IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~   作:ぼいら~ちん

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PHASE-31 旅館の夜

「任務完了…と言いたいところだが…

お前たちは独断行動で重大な違反を犯した。

帰ったらすぐ反省文と懲罰用のトレーニングを用意してやるからそのつもりでいろ」

 

「「「「「はい…」」」」」

 

作戦終了後…アークエンジェル(TAXI)に乗って旅館に戻った俺達を待っていたのは腕組をした千冬さんとセレーネと山田先生だった。

帰って来てからかれこれ30分以上怒られているわけで、福音撃破後には茜色だったはずの空はすでに真っ黒になっていた。

…でもさ…俺と空と一夏は待機命令が出てたなんて知らなかったし…

怒られるのは理不尽な気がする…でも…そんなこと言ったらもっとヤバいことになるんだろうな…

 

「まあ、みんな無事に帰って来たんだからよかったじゃない

それにそんなに怒ると老けるわよ」

 

「あ、あの…織斑先生…

もうそろそろこの辺で…怪我人もいますし…ね?」

 

「ふん…」

 

セレーネが千冬さんをなだめそれに便乗して話を切り上げさせようとする山田先生。

さっきから山田先生は救急箱を持ってきたり、水分補給パックとおろおろしまくっている…

そんな焦ると転びますよ~

 

「へぶっ!!」

 

ほら、言わんこっちゃない。

 

「と、取り敢えず、一度休憩をはさんでから検査を行います。

ちゃんと服を脱いで全身見せてくださいね…あっ織斑くん達は別々で行いますからね!!」

 

「わかってま~す」

 

「ところで私たちはどうすれば…?」

 

そんななか、アークエンジェルの艦長であるマリューさんが質問する。

 

「大丈夫。

アークエンジェルのみんなの泊まる部屋は準備出来てるから。

ほら、ノゾミ。

連れてってあげて」

 

「え~

なんで俺が―――」

 

「連れてってあげて☆」

 

セレーネがニコリと微笑む。

なんだろう…ものすごく怖い…

 

「わ、わかりました…

はいは~い!!

アークエンジェル御一行様はこちらにお越しくださ~い!!

アムロさんも一緒で~」

 

「「「「「「は~い」」」」」」

 

「男女別々にしてあるからね。

はいこれ部屋の場所」

 

そう言ってセレーネから旅館の見取り図を渡される。

場所は俺と簪の部屋と近くの大きな客室(最大20人用)×6だった。

アークエンジェルのクルーは約100人というこの手の大型戦艦の人員構成としてはかなり少ない方と言える。

大部分がオートメーション化されていると言ってもこの人数で切り盛りしていると思うとやはり尊敬ものである。

 

「お?

ミリィにメイリンもいるのか?」

 

「お久しぶりですノゾミさん」

 

「久しぶり」

 

ミリィとはアークエンジェルのオペレーターを務める俺と同い年の女の子。

本名はミリアリア・ハウ。

そしてメイリンはルナの妹で俺の2こ下の女の子。

元々はザフト軍のミネルバの乗組員だったのだがアスランに拉致られアークエンジェルに搭乗。

今は管制官を務める。

ちなみに二人は年も近いだけあって仲が良い。

聞くところによると二人で頻繁に買い物に行っては一緒に行かされるキラやアスランを荷物持ちにさせ困らせているとか…

 

「あとでルナとか俺の友達誘って遊びに行くからよろしく!!」

 

「お姉ちゃんもここに居るんですか!?」

 

「うん

え~っと…この部屋にいるからあとで会いに行けば?」

 

旅館の見取り図を見せ、ルナ達が泊まっている部屋を指さして場所を伝える。

 

「わかりました!!

ありがとうございます!!」

 

ぺこりとお辞儀をして颯爽と旅館へと走っていくメイリン。

あの子めっちゃお姉ちゃん子だからなぁ…

 

「じゃあ御一行様行きまっせ!!

俺についてくるように!!」

 

「「「「は~い」」」」

 

俺はアークエンジェルのクルーを従え旅館の中へと入る…

ミリィが隣を歩いているためか…周りの生徒たちにやけに見られている気がした…

俺は気にしない…気にしないぞ…

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「よう箒!!」

 

「な、何か…?」

 

夕飯を食べ終え、自室に戻ろうと廊下を歩いていたところ箒に出会った。

きっと彼女も夕飯を食べ終えた直後なのだろう…

まあ俺は夕飯を食べたと言っても食いたいものだけ食べ、逃げてきただけである。

だって…質問攻めにあうのって…嫌でしょ…普通…

 

「怪我とかなかったッスか?」

 

「大丈夫…です…よ…」

 

「なんだその話し方?

なんかフシゼン」

 

「お、おかしい…です…か?」

 

「うんおかしい」

 

「うう…」

 

小さなうなり声と共に箒はうなだれる。

晩飯の時からこの調子なのだ。

口調は丁寧になり、ものすごくおとなしい…

なんかすっごくフシゼン…

 

「い、一夏に…奥ゆかしい女が好きと言われた…ので…」

 

「別に気にすることないんじゃない?」

 

「それを判断するのは…一夏…です…」

 

「まあいいや

そう言えば誕生日おめでと!!

これプレゼント」

 

ほいと言って愛用のメッセンジャーバッグからリボンのついた水色の袋を取り出す。

 

「開けていい…ですか…?」

 

「いいけど条件がある」

 

「なん…です…か…?」

 

「その話し方やめれ~

少なくとも俺の前では」

 

「…わかった。

これでどうだ?」

 

「よし!!」

 

俺が了承すると袋を開ける…

その中には…

 

「ヘッドホン…?」

 

「そうッス

ちなみにNONYN(ノニーン)のヘッドホンだから品質はお墨付きッスよ」

 

NONYNとは電化製品から音楽、果てにはゲームまで幅広く事業展開する会社である。

会社名の由来は創業者である西谷(にしのや)貴弘(たかひろ)がノニーンと驚くことから「消費者をノニーンと驚かせるような商品を作りたい」という願いを込めてつけられたらしい。

 

「でも…側面の音符は?」

 

「ああ、なんか既製品だと地味だからな

俺が箒はどんなのが好きかな~って考えて色塗ったんだ。

ちょうどよく紅椿とお揃いの赤だな」

 

「あ…ありがとぅ…」

 

「どういたしまして」

 

「大声を出すな」

 

「織斑先生?

お風呂にでも行ってたんスか?」

 

突然背後から千冬さんに声をかけられる。

 

「ああ…

お前たちが馬鹿やったせいで疲れは溜まるいっp―――――」

 

ちふゆがせきかした!!

 

どうする?

 たたかう

 まほう

 てんかい

→しらべる

 アイテム

 

………Gがあらわれた!!

 

「これのせいか…」

 

「そう言えば昔から千冬さんってGが苦手だったな?」

 

「今でも健在ッスよ」

 

そう言って俺はメッセンジャーバッグの中にあったティッシュを7枚取り出し、それでGを掴み旅館の外へと全身全霊をかけて投げる。

 

「千冬さ~ん

もうヤツはいなくなりましたよ~」

 

「……ハッ!?

すまない…教師が生徒にこんなところを見せるとはな…

いいか、絶対にこのことは秘密だぞ!!」

 

「わかってま~す」

 

そう言って俺は立ち去ろうとするが千冬さんに呼びとめられる。

 

「そう言えば星村」

 

「なんでしょう?」

 

「後でヤマト、クライン、ザラ、アスハの4人に私の部屋に来るように伝えてくれ」

 

「あいつら何か悪いことしたんスか?」

 

「そうではない。

いやな…1組と4組に専用機持ち、特に1組に男子が集中しているからクラス替えを所望する!!

…という苦情が2、3組の生徒及び教員から殺到してな…」

 

「それはやむ終えないと思います…

それでは、これにて失礼…」

 

そういって俺は自室へと戻る。

ふすまを開け、部屋へと入る。

するとテーブルの上には簪の書いた置手紙があった。

―――海に行ってきます。―――と。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「ふう…」

 

夕食を食べ終えたあと…

私は食後の運動がてらにひと泳ぎしようと海に出てきた…

海からあがり、休憩しようと砂浜に打ち上がっていた流木に腰掛ける。

打ち上げられてからかなり時間が経っているらしく、樹皮は剥がれおち、真っ白になっていた。

歪な形のソファに腰掛ける。

すると首筋に何かが当たった。

 

「つめたっ!?」

 

「へっへ~ん」

 

後ろを振り向くと希が缶ジュースを持って立っていた。

服装は大きな星が描かれた白いTシャツの上に薄手のパーカーを着て、下はスポーツ用のハーフパンツを穿いていた。

 

「隣良いッスか?」

 

「う、うん!!」

 

そう言って希は隣に座る。

 

「オレンジとぶどう、どっちがいい?」

 

「ぶどうで…」

 

「はいよ」

 

そう言って希はぶどうジュースの缶を手渡す。

このままでは気まずい雰囲気になる…積極的に話を振らなければ…

 

「怪我…なかった…?」

 

「う~ん

軽いやけどと打撲くらいで他はなんとも…

いつつ…口の中も切れてら…」

 

そう言って二人して黙り込んでしまう…

き…気まずい…

 

「そう言えば…これ…読んだんだけどさ…」

 

そう言った希の手に握られていたのは一昨日書いて昨日海に投げたボトルメールだった。

 

「ふぇ!?

なんでそれ持ってるの!?」

 

「アムロさんから貰った…

曰く「浜辺に打ち上がってた」そうだ…」

 

…恥ずかしい!!

自分の気持ちに正直に書いたのはいいものの…いざ本人に読まれたとなるとすっごく恥ずかしい!!

 

「でも…俺には簪の気持ちに答えられない…」

 

「え…?」

 

「確かに俺は簪の事が好きだ…初めて会ったときからね…

でも…君が俺みたいなコーディネーター(化け物)の傍に居たらきっと危険なことに巻き込まれる…

ファントムペインに狙われるし…他にも色々あるかもしれない…

俺は簪をそんな目に遭わせたくない…」

 

「それでも…いい…

そんな目に遭っても…希の隣にいられるくらい…私は強くなる…

それじゃあ…ダメ…?」

 

「でも…」

 

「それに…希は化け物なんかじゃないよ…

誰かと話して、一緒に笑って、誰かに恋をする…それは立派な人間だよ…」

 

私は笑顔で希に話しかける。

 

「本当に…良いのか…こんな俺が…簪を好きになっても…」

 

「…改めて言います…

私―更識簪は…希の事が大好きです…!!

わ、私と…付き合って―――」

 

くださいと言おうとしたその時だった…

私の口は希の唇によって塞がれたのだ…

自分がキスをしているという事実を改めて実感すると気持ちが高ぶる。

心臓の鼓動がだんだんと早くなっていくのを感じる…

そして希の唇が私の唇から離れた…キスをしていたのがとても長い時間に感じた…

 

「…これが俺の出した答えだ…

俺からも…よろしくお願いします!!」

 

その言葉を最後に私は気を失った…喜びと恥ずかしさのあまりに…

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「昨日はよく寝れた?」

 

「うん…」

 

昨日、簪からの告白を受け、OKした俺だが…とっても気まずい…

なんだろう…なんか…気まずい…

 

「兄さん、かんちゃん!!

…どしたの?二人で赤い顔して?」

 

「なんでもないッスよ!!

な、なあ簪!!」

 

「う、うん!!

なんでもないよ!!

き、気にしないで…ね?」

 

「二人がそう言うならそうするけど…

あ…もしかして…二人の関係に進展が!!」

 

「「うっ…」」

 

「図星だね」

 

空に言い当てられると二人して更に顔が赤くなる…

なんだろう…わかんないけど…早くバスで寝たい…

 

「あなたが星村希くん?」

 

後ろから声をかけられる。

振り向くとそこに立っていたのは二十歳くらいの青いカジュアルスーツを着た女性だった。

 

「あ。あなた福音の操縦者の…」

 

「そう

私は『銀の福音』の操縦者のナターシャ・ファイルスよ」

 

「怪我とかはなかったんですか?

ボク達結構派手にやっちゃいましたけど」

 

「あの子が私を守ってくれたから大丈夫よ」

 

えっへんと言って腰に手を当て胸を張るナターシャさん。

あの子とはきっと福音のことであろう。

 

「ありがとう。

操られていたあの子を呪縛から解放してくれて」

 

「私たちは…出来ることをしただけです…感謝される程の事はされていません…」

 

「そう。

でも感謝はしておくわ

じゃあね」

 

手をひらひらと振りながら歩いて行くナターシャさん。

なんだろう…近いうちにまた会いそうな気がする…

 

「行こ…バス行っちゃうよ…?」

 

「そ、そうだな!!」

 

そう言って小走りで各々乗るバスへと急ぐ。

これでやっと長かった臨海学校も終わりだ…




誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。

次回
勧誘ですね、わかります

お楽しみに~
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