IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~   作:ぼいら~ちん

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PHASE-61 終焉のプレリュード

「何であんたはこんな事してんだよ…!!」

 

10本の刀によって形作られた円の中心で倒れる女性に俺は声をかける。

きっと今の俺の顔は他人に見せられないくらいみすぼらしく、怒り…というよりも悔しさや後悔の念に彩られた表情を晒しているだろう。

でも俺は構わず続く言葉をゆっくりと紡いでいく。

 

「あんたは…あんたは少なくともこんな事をするような人間では無いはずだ…

機体を傷つけられながらもハッキングの魔の手から救ってくれたことを感謝していたあんたが何でこんな事を!!

シルバリオ・ゴスペル(あんたの機体)だってこんな事は望んでなんていないはずだ!!」

 

いくら俺が声をかけても、何を叫ぼうと彼女は応えない。

敢えて何も言わないのか、はたまた気を失っているのか…怒り狂った俺には知る由もなくうつ伏せに寝ているため表情の確認も出来ない。

 

「所詮はこの程度か」

 

突如空から光の雨が降り注ぐ。

その雨は学園の校舎や近くの木々を焼き払う。

俺とマリーダさんもシールドを使って防ぐが突然の事で反応が遅れる。

 

「っ…!!

私は…まだ…!!」

 

「目標は達した。

お前ももう限界だろう、大佐にご迷惑をかけるな」

 

「あの紫…ローゼン・ズール!!

アンジェロ・ザウパーか!!」

 

空から降ってくる弾丸を防ぐことに集中していたためか目の前にいたナターシャが消えていることに今気付く。

そしてすでに彼女の体はもう紫色の機体---ローゼン・ズールの腕の中だった。

 

「星村希か?

お前の相手もしてやりたいところだが…生憎こちらの任務は達成したのでな」

 

「チッ、逃がすかよ!!」

 

「悪いな星村希。

私は貴様の相手を出来るほど暇ではない。

置き土産だ、くれてやる!!」

 

紫の機体が空高く飛び立つと同時に雲に覆われた空から緑や青のISが降ってくる。

 

「ちっ!!

待て!!」

 

「待てと言われて待つ人間なんてそうはいないだろう」

 

「希、深追いはするな。

今は学園の被害を最小限に抑えることが最優先だ」

 

マリーダさんの鶴の一声で欠いていた冷静さを取り戻す俺。

俺の今のやるべき事は敵の殲滅と言えばそうなのだがこれは敵を倒す為ではなく学園を守るための戦いだ。

決して意味を取り違えてはならない。

 

「すみません」

 

焦ることはない…次のチャンスは絶対に来る…

その時の為に牙を研ぎ澄ませ…

 

「目の前の雑魚共叩っ斬ります」

 

またみんなと笑って過ごすために。

心の中でそう呟いた俺の体は自分が体に命令するより前に動いていて…

気が付くと通りざまに緑色の機体を2機切り捨てていた。

そして別の方向の機体を斬ろうと振り向くが既にその方向の敵の殆どが鉄くずと化していた。

 

「鈍くさいな星村希。

ありがたいと思え、この俺が助けに来てやったのだから」

 

「グゥレイト!!

久し振りの戦場はやっぱり違うねぇ!!」

 

緑色の機体を纏った金髪のオールバックの男と銀髪のボブカットの男がこちらを振り向き一言ずつ呟く。

おい、最初の奴俺のこと完璧にdisってやがったよな?

 

「て言うかお前ら!!

何でここにいるんだよ、イザーク、ディアッカ!!」

 

「「は?」」

 

最後の1機を斬り伏せながら金髪と銀髪の男---ディアッカとイザークに対して叫ぶ。

当の2人は俺に対して間の抜けた返答を返す。

 

「どうしても何も…なあイザーク」

 

「ザフト軍でも星の扉の調査を行ったんだ。

その途中にアスラン達が居なくなって以来安定を保っていたそれが突如暴走、飲み込まれた俺達は今に至ると言うわけだ」

 

飲み込まれてからここに来るまでの家庭が完全にすっ飛ばされてる気がするが気にしない。

と言うよりも気にしたら負けだと思う。

全ての敵を殲滅したことを確認し、上を見上げる。

先ほどあった紫色の機体の姿は既になく、そこにあったのはうっすら橙色に染まりはじめていた空のみだった。

 

「何でなんだよ…ナターシャさん…」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「お久しぶりです、お嬢様方」

 

「お、お嬢様?!」

 

敵さんが帰ってから数時間後俺と簪、そしてマリーダさんはとある人物の病室を訪れていた。

 

「硬い、硬いわよマリーダ!!

別に家じゃなければ楯無でいいって言っているでしょう?」

 

そう、楯無さんの病室だ。

あの時の怪我の治療と完全じゃなかった健康状態の回復の為だそうだ。

この病室には楯無さんの他にあと2人いるのだが片方は包帯を取り換えるのに集中しており、もう一人はぐっすりお寝んねングナウである。

 

「私も…お嬢様は苦手かな…

希もいるしそれはちょっと…」

 

「じゃあ姫様と」

 

「それってオードリーじゃないの?!」

 

プシュッ

 

「私に何か用ですか?」

 

「お、オードリー?!」

 

「俺だっているぞ」

 

「俺もだ」

 

「バナージ?!

それにリディ少尉まで!!」

 

病室の戸が開いたかと思えば見覚えのある面子が部屋に入ってくる。

一人は金髪の少女、その少女と手を繋いでいる茶髪の少年、そして金髪の優男が部屋へと入ってきた。

彼らはU.C.96年---シャアとアムロさんの戦いに決着が着いた第二次ネオジオン抗争から3年後の世界に住む人間達だ。

何でこの世界に居るかはわからないが俺達と同じ様な境遇であるのは確かである。

 

「ところで希、ノエルがここに入院しているということを聞いたんだが」

 

「あ、あたしに用…ってリディさん!!

さっきはありがとうございました!!

あ、あたしはノエル・リュミエールっす。

フランスの代表候補生やってます。

よろしくっす」

 

ベッドに座っていたノエルはそこから飛び上がるとリディ少尉の手を取りブンブンと振り回しながらバナージ達に自己紹介をする。

リディさんの腕が飛んできそうなくらいに振り回しているのはきっと彼女なりの感謝の意の表れなのだろう。

 

「ノエル、お前は後から体に異常がないか検査するらしいから山田先生の所へ行くようにとのことッス」

 

「ダメだよ。

七時半に空手の稽古があるの、付き合えないわ」

 

「「「「「「今日は休め」」」」」」

 

その腕の怪我で空手の稽古ってどういう了見だよ?

 

「焦る気持ちはわかるが相手の出方がわからない限りどうにもならない。

空手の稽古とやらもその火傷と凍傷で酷い見た目になってるそれを治してからな」

 

「うぅ…希くん辛辣っすね」

 

「何時も通りだろ」

 

「あの希くん、あと…」

 

楯無さんは俺の名を呼ぶとバナージとリディ少尉の方に視線を送る。

どうやら名前を呼びたいようだが名前がわからないので困っているようだ。

 

「あ、えっと…

俺はバナージ、バナージ・リンクス。

先の戦闘ではアムロ・レイさんと沿岸部の敵の殲滅を行っていました」

 

「俺はリディ・マーセナス。

さっきはそこのノエルと一緒に学内に入ってきた敵を倒していた。

まあ、殆どはノエルが倒しちまったんだが」

 

「ならお礼を言わなくちゃね。

私は更識楯無、この学園の生徒会長を務めさせて貰っているわ。

学園を代表してお礼をさせて貰うわ。

ありがとうございます」

 

ベッドの上から2人にお辞儀をする楯無さん。

しかしそのお辞儀は少しぎこちなく、その表情も心なしか固い。

 

「怪我人が無理しちゃダメだよお姉ちゃん。

お腹の傷、そんなすぐに塞がらないでしょ?

あ…私は更識簪です。

お姉ちゃんの…更識楯無の妹です。

私からもお礼を言わせてください。

本当にありがとうございます」

 

「それもこれもマリーダが情報をリークしてくれたお陰よ。

もう少し早くこちらは戦闘の介入を開始したかったんだけど…到着が遅れてしまいました」

 

「えと…あなたは?」

 

「自己紹介が遅れました。

私はミ…じゃなかった、オードリー・バーン。

よろしくお願いします、楯無さん、簪さん、ノエルさん」

 

「…別に本名名乗ってもいいと思うぞ。

ここに袖付きのこと知ってんのって俺くらいしかいないし」

 

「希くん、本名ってどゆこと?」

 

俺のちょっとした発言にノエルが反応を示す。

口が滑ったと思った時には既に時遅し…オードリーにめっさ睨まれてる…

 

「…隠し事はよくないものね。

希の言った通りオードリー・バーンは偽名です。

本名はミネバ・ラオ・ザビと言います」

 

「ザビ…希が言っていた1年戦争の…」

 

「ええ。

私は1年戦争で地球連邦に喧嘩ふっかけたザビ家の人間の末裔です」

 

「あれ…オードリーさん?

なんか口調が怖いですよ?」

 

「ご、ごめんなさい。

バナージと一緒に街を歩いているとこういう言葉ばかり耳に入ってしまって…

ついつい口に出てしまうの」

 

「あ、それあたしもある!!

偉い人の前とかで平気でうっせぇとかクソッタレとか平気で言っちゃうもん」

 

…ノエルさん…それとこれとは関係ないと思いますが?

 

「オードリー・バーン…どことなくオードリー・へプバーンに似てるわね」

 

「バナージに名前を聞かれたときにとっさに目に映ったのが「ローマの休日」のリバイバル上映の看板だったの」

 

「へぇ…道理で…」

 

ふむふむと感心する俺のわき腹を楯無さんがちょんちょんとつつく。

振り向くと彼女は小声でちょっとお願いがと言って俺に耳打ちをする。

 

「寝てたときに少し寝汗をかいちゃって…着替えたいからみんなを外に出て行くように促してもらってもいいかしら?」

 

「ははー。

会長殿の仰せのままに」

 

俺はそう呟くとバナージ達の方へと近づいていく。

「…なあ。

みんなでジュース買いに行こう。

()()()()ずっと寝てたみたいで超喉渇いてるっぽくてさ」

 

「…わかった。

ここの自販機の場所の把握とかしときたかったし」

 

「そうだな。

しばらくはここで生活するかもしれないんだ。

そういうのは早いうちに覚えておいた方がいいよな」

 

「あ、あたしも行くー」

 

楯無さんの名前を出したためか男性陣は楯無さんの方をちらりと見て何かを察し、快く了承してくれた。

しかし、なぜかノエルまで手をあげたが。

 

「いいのか?」

 

「だいじょぶだいじょぶ!!

怪我したの腕だけだし他はぴんぴんしてるし!!

マジで空手の稽古してよ希くん」

 

「今日は休め」

 

「…やっぱ辛辣っすね」

 

「お前みたいな馬鹿にはくらいがちょうどいいだろ」

 

「んな?!

ヴァカとはなんだヴァカとは!!」

 

「んじゃ、行くか」

 

「その上無視かよ!!」

 

俺達4人は病室を出てナースステーションに向かって歩き出す。

 

チャーンチャチャチャチャチャチャチャッチャチャチャー

 

そんな中ポケットのパーカーの中にしまっていた携帯電話から着信音に設定していたクラシック音楽が鳴り始める。

俺は着信音が鳴りやまない電話を取り出し画面を見る。

そこには「着信中:織斑千冬」と書かれていた。

通話ボタンを押しスピーカーを耳に押し当てる。

 

「もしもし千冬さん?」

 

『希か!!

すぐに学園の地下のオペレーションに来てくれ!!』

 

俺はこの時まだ何も知らなかった。

この電話の着信音が、この世界の終わりのプレリュード(前奏曲)であることを…




誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。
次回もお楽しみに~
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