IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~   作:ぼいら~ちん

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大変ながらくお待たせいたしました!!


PHASE-55 涙の雨

「はあっ…はあっ…」

 

「おいおいどうした?!

もう終わりか?!」

 

「最初の威勢はどこへやら?

本当にだらしないのね!!」

 

立て膝をつきながら肩で息をする。

本当にミューディーの言うとおりだ。

最初はまだ良かったものの2対1はやはり分が悪く次第に俺は劣勢になっていった。

変換済みのシールドエネルギーも底をつきかけている。

ふと思考の端を「死」の一文字が過ぎる。

 

「まだ…負けられない…」

 

「諦めが悪いのね…

裏切り者の分際で…さっさと死になさいよ!!」

 

ミューディーがビームサーベルを構え此方へとスラスターを全開にして接近してくる。

右手に持ったビーム発生機構を失ったフラガラッハ3で防ぐ。

しかし光の刃は対艦刀の刀身を一瞬にして溶断した。

俺の顔に近付いてくる光の刃。

でも、こいつらに手を掛けられて死ぬのも悪くないかもな…

 

「まだ終わりじゃないぞ!!

スウェン・カル・バヤン!!」

 

諦め掛けていた俺に誰かが声を掛けてくる。

その刹那、ミューディーと俺の間に紫電が迸りミューディーは吹き飛ばされた。

 

「大丈夫か?」

 

「あなたは…サラ・リュミエール…」

 

俺を助けてくれた女性は2組に編入して来たフランスの代表候補生で最近希や簪と良く連んでる少女の姉でありつい先日学園の3組の副担任を任せられた2代目ブリュンヒルデ、サラ・リュミエールだった。

纏っている機体、エクレールは希が最初に戦ったと言ったときの写真とカラーリングが異なっており黄色主体だった配色は黒とグレーが基調の色合いになっていた。

 

「立てるか?」

 

「何とか…でも、何故ここに…?」

 

「同僚の家に同居人に死なれては目覚めが悪い。

それに…妹がいつも世話になっているからな。

その礼だ」

 

「…ありがとうございます」

 

「礼はいい。

それよりもお前達はもっと他人を頼ると言うことを知ったらどうだ?

星村にしてもお前にしても1人で無茶をし過ぎだ」

 

「これからは気をつけます」

 

リュミエール先生の言葉にそう返答すると俺はスペアのフラガラッハ3を展開し左側のウィングにマウントされたフラガラッハ3を引き抜いた。

 

「何か増えたんだけど?

もしかして私の相手ってアンタ?」

 

「それでいいならそうするが?」

 

ミューディーの方を向き直った彼女の両手には既に武器が握られていた。

なんの変哲もない刀。

希が使っていたクライム&ペナルティのようなただの刀が彼女の武器らしい。

 

「行くぞ!!」

 

「はんっ!!

上等!!」

 

刀を持った彼女は青い機体へと斬りかかっていった。

残ったのは俺と目の前の緑色の機体。

 

「お前は一度死んでいるんだ…

もう苦しい思いはさせない…!!」

 

「そいつはこっちの台詞だぜ!!

一回死ねよスウェン!!」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「くっ!!

ちょこまかと!!」

 

「あはは!!

今時射撃武装持ってないとかアンタ馬鹿?!

これで私の独壇場ね!!」

 

スウェンに見栄を張って青い機体を相手に選んだのは良いが私-サラ・リュミエールは相手の射撃武装による牽制によってなかなか自分の間合いに持ち込めずにいた。

 

「…かくなる上は!!」

 

地面を力一杯蹴り、青い機体へと突っ込む。

 

「えっ?!

なっ?!」

 

私の行動は予想外だったのか青い機体のパイロットは動揺を隠せていない。

その所為か辺りを隙なく張られていた弾幕は少し薄くなる。

 

「切り捨て御免!!」

 

「くっ!!

嘗めんじゃないわよ!!」

 

大上段からの一撃はビームサーベルによって阻まれてしまう。

しかし…この機体の間合いに入ったら…

 

「もう逃がれられんぞ」

 

「くっ?!

ううっ!!」

 

右足で更に踏み込む。

その刹那、踏み込んだ地面から紫電が迸り青い機体の足から頭上まで一瞬にして上り詰めた。

 

「くっ!!

何なのよその機体は!!」

 

「ふむ。

レールガンか…この間合いでそれを使うとは…」

 

青い機体の右肩のシールドの裏から大きな砲口が私の頭に狙いを定めた。

 

「お前ははアホか?」

 

「な?!

スコーピオンが!!」

 

しかしその砲口は直ぐに何かによって切り裂かれてしまった。

そのまま砲身は爆散。

辺りに粉塵が立ち込める。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「くそ!!

何で私が!!」

 

辺りには土煙が立ち込め視界が無い。

その中で青い機体-ブルデュエルのパイロット、ミューディー・ホルクラフトは悪態をついた。

残りの武装はまだ残っているがなにせ相手との力量に差がありすぎる。

ここは出しゃばらずに一度撤退するのがセオリーというものである。

そう思った彼女は空へと飛び立とうとした。

その時だった

 

「幾ら視界が0だと言えどこの中で叫ぶのは自分の場所を教えているようなものだぞ?」

 

相手の女の声が聞こえたと思うと辺りを漂っていた粉塵は一気に晴れた。

その中心部には青白い電気を纏った灰色の機体が立っていた。

 

「あ…あぁあ…」

 

その姿を見たミューディーは言葉を失った…

その立ち姿を見ただけで本能的に感じたのだろう。

「この女にはどう足掻いても勝てない」と。

 

「お前には恨みはないがここで倒れてもらう!!」

 

灰色の機体は刀を下段に構えミューディーを肉薄する。

 

「いやいやいやいやぁあああ!!」

 

錯乱状態のミューディーはビームライフルの引き金を所構わず引きまくる。

狙いの定まっていないそれは当然の事ながら誰に当たることなく壁や地面を破壊していく。

 

「一閃!!」

 

「くうっ?!」

 

紫電を纏った刀がミューディーの体を切り裂く。

絶対防御が発動し、大幅にエネルギーが減少した上に機体の各部が高圧電流によって一時的にショートしてしまった。

 

「…アマノヌボコ!!」

 

ミューディーの頭上にサバイバルナイフのような刀身の薙刀が現れる。

 

「断罪の刃!!」

 

その薙刀は同様しているミューディーにギロチンのように振り下ろされた。

 

「あ…あぁあ…死にたく…ない…」

 

そう言ってミューディーは地に伏した。

機体はエネルギー切れで強制解除され、灰色の機体-テンペストエクレールの眼下にはただ女性が横たわっているだけである。

灰色の機体のパイロットはその機体を収納し横たわっている女性に近付くと彼女を抱きかかえた。

 

「心配するな。

私はただの教師だ。

人殺しはしない」

 

そう言うと再びISを展開し彼女は飛び立っていった。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「おら!!」

 

「ぐっ!!」

 

銃剣による攻撃を対艦刀で防ぐ。

シャムスとこうやって剣を交えるのが何度目かわからなくなってきた。

しかしヴェルデバスターは射撃に特化した機体のはずなのに何でここまで近接戦闘に拘るのか…

 

「余所見してんじゃねえよ!!」

 

「がはっ?!」

 

突如鳩尾を蹴られる。

その勢いで開いた間を詰められることはなくシャムスはその代わりにビームライフルの銃口をこちらに向けた。

 

「終わりだよスウェン!!」

 

引き金が引かれ銃口から光の弾丸が放たれる。

スローモーションのように動く世界…

俺はその光と俺の間に対艦刀を滑り込ませすんでの所で弾丸を防ぐ。

 

「ちっ!!」

 

俺がこんな風に躊躇しているから自らの命も…他人の命までも危険に晒す…

覚悟を決めろスウェン・カル・バヤン…

 

「さあスウェン!!

そろそろ終わりにしようぜ!!」

 

「わかっている…

終わりにしよう…今度こそ!!」

 

俺の言葉を皮切りにシャムスは俺に向かってその機体が持つ全ての武器による全弾発射(フルバースト)を放つ。

機体のスラスターの制御とそれでも避けれない場合は手近な壁に向かってアンカーランチャーを放ち牽引することで避ける。

でもこれでは近付けない…

しかし光明はすぐそこにあった。

こちらへと向かってくる光と弾丸の雨の地面すれすれ…

ちょうどIS一機が通り抜けることが出来る位の隙間があった。

それを見た俺はすぐさま弾丸の雨に向かって走り出した。

そして地面と弾丸の間に滑り込み腰から引き抜いたビームライフルの引き金を引いた。

 

ドカーン

 

その刹那、俺は爆炎に飲み込まれた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

目の前でミサイルやら何やらが爆ぜる。

上がった火柱を見て俺ーシャムス・コーザは思わず叫んだ。

 

「ハハッ!!

焦って自爆しやがった!!」

 

辺りは粉塵によって包まれる。

ISのセンサーには何も反応はない。

勝利を確信したその時だった。

俺の右足に何かが巻きつきそれに引っ張られ尻餅をついた。

 

「油断は禁物だぞ。

シャムス」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

シャムスの足に巻き付けたワイヤーを一気に巻き取るのと同時に後方へと向かって引っ張る。

 

「な?!

どうなって!!」

 

爆炎に巻き込まれた俺は咄嗟にビームシールドを展開することでダメージを最低限にし、その上で地面に向かってアンカーランチャーを射出。

牽引することで移動速度を上昇させダメージを更に減らした。

 

「ぜぁあああ!!」

 

真後ろに放り投げられたシャムスは動揺してスラスターの制御が上手くできないらしく慣性の法則に従って宙を舞っていた。

それに向かって加速する。

そしてシャムスの腹を目掛けて2振の対艦刀を振るった。

 

「ぐぁあ?!」

 

「まだだ!!」

 

切り抜けた後に2振の対艦刀を収納。

そして良の手のアンカーランチャーを真後ろのシャムスに向かって放つ。

見事に命中したそれを後ろに回転し、ワイヤーを切ることで緑の機体は再び宙を舞う。

 

「今終わる!!」

 

対艦刀を右手に展開しそれをシャムスに投げつける。

胸部装甲に突き刺さったそれをレールガンで打ち抜く。

電撃の弾丸をもろに食らったそれは一瞬にして爆ぜた。

 

「ぐ…あぁあ…」

 

爆風によって粉塵の中から弾き出されたシャムス。

地面を3メートルほど滑ったところで壁によってその体は動きを止めた。

俺はそこまで機体を動かし体を止めた。

そこで機体に具現維持限界が来たのか強制的に収納された。

 

「……」

 

「どうしたんだよ…早くしろよ…とどめ…」

 

「…嫌だ」

 

俺は首を横に振る。

しとしとと雨が降ってくる。

 

「わかってるだろ…お前は俺の敵で…俺はお前の敵だ…」

 

「それでも嫌だ…

またやり直せないのか…俺達は…」

 

「出来るかもな…でも無理だ…」

 

ビービーと甲高い警告音が鳴り響く。

シャムスの機体のハイパーセンサーに「強制自爆コマンド起動」の文字が浮かび上がる。

 

「…もう無理だ…

早く殺せよ…腕から先を展開するくらいのエネルギーはあるだろ…?」

 

「でも…でも!!」

 

「スウェン!!」

 

シャムスの大きな声に少し驚く。

しかし彼の表情は戦闘時とは打って変わって優しい微笑みが浮かんでいた。

 

「爆発に巻き込まれて死ぬくらいだったら…お前に殺される方がいいんだよ…

俺の最期の頼みだ…頼む…スウェン…」

 

「……コアの場所は?」

 

「バックパック…

ちょうど心臓の裏っかわだ…」

 

その言葉を聞いて俺は機体の腕部装甲と対艦刀を1振展開する。

 

「あぁああああああ!!」

 

絶対防御とシャムスの体を貫いてその対艦刀の刃はヴェルデバスターのコアを貫いた。

 

 

ーーーありがとうーーー

 

 

みるみるうちに地面を染める赤…

限界を迎え緑の機体と黒い刃は光の粒子となって消える。

俺は亡き友の体を抱き抱える。

 

「あぁあ…あぁああああああ!!」

 

悔しさの余り涙が瞳から溢れる…

雲に覆われた空を見上げる俺の頬を落ちてくる大粒の雨は濡らした。




誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。
次回もお楽しみに~
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