 

「もうちょい静かにしません?

みんなまだ寝てるんスよ」

 

ニンジンが中央から真っ二つに開く。

その中から不思議の国のアリスに出てきそうな格好をしたうさみみカチューシャ女があらわれる。

 

「ところで箒ちゃんはどこかな?

昨日も探したけどまだ会ってないんだ~」

 

「昨日の爆発音もアンタの仕業か!?」

 

珍しく希がツッコミにまわってる…

箒ちゃんって言ったからきっと箒の知り合いなのだろう…

 

「まあ束さん特製の箒ちゃん探知機があればすぐに見つかるんだけどね!!

じゃあねのーくん!!」

 

「2度と来なくて良いッスよ~」

 

ドドドドドドとでもいう効果音とともに走り去っていくアリスもどき…

それを見送る希の表情はにこやかだが…酷く疲れた感じがする…

 

「あの人…だれ…?」

 

「ん?

あれがかの有名なISの開発者であり箒の実姉、篠ノ之束さんッス」

 

「ええ!?」

 

「驚くことないッスよ~

ISの開発者って大層なことしでかしたけど、実際のところただの妹思い(シスコン)な人だから」

 

…その篠ノ之束博士は現在絶賛指名手配中(全世界で)である…

別に悪いことをしたわけではないらしいがなんせしたことがしたことだ。

各国の首脳達としてはもっとISのコアを作って欲しいんだろう…

 

「きっとここに来たのはきっと箒の誕生日でもお祝いに来たんスよ」

 

「そう…なの…?」

 

「あの人7月7日には失踪してからも手紙くらいは出してたらしいんスよ

あ、これ箒から聞いた話なんだけどね~」

 

「…仲いいんだね…」

 

「まあ幼馴染だしな」

 

にゃはははは、と笑いながら再び歩き始める希。

それについて行く私。

そして更衣室として使われる別館から砂浜へと出る。

 

「きれい…」

 

朝日に照らされた海は昨日のものとはまた別の美しさがあった。

そんななか、浜辺に打ち上げられた流木に誰かが腰かけているのを見つける。

 

「ノゾミ…簪…?」

 

「ステラじゃん

なにしてんスか?」

 

金髪の少女―ステラがこちらを向く。

 

「海…見てるの…」

 

「好きなの…?」

 

「うん!!」

 

ステラが元気に頷く。

 

「…お?

そろそろ飯の時間だ!!

二人とも行くッスよ!!」

 

「うん…」

 

「ごはん~!!」

 

こうして臨海学校二日目が幕を開けた…

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「さて、それでは各班毎に振り分けられた装備のテストをしろ。

専用機持ちは専用パーツのテストだ。

各員迅速に行うように」

 

「「「「「「はーい」」」」」」

 

千冬さんの言葉に全生徒が反応する。

臨海学校2日目は昨日とは打って変わってIS三昧となる。

ちなみに現在地はIS試験用のビーチ。四方を切り立った崖に囲まれており、大海原に出るには一度海に潜らないといけないという映画とかでありそうな秘密基地みたいな感じだ。

そしてこの臨海学校の本当の目的はここに搬入されたISと新型武装のテストだ。

ISを使うので当然のことながら全員ISスーツ姿だ。

ちなみに俺は簪とステラの隣にいる。

専用パーツのテストがない俺は二人の機体の調整、メインとしてはステラのガイアの調整である。

 

「ノゾミさ~ん!!

久々に俺のデスティニーを見てください!!」

 

「私のインパルスもお願いします!!」

 

遠くからシンとルナが走ってきた。

二人のISスーツはザフトのパイロットスーツのように全体が赤かった。

 

「シン!!」

 

「ステ…ラ…?

本当にステラなのか…!?」

 

「この子って…エクステンデッドの…?」

 

「そう言えばまだ会ってなかったんだっけ?」

 

ステラがシンに飛びつく。

余程なついているらしい。

 

「でも…なんで…?」

 

「俺らにもさっぱりなんだ…

この間なんてレイとか議長に会うしさ…」

 

「レイにも会ったんですか!?」

 

「喫茶店で働いてたッスよ。

今度一緒に行く?」

 

「はい!!

もちろん行かせていただきます!!」

 

シンが大声で反応しルナもうんうんと頷く。

きっと二人とも親友であったレイにまた会うことが楽しみなんだろう。

 

「じゃあ機体の整備とか始めるか…」

 

「ちーちゃーん!!」

 

「?

誰の声?」

 

「来たなプレッシャー!!」

 

最初から予想は出来ていたが…

声のした方向を振り向くと土煙をあげながら走ってくる女性が一人。

服装は今朝のものと変わらず不思議の国のアリスだ。

 

「…束」

 

今朝俺があった人物―稀代の大天災篠ノ之束が堂々と臨海学校に乱入してきた。

 

「やあやあ!!

会いたかったよちーちゃん!!

さあ、ハグハグしよう!!愛を確かめ―――ぐへっ」

 

跳躍した束さんの顔面を片手で鷲掴みにする千冬さん。

千冬さんの指が思いっきり食い込んでいるのもあれだが相変わらず天災の身体能力もとんでもなかった。

確実に2メートルくらい飛んでたよねあの人!!

 

「うるさいぞ、束」

 

「ぐぬぬぬぬ…相変わらず容赦ないアイアンクローだねっ!!」

 

するりと千冬さんのお手てから抜け出し着地。

そうして箒の方を向く。

 

「やあっ!!」

 

「…どうも」

 

「えへへ、久しぶりだね!!

こうして会うのは何年ぶりかなぁ?

おっきくなったね、特におっぱいが」

 

がんっ!!

 

「殴りますよ」

 

「殴ってから言った~!!

しかも日本刀の鞘でぇ~!!

ひどい!!ひどいよ!!」

 

半べそかきながら訴える束さん。

 

すどぉーん!!

 

すると、突然空から大きなコンテナが降ってきた。

しかも関係のない俺の目の前に。

 

「のわぁ!?」

 

「油断したなのーくん!!」

 

「これが頼んでいたものですか?」

 

箒が俺の事などお構いなしに束さんに問いかける。

幼馴染の心配を少しはしてくれよ…マイファースト幼馴染よぉ…

 

「いかにもたこにも!!

これぞ箒ちゃん専用IS『紅椿』!!

全スペックが現行ISを上回る束さんお手製のISだよ!!

あ、でも…のーくんの星彩には負けるかも…」

 

コンテナの外壁が光に包まれ、それが消えると真紅のISが顔を出す。

 

「さあ!箒ちゃん!

今からフィッティングとパーソナライズを始めるよ!!

私が補佐するからすぐに終わるよん!!」

 

「……それでは、お願いします」

 

「カタいよ~

実の姉妹なんだからもっとキャッチーな呼び方で~

あ、あとのーくん!!」

 

「はい?」

 

「いっくんの白式見といて!!

フラグメントマップのデータコピーしてこっちに送ってよ!!」

 

「了解ッス

一夏、こっち来て白式を展開しろ」

 

「おう」

 

一夏はこっちに小走りで近づいて来て俺の前で立ち止まり白式を展開する。

俺は白式の装甲にコードを突き刺す。

すると空中にディスプレイが浮かび上がる。

 

「うむぅ…

結構複雑怪奇なマップだなぁ…

あれか?お前が男だからか?」

 

「希が言えた事じゃないだろ」

 

「そうッスね。

でも俺のはもう少しわかりやすかったぞ。

きっと日ごろの行いが良いからッスね」

 

実際のところ日ごろの行いとフラグメントマップに関連性があるのか俺は知らん。

 

「た、大変です!!織斑先生!!」

 

いきなり響いた山田先生の声にみんながいっせいに振り向く。

いつも以上にあたふたしている彼女はなにか重大な出来事が起こったことを示していた。

 

「特命任務レベルA、現時刻より対策を始められたし…

全員注目!!

現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。

ISの試験稼働は中止、各班機体を片づけ旅館に戻れ。

連絡があるまで各自室で待機すること。

以上だ!!」

 

「え?

特殊任務!?」

 

「状況がさっぱり読めないんだけど…」

 

千冬さんの言葉に他の生徒たちがざわつく…

しかし、それはまたしても千冬さんの一喝によって終息した。

 

「さっさと作業を始めろ!!

以後、許可なく室外へ出たものは即時身柄を拘束する!いいな!!」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

周りに居た生徒達はすぐに片付けを開始する。

 

「専用機持ちは全員集合しろ。

織斑、星村兄妹、アロイ、更識、ヤマト、ザラ、アスハ、アスカ、ホーク、バヤン、ランジュ、ルーシェ、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、鳳そして篠ノ之ついでにクラインもだ」

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

レイの予感が当たりやがった…くそったれが…

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

ミッションブリーフィング終了。

俺は簪と旅館の廊下を歩いていた。

任務の内容は、突如暴走したイスラエルとアメリカの共同開発の第三世代型軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が暴走、それを俺達IS学園の生徒で止めるという内容だ。

1年の専用機持ち全員が呼ばれたが実際に戦闘を行うのは俺、空、一夏、箒の4人だ。

なにせターゲットが超音速飛行を行っており、アプローチが1回しか出来ないのだ。

よって一撃必殺の攻撃力をもった白式を駆る一夏、追加パッケージなしで高速戦闘が行える赤椿を駆る箒、そして俺と空は少しでも一夏達が福音への攻撃を当てやすいようにするために足止めする係だ。

残ったキラ達はこれに便乗してファントムペインによる襲撃に備えてもらうため休んでもらっており、ラクスは人手不足ということでオペレーターを担当することになった。

ちなみに作戦開始まであと15分だ。

 

「希…」

 

「ん?

どうした?」

 

「ぜ、絶対に…帰って来て…」

 

簪がいつも以上にたどたどしい口調で話しかけてくる。

きっと俺の事を心配してくれているのだろう。

 

「心配すんなって!!

俺を誰だと思ってるんスか?

戦争を止めたオーブの英雄ッスよ!!」

 

簪を少しでも元気づけようと笑顔で対応する。

すると、簪が俺の手をぎゅっと握ってくる。

 

「…絶対に…帰って来てね…」

 

「おう!!約束だ!!」

 

「指切り…」

 

そう言って簪は小指を立てた右手をこちらに突き出す。

 

「「指切りげんまん、嘘ついたらハリセンボンの~ます!!

指切った!!」」

 

「じゃあ、行ってくる」

 

「うん…帰ってきたら…弐式の調整…手伝ってね…」

 

「おう!!」

 

そう言って簪を置いて別館の方へと向かう。

俺は絶対に生きて帰る…まだ俺は簪達との楽しい毎日に終止符を打ちたくないから…




誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。

次回
鐘の音

お楽しみに~
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