IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~   作:ぼいら~ちん

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PHASE-28 鐘の音

「でさでさ~

それで本音ちゃんが言ったんだよ~

「わたしのめがねどこ~?」ってさ~」

 

「にゃははははは!!

本音ってメガネかけてないよな!!」

 

「ちょっと待て」

 

「「ん?」」

 

「ん?じゃねえよ!!」

 

作戦開始直前。

なんか空と希が滅茶苦茶余裕そうなので思わずツッコんでしまった。

なんだろう…これが強者の余裕というものなんだろうか…

 

「なんだよ

折角お前らが緊張してるのを解そうとしたのにさ~」

 

「ボク達の気遣いに少しは感謝してくれてもいいんじゃない?」

 

「心配するな

私は緊張などしていない」

 

そんなこと思ってやってたにしろお前ら緊張感なさすぎだろ…

なにがにゃははははだこの野郎。

…しかし…なんでだ…?

さっきから箒の機嫌が妙に良いように見える。

箒の機体はいくら束さんが開発、設計から調整まで行ったと言っても肝心のパイロットはそうもいかない。

ISの操縦は一朝一夕で上手くなるわけでもないことを俺は身を持って知っている。

ブリーフィングの後に箒は機体を慣らすのと武装の確認の為に束さんと訓練していたが、それでも心配なものは心配だ…

 

「難しい顔しないで~!!

いざとなったらボクが守ってあげるから!!」

 

「女の子に守られる男ってのもなぁ…」

 

「むむ!!聞き捨てならんなあ少年!!

ボクみたいなこんな可愛い美少女でもこの世界に来る前には連邦で中尉だったし!!

「光剣のソラ」って異名まで持ってたんだよ!!」

 

ムキになりすぎだろ…

まあ…緊張が少しでも解れただけよしとしよう。

 

『織斑、星村兄妹、篠ノ之聞こえるか?

ISを展開し最終チェックをしろ』

 

「「「「了解」」」」

 

…なにか嫌な予感がする…杞憂に終わればいいんだけど…

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「来い、白式」

 

「行くぞ、紅椿」

 

「行こう、クラウ・ソラス」

 

各々がISを展開する。

それに合わせて俺も星彩を展開し、機体に不具合がないかの最終確認を始める。

 

「原子炉臨界…パワーフロー正常…

スキンバリアー…展開完了…正常な動作を確認…

シールドバリアー…エネルギー充填率100%…

PIC…正常に稼働…

各部スラスター…正常…

各種武装…正常…

よし…異常なしっと!!」

 

パネルから目を逸らすとみんなの準備はすでに終わっているようだった。

 

「じゃあ行くか!!」

 

「うん!!」

 

「わかった

箒、頼む」

 

「わかった。

今回は特別だぞ」

 

白式の移動速度は結構早いが、今回は作戦の性質上一夏の移動は箒に一任することになる。

よって一夏は箒の上に乗っかる形になる。

どっかで見たことあるなぁ…ユニコーンとデルタプラス的な…?

 

『4人とも聞いてくれ』

 

オープンチャンネルから千冬さんの声が聞こえてくる。

 

「今回の作戦の要は一撃必殺(ワンアプローチ・ワンダウン)だ。

短時間での決着を心掛けろ」

 

「「「了解」」」

 

「織斑先生、私は必要に応じて一夏達のフォローに回ればいいのですか?」

 

『そうなる。

しかし絶対に無理はするな。

幾ら束が作った機体でもお前はその機体を使い始めてからの戦闘経験は皆無だ。

突然、何かしらの問題が起きてもおかしくはない』

 

「わかりました。

出来る限りの支援を行います」

 

箒は冷静を装っているが心の中はきっと浮ついている。

まるで初めて機体に乗り、戦場に駆り出された優秀な新兵(ルーキー)のようだ…

 

『星村』

 

「はい?

なんでしょう千冬さん」

 

突然千冬さんからプライベートチャンネルによる声が届いた。

 

『一夏にも同じことを言ったが…

篠ノ之のことを頼む。

それと…』

 

「一夏の事ですか?」

 

『…お前はなんでもお見通しだな…』

 

「そりゃあニュータイプですから…

って言う以前に俺とあなたは10年の付き合いですよ?

大体なに考えてるかなんて通信機越しでもわかりますよ」

 

『ふっ……頼んだぞ…』

 

プツンと回線が切れる。

そしてオープンチャンネルに切り替わり再び千冬さんの声が響く。

 

『では、作戦開始!!』

 

その号令と共に俺達は一気に上空300メートルくらいまで上昇する。

俺はアームド・アーマーのお陰で、空は元々の機体性能のお陰でかなりの速度で航行しているはずなのに紅椿はそれに平然とついてくる。

流石は束さんお手製IS。

すっげぇ…

 

「暫定衛星リンク確立…情報照合完了…

目標の現在地を確認…みんな、一気に行くぞ!!」

 

「お、おう!!」

 

「ほ~い」

 

「は~い」

 

箒がそう言った途端、機体各部からエネルギーが噴出される。

そういえば…

 

「ラクス、ターゲットの詳細なスペックデータをこっちに送ってくれ」

 

『少々お待ちください…

許可、取れましたわ

今転送します。ご覧になったらすぐに削除してくださいね』

 

「りょ~かい」

 

俺の指示通りターゲット―銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の詳細なデータが送られてきた。

先ほど行われたブリーフィングの時にも見せられたがもう一回見たくなったのだ。

広域殲滅に特化した射撃型…機体速度もかなり速いなぁ…

俺と空は機体の武装で防げそうだけど…問題は残る二人…しかも片方は新兵ときた…

どうすっかなぁ…

 

「みんな、見えたぞ!!」

 

ハイパーセンサーに高速で動く銀色の機体が映し出される。

大型のスラスターがまるで天使の翼のように頭部から生えている。

先ほどのスペックデータによるとこの大きな翼が広域殲滅兵器としての機能も備えているらしい。

 

「目標との接触まで約10秒。

一夏、気合い入れてけよ!!」

 

「了解!!」

 

その言葉に反応して箒は更に速度を上昇させ、福音との距離を徐々に詰めていく…

5…4…3…2…1…

 

「行けぇ!!」

 

「うおおおおっ!!」

 

俺の合図に合わせ、一夏は紅椿から飛び降り、零落白夜を発動、福音を肉薄する。

雪片弐型光の刃の切っ先が福音に触れる…

しかし

 

「なっ!?」

 

福音は突然体を反転させ後退する。

距離を開けても無駄だと思ったのか一夏はそのまま自分の間合いを保ち攻撃を再開する。

 

「空!!

一夏の援護だ!!絶対に当てるなよ!!」

 

「わかってる!!」

 

俺もアウロラを起動、さらにスぺムエクシギュラムを展開し援護射撃を開始する。

しかし難なく避けられてしまいただの牽制に終わる。

 

『敵機確認。

迎撃モードへ移行。

銀の鐘(シルバー・ベル)』、稼働開始』

 

オープンチャンネルを介して聞こえてくる無機質な機械音。

しかし、機械のはずなのに…そこからは明らかな敵意を感じ、背筋が凍る。

 

―――嫌な予感がする―――

 

一夏は福音に攻撃を見舞うが光の刃をわずか数ミリのところで体を回転させ回避する。

ここまでの高等技術は国家代表の楯無さんやキラであっても出来るかどうか微妙なレベルだ。

ここまでとんでもない技術を使ってるのかと改めて「重要軍事機密」は伊達ではないなと思う。

 

「箒!援護頼む!!」

 

「任せろ!!」

 

一夏の声に答えた箒は再び一夏をその背に乗せる。

戦闘が長引けば一気にこちらが不利になる。

白式の継戦能力のなさを俺はよく知っている。

そのわけはきっと零落白夜以外にも雪片弐型にねじ込まれた展開装甲も原因だろう。

これが正しい予測なら、それを全身に積んでいる紅椿も継戦能力には乏しいだろう。

場合によっては全滅も考えられる…

 

「くっ…こんのぉ!!」

 

一夏が焦りを覚えたのか大振りの攻撃を見舞おうとする。

しかし、当然避けられ一夏に大きな隙が出来る。

それを見逃す程福音はバカではなかった。

福音は一夏に機械の翼を向ける。

すると、翼の一部が開き、そこから見えたのは無数の砲口だった。

刹那、そこから生み出された光の弾丸が一夏に降り注いだ。

 

「ぬぐぅっ!?」

 

打ち出された弾丸は白式の装甲に突き刺さり、すぐさま爆発する。

しかしなんつぅ連射速度だよ…

弾丸の雨に晒されながらも一夏は危なげながらも避け、体勢を立て直す。

 

「箒、左右から同時に行くぞ!!

左は頼んだ!!」

 

「了解した!!」

 

一夏と箒は巧みに弾丸を避け福音を肉薄する。

 

「これに便乗して一気に畳み掛ける!!

空、支援砲撃頼む!!」

 

「うん!!」

 

スぺムエクシギュラムを投げ捨て右手にフラタニティを展開する。

そして瞬時加速を行い真正面から福音に迫る。

必然的に俺に攻撃が集まるが左腕のビームシールドで防ぎつつそれでも防ぎきれないものはナノマシンで水を発生させ乱反射し無力化する。

 

「墜ちろぉ!!」

 

俺、一夏、箒による一斉攻撃でも福音へはすこしも掠らない。

 

「希、空、一夏!!

私が動きを止める!その隙に!!」

 

「わかった!!」

 

そう言うなり箒は二刀による斬撃を行う。

さらにそれに呼応するかのように腕部展開装甲が起動しエネルギーの刃を射出する。

福音もそうだけど紅椿も相当な壊れ機体だと思う。

 

「はあああっ!!」

 

箒の怒涛の猛攻に福音も流石に感応しきれないのか回避の中にも防御が混ざってきた。

 

『La…♪』

 

甲高い機械音声。

それが響いた瞬間、福音が全砲門を開く。

しかも全方位に向かっての一斉射撃。

 

「やるなっ…

だが、押し切る!!」

 

「こんなの…シャアの攻撃に比べれば…!!」

 

箒と空が紙一重で光弾をかわし、攻撃を再開する。

しかし俺と一夏は真逆の海面へと機体を走らせる。

 

「うおおおっ!!」

 

「やらせるかああぁぁっ!!」

 

「一夏、希!?」

 

一夏が二つの光弾うちの一つに追いつきそれを打ち消す。

俺も一夏が消し損ねたもう一発を無意識に展開していた折れたクライムによって打ち消した。

 

「なにをしている!?

折角のチャンスを―――」

 

「船が居るんだよ!!

…密漁船…ああもう!!」

 

空も気付いていたようで俺達の代わりに説明する。

幾ら密漁船と言えど同じ地球に住む人間だ…見殺しにするわけにはいかない。

しかし、その行動のせいで白式はエネルギー切れを起こし、光の刃が消える。

作戦の要を失った今、俺達がするべきは撤退だが…

 

「馬鹿者!!

犯罪者など構って…そんな奴らは―――!!」

 

「ダメだよ箒!!」

 

「空…?」

 

「そんなのいつもの箒じゃない!!

確かにあの人達は犯罪者だよ…でもね、箒と同じ人間なんだよ!!

箒は目の前で困ってる人を見捨てる人じゃないってボクは知ってる!!

そんなの…全っ然箒らしくないよっ!!」

 

「わ、私は…」

 

空の言葉に明らかな動揺の表情を浮かべ頭を抱える箒。

するりと手から刀が空中で光の粒子となって消える。

 

具現維持限界(リミット・ダウン)

まずい!!箒!!すぐに一夏を連れて退がれ!!」

 

俺の予想通り紅椿のエネルギーが切れた。

そして動揺する箒を福音は見逃さず、照準を合わせる。

 

「箒ぃぃぃぃっ!!」

 

一夏は刀を投げ捨て、最後の力を振り絞り箒と福音の間に向かって瞬時加速をかける。

 

「一夏!!

よせ!!」

 

次の瞬間、一夏は箒を庇い福音が放った光の雨を全身に浴びた。

 

「ぐあああああっ!?」

 

「一夏っ、一夏っ、一夏ぁ!!」

 

光弾を浴びた一夏は海へと体を傾け落ちて行く…

 

「くそったれがぁ!!

箒、一夏を回収してすぐに撤退しろ!!

織斑先生!!」

 

『なんだ!?』

 

「一夏がやられた!!

箒と一緒にそっちに戻すから海岸にストレッチャーと医療班を待機させてください!!」

 

『っ…わかった!!』

 

「でも…希と空は!?」

 

「俺達でお前らが退がるまでの時間を稼ぐ!!

そんなのいいからさっさと行け!!」

 

「わ、わかった!!」

 

箒は一夏を抱え全速力で海岸の方へと急ぐ。

 

「加減なんか出来ねえぞこのやろぉっ!!」

 

俺は親友をやられた激情に駆られ福音に突っ込む。

俺の全身全霊をかけた攻撃は福音に回避され俺に大きな隙が生じる。

 

「なっ…しまった…」

 

「兄さん!!」

 

クラウ・ソラスの射撃により福音の攻撃を避けることができた。

 

「ごめん

助かった」

 

「ボク達もすぐに撤退を!!

このままだとまずい!!」

 

しかし、福音もそう簡単には逃がしてくれなかった。

光弾が俺達を襲う。

必死に回避し続け撤退の機会待つがそれは一向に来ない。

 

ボンッ!!

 

「なっ!?

エンジントラブル!?」

 

空のクラウ・ソラスの脚部スラスターが突然爆発する。

それによって隙が生じる空を見逃さずロックする福音。

その時俺の脳裏をよぎった父さんたちの死ぬ瞬間の記憶…

俺は無意識のうちに機体を空と福音の間に走らせた…

 

「やめろぉぉぉぉ!!」

 

俺の喉が潰れんばかりの叫びに応えてくれたのか星彩は二機の間に入ることが出来た。

しかしそのあと俺を襲ったのは…福音によって放たれた光の雨だった…

 

「兄さぁぁぁん!!」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「兄さん!!しっかりしてよ!!

ねえ!!」

 

ボロボロの兄さんを抱いてボクは叫ぶ。

すると…かすかに兄さんが目を開いた。

 

「よかったぁ…お前を…まも…れて…」

 

そう言った途端に兄さんは目を閉じ、力が抜ける。

頭になにも響かなかったから死んではいないが…

 

『La…』

 

兄さんが心配でずっと見ていたせいで福音の事を忘れていた…

目の前に福音が現れ、ボクの首を掴んだ。

 

「がはっ!!」

 

ぎりぎりと絞められる首…

ISの絶対防御で死ぬ危険性はないものの、どんどんシールドエネルギーが削られていく…

さらに…ボクが気を失ってしまえばISは強制解除される…

 

「お願い…持って…ボクのクラウ・ソラス…」

 

…誰か…助けて…

…兄さん…楯ねぇ…かんちゃん…アムロさん…ごめんなさい…

 

「行け!!フィンファンネル!!」

 

突然男性の声が響く…

すると、福音に6本ビームのが降り注ぎボクの拘束を解除、すぐさまボクから離れる…

海面へと引っ張られるボクと兄さん…しかし誰かがボク達の体を受け止めた…

 

「大丈夫か?」

 

かすかに見える男の顔…その聞き覚えのある声…

一目で誰だか理解した…

 

「アムロ…さん…?」

 

その言葉を最後にボクは意識を手放した…

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「希くん!!空さん!!応答をしてください!!」

 

部屋中に山田先生の大きな声が響き渡る…

 

「希…空ちゃん…」

 

私は目の前の状況で起きた状況を理解出来なかった…

希と空ちゃんが墜ちた…そんなの…そんなの…

 

「くっ!!」

 

「簪!!

何処行くんだ!!」

 

私は走り出した…行き先なんてわからない…ただやみくもに…これが悪い夢なんだと信じて…

気がつくと自分が寝泊まりしていた部屋にたどり着いた…

そして目に入ったのは…

電池が切れて何も話さない静かなハロ

 

―――簪の為に作ったんだ。

大事にしてくれると嬉しいッス―――

 

そして自分のバッグについた手造りの星型のお守り…IS学園の受験の時に空ちゃんから貰ったものだ…

 

―――これさえあればもう何も怖くないってね!!

ボクが言うんだから大丈夫!!―――

 

「うああ…」

 

二人はこんな私にとてもよくしてくれた…でも私は何もしてあげられなかった…

それに…自分の気持ちも…

 

「うわあああ…うわああああん…」

 

死んでしまいたくなるほど悲しい…

私は真っ暗な部屋の隅で泣いた…自分でもわけがわからなくなるくらい…泣いた…




誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。

次回
絶望ノ翼

お楽しみに~
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