IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~   作:ぼいら~ちん

52 / 66
PHASE-50 迷い込んだ忠犬

9月30日午後1:28

 

「犬…?」

 

「犬だね」

 

「犬ですね」

 

「犬だな」

 

「犬だ~!!」

 

犬を見つけた。

学園の敷地内で。

これは多分今までにない事態だ。

いや、まだ入学して半年の俺がどうこう言えるものではないのだけど。

何でこんな時間に俺達は外にいるのか、それは先日の事件の影響で今日は午前授業になったのだ。

それ故他の生徒はISの操縦訓練をしたり外で買い物しり各々様々な過ごし方をしている。

俺達は今日から学園の生徒になったまどかに学園の案内をしていた。

その途中で犬を見つけた。

なぜか?

んなこたしらん。

可愛いから良しとする。

そんな事を思っていると周りにいた簪、花音、まどか、空の4人は犬の方へと向かっていった。

 

「お前はどこから来たんだ?」

 

「ワン!!」

 

ふむふむと頷いて何かを考え込むように首を傾げるまどか。

 

「…わからないものだな」

 

「いや当然でしょ?!」

 

「ふむ…ありとあらゆる言語を理解できる私にまさか犬語が理解出来ないとは…」

 

「多分ラテン語話せても犬語は無理だと思うよまどかちゃん…」

 

…こいつは案外天然の気があるかもしれない…

 

「もう一度聞こう。

お前は、どこから、来たんだ?」

 

「ワン!!」

 

八十神神社(やそがみじんじゃ)から来たそうです』

 

「八十神神社って学校の近くのか…っていまワンを翻訳した奴誰だ?!」

 

「まさか…」

 

みんなゆっくりとまどかの方に顔を向ける。

まるで錆びたブリキの玩具のようなスピードのそれらはいつギギッ…ギギギギギと不快な音をたてても可笑しくはない。

 

「わ、私のわけがなかろう!!

確かにラテン語は話せるが本当にわからないものはわからないん!!」

 

「おいおい話を戻すな。

物凄いややこしくなる」

 

第一ラテン語と犬語の接点ってなんだよ…

 

「で、結局訳したのだれ?」

 

『私です…』

 

「せ、セシアちゃん?!

いつからそこに?!」

 

『一回目のワンの辺りからずっと…』

 

「「「「「なんかごめん…」」」」」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「と言うわけで生徒会室に連れてきました」

 

「わんちゃんだ~

触ってもいい~?」

 

「問題ないよ」

 

「もふもふ~」

 

本音が拾った犬をもふり始めた。

わしゃわしゃされて犬本人も気持ちが良さそうな表情をしている。

 

「只今もどりました。

あら…犬?」

 

今度は虚さんが仕事から戻ってきたようだ。

 

「はい。

なんか寮の近くで拾ったんです」

 

「八十神神社に住んでるみたいなんですけど」

 

「なら早く返した方が良いかもしれません。

飼い主も心配しているかも知れませんし」

 

「それもそうですね」

 

「ちょっと!!

私にも触らせてよ!!」

 

「げっ…楯無さん…」

 

「いつから居たの?」

 

「最初からよ!!」

 

微妙に怒り気味で返答する楯無さん。

まあまあと簪が宥めるもなかなか荒ぶる楯無さんは止まらない。

 

「突然犬連れてきたと思ったらみんなでそっちに付きっ切りだし!!

真面目に仕事してる私にも少しは構ってよ!!」

 

「「「「「「真面目に仕事してるのを邪魔するのはなんか悪いかなーって」」」」」」

 

「みんなしてしどい!!

少しは手伝ってくれても良いじゃない!!」

 

「「「「「「だって面倒だしー」」」」」」

 

「もふもふするの楽しいし~」

 

「あぁああああ!!

もう我慢できない!!

私にももふらせなさい!!

会長命令よ!!」

 

半ば発狂している楯無さんが犬に手を伸ばす。

頭や顎の辺りをわしゃわしゃし始める。

表情が段々と緩んでいく楯無さん。

心なしか肌が潤いを取り戻しているような気がする。

 

「まんぞく!!

この子って普段どこに居るの?」

 

「八十神神社だそうです。

学園の近くの」

 

「わかったわ!!

虚ちゃん本音ちゃん!!

週一で通うわよ!!」

 

「「はい!!」」

 

なんか生徒会の団結力が高まった気がする。

 

「生徒会のコミュニティのレベルが3に上がった」

 

「何の話だ?」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「八十神神社に行きたいが…」

 

「なかなか辿り着けないね」

 

「第一まだ学園の敷地からも出てないですもの」

 

「更にその上…」

 

「鈴音達に捕まった…」

 

「わーこの犬可愛いー!!」

 

「ねえお手してお手!!」

 

「ワフ」

 

「「「「キャー!!可愛い(ですわー)!!」」」」

 

まどかの言う鈴音達とは毎度お馴染み織斑ハーレムズ(俺命名)である。

しかしハーレムズの会員ナンバー5番、我が義妹ラウラは1人だけ蚊帳の外と言う感じで犬にあまり興味がないようだ。

 

「お前は行かないのか?」

 

「ええ。

昔から犬と言うのはどうも苦手で」

 

「なんで?

ボク好きだよ犬」

 

「いや何というか…よくわからないのですが苦手です。

なんて言えば良いのでしょうか…

命を刈り取られそうな…」

 

黒うさぎ部隊(シュバルツェ・ハーゼ)の人間が心までウサギと化してる事を知った瞬間であった(ウサギ狩り的な意味で)。

 

「だ、大丈夫!!

この子優しいから噛まれないって」

 

「義姉さんが言うなら…」

 

そう言って恐る恐る犬に手を伸ばすラウラ。

頭頂部に手を触れても何も起きなかったからか頭を撫で始めた。

段々とラウラの表情が緩み笑顔になっていく。

その時だった。

 

「ワフ」

 

「~~~~~~?!」

 

ラウラの真っ白な手が犬に寄って噛まれた。

慌てて手を引っ込めるラウラ。

先程とは一転、怯えきり今にも泣き出しそうな表情で両手をブンブン振り回しながら声にならない叫びをあげていた。

 

「この子見た感じビーグル犬ですよね…」

 

「ラウラのいる部隊は黒うさぎ部隊…」

 

「「「「「「「「「あ…(察し)」」」」」」」」」

 

黒うさぎ部隊は身も心もうさぎと化してることが実感できた瞬間だった。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「あ、おーい希くーん、兵部さーん!!」

 

「あ、ノエル」

 

校門を出ようとした時、今度は緑色のジャージを着た茶髪の少女-ノエルに声をかけられた。

 

「何してるの…って犬だー!!」

 

「これからこいつを飼い主の所に返しに行くんスけど。

一緒に行く?」

 

「行く行く!!

この辺の事もあんまりわからないからついでに教えてよ」

 

「大丈夫ですよ。

ね、希くん」

 

「おう」

 

まだ門限までは3時間近くある。

全然問題はない。

 

「ねえ兄さん、この子誰?」

 

「そう言えば面識なかったね。

あたしはノエル・リュミエール。

フランスの代表候補生で国家代表である我が姉、サラ姉ちゃんの専属メカニックでもあるぞよ!!」

 

「シャルから聞いたことある。

機体整備技術、操縦技術共に相当な腕前の子が居るって。

しかもその子の機体は今時のISにしては珍しく射撃武装も近接武装も一切持ってないって言う…」

 

「また随分な変わり種機体に乗ってんスね。

純格闘型…しかも近接武装も無いとなると…残るは己の拳か脚ってか?」

 

「察しが良くて助かるよ。

まあ、この子のお披露目はまた今度ってことで」

 

ノエルは右脚を見ながら言う。

よく見るとそこには龍の頭を模したチャームのついたアンクレットがついていた。

 

「楽しみにしてるッス。

お、目的地その1に到着ッスよ」

 

「お~デュランダル~!!」

 

「これが学園で噂の喫茶店、デュランダルですか…

楽しみです!!」

 

喫茶店の入口を開ける。

平日の昼間で普段はあまり人がいない時間帯なのだが今日は授業終わりのIS学園生で賑わっていた。

 

「いらっしゃい。

久しいね希君。

沢山友達を連れてきてくれて嬉しいよ」

 

「偶には大勢の友達と一緒に来るのも良いかなって。

カウンター良いですか?」

 

「構わないよ。

ちょうど6席開いたしね」

 

マスターが指差した方のカウンターだけぽっかり穴が開いているように人が居なかった。

珍しくラッキーだ。

 

「また見ない顔が増えたね」

 

「まあ来なかった何ヶ月かの内に色々ありまして。

右隣のピンク髪は兵部花音、左隣の茶髪がノエル・リュミエール、で一個とばした黒髪が織斑まどか」

 

「織斑…一夏君のご家族か。

彼も千冬さんもこれから辛いこともあるだろうが私からも彼らを支えて欲しい」

 

「そのために私はIS操縦者になったのだからそれくらいは当然です。

それにしても、姉さんや一夏をご存じで?」

 

「ああ。

一夏君は偶には一人で、千冬さんは同僚の山田さんと一緒に」

 

「一夏が一人か…予想外だったな。

てっきり鈴音達の誰かと来たのかと思っていた」

 

「何時も愚痴っているよ。

「俺の周りの女子の態度が怖すぎて無理」とかなんとか」

 

「…あの鈍感は何時か治さなければあいつは死ぬな」

 

「後ろからグサッとね」

 

ノエルさん…笑顔でそんな事口走らないで下さいよ…

折角のかわいい系女子の肩書きがどんどん崩れていきますよ…

 

「注文はどうする?」

 

「俺はコーヒーとプリン」

 

「ボクはココアとプリン」

 

「私は希と同じで」

 

「私も希くんと同じでお願いします」

 

「左に同じく」

 

「あたしはコーヒーとこの「肉ナポリタン」にしようかな」

 

「わかった。

コーヒー5つにココア1つ、プリンを5つに肉ナポリタンだね。

承った」

 

マスターは後ろを向き調理を始める。

そんな中、俺の中に一つの疑問が生まれる。

 

「なあノエル、肉ナポリタンなんスか?

メニュー載ってなかったように見えたんスけど」

 

「このお店の裏メニュー的なやつだよ。

昔からお姉ちゃんのIS関連の仕事でここに来ることが多くて昔からお世話になってるんだよ。

それでお腹が減った私にマスターが作ってくれたのがこの肉ナポリタンってわけ」

 

「ワン!!」

 

「ワンじゃねーよ」

 

と言うよりここ犬オッケーだったっけ?

 

「気にするな。

俺は気にしない」

 

「いつの間にか出てきたレイ?!」

 

「料理が出来たぞ。

ノエル、肉ナポリタン大盛だ」

 

「お、ありがとねバレルくん」

 

金髪の少年レイがノエルの前に銀色の皿にを置く。

そこには豚肉がたっぷり入ったナポリタン。

さらにその美味しそうなナポリタンの上にはなんと8等分されたビフテキが乗っていた。

 

「自分の仕事をしたまでだ」

 

「肉ナポリタンなぁ…」

 

「美味しそう…じゅるり…」

 

空が涎をだらだらと垂らす中、俺はふと疑問に思うことがあった。

 

「なあノエル、お前の好きなものってなんだ?」

 

「にく…じゃない!!

プディング!!」

 

「肉じゃねえの?」

 

「プディング!!」

 

「肉だろ?」

 

「肉…です…」

 

観念したように男の青春のお供の名を口にするノエル。

その表情には諦めと同時に恥じらいのような色も見え隠れしていた。

 

「ま、いいんじゃねえの?

元気いっぱいの女の子って意味では好印象だと思う」

 

「ほんと?!」

 

「おう!!

ま、ここのプリンも美味いから食べてみろよ」

 

「もち希くんの奢りだよね?」

 

「え?!

お、おう!!」

 

「じゃ、私も希の奢りで」

 

「ボクもボクも!!」

 

「希くん、お願いします」

 

「頼んだぞ」

 

「…いくらスか?」

 

「明細書だ」

 

レイが俺に見せてくれた紙にはそこそこ多い…というより一般的な高校生的にかなり際どい値段が書かれていた(払えるか否かという意味で)。

 

「くそう…俺の樋口が…」

 

「気にするな。

俺は気にしない」

 

「嫌でも気になるわ!!」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「やっと着いた…八十神神社」

 

「階段…長かったね~」

 

まさかこんなテレビ報道もされない神社の階段がここまで長いとは…

 

「あ、そこに巫女さんいる。

聞いてみようよ」

 

ノエルが指差した方向に小学生くらいの巫女さんが箒で掃除をしていた。

箒と言ってもあのポニーテール剣道ガール篠ノ之箒ではなくただの竹箒だ。

 

「それがいいね。

すみませーん!!」

 

「はい?

あ、マロちゃん!!」

 

「ワン!!」

 

「マロちゃん?」

 

巫女さんがこちらを振り向くとパタパタと少々慌てて近づいてきた。

そして空が抱えていた犬はその巫女さんの方へと走っていった。

 

「今日は帰りが遅くて心配したんだよー!!

あ、今日はありがとうございます。

IS学園の方…ですよね?」

 

「学園の敷地内にいたので連れてきました」

 

「ありがとうございます。

あ、私はここで巫女やってる住職の娘の根元朱(ねもとあか)っていいます」

 

「宜しくね朱ちゃん。

ボクは星村空」

 

「俺は星村希ッス」

 

「私は兵部花音です」

 

「更識簪です」

 

「織斑まどかだ」

 

「あたしノエル・リュミエール」

 

「宜しくお願いします」

 

「ところでこの子ってここで飼ってるの?」

 

「はい。

この子、マロヒコって言うんですけど先代の住職、私のおじいちゃんが飼っていたんですけどおじいちゃんが亡くなってしまってからよく一人で出掛けるようになったですよ」

 

「居なくなった飼い主探しか。

お前は偉いな」

 

「ワンワン!!」

 

朱が抱えているマロヒコが誇らしげに吠える。

その時、5時を迎えた事を知らせる鐘の音が鳴り響いた。

 

「もうこんな時間か!!

ごめん朱。

俺らもう帰んなきゃ。

ありがとな」

 

「こちらこそありがとうございます。

IS学園の方々ととお話しできるのは嬉しい限りです」

 

「それじゃあね朱ちゃん!!」

 

「はい。

またいつか!!」

 

神社の境内に背を向け夕日に向かって歩き出す。

また新たな出会いが出来て良かった。

これも全部マロヒコのお陰だな。




誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他 出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。

次回
対決!!肉食系フランスガール!!

お楽しみに~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。