IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~   作:ぼいら~ちん

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PHASE-29 絶望ノ翼

どれほど時間が過ぎただろう…

俯いた顔を上げ、部屋に備え付けられた時計を見ると午後4時を過ぎていた。

希と空ちゃんの撃墜の報告を受けたのは大体1時頃だから自分は3時間程泣いていたことになる。

涙なんて泣きすぎてもう枯れてしまった…

それでも自分の気持ちは変わらず真っ青だ。

愛する人に気持ちを伝えることも出来ず…大親友の最期を見取ることも出来ず…

 

「…最期…?」

 

―――俺達ニュータイプは人が死ぬときにその人の遺言みたいなものが聞こえるんだ―――

 

ふと希の声が頭の中に響いた…

私―更識簪はニュータイプだ。

つまり希の言っていたことが本当なら撃墜された瞬間、希や空ちゃんの言葉が聞こえてくるはずだ…

ふと視線を落とす…テーブルの上には先日希から貰った貝殻のブレスレットが置いてあった…

 

「大丈夫…なんだよね…」

 

ブレスレットを右手に通し部屋を出る。

向かったのは一夏が眠っている旅館の一室…

 

ずずず

 

ふすまを開ける。

すると目に入ってきたのは俯く箒とふとんに力なく横たわる一夏だった。

 

「こんにちは」

 

「……」

 

箒に声をかけるがなにも返答はない。

そのかわりに返ってきたのは…

 

「すまない…」

 

謝罪の一言だった。

 

「どうして…謝るの…?」

 

「私が…私がしっかりしていれば…!!

一夏も…希も…空も…みんなやられずに済んだんだ!!

だから…すまない…!!」

 

「謝ることはないよ…

誰にだってミスはある…それが人間っていう生き物…」

 

私は箒を諭すような口調で話しかける。

あのときのお姉ちゃん同じように…

 

「お前は…どうしてそんなに強いんだ?」

 

「強くなんかないよ…それでも…私は戦う…自分の見たい明日があるから…

箒はどうするの…?」

 

「私は…もうISを…使わない…」

 

箒は涙ぐみながらに言う…自分の無力さを悔やむように…

 

「怖いんだ…私は…」

 

「私だって怖いよ…」

 

「…え?」

 

「私もとっても怖い…きっとここに居るみんなもそうだと思う…ニュータイプだからそれがわかる…

でもね、その恐怖で心が壊れそうなのを必死にこらえ続ける勇気…そこに本当の強さがあるんじゃないかな…?

私は…希とか空ちゃんのように強くはない…だから…私に出来ることは…底が尽きるまで…勇気を振り絞ること…それでもダメなときは…仲間に頼るってのも…アリなんじゃないかな…

ねえ…みんな…」

 

突然勢いよくふすまが開く。

すると…そこから入ってきたのは4人の女と1人の男…

 

「やっぱりばれてたのね~

流石は希と一緒のニュータイプってところかしら!!」

 

「みんな…」

 

「さあいくぞ!!

希と空の仇打ちだ!!」

 

レオスが勢いよく叫ぶ。

みんなが腕を上に突き上げおーと叫ぶ。

希も…空ちゃんも…まだ死んでないんだけど…

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「ここは…?」

 

俺は気がつくと夕暮れの河川敷にいた。

下流の方には大きな橋が見え、子供たちが楽しそうに遊ぶ声が耳に入る。

 

「千冬さんのバカー!!」

 

突然後ろから大きな声が聞こえ、振り向くと黒髪の少年が俺の前を走っていった。

 

「あれって…ちっちゃいころの俺じゃん…」

 

そして唐突に立ち止まった小さな俺。

その目の前には水色の髪をした女の子がうつむいて泣いていた。

 

「どうしたんスか?」

 

「うぇぇ…おうちが…ひっく…わからなくなっちゃった…」

 

顔を上げた少女…紅い瞳を持ったその子は、俺はすぐに誰なのか理解した…

 

「あれは…簪…?」

 

「お、俺がわかるとこまで案内してやる!!

けっこうこの辺詳しいんスよ!!」

 

この時だ…俺が生まれて初めて恋をして…この子を守れるくらいに強くなりたいって…

絶対に守るって思ったのはこの時だ…

小さい俺は簪を連れてどこかへ歩き出した。

その途端に俺の足元がぐらりと揺れ意識を手放しかける…

 

―――あなたの思い通りに…自分の気持ちに正直に生きなさい…

それが私達からの最後のお願い―――

 

「母…さん…?」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「……いさん!!

兄さん!!」

 

ぽたぽたと俺の額に水が落ちてきた。

目を開けると、空の顔が見える…

 

「そ…ら…?」

 

「兄さん!!

よかったぁ…アムロさん!!兄さんの意識が戻りました!!」

 

「そうか…

久しぶりだなノゾミ」

 

「あ、あ、アムロさん!?

なんでこんなところに!?」

 

「楯無に頼まれたんだ。

『うちのダメなニュータイプの面倒を見てきてくれ』とな」

 

あの人ならやりそうなことである…

 

「ん?

ああ、本音か…なんだって?

了解した」

 

「どうしたんスか?」

 

「先ほど簪達が福音の撃墜に向かうと言って旅館を飛び出したそうだ」

 

「ほんとですか!!

俺達もすぐに行きましょう!!」

 

「でも兄さん!!

まだ怪我が!!」

 

「これくらいなんともない!!」

 

「駄目だと言っても無駄だな…

今回は僕も援護に向かわせてもらう。

楯無から簪のことも頼まれたしな」

 

「では!!」

 

俺はそう言って星彩を展開する。

しかし…

 

「武装が…変わってる…まさかこれが星彩の第二形態(セカンド・フォーム)…?」

 

「ボクのクラウ・ソラスもだ…」

 

『それは私から説明しましょう』

 

セシアが突然目の前に現れた。

アムロさんは突然のことで驚いている様子だ。

 

『あなた達が眠っている間に思った覚悟に機体が応え、新たな力を託したのです。

そして、第二形態に移行した星彩の名前は『星雨(せいう)』、そしてクラウ・ソラスの名前は『レヴィス・コルデ』です』

 

そうだったのか…ありがとう…星彩…

 

「よし!!

じゃあ行きますか!!」

 

「ノゾミ、その前にこれを」

 

アムロさんが手紙の入った瓶を俺に手渡す。

 

「宛名が君の名前だったのでな

読んだらどうだ?」

 

俺はアムロさんに促されるままに瓶の封をきる。

手紙を取り出し内容を読む…簪が書いたものだった…

読み終えた俺はそれをISの拡張領域に収納する。

 

「どうしたの兄さん?

ニヤけて」

 

「いや…こんな俺の事を大切に思ってくれてる物好きなひともいるもんだなぁってね…」

 

そう言い俺は飛翔する。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「準備はいいかラウラ」

 

「問題ない!!

行くぞレオス!!」

 

「わかった…

極限進化…エクリプスに…墜とせぬ敵はない!!」

 

ラウラはレールカノンを、レオスはカルネージ・ストライカーを構える。

その砲口は前方に膝を抱えて蹲っている機体-銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)を見据えていた。

 

「「食らえぇ!!」」

 

二人は一斉に砲撃を開始。

ラウラの放った高速の弾丸が当たった後にレオスの放った光の柱が福音に命中する。

 

「初弾命中!!

続けて砲撃を行う!!

レオスは格闘戦の準備を!!」

 

「来ぉぉぉい!!

ゼノンフェースゥゥゥ!!」

 

カルネージ・ストライカーによる砲撃を終えるとレオスはすぐさまエクリプスからゼノンに換装。

爆煙の中からこちらに来る福音に備える。

 

「来た!!

みんな、気をつけて!!」

 

私の言葉にみんなが反応し私も近接武装の夢現を展開する。

そして爆煙の中からこちらに高速接近してくる福音。

 

「遅い!!」

 

鈴が福音の後ろから斬撃を加える。

 

「僕達が居るのを!!」

 

「お忘れになって!?」

 

更にそこへセシリアとシャルの正確無比な射撃。

 

「ぶっ壊れろぉぉぉ!!」

 

セシリアとシャルによる攻撃でよろめく福音。

そこへレオスによる近接攻撃の嵐。

最後には…

 

「食らええええ!!」

 

箒の一閃。

連続した猛攻に流石の福音も消耗し始める。

 

『優先攻撃目標を変更。

再度攻撃を開始する』

 

オープンチャンネルから聞こえてくる機械音声。

それが聞こえてくると福音は勢いよく私に近づいてくる。

 

「簪!!」

 

でも…私には奥の手(・・・)がある。

 

「ファンネルクラスター!!」

 

機体の背部から8発のミサイルが飛び出す。

しかしそれは福音に飛んでは行かず、私の周りで停滞している。

 

「希みたいには行かないけど…!!」

 

その言葉を口にした途端、空中を浮遊していたミサイルが福音に向かって飛んでいく。

光弾によって数発破壊され、それをすり抜けた残りも福音に避けられてしまう…

しかし、その避けられた数発のミサイルが突然Uターン(・・・・)し福音のスラスターに突き刺さる。

このファンネルクラスターは希の作った武装で、アムロさんのいた時代には机上の空論でしかなかった実弾型サイコミュ兵器…それを希が完成させ、更に改良を加えたものがこれである。

敵機への着弾と同時にミサイル本体がドリルのように回転、それと同時に小型の爆弾を空中にばらまき、回転が終わった後に本体が爆発する事によって爆弾を誘爆させる広範囲攻撃兵装である。

そして福音の周りが予想通りファンネルクラスターの爆煙によって包まれる。

 

「やったのか…?」

 

「…いや…まだ!!

…この感じ…まさか…第二形態移行(セカンド・シフト)!?」

 

煙の中からまばゆい光が放たれる。

光と共に煙が払われ、その先には光の翼を纏った福音が現れた。

 

『キアアアアアアア!!』

 

突然の咆哮と共に福音はラウラへと飛びかかった。

 

「なっ!?」

 

奇襲攻撃にラウラは反応出来ず、足首を掴まれ宙づりの状態になる。

そして福音の光の翼によって包まれるラウラ。

拘束が解除されたかと思うとそこからボロボロのラウラが海へと落ちて行った。

 

「ラウラ!!

このぉっ!!」

 

近接ブレードを展開したシャルは福音に攻撃を仕掛けるが、福音に受け止められ突如生えてきた小さな翼によって生み出された光弾に吹き飛ばされる。

 

「シャル!!」

 

福音の猛攻が再開され次々に吹き飛ばされていく仲間たち…

終いには私、レオス、箒の3人だけになってしまった…

 

「これ以上は…やらせない…」

 

希と空ちゃんの帰ってくる場所守るために…

みんなで笑って過ごすためにも…

 

「やらせるもんかぁぁぁぁ!!」

 

夢現を握りしめ福音を肉薄する。

私は春雷とファンネルクラスターを使い福音へ加速しながらも攻撃を続ける。

全ての弾を避けきり、福音の目の前まで迫り夢現を振り下ろす。

 

「はあああああ!!」

 

しかし…

 

「くぅっ!!」

 

「簪!!」

 

全身全霊をかけて放った一振りは残酷にも福音に片手で受け止められた。

そのまま振り子のように投げられる…目に映った福音は光の翼を視界いっぱいに広げ今にも一斉射撃を始めそうだ。

…会いたい…最後に…一目でいいから…希に…空ちゃんに…会いたい…

 

「希…空ちゃん…」

 

瞼を閉じ、衝撃を待つ…

 

ズガァァン!!

 

突然の轟音。

その音に驚き瞳を開けた私が最初に見たのは何かに吹き飛ばされた福音だった…

そして次に見えたのが、青い光の膜の張られた機械の翼だった。

 

「大丈夫ッスか?」

 

聞き覚えのある声…そして機体の主が振り向く…

その顔は毎朝見ている黒髪の少年だった…

 

「ああっ…うううっ…」

 

その顔を見て安堵のあまり涙で視界が滲む…

その瞳が確かに捉えていたのは星彩第二形態『星雨』を纏った星村希だった。




誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。
ちなみに本作に登場するアムロ・レイの容姿などは逆襲のシャアに出てくるものと同じです。

次回
星彩の輝き

お楽しみに~
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