IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~   作:ぼいら~ちん

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PHASE-47 心の奥に眠る涙

「どう言うことだ?

突然真面目な顔をしたと思ったら私が泣いているだと?

今の私のどこが悲しそうなんだ?」

 

表情は平然を保っているものの明らかに心が動揺している千冬さん。

ここで退いたら絶対に真実に辿り着けない…空がサイレント・ゼフィルスのパイロットに織斑姉弟と似たものを感じたという理由の真実に…

 

「心がですよ」

 

「な?!」

 

「本当に酷いですよね…ニュータイプ(この力)って…

勝手に他人の感情が流れ込んでくるんですよ…千冬さんも例外ではなく…

でもその理由まではわかんないッス。

教えてくれないッスか?」

 

「……」

 

俺の言葉を聞いて何か秘密を隠そうと必死な感じの千冬さん。

 

「この間空に文化祭の時に襲ってきたサイレント・ゼフィルスのパイロットについて聞いたんスよ。

そしたら千冬さんや一夏に似たものを感じたって言ってた。

それとこれって何か関係があるんじゃないんスか?」

 

「ふっ…

相変わらずお前は好奇心旺盛だな。

ガキの頃と全く変わらん。

良いだろう、話してやる。

私とお前が出会う以前にお前の住んでいる家に住んでいた家族の話を…」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

今から13年前。

織斑家の家主とその妻が突然謎の失踪を遂げた。

原因は不明、どこに行ったかも不明。

そしてその家に残されたのは3人の兄弟姉妹。

小学6年生の長女の名は千冬。

そしてその姉には4歳になる弟の一夏と一夏の双子の妹のまどかがいた。

それから3年後の春。

星村希という少年がこの世界にやってくる数ヶ月前。

家主のいない織斑家の最年長者が中学生となると収入も限られてくる上にいくら倹約したところで支出額は馬鹿に出来ない額になってしまう。

幸い両親は預金通帳とキャッシュカード、そして暗証番号を記して失踪してくれたのである程度は大丈夫なものの帰ってくる目処が立たないためとても不安定である。

その上失踪したのが3年も前のため貯蓄の底が見え始め生活を続けるのには正直酷だった。

そのため親類の中で唯一連絡の取れた遠縁の叔母が安定した収入源が出来るまで仕送りをしてくれるのと同時にまどかを預かってくれるということとなり私はなくなくまどかを預けることにした。

 

「ごめんな、まどか。

絶対にお姉ちゃんが迎えに行くからな」

 

これは私がまどかとの別れの日に最後にかけた言葉である。

 

「うん!!

待ってる!!」

 

まどかは眩い笑顔で私の言葉に応えた。

その後もまどかを預かってくれている叔母から定期的に手紙が届きその手紙には何時もまどかが遊んでいる写真や誕生日会の写真など様々な写真が同封されていた。

私自身も早くまどかといっしょに暮らせる日を待ち望んでいた…これから何が起きるかも知らずに…

 

「頑張ってね千冬お姉ちゃん!!」

 

月日が流れ第2回モンド・グロッソの開催。

になった私は「子供4人と大人2人が難なく生活できる位の金額を保証してもらう」という少々無理がある交換条件をこじつけ日本の国家代表となっていた。

そしてこの時私は決心した。

「この大会が終わったらまどかを引き取り昔のような生活に戻ろう」と。

幸い再就職先はオファーが来ているので問題はない。

しかし…私の夢はその時から崩れ始めていたのかもしれない。

 

「なに!?

一夏とまどかがさらわれただと!?」

 

突然現れたドイツ軍士官によって告げられた信じがたい事実。

そして告げられたのは一夏の居場所のみ。

まどかの居場所は全くわからないという。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「それからの私の行動は知っての通りだ。

そしてまどかは未だに見つかっておらず行方不明のままだ」

 

「じゃあ…そのまどかってのが」

 

「ああ。

多分サイレント・ゼフィルスのパイロットだろう」

 

やはり千冬さんの肉親だったのか…

 

「星村兄…いや、希。

一つ頼みがある」

 

「何スか?」

 

「まどかと一夏を守って欲しい」

 

「と、言うと?」

 

「まどかはきっと私のことを恨んでいるに違いない。

そしてその矛先はきっと一夏に向かうこともあるだろう」

 

「千冬さんは私を愛してくれなかった…

だから今愛している一夏を殺し、それに成り代わり私が愛されようと…発想がガキッスね」

 

千冬さんは二人を愛しているのに…

 

「だから…頼む!!」

 

千冬さんが柄にもなく頭を下げる。

 

「愚問ッスね。

敵だろうが味方だろうがこれ以上IS学園(ここ)で人は殺させませんよ。

もう誰かが死ぬのは見たくないし聞きたくないから」

 

「ありがとう。

…そら、そろそろ部屋に戻れ。

お前の彼女も心配しているんじゃないのか?」

 

「か、彼女!?

なに言ってんスか千冬さ~ん?

俺と簪はそんな関係ーーー」

 

「なのだろう?」

 

「…はい…そうです…」

 

…ブリュンヒルデの威圧感には勝てなかった…

 

「この事は出来れば内密に…」

 

「どうかな?」

 

ニンマリと怪しい笑みを浮かべる千冬さん。

…ぜってぇ誰かに言うよこの人…

しかもかなり近いうちに…

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「見ていて下さいみなさん!!」

 

「おう。

スタンドからずっと見てるぞ」

 

レース開始の10分前。

選手控え室にて俺、簪、空の4人でカノンの激励に来ていた。

 

「私達は生徒会の仕事で出れないから私達の分まで頑張ってね」

 

「ありがとうございます簪さん!!」

 

「ぶ~ボクも出たかった~」

 

「来月の専用機持ち限定のタッグマッチまで我慢ッスね」

 

『レース開始5分前となりました。

選手の方々はスタート位置に集合して下さい』

 

山田先生によるアナウンスが部屋に鳴り響く。

それに促されカノンが座っていた椅子から立ち上がる。

 

「じゃあ、私行ってきます!!」

 

「気をつけてな~」

 

パタパタと小走りで部屋を出て行ったカノン。

そして控え室からどんどん人はいなくなり気づいたら俺達のみになっていた。

 

「ねえ兄さん?」

 

「ん?

何スか?」

 

「ボク達が楯姉に生徒会の仕事の手伝い頼まれたのってただ単に忙しいからって理由じゃないよね?」

 

「バレているなら仕方がないわね」

 

突然楯無さんの声が聞こえてきたと思った時には既に彼女は空の背後にいた。

 

「えぇええええ!?

何時の間にか居たの!?」

 

「影から出てきた」

 

「お姉ちゃんって日本人だよね?

ゲルマン忍術とか使わないよね?」

 

大丈夫だ簪。

あなたのお姉さんは100%日本人でロシアの国家代表です。

 

「まあ大方気付かれてるとは思ってたんスけどね」

 

「やっぱり理由は亡国企業(ファントム・タスク)絡みでしょ?」

 

「ええ。

私と希くんの考えは奴らは学園のイベントがある時…つまり一般人と学園の生徒間に交流がある時を狙って襲ってきていると思うの」

 

「今回は一般人の出入りが前回の学園祭の時よりも多い…」

 

「運営側に回ってる俺らが警備にあたるってわけ。

ちなみにキラ達は学園の警護だ。

向こうからテレビ中継見てる生徒も少なくないからな」

 

俺は廊下を歩きながら簪と空に説明する。

暫くすると客席へ続く階段が見えてきた。

その時だった。

 

ドカーン

 

突然の大きな爆発音。

急いで階段を登るとアリーナの中央に青い機体が浮いていた。

 

「おいでなすったか!!

みんなは一般人の誘導を!!

あいつは俺一人で叩く!!」

 

「え、ちょ、兄さん!!」

 

俺は3人を置いて走り出した。

ピットに着くとすぐさまISを展開しピットからアリーナ内へと飛び出した。

既に戦闘は開始されており、レースのコース外では戦闘不能となったシャルとラウラをビットの砲撃から守る一夏とカノン、そしてコース上にはサイレント・ゼフィルスと交戦する鈴とセシリアの姿があった。

 

「みんな、大丈夫か?!」

 

「なんとかね…」

 

「全員退け!!

後は俺とカノンでやる!!

カノン、行けるな!!」

 

「だ、大丈夫です!!」

 

一夏はすまないと言い残すと負傷したシャル達を抱えてピットへと戻っていった。

 

「セシリア、鈴!!

こいつは俺が引き受ける!!

お前らは退がれ!!」

 

『わかった!!

後は頼んだわよ希、花音!!』

 

『わたくしは嫌ですわ!!』

 

「そんな事わかってる!!

お前の事情は百も承知ッスけど今回ばかりは本当に頼む!!」

 

『行くわよセシリア!!』

 

『ですが!!』

 

「でもじゃありません!!

早く行って下さい!!

でないと私の誤射の被害者が増えるだけです!!」

 

『はい…すみませんでしたわ…』

 

『それでは…失礼しまーす…』

 

カノンェ…

そういう意味ではないんだけど~

 

「逃がさん」

 

カノンの誤射から逃れようと撤退し始める二人にサイレント・ゼフィルスはビットによる射撃を行う。

 

「だから撃たせねぇって…」

 

俺はストライクのシールドを両手に展開する。

 

「言ってんだろ!!」

 

2枚のシールドを手裏剣が如くビットと2人の間に投げ、投げられたシールドは回転しながらビームシールドを展開しビームの雨を防ぐ。

そしてダメージが蓄積し過ぎたのか大きな爆発音と共に爆ぜた。

 

「おおぉおおおお!!」

 

「くっ?!」

 

爆煙に紛れ俺はサイレント・ゼフィルスに攻撃を仕掛ける。

しかし桃色のナイフによって防がれてしまった。

 

「お前の相手は俺達ッス」

 

「ふっ…良いだろう。

相手になってやる」

 

背後でピットへ繋がる入り口の隔壁が閉まる音が聞こえる。

それによって俺とカノン以外の全員が逃げたことを確認すると左手から荷電子の球ーレッドフレームで言うところの光雷球を機体に叩きつける。

 

「かはっ!!」

 

攻撃を受け後退する敵。

 

「…入りが甘いか」

 

「まだまだ甘いな、星村希」

 

「出来ればここらで退いてくれない?」

 

「…!!

敵に情けをかけるとはどういうつもりだ?

とことん甘いのだな貴様は」

 

「俺はとあるお姉さんからアンタを守ってくれって依頼を受けてるんだ。

なあ、サイレント・ゼフィルスのパイロット。

いや、織斑まどか」

 

「…!?

貴様…!!」

 

「織斑…って一夏くんのご兄弟ですか!?」

 

事情を知らないカノンは当然の如く驚いた。

まあ、一夏も千冬さんもこっち(IS学園)側の人間だから驚くのも無理はない。

 

「織斑まどか…って…まどかちゃんだよね!!

覚えてる?私だよ!!

兵部花音だよ!!」

 

「知り合いなんスか?」

 

「もう会わなくなってから10年が経ちますが」

 

こいつは驚いた…まさかカノンとまどかが知り合いだったとは…

 

「アンタをこっち側に引き入れる理由がもう一つ増えたな。

こっちの受け入れ体制は万端だぞ」

 

「私は…私を見捨てて一夏だけを救い出しそれでものうのうと生きてる姉さんを許さない…

だから私は…お前達を殺し…織斑一夏を…そして織斑千冬を殺す!!」

 

まどかは大型の銃剣を展開し俺達の方に向けて瞬時加速(イグニッションブースト)を行った。

 

「くそったれ…

この分からず屋がぁ!!」

 

日本刀と銃剣が交わり激しく火花を散らす。

一人の少女を救うための戦いの火蓋が切って落とされた。




誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他 出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。

次回
少女の思い

お楽しみに~
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