IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~ 作:ぼいら~ちん
「被害総額は29億…怪我人は61人…死者1か…」
「奇襲だっただけあって対応に遅れが出たのが原因ッスね…
こっち側の機体もみんな限界ですし…暫くは動かないでくれるのを祈るばかりッスね」
空中投影モニターと睨めっこしていた千冬さんが眉間に皺を寄せながら顔を上げる。
無人機による襲撃事件から数時間後…事件の当事者である俺とスウェン、そして教員である千冬さんと山田先生はIS学園の地下区画…一般生徒が立ち入ることの出来ない区画にいた。
「…先生、ミューディーの容態は?」
「先程連絡が入りました。
ミューディー・ホルクラフトさんに命に別状はなく数日入院すれば大丈夫とのことです」
「よかったぁ…」
スウェンの質問に山田先生が吉報と言える返答を返す。
安堵したスウェンはほっとした表情でテーブルのマグカップに注がれたコーヒーを一口すすった。
「アイツの墓も…つくってやらなくちゃな」
「…そうッスね。
ちゃんと弔ってあげないとスウェンが怒られちまう」
スウェンの言うアイツとは今回の事件での唯一の死者である向こう側の世界でスウェンの同僚だった男、シャムス・コーザの事である。
スウェン曰わく彼の機体がハッキングを受けコアの強制自爆コマンドが起動、クラッキングをする時間もなく背部スラスターに搭載されたコアをうつ伏せにすることでコアのみを破壊する事が出来るほどエネルギーの残っていなかったのを察したのかシャムス・コーザ自らの提案でスウェンの手にかけられた。
そして文化祭の時のカレン・ガレットは母国に埋葬されたが異世界から来たやってきた彼にはそれがない。
よってIS学園に埋葬されるらしい。
そんな事を思っていると空中に浮遊していたモニターからポーンと音がなる。
「シャムス・コーザさんの機体の解析終わりました。
これは…!!」
「どうかしたんですか?
…ってなにこれ?!」
解析結果を見て異様な数値が記載されたそれに驚いた。
シャムス・コーザの機体-ヴェルデバスターに搭載されたコアはスウェンの手によって破壊されたはずなのにその機能は停止しておらず、その上、10cm程の大きさの破片だけでISを一機動かすことの出来るほどのエネルギーを放出し続けているのだ。
「…とんでもないコアだな…」
「考えられるのは…
山田先生、星彩、ノワール、スターゲイザーの整備データある分全部見せてもらって良いスか?」
「は、はい……出ました」
俺は目の前に投影されたモニターを指でスクロールする。
そして俺の思っていたことは確信に至る。
全てのデータにあるはずの数値が0であることを見ることによって…
「やっぱりだ‥放射線の数値が0…完全な0だ」
「放射線?!
まさかお前達の機体には放射能物質でも積まれていたのか?!」
「まさか核爆弾…」
「核エンジンです。
向こうの世界ではニュートロンジャマーと呼ばれる機械によって特殊な装置がないと核が使用できかったのですが、これらの機体にはその特殊な装置が搭載されていたんです」
「で、俺の仮説はこうです。
この世界に来たときに俺達のMSはISに姿を変えた。
そして動力たる核ないし大容量のバッテリーはシールドエネルギーを生み出すコアとの融合を果たし放射能としての能力を失った。
しかしそのエネルギーの容量の方は健在でただの欠片でさえも普通ではありえない程のエネルギーを放っているということじゃないスかね?」
「…星彩やノワールの整備結果を見たらそれが一番有力だが…推測の域を出ないな…」
俺の質問に千冬さんが答える。
そんな中、山田先生が何故か挙動不審だ。
あたふたして今にも横に置いてあるコーヒーの入ったマグカップを倒しそうだ。
「ど、どうかしたんですか?」
「い、今思い出したんですよ!!
今日戦闘に参加した専用機持ちの機体のチェックをしなければと思って整備課の生徒と専用機持ち全員を第一整備室に集めたのを!!
しかも集合時間は1時間前!!」
「Oh…」
整備課の生徒と言うと虚さんや新聞部の黛先輩、本音なんかがそうだったような気がする…
あの人達見かけによらずアクティブだからなぁ…
もう勝手に修復作業始めてるかもしれないな…
「スウェン、お前は先に行っとけ。
山田先生、ちょっと手伝って欲しい事があるんですけど…」
「へ?
何をするんですか?」
「えっと…みんなの空腹を満たそうかと…」
◇ ◇ ◇
「ダメージレベルC-…
この程度で収まったのが自分でも奇跡だと思うね」
ボクは目の前に鎮座する白い機体、レヴィス・コルデ、そしてミステリアス・レイディを見て愚痴を零す。
今日の昼頃に起こった無人機による襲撃事件…突然の奇襲と相手がかなりの性能を誇っていたためこちらの専用機持ちはみな満身創痍。
それに楯ねぇは怪我して病院送り…今残ってるのはボロボロになった楯ねぇの機体ミステリアス・レイディのみだ。
「にしてもなあ…
やまや先生、ボクらのこと呼んどいて4時間近く放置って…まさかの放置プレイ?」
「山田先生は織斑先生と何かやってるみたい。
希もそれに付き合ってるらしくて…何でも襲撃してきたの機体の解析だとか…」
「へぇ…みんな大変だねぇ…」
かんちゃんの返答にボーッとしながら生返事。
かんちゃんはボクの事を心配そうな顔をして見つめてくるが大丈夫だよと返す。
別にボクは調子が悪いわけではない。
機嫌が悪いだけだ。
放置プレイというものが嫌いなだけなのだ。
そのせいで少々イライラしているが為にこの反応な訳である。
頬を膨らませふてくされていると整備室のドアがプシュッと開いた。
「みなさんお疲れー!!
みんなの副会長、星村希さんの登場ッスよー!!」
ニコニコ笑顔で
◇ ◇ ◇
「ちぇいさぁああああ!!」
「ふぐぉおっ?!」
整備室に入った途端に空から渾身の回し蹴りを食らう。
「て、てめぇ空ぁ…いってえじゃねえか!!」
「ボク達を放置した兄さんが悪いんだからね」
何か空が頬をプクーっと膨らませて滅茶苦茶怒ってる…
放置だか何だか知らんがこんなにこいつが怒っているのは本当に稀だ。
マジでやらかしてしまったらしい。
「まあまあ。
機嫌取りって訳じゃないんだけどさ…ケーキ焼いてきた」
「ケーキ?!」
「おう。
チョコケーキ」
「「「「「食べさせてー!!」」」」」
部屋中の女子という女子が俺と山田先生で持ってきたワゴンに向かって走ってきた。
「お、落ち着いて!!
みんな一列に!!
全員分あるから押さないでー!!」
そう言うと女子の波の勢い一気になくなり軍隊よろしくきっちりかっちり一列に並んでいた。
「これはこれで壮観だな…」
「スイーツを前にした女の子ってのはみんなこんな感じだよ。
むぐむぐ…美味しい」
ケーキを頬張りながら簪は解説する。
まあ、みんな頭も体も使った後だから疲れるのは当たり前か…
「ほれ、いつまでもいじけてねえでお前も食え」
「…毒とか入ってないよね」
「んなわけねえだろ!!」
わけのわからない事を言う空に一喝。
いやさ…確かに蹴られたことについては怒ってるけど流石に毒盛って殺す位に怒ってはねえよ…そんなに信用ないかな俺…
そんな事を考えながら俺は皿にケーキを盛り付ける。
その光景を空は目を輝かせながら見つめる。
昔からチョコレートケーキ大好きだからなあ…
「ほれ」
「あ、ありがとう」
フォークでケーキを口に運ぶ。
喜んでくれれば幸いだ…と思った直後、空の瞳から涙が零れた。
「そ、空?!
ど、どうしたの?!」
「お…お母さんの味だ…」
「空ねぇもそう思った?」
「シャル…」
後ろからシャルに声をかけられる。
当のシャルもチョコレートケーキを片手に持っている。
「このケーキ、お母さんがまだ元気だった頃に作ってくれたのと同じ味なんだよね…
僕が悲しいこととか嫌なことにあった日には必ず作ってくれてこの一切れで僕はどんなに悲しいことがあっても笑顔になれたんだ」
「…ボクもそうだった…
剣道の稽古でお父さんに怒られたりした日には必ず作ってくれて…どんなに泣いてもどんなに怒ってても一口食べればすぐ笑顔になれる不思議な食べ物…
でも何でだろう…今は涙が止まらないんだよ…」
「んー…
確かに母さんのケーキは美味しかったけど別に意識して作った訳じゃ無いんだよな…」
「「おかあさぁああああん!!」」
「おいおい泣くなって…
確かに俺達の母さんも父さんももう居ないけど俺達は天涯孤独ってワケじゃないだろ?
俺にはお前たちが居るし、それに簪も、一夏も、鈴もセシリアも箒もラウラもノエルも花音もみんないる。
だから泣くこと無いだろ。
ほれっ!!簪、シャル、空!!
お前等の機体も直してやるからこっち来い!!」
「うん」
簪は頷くと俺の後をついて来る。
しかしシャルと空はうつむいたまま動かない。
「簪は頷いたけどお前らはいいのか?」
2人は互いに顔を見合わせると何時も通りの笑顔に戻ってこくこくと頷いた。
そして俺の元へ走ってきたと思うと思いっきり抱きついてきた。
「「お兄ちゃん!!」」
「ふごぉ?!
お、お前ら離れろって!!
みんな、みんな見てるから!!」
「2人とも狡い…私もやる!!」
「もう…3人ともあざといなぁ…
アタシも混ざる!!」
「ノエルちゃん狡いですよ!!
私も希くんと触れ合いたいです!!」
ノリに乗ったのか簪、ノエル、花音まで俺に抱き付くもとい乗っかってきた。
重い…そしてなんか端から見たらなんかとてもヤバい光景にも見える…それこそ弾や数馬なんかが見たら真っ先に俺を殴り殺しにくるレベルの。
「希くん。
アタシの機体修理してよ~」
「ついでに私のもお願いします」
「ええい離れろ!!
これでは修理どころか道具を手に持つことも出来ないだろ!!
ノエルは自分で機体いじってサラさんのも直せ!!
花音はノエルにやって貰え!!」
「「はあい」」
2人とも若干嫌そうにして俺から離れていく。
その先にはノエルのお姉さんのサラさんが指をポキポキ鳴らしながら待っている。
「そら、3人とも立て!!
行くッスよ!!」
「はい」
「ちぇっ…もうちょっとしてたかったのに…」
「良いじゃんべつに…
兄弟同士のスキンシップくらい…フランスじゃ常識だよ?」
「いい加減怒るぞ?」
背後からノエルの断末魔が聞こえる中俺達は修理を開始した。
◇ ◇ ◇
「ふう…全員分終わった…」
あれからどれくらい時間が経ったのだろうかという定型文は敢えて言わない。
現在深夜12:32。
修理を初めてから既に6時間以上が経過していた。
打鉄弐式はサイコフレーム以外の装甲をほぼ全とっかえ。
レヴィス・コルデは機体本体にはさほど損傷は無かったもののライフルビットを収納するホルスタービットの損傷が酷いため総とっかえ。
ストライクは機体損傷レベルがC-の上に射撃兵装の銃身部分が焼けていた。
装甲の方はアークエンジェルにあったルージュの余りで何とかなったが武装の方は流石にデュノア本社に連絡。
追加パーツの発送待ちとなった。
そして…
「お前もよく頑張ったよな…なあ星彩」
そして目の前のボロボロの機体、星彩を見て1人ごちる。
簪達の救援に入る前に実を言うと無人機数体を相手取って戦闘をした後だったのだ。
当然機体はボロボロ、ダメージレベルはD、久々に本格的な修理が必要である。
因みに簪達にこの事を聞かれたが「ダメージなし!!」とか言って適当にごまかしておいた…今更だけど手伝ってもらった方が良かったかもな…
「こりゃあ完徹確定だな…」
「私、手伝う」
「うわぁあ?!
って簪か…ビックリしたぁ…
もう寝たんじゃ無いのか?」
「夜更かしはお肌の敵…でも希の病気はもっと敵」
「…ありがとな。
所でその瓶に詰まった蜂蜜みたいなのはなんだ?」
「蜂蜜じゃない。
更識印のスーパーエナジーゲル三号、『どっこらショット』。
詳しくはWEBで」
簪がそう言うと空中投影ディスプレイにWEBページが表示されそこには「更識印のスーパーエナジーゲル三号『どっこらショット』」と書かれていた。
マジでページあんのかと思っているとディスプレイ内の簪がパペットを使ってこれの概要を説明(棒読み&無表情)してくれた。
なんでもこれのスプーン1杯で1日分の生活に必要な栄養素とカロリーが摂取できるらしい。
「今度企業に売れ込みかけようかと…」
「…デュノア社の食品営業部に掛け合ってみようか」
「取り敢えず食べてみて」
簪はスプーン1杯すくって俺にあーんしてくる。
俺の彼女が…
「マズい食い物を作るわけがないって甘っ!!」
「糖分は大事だよ」
なんかものすげぇじゃるじゃり言ってる…
液体の飽和量超えてんじゃねえのこれ…
「牛乳で稀釈すればうまくなるんじゃないか?
牛乳って栄養価が高いし美味いし」
「ハッ!!
その発想は…無かった…」
「要するに発想の転換ッスよ。
よーし気を取り直して機体直すぞー!!」
「おー!!」
そんな和気藹々とした雰囲気で星彩の修理は始まった。
暫くするとノエルや花音達他の専用機持ちのみんなも手伝いに来てくれた。
そして作業が終わったのはその3時間後。
予想の半分の時間で作業は終了した。
誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。
次回もお楽しみに~
…ISのゲームやってみたいな…