IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~   作:ぼいら~ちん

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PHASE-59 漆黒の敵

「なんで…どうして…こんな?!

何でだ!?何でこんな事をするんだよ!!」

 

目の前の日本刀のような近接武装を携えた真っ黒な機体ー星砕を身に纏った女性ーナターシャ・ファイルスに俺は問い掛ける。

しかし彼女はただただ不敵に笑うだけ。

その歪んだ口からは何も語られない。

その代わりの返答として返ってきたのはビームライフルと荷電粒子砲、そしてストライクフリーダムのドラグーンのようなビットによる全砲門開放射撃(フルバースト)だった。

 

「やらせねえよ!!」

 

俺はすぐさまファンネルによるIフィールドバリアーを展開しそれらの攻撃を防ぐ。

 

「一夏!!

今すぐ地下のオペレーションルームに急げ!!

千冬さん達も一緒だ!!」

 

「でも希は…?」

 

「俺のことは気にすんな!!

早く行け!!」

 

「でも!!」

 

一夏と楯無さんに当たらないようにバリアーを展開したまま射線の外側から回り込み黒い機体へ刀を振るう。

しかしそれに気づいていたかのようにその攻撃は黒い機体の近接武装である刀によって阻まれた。

……自分の言っている事も、これから言おうと思っていることがどれだけ一夏を傷つけるかなんてわかってる。

でも言わなくちゃ…言わなきゃ楯無さんも、一夏も、簪も、学園のみんなが危険に晒される。

そんな気がする危ない機体。

気を抜けばこちらの気がやられてしまいそうな凄まじい憎悪と殺気。

それがこの機体…この機体の操縦者からは発せられていた。

俺は鍔迫り合いの状態で一夏に叫んだ。

 

「お前が居ると余計な手間が増えんだよ!!

その抱えてる女を殺したくなかったら早く行け!!」

 

「ぐっ…!!」

 

「自分の無力さがわかってるなら行け!!

巻き添え食らいたくなかったら今すぐ消えろ!!」

 

「っ…!!

死ぬなよ…希!!」

 

一夏はそう言って楯無さんと共に校舎の中へと消えていく。

展開しているファンネルをこちらに引き戻しながらビームを発射。

射線上の黒い機体は少々ビームに当たりながらも後退する。

だんだんと遠ざかっていく一夏の気配。

こんなに酷いことを言ったのに心配の言葉を掛けてくれる友達が居てくれて俺は本当に嬉しかった。

 

「ありがとう…そしてこんな不器用な事しか言えなくてごめん」

 

後退した敵との間にファンネルで射撃陣形を形成。

そして腰に装着されている荷電粒子砲をその中心にぶっ放す。

星火燎原の膜で増幅された光はフルバーストによる光を押し返して突き進む。

そして着弾点に爆煙と瓦礫が飛び散った。

 

「やったのか…?」

 

パラパラと空高く舞い上がったコンクリートの破片が星彩の装甲に打ちつける。

 

『敵機体、前方から急速接近!!』

 

「ぐうっ!!」

 

黒い機体から繰り出される大上段からの一撃を辛うじて受け止めるがその斬撃は重い。

それも一撃目とは比べ物にならないくらいに。

今までの経験則から言ってしまえば一瞬にしてここまで攻撃が重くなるのなんて正直あり得ない。

 

「どうしたの?

怖い?」

 

「うるっせえな!!」

 

鍔迫り合いの状態なのに何故かとても余裕なナターシャ。

 

「そう……なら君にも恐怖の味ってものを教えてあげるよ」

 

その瞬間、刀にかかっていた重みは瞬く間に消え去り気がついたら俺は吹き飛ばされていた。

 

「…どうなってやがる?」

 

ハイパーセンサーを見るとそこには「絶対防御発動。エネルギー大幅低下」の文字が表示されている。

黒い機体の手元を見るとその手に握られているのは忍者刀(・・・)だった。

それが何を意味しているのかはすぐにわかった。

目の前の機体は何をベースに(・・・・・・)開発したかを考えれば。

 

「……そう言うことか…

お前の機体の武器はその様々な近接武装に変形するその刀。

いや……液体金属と言った方が自然か?」

 

星彩の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)、星火燎原。

それは機体から発せられる粒子が操縦者の思うが儘の形を取り、時には生み出す物体の数量、性質さえも自在に操ることが出来る。

まるでそれは何者にもなれて何にも属さないトランプのジョーカーーーーワイルドカードとも言える能力である。

それを擬似的に再現すると液体などが適当だと思うがそれを生み出す前に俺と同じ、若しくはそれ以上の想像力を持つ人間を用意しなくてはならない。

 

「ご名答。

流石はIS学園の生徒会副会長。

15歳にしてその洞察力、恐れ入ったわ」

 

「お褒めの言葉をどーもっ!!」

 

再び俺は機体を加速させ黒い機体に斬りかかる。

戦いの行く末はニュータイプである俺にもわからない。

でも絶対に負けられない戦いであることだけは確かだ。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「くっ!!

数が多い!!」

 

僕ーアムロ・レイもファンネルとビームライフルによる攻撃により的確に敵を仕留めていく。

機体の胸部に穴が空き海へと落ちていく機体……四肢が全て爆散し身動きが取れない状態で海へと落ちていく機体などその姿は様々だ。

IS学園に面する海上…千冬からISの反応が数機あると言われて来てみたは良いが……

 

「数十機の間違えじゃないのか?」

 

数機というレベルは4から5機の事を言うはずなのに既に僕達の前には一個小隊レベルの数の機械的な殺気を放つISが攻撃を繰り出してくる。

明らかにこれは数機ではない。

数十機だ。

そんな中、後方から赤と紫の機体がこちらに飛んでくる。

そのスピードも凄まじく量産型の機体とは比べ物にならない、それこそ専用機でもここまでスピードの出せる機体はそうはいない。

そして僕に向けられる明らかな殺意。

酷く無機質だがそれは人間の物であることが感じ取れる。

 

「あの赤い機体……シャアか?!」

 

僕は周りの無人機を振り切り赤い機体に向けてHi-νガンダムのスラスターを全開にして向かっていく。

学校を襲ってきている無人機…形がネオジオンが使っていた機体に似ていたのがようやくわかった。

亡国企業(ファントム・タスク)の背後にはあの戦い…第二次ネオジオン大戦で僕と共にあの世界から消えた男、シャア・アズナブル率いるネオジオンが居ることが。

紫色の機体は僕が近付くのを見ると急速停止し赤い機体へと一礼。

ノエルの居る方向へと向かっていった。

 

「見せて貰おうか…

アムロ・レイのガンダムの性能とやらを」

 

「いや…この感覚…シャアじゃないのか?」

 

僕は無人機の攻撃に用いていたファンネルを全て目の前の赤い機体の攻撃に回す。

その機体の操縦者から感じる「虚無」と言えるその感情は以前のシャアにはありえないものであり未来永劫そんな感情とは無縁なのだろう。

そしてファンネルの攻撃をすり抜けながら赤い機体はこちらにビームを放つ。

僕はそれを避けながら一気に距離を詰める。

 

「おおぉおおお!!」

 

お互いの光の剣が交わる。

ビーム同士の干渉によって火花が飛び散る。

 

「お前は…誰なんだ…」

 

「敢えて言うならば器とでも言っておこうか」

 

「器だと…?!

戯言を!!」

 

「退がってください!!」

 

僕と赤い機体の間に紫色の閃光が迸る。

 

「…三度私の前に立つか…」

 

閃光が降って来た位置から白い機体が降りてきて僕と赤い機体の間に立つ。

 

「白い…一本角の機体…?」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「ドラゴンキーック!!」

 

青い光の奔流が足を包みその足で敵を掬いあげるように蹴りあげる。

幾度となく打撃を加えられべこべこになったその機体は地面にその身を伏すと同時に動きを止める。

 

「よーし一通り終わりー…ってまた来た?!」

 

近辺の機体の殲滅を確認するとあたし―ノエル・リュミエールは驚愕の声をあげる。

その機体群は先ほどの機体と見た感じの型は変わらない。

しかしいかんせん数が多い。

その数ざっと20程…

別に方法がないわけではない。

それを使えばこのISの群れを一挙に戦闘不能にすることは可能だがドラゴンアムのエネルギーはたちまち0になり、もし敵の増援がまた来たら一瞬にお陀仏だ。

どうしよう…こんな状況一人では…

 

「…ええい考えるな!!

感じるんだノエル・リュミエール!!」

 

希くんやレオスくんだって言ったじゃないか!!

 

「生きてるうちは絶対にいいことがある!!

だからまだ動けるうちは希望を捨てるな!!」

 

たび重なる戦いと先日の襲撃事件の機体の修復が完璧でないため機体のエネルギー、装甲共に限界に近い。

そしてあたしの体自体もそろそろ限界だ。

視線の先にISが着地する。

ここを通してしまえば後ろに居る希くんや一夏くん、それに簪ちゃんやマクグリフ先生にも迷惑がかかる。

 

「うおぉおおお!!

燃えろ!!あたしぃ!!」

 

あたしはから元気という最終兵器(リーサルウェポン)を用いて目の前の機体を肉薄する。

 

「単一仕様能力「Roar do dragon(龍の咆哮)」発動!!」

 

ハイパーセンサーに「One off abilitey boot」の文字が灯る。

それと同時に目の前に見えな壁を形成。

地面をしっかり踏み締め拳を大きく引き…

 

「一気に打ちだす!!」

 

放たれた拳は見えない壁を殴り飛ばす。

その壁に目の前の5機のISは押し飛ばされ建物のアリーナの壁とその見えない壁によって5機の機体は押し潰された。

 

「このまま行け――」

 

ガァアン

 

「くっぅう!!」

 

このまま行けると思った次の瞬間。

真横からの機体の接近に気付かなかったあたしはその機体に押し倒される。

そしてその機体はあたしを肉薄する。

その右手にはビームの刃が形成されたトマホークが握られている。

 

「あぁあああ!!」

 

両の手を交差してトマホークを防ぐ。

しかしその攻撃に腕部装甲は耐えられず右の腕の装甲を抉る。

そしてそのビームの刃はあたしの腕にまで達し激痛が体を駆け巡る。

 

「諦めてたまるか…」

 

でもあたしは諦めない。

あたしがここで諦めたら後ろに居る人たちを守ることができないから。

もうあんな思いは嫌だから…守れないのは…いやだから…!!

 

「諦めてたまもんるかぁあああ!!」

 

あたしがそう叫んだ時だった。

あたしの腕を斬り裂こうと力を込めるISの頭部に青い弾丸が3発めり込む。

装甲を溶かすと同時にその弾丸は爆散し腕にかかっていた力は抜け、あたしの腕を抉っていたビームの刃もその光を失った。

 

「大丈夫ですか?

お譲さん?」

 

後ろから手を差し伸べてくれたのは真っ黒で金色の角を持った機体を纏った金髪の優男だった。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「こんな事はもう止めてください!!」

 

再び青の刀と灰色の刃が交わる。

しかし3度鍔迫り合いを行うことはなく灰色の刀は液体へと姿を変えた後にハルバードへと姿を変えた。

 

「止めろと言って本当に止める人間ってなかなかいないわよ?」

 

「ぬぐぅううう!!」

 

腹に向かって振るわれるハルバード。

その斬撃を辛うじて防ぐも一撃の重みに耐えられず吹き飛ばされ校舎の壁に激突する。

 

「くっ…げほっげほっ…」

 

辺りに立ち込める煙にむせる。

…星彩の修理は確かに終わったのだがそれはあくまでダメージレベルをB-まで戻しただけで前回の状態とは言えない。

鈴にAまで戻したって言ったのは彼女に無用な心配をかけないための嘘である。

立ちこめていた煙がだんだん晴れて行く。

その煙の向こうには…

 

「どんなにあがいてもここで終わり」

 

全ての銃口をこちらに向けて佇む黒い機体があった。

 

「さあ…悲鳴をあげてみなさい」

 

言葉を紡ぐと同時に放たれるビームの雨。

俺はアームド・アーマーDEを展開するがそれだけでは防ぎきれないことはわかりきっている。

 

「っ…!!」

 

目を瞑って自分に襲ってくるであろう衝撃を待つ。

しかしそれは一向に来ない。

恐る恐る目を開けると目の前に花びらのような形をしたビットが2枚。

俺のことを守るようにして配置されていた。

 

「行け!!ファンネル!!」

 

緑のビットによって俺の前で何が起こっているのかは分からない。

しかしいつの間にかビームの照射は収まっており役目を終えたビットは持ち主-俺の前に着地した緑色の機体に戻っていく。

ビットは目の前の機体の背部とドッキングされガシャンという機械的な音が鳴り響く…

そして彼女は俺の方へと体を向ける。

膝くらいまである長いポニーテールは赤く、その微笑みからは彼女の持つ他者を思いやる心が垣間見えた。

 

「久しいな希」

 

「その声…その機体…やっぱりあなたは!!」

 

「貴様は…何者だ!!」

 

緑のISは黒い機体の方へと向き直る。

そして彼女はこう名乗った。

 

「私はこの機体、『クシャトリヤ』のパイロットだ。

そして貴様などと言う名ではなく「マリーダ・クルス」という名前を与えられた唯一無二の存在だ」




誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。
次回もお楽しみに~
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