IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~ 作:ぼいら~ちん
「更識妹、星村、ヤマト少し良いか?」
「はい?
何か用ッスか千冬さーーーいったぁ?!」
「織斑先生だ」
無人機による学園襲撃事件から数日後の放課後。
午前中の身体測定で一夏が専用機持ち’sにぶん殴られたり、昼間には一夏が鼻血を出したりと色々な意味で盛り沢山な1日だった。
そんな今日はキラの機体-ストライクフリーダムの整備をしており、そのちょっとした休憩時間に腹ごしらえがてら学食を訪れようと思い整備を手伝ってくれている簪とキラと共に廊下を歩いていると千冬さんに声をかけられた。
そして今日はもう放課後で周りに生徒の姿が居ないことを確認した上でオフの時の呼び方で彼女の名を呼ぶ。
しかし俺はその右手に持っていた出席簿ではない何かによって殴られた。
何時も通り痛いです…
「いつつ…今オフですし良いじゃないですか下の名前で呼んでも!!」
「周りに生徒が居ないから良いと思ったか?
それは残念。
何故ならお前の隣に更識妹とヤマトが居るからだ」
…予想の斜め後ろの回答だった。
「…申し訳ありませんでした織斑先生。
僕達を呼び止めた理由とは何なんでしょうか?」
「おいおい星村、なにも怒らんでも良いだろう。
まあ、単刀直入に言ってしまえば、これを見て欲しい」
千冬さんは俺を叩いた凶器である黒い板を開き、中に挟んである書類を俺達に見せる。
そこには「Extended Operation Seeker」と命題が表記され、そしてその下にはそれに関するあらゆる数値…要するにその「Extended Operation Seeker」という機械(数値の横の英単語から察するに)のスペック表を俺達は見せられたと言うわけだ。
「…これは…新しい兵器のスペック表ですか?
それの開発なら僕はお断りさせていただきます」
「…これは見ての通り「Extended Operation Seeker」、略称「
スペックだけを見ればヤマトの言うとおり兵器だが、災害時の救助活動や平和維持活動を想定して作られている…つまり一概には兵器と断言できるわけではない」
「でも機体重量が物凄いッスね…確かに俺の星彩の方が重いけど、PICとかダイレクト・モーション・システムとかそう言うの抜きでこれってかなり扱い辛くないッスか?」
「それでもISの使えない男性やコアを保有してない弱小国や発展途上国からの莫大なシェアを獲得することは可能だろうな」
「…私達はこれで何をすれば良いんですか?
テストパイロットとかでしょうか?」
簪がスペックを見てあーだこーだ言っている千冬さんに質問をする。
そう言えば言い忘れていたという表情で千冬さんは再び口を開いた。
「学園長からのお達しでな。
国からこのEOSの実稼働データの収集を頼まれたらしいのだが…」
「「「だが…?」」」
「…誠に恥ずかしながら
学内でもプログラミング関連に精通したお前達に頼もうと思ったんだ」
「本音はどうなんスか?」
「……業者に頼むと金も時間もかかって面倒なんだ…」
「デスヨネー」
俺が半ば呆れ気味のカタコト言葉で返答するが、簪と、キラは何かを考え込むように俯き、2人が目を合わせると互いに頷いた。
どうやら結論が出たらしい。
「取り敢えずは試験運用なんですよね。
私達が手伝いましょう。
どこにそのえっと…EOS本体が搬入されているんですか?」
「第3整備室だ」
「わかりました。
ありがとうございます」
そう俺達は身を翻し目的の整備室へと向かう。
最近プログラミングなんて学園のセキュリティーシステム位しかやってないからなぁ…楽しみだ。
◇ ◇ ◇
「織斑、篠ノ之、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、鳳、更識、星村、ヤマトは前に出ろ!!」
「はい!!」
俺達10人は千冬さんに名前を呼ばれたので大きな返事と共に立ち上がる。
千冬さんにEOSのプログラミングを頼まれてから更に数日後。
1組から4組までの1学年全クラスによる合同授業。
普段揃わないだけあってここまで人数が居ると逆に壮観ってものである。
「わかっているとは思うがここに呼ばれていない専用機持ちにも敢えて言わせてもらう。
先日の襲撃事件でお前達の機体は深刻なダメージを負っている。
よって星村やリュミエールによる機体の修理が終了するまではISの使用を禁止する」
「了解です」
千冬さんへ俺達1年の専用機持ち全員は十人十色な返事を返す。
そこでだと区切ると後ろに立っている山田先生の方に視線を向ける。
俺もつられて山田先生の方を向く。
そこにあったのは黒い箱の群れ。
別に中身が気になるわけではない…というよりも中身が何であるかわかっているから興味が沸かないと言うのが正確な現在の心境だ。
そんな俺とはどこ吹く風な他の生徒達は「新しいIS?!」だの「お菓子の箱だよー」だの色々な事を言っている。
ちょっと待て、最後のは完全に本音だろ。
「静かに!!
…まったく…お前達は口を閉じることが出来ないのか…
山田先生、開けて下さい」
「了解しました!!
オープンセサミ!!」
直訳すれば「開けゴマ」。
アリババと40人の盗賊という絵本に登場する台詞を口にする山田先生。
昔は俺も母さんに読んでもらったなぁなんて思っていながらも一瞬にして凍りついた現場に吹き出す寸前だった。
「…ジェネレーションギャップは残酷です…」
若干涙目の山田先生はぷるぷると震えながらリモコンのボタンを押す。
黒い箱はウィーンと言う機械的な音を立てながら中に収められた物体を俺達に露呈していく。
「これは…」
一夏が中から現れたISのような機械を見て呟いた。
「…何ですか?」
「わかんねぇのかよ!!」
「ぐっは?!」
紛らわしい反応をする一夏の土手っ腹に回し蹴りを入れる。
また倒れる?んなこと気にしてねえよ。
だってこいつは一夏だもの。
「いってぇ…何すんだよ?!」
「お前さ、最近のニュース見てねえの?
「ISに変わる新たな万能パワードスーツ登場!!」って見出しのやつ」
「ああ!!
コレがあのEOSってやつか!!」
「そうだ。
みんな、これは外骨格攻性機動装甲「Extended Operation Seeker」略称はEOS。
ニュースでもやってると思うけど災害時の救助活動や平和維持活動などのあらゆる状況下に置かれることが想定された作りになっている」
「希…これを私達にどうしろというのだ?」
簡単なEOSの説明をする俺に箒は恐る恐る質問を投げかける。
「乗れ」
「え?!」
一夏with専用機持ち`sは一言で返答した千冬さんに驚き、と言うよりも抗議の声を上げた。
「二度は言わんぞ。
これら6機の稼働データを提出するようにと学園上層部から通達があった。
どうせお前達のISを動かすことは出来ないのだから少しはレポート提出に協力しろ」
「は、はあ…」
千冬さんの言葉に若干圧倒されている6人は何となくな返事を返す。
俺とキラと簪はEOSの最終調整に携わった人間として責任を持って見届けろとのこと。
他の生徒は山田先生に促され嫌々訓練用ISの運搬準備を始めるが千冬さんの一睨みでテキパキと作業をこなし始める。
きっとみんなもEOSの動いているところを見たかったのだろう。
ノエルなんて泣いてたもん。
花音が必死に励ましてたもん。
「早くしろ馬鹿共。
時間は限られているのだぞ。
それともあれか?お前達はこれをすぐに乗りこなせるというのか?」
「お、お言葉ですが織斑先生、代表候補生たる私達がこの程度の機体を扱えないわけがありませんわ」
「ほう、そうか。
ではやってみろ」
俺だって最初は思ったさ…「MSもISも乗りこなしてきた俺なら乗りこなせるさ、どんな機体だって」ってな。
でも…そんな考えが甘いと言うことが彼女達が理解するのはそう遠い事ではなかった…
◇ ◇ ◇
「お疲れさん」
「希?
アタシに何か用?」
何かの偶然か…
午前中いっぱいを使った訓練が終わって昼休み。
今日は土曜なので午後からは暇。
一夏はEOSを使った訓練の後で白式の開発元である倉持技研の研究員に呼び出されたとの事で早退。
俺は特にやることがないため着替え終わって昼飯でも食おうかなと思って女子更衣室の前を通るとシャワーを浴びた後なのか頬が若干赤い鈴と出くわした。
今日の鈴はトレードマークのサイドアップテールがおろされているレアなロングヘアーver.鈴ちゃんである。
「いや。
偶々近くを通ったらお前が出てきた。
簪にあげようと思ってたジュースがあったから一緒に飲みながら世間話でもしようと思ってさ」
実際は俺が2本とも飲もうってのが本音なんだが…
「ふーん。
ま、偶には良いわよ。
昔からの友達のよしみって事で」
そう言った鈴は俺の右手のぶどうジュースを奪い取りストローを使ってちびちびと飲み始めた。
…ぶどうは俺が飲もうと思ってたのに…
「最近どうよ?
機体の調子とかさ」
「うん。
ダメージレベルは取り敢えずAまで戻したし特に動かしても支障なしって感じッスね」
「じゃあ今度アタシのも見てよ!!
生徒会長程ではないけど結構ダメージ酷くって」
鈴は右腕にパーソナルロックモード中のペラペラの甲龍の待機形態である皮膜を見る。
そして最新の機体解析報告をどこからともなく取り出した空中投影ディスプレイに映し出す。
そこにはダメージレベルC-の文字。
一回オーバーホールしなければならないレベルだ。
ISは外部の衝撃にはとても強いが一度大きなダメージを受けるとそれがしっかり直るまで安静にしておかなければ変な癖がつく。
まるで右足の骨を折ったスポーツプレーヤーがその足を庇うような。
そうなってしまうと大変で庇っている左足-つまり別の部分に欠陥が生じてしまう。
「俺の知り合いがデュノア社の日本工場で働いてるんだ。
ある程度落ち着いたらそっちで見てもらおう」
「えー!!
学校で見ても良いじゃない!!」
「そっちの方が設備が整ってんだよ。
それに頼むのは俺に機械整備技術を教えてくれた師匠だ。
これなら文句ないだろ」
「希の師匠なら支障なし…ってハッ?!」
「あーあ…一夏のおやじギャグがうつったな…」
顔を真っ赤にしながら「今の無し!!記憶から消しなさい!!」と俺に肩車をしてぽかぽかと頭を叩いてくる鈴。
不覚にも可愛いと思ってしまう。
これと同じことをすれば一夏も落ちるんじゃないの?
「あ、叩かれるで思い出した。
昔俺と鈴と一夏の3人で川で釣りしたことあったよな」
「そう言えばあったわね!!
…うぅう…一番最初に一夏が摘まんだいも虫を思い出しただけで悪寒が…」
そう言えば鈴はあの手の虫探し嫌いだったっけ…
ギャアギャア喚いた挙げ句に少し弄っただけの一夏をぶん殴ったっけなぁ…中国人は足の付いてるものは何でも食うなんて迷信だろ。
猿を食う民族とか居るらしいけど流石に椅子は食わねえよ。
「あいついっつも虫餌ばっか使ってたけど草とか木の実とかも餌にして釣れるんスよ。
ほんっとに女の子への配慮が無いって言うか何というか…」
「それでもアタシは楽しかったもん。
みんなと一緒に遊んでね」
「じゃあこれからももっと楽しもうぜ。
なんせむこう2年はこっちに居るんだろ?」
「そうね!!
希!!学食先に着いた方が遅い方に奢りね!!」
俺にそう言い終える前に既に鈴は学食への道を走り出していた。
「あってめえ!!
ずりーーー」
俺が慌てて追いかけようとすると電灯が消え真っ暗になる。
そしてすぐにガラス窓を保護するための防護シャッターが降りてくる。
……嫌な予感がする。
誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。
次回もお楽しみに~