IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~ 作:ぼいら~ちん
「千冬さん!!
何があったんですか?!」
「…これを見てほしい」
俺、バナージ、リディ少尉、ノエルの4人が入ってきたことを確認した千冬さんが空中投影型のディスプレイに視線を向ける。
その表情は酷くこわばっている。
アムロさん、まどか、山田先生、そしてレオス達この部屋に居る全員の表情や場の空気から察するにいい知らせではなさそうだ。
ザザザ…ザザザ…
スピーカーからはノイズが飛び出し、ディスプレイには砂嵐。
しばらくすると砂嵐がだんだんと人の像を帯びてくる。
その人影は次第に鮮明になっていき、最終的には黒い髪に青い瞳、そして比較的色白で細身の男が微かな笑みを浮かべてそこに佇んでいた。
『…始まる…絶望の宴が…』
「絶望の宴…」
ノイズをBGMに男の声がスピーカーから俺達の耳へと届く。
そしてこの声…
「まどか…こいつは…」
「ああ。
サイレント・ゼフィルスやレオスの話が本当なら福音事件、そして文化祭の時の学園襲撃事件の時の機体から聞こえてきた声と同一のものと思ってもらって間違いはないだろう」
『…今日から7日後…世界は終わる。
この世界の人間自らの手で…』
「世界の終わり…」
「自らの手で?」
『異世界の戦士達よ…我は待っているぞ…』
ブツンという音とともにディスプレイは真っ暗になる。
部屋を覆う沈黙…そんな中、千冬さんは口を開く。
「今の映像が本当ならば今すぐにでも手を打たねばならない」
「待って下さい、情報のソースは?」
「アメリカ軍の兵士からだ。
入ってきてくれイーリ」
千冬さんに呼ばれてドアから女性が入ってくる。
そのイーリと呼ばれた女性は松葉杖をつき、右腕は首にかけられた布で吊られており、美しい黄金色の髪の生えた頭の一部には包帯が巻かれている。
「私はイーリス・コーリング。
アメリカの国家代表で
「籍を置いていた…ということは退役したんですか?」
「いいや。
軍から逃げてきた」
ノエルからの質問に予想外の質問を返すイーリスさん。
彼女の口は話を続けるためにゆっくりと動き始める。
「さっきの作戦でアタシは学園の沖合にあった空母に乗っていた。
作戦は学園にある未登録のコアと織斑一夏の『白式』の強奪の為のものだった。
しかしなぜか軍の上層部の命令でとある会社から提供された無人ISを大量投入することになった」
「その無人機を提供した企業ってのは」
「星村希、お前の予想通り
詳しいことはアタシにはわかんねぇけどな。
話を戻すぞ、言われた通り空母から機体を飛ばしたはいいが流石にIS一機とコア一つの為のだけにやり過ぎだと思ったアタシは部下5人を連れて先遣隊を撃墜するために無断で艦を出た」
「それが国への反逆行為とみなされ攻撃を受けたと…」
「ああ。
アタシらの機体はボロボロだが、多少の怪我はあるが部下の5人とも無事。
そこのアムロ・レイとか言うのととそこのバナージってガキが居なきゃ全員お陀仏だったぜ。
ありがとな」
「別に…俺は自分にできることをしただけです」
イーリスの感謝の言葉とその笑顔にに少々頬を赤らめながら返答するバナージ。
オードリーがいたら頬をぷくーっと膨らませそっぽを向くパターンのやつだ。
「もとからやつらの目的はコアでも白式でもなくこの学園の人間の殲滅だったみたいだな。
ありがとうイーリ、怪我をしている中すまないな」
「いいってことよ。
アタシも何度もアンタには世話になってるんだ。
お互い様だよ」
オペレーションルーム内の椅子にどっかと腰掛けたイーリスさんは疲れたというような表情をして背もたれに全体重を預けた。
「そして…あの映像のことなんだが…敵は亡国企業と読んでいいんスよね」
「亡国企業withアメリカってとこだな」
「イーリの言う通りだ。
現存するコア約40%を保有するアメリカとコアを生産することが可能な亡国企業が手を組んだんだ。
これは本当に世界を相手取れるといっても過言ではないぞ」
「…敵を倒すのはできるだけ早い方がいいのではないでしょうか?
敵にもそれ相応の準備が必要だと思いますし、今日の戦いで向こうも疲弊していると思われます。
短期決戦、少数精鋭で臨んだ方が…」
「あたしは反対ですね」
冷静ながらも弱々しい口調で言葉を紡ぐ山田先生に対しはきはきとノエルが反論する。
「さっきのでこっち側の戦力もかなり疲弊してる。
主力である専用機の大半がダメージレベルC越えてる時点のは一朝一夕でどうにかなる問題じゃありません。
多少時間がかかっても確実に敵を倒しに行くべきだと思います」
「私の考えもリュミエールと同じだ。
学園でもトップクラスの実力を誇る更識姉妹、星村兄妹、リュミエール、兵部や専用機を持つ教師陣の疲弊も酷い。
これではいくら早く攻めたところで返り討ちに遭うだけだ。
それに機体数も圧倒的に足りない」
その通りだ。
学園が保有している機体は訓練機と専用機を合わせ、その上今回戦闘に参加したマリーダさんやイザーク達やロウさん達を合わせても40そこらしかない。
その上こちらは連続する戦いによって戦力が大きく削られたため否が応でも修理のために時間を費やさなければならない。
「でも…なんでイーリスさんから話を聞いたんです?
場所の割り当てもまだできていないし」
「アメリカの西部地区にIS反応が多数確認できたんです。
しかもその大半が未登録、その上他はアメリカが保有している機体の上に数は全く減らず常に動き続けているうえに増えています」
「そこで決まりッスね」
「しかしだ…大体予想はついていると思うが敵の機体の保有数はかなりある。
ISの二個中隊クラスを想定してほしい」
「希くん、いっこちゅうたいってだいたいどのくらいなの?」
「約200、二個中隊ならその倍の400だな」
「400?!
学校にある機体だけでも多目に見積もっても30なのにその十倍って…」
「しかもそれが全部一般兵、エース級のパイロットも数十機投入されるはずだ」
「そんなぁ…
あたしらに勝ち目ないじゃん」
現状の厳しさを知り落胆の色を見せるノエル。
しかしまだリディ少尉やバナージの瞳は諦めの色を見せていない。
「まだ勝算はある…」
「そうだなバナージ君」
「珍しいな。
そんなに諦めのいい人間だったかね星村希君?」
再びドアが開く。
そこから数名の大人が中に入ってくる。
「ブライトさん!!それにデュランダルさん!!」
「久しいな希君。
さて、この現場の指揮官はどなたかな?」
「私だ」
「なら話が早い。
今回の話はマリーダ・クルスさんから話を聞いている。
我々、地球連邦軍独立部隊『ロンド・ベル』に協力させていただきたい」
「無論、私からも微力ながら力添えさせていただこう」
「ま、待ってくれ!!
あなた達は誰ですか、それにこれからの戦いがどれだけ辛いものかおわかりになられているんですか?!」
「すまない。
私はロンド・ベルの司令官の任に就くブライト・ノアという者だ」
「私はギルバート・デュランダルという者だ。
昔はプラントの議長を務めていたが今はこの学園の近くで喫茶店を営んでいる」
「心配するな千冬。
ブライトは僕の上司にあたる男だ。
信用しろ…とは言わないが少しは言い分を聞いてやってほしい」
「あ、デュランダル議長もいい人ッスよ。
人を先導するカリスマ性とコーヒー淹れる腕前は最高レベルッス」
「…この二人がここまでいうなら信用してもいいんではないでしょうか?
ね、織斑先生」
突然の来客に慌てる千冬さんにそっと山田先生がたしなめる。
山田先生の一言で平常心を取り戻したのか一呼吸置くといつもの千冬さんに戻った。
「すまない取り乱してしまった。
話を続けてくれ。
私は織斑千冬だ、よろしく頼む」
「よろしく頼む織斑教諭。
…我々の提案なのだが、こちらにはユニコーン、クシャトリア、バンシィの他にリゼルやジェガン、デルタプラスなどの機体が数10機、さらに優秀なメカニックもそろっている。
戦力的に圧倒的に不利なそちらからしたら数は少しでも多い方がいいと思うのだがどうだろう」
「条件、があるのだろう?」
「ああ。
ラー・カイラムのクルー全員の宿泊施設と食事、あと戦艦を直すための資材。
それだけだ」
「物資の補給か。
そちらのデュランダル殿は?」
「ふむ…そうだな…学園の生徒がもっとウチの店で飲食をしてくれればいい」
冗談半分でそんな事を言っているのだろうか…それとも本気なのか…一つだけわかることは現在のタリアさんとレイと自分、その3人での生活に満足しているからこのような台詞が出るのだろう。
「ふむ。
かくしてデュランダル殿、あなたの言う戦力とは?」
「何事も秘密と言うものがあった方が面白味があるだろう?
だから今日のところは紹介はしないでおくよ。
心配しなくてもいい、腕は確かだから」
ここまで断言すると言うことはその議長が呼んだ仲間ってのは相当な腕の持ち主なのだろう。
それこそシンやキラレベルを期待しても問題は無いはずだ。
「戦力の方はどうにかなるが…」
「ところがギッチョン!!ギッチョンチョン!!」
「うぇえ?!
ウサギが天井から?!ってなーんだ…人か~」
「ちょっとそこの茶髪の君!!
なーんだとはなんだなーんだとは!!」
天井から頭を突き出しどこからともなく兎耳カチューシャの女性が床へと飛び降りる。
「おいノエル…その兎耳、あの天下の天災篠ノ之束だぞ」
「うそぉ?!」
「…関係者以外立ち入り禁止なのだが…」
「まあまあ千冬さん、こんなときに関係者がどうとか言ってる場合じゃないッスよ。
今は猫の手も借りたい状況なんですし」
「さっすがのーくんわかってるぅ!!
で、ちーちゃんちーちゃん!!
私にも手伝わせてよ!!」
ん?
なんかいつもと言ってることが違うな?
箒ちゃんどこー?かちぃーちゃぁーんって言って抱きつくくらいしか脳のない人だと思ってたのに。
「どうした束?
他人と関わることを嫌うお前がいつになく積極的じゃないか」
「うーん、私もそんな我儘言ってられる場合じゃなくなっちゃったんだよねー
さっきの映像、私も見たんだけど、あれかなり不味いよ?」
前例のないくらいにドスの利いた声で話をする束さん。
「あの男、世界を潰すとか言ってるけどほんとっぽいね。
れーくんならよく知ってると思うけど」
名前を呼ばれたことによりびくっと体を震わせるレオス。
どうやら先ほどからずっと黙りこくっているのは体調が悪いわけではなく思い当たる節があるからのようだ。
「…あの男は…
彼が持つありとあらゆる世界から学んだ力、そして彼の心の中の進化しない人類への絶望…そして進化した人類としての力…それらが合わされば脅威となることは間違い無いでしょう」
進化した人類ということは俺や簪の様にあいつもニュータイプなのだろう。
「あの世界に居たころよりもやつは強くなっている。
今の俺では勝てるかどうか…」
レオスの一言で再び部屋に沈黙が訪れる。
その沈黙を切り裂いたのは誰のものでもなく俺の大きなため息だった。
「なにが今の俺では勝てるかどうか…だよ。
ビビってんじゃねぇ」
「でも…あいつは…強い…」
「一人じゃ無理かもな。
たぶん俺でもキツイ。
でもな、
一人じゃ無理なら二人で、二人でも無理なら三人で、だろ?」
「そうそう!!
あたしもドラゴン・アムで頑張っちゃうよー!!」
「私も手伝わせてもらう。
世界が滅ぼされては罪を償うことも出来ないからな」
「僕も同感だ。
進化しない人類に絶望するなら希望を見せてやろうじゃないか」
「俺もやる。
そのex-って奴に人間の可能性を見せてやる!!」
「俺だって!!
バナージの尻拭いしなくちゃならねえからな」
「アタシも乗るぜ。
アンタらには借りがあるんだ。
他人に借り作るのはアタシの柄じゃないんでね」
「みんな…」
俺の一言に応え、みんながレオスの方を見る。
「わかった。
みんな、アイツを…ex-を止めるのを手伝ってくれ!!」
「「「「おう!!」」」」
◇ ◇ ◇
「まさか…こんなことになるなんてね」
「俺ですら予想外だったな。
ま、みんなが居れば何とかなるだろ」
うつむいている簪に俺は声をかける。
オペレーションルームの面子の意見が固まった後、学園に籍を置いている代表候補生全員(専用機の有無を含まず)を集め作戦参加への希望を募った。
その結果全員が参加を希望。
学園の保有する全てのISを用いた大規模作戦の展開が可能となった。
「あのスーパー束さんもこっち側についてくれんだ。
大丈夫だろ」
「そう…だけど」
簪の表情はいい気分ではなさそうだ。
誰だってこうもなるだろう。
学生生活が始まってから半年ちょっとで世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれるなんて普通誰も思わないからな。
ぼんやりと寮の窓から外を見る。
日の光はほとんどなくなり、薄暗い空には星が見え隠れしている。
携帯の時計を見ると大体午後6:45。
「なあ簪、ちょっと出かけねぇ?」
誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。
次回もお楽しみに~