IS-インフィニット・ストラトス-~星の扉の向こう~   作:ぼいら~ちん

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PHASE-63 笑顔の一日

「ねえ希」

 

「ん?」

 

とある駅の近く。

俺と簪は人気のない路地をゆっくりと歩いている。

 

「どこに行くの?

結構夜も遅いし…バレたらまずいし…」

 

「その辺は大丈夫。

千冬さんが体調崩さない程度に遊んでくるなら良いって言われたから。

どこ行くって言われても…逆に行きたいとこある?」

 

「無計画?!」

 

「ああ。

最初は買い物とか思ってたんだけど時間も時間だしな、まず飯食おう飯!!」

 

俺はあからさまな作り笑いを顔に貼り付け簪の方へとそれを向ける。

顔が引きつって不自然なのもわかっている。

でもこうでもしていないともっと怖い顔になると思うから、簪を心配させないためにも笑顔を作る。

亡国企業(ファントム・タスク)ex-(イクス)…世界の終わり。

そんな言葉が頭の中をぐるぐると巡っている。

作り笑いでもしてないとこの世の終わりみたいな顔しかできないだろうから。

 

「どうしたの希?」

 

「ん?

ああ、何でもない。

っと、そろそろ着くんじゃないかと思うんだけど…」

 

段々と電車の走る音が近づいて来る…視線の先に見えたのは電車の高架、その下には一軒のラーメン屋台。

 

「もしかしてあそこで食べるの?」

 

「本当にすまん!!

俺、簪が行きたそうなお洒落なお店とかわかんなくてさ。

今度はそう言うところに連れてくから今回はここで我慢してくれ」

 

「ううん。

何かお店の選び方が希らしくて良いなって…」

 

もっと露骨に嫌がられるかと思ったがそうでもなかった。

簪の頬に若干赤みがかっているのは気のせいではないと思う。

 

「行こ?」

 

「お、おう」

 

案内していたはずの俺が簪に連れられ暖簾をくぐる。

そこには見知った無精ひげのおじさんがいた。

 

「いらっしゃい!!

お、のぞ坊!!

ひっさしぶりじゃねえか!!」

 

「お久しぶりッス。

いやー、長い間来れなくてすんません。

フランスに留学してたもんで」

 

「おお?!

のぞ坊もとうとう海外進出か!!

世の中ってのは凄いもんだよなぁ」

 

「海外進出って…そんな大それたもんじゃないッスよ。

ただフランスで勉強してきただけッスから」

 

屋台の店主、無頼さんは俺の顔を見たとたんに凄い元気になった。

このお店は中学の頃、千冬さんとセレーネが一緒に食べに行かないかと言われて来たお店だ。

それ以来俺は暇なときはここに来てラーメンを食べていた。

所謂足繁く通ったというものである。

 

「今日は一の字達は一緒じゃあねえのかい?」

 

「ええ。

あいつらは学校の寮ですよ。

ほら、簪も座れって」

 

「う、うん」

 

無頼さんの勢いに押されてか簪は少し怯えてしまっている様だ。

 

「おおっ?

ついにのぞ坊に彼女出来たのか!!」

 

「ええ。

まだ付き合い始めて2ヶ月位ッスけど。

同じ学校の子で、フランスの留学中に会ったのが初対面なんスよ」

 

「さ、更識簪です!!」

 

「よろしくな嬢ちゃん!!

これで千ぃの姐御もセレーネの姐さんも一安心ってわけだな」

 

「まぁそうも言ってられないんスけどね。

まだ一夏もソルもスウェンもフリーですし」

 

「そりゃあそうかもな!!

のぞ坊、ラーメン2人前だな?」

 

「よろしくお願いします」

 

無頼さんにラーメンを頼むと簪に水をついであげる。

当の彼女は初めて遊ぶおもちゃをまじまじと見つめる子供ようにキラキラ輝いている。

次に何が起こるのか、どう動けばそうなるのかと好奇心に任せて恐る恐るだが触っていく子供のような…そんな感じだ。

 

「どうかした?」

 

「ううん。

私ラーメン屋台って来るの初めてで…

今私、ワクワクしてる」

 

「それだったらここ選んで正解かもな。

変に高い店選んで飯不味かったらやだもん」

 

「ここのラーメン美味しいの?」

 

「おいおい嬢ちゃん!!

そいつぁ違うぜ!!

ここのラーメンは美味そうじゃあなくて…」

 

「美味い!!」

 

無頼さんと俺でしっかり繋いでパシンとハイタッチ。

簪は「おぉー!!」と柄にもなく興奮している様だ。

目を輝かせ頬が紅潮している様はまさに幼い子供そのもののである。

 

「ってわけでラーメンお待ちぃ!!

っとぉ、俺はちょっと買い物思い出したからちょっと店番頼むわぁ」

 

「え、ちょっ無頼さん!!」

 

無精ひげのおじさんはそう言うと何処かへと消えて行ってしまった。

 

「行っちゃったね…」

 

「もっと色々見たかった」とでも言うかのような表情で簪は無頼さんの後ろ姿を見送る。

 

「簪もそんな顔するんだな。

子供っぽくて可愛いな」

 

「…私だってこんな顔するもん。

まだ私子供だもん」

 

そうだ…まだ俺達は子供だ。

 

「そうだよなぁ…一週間後には俺らも命懸けてこの世界のために闘うんだよなぁ…

まだ子供なのに」

 

こっちもあっちも変わらない。

いつも戦うのは若い俺達でそうするように命令を下すのは大人達。

何時の時代もそうで、なにも変わらない…

 

「でも、私達がこの世界のために戦うのは私達の意志で決めたこと。

それに私達は一人じゃない。

私と希にはみんながいる。

だから大丈夫」

 

でもこれだけは言える。

簪の言うとおり俺が戦うときはいつも誰に命令されることなく、自分の意志で戦うことを決めてきた。

大切な何かを、誰かを守るために。

 

「そうだよな。

みんな一学期よりもダンゼン強くなったし、俺達も強くなった」

 

「私達が弱くても、例え一人じゃ太刀打ちできなくてもみんなとなら怖くない。

絶対に大丈夫」

 

簪が俺の手を握る。

 

「守ろう、私達の明日を、未来を。

ね?」

 

俺の手を握る少女は笑顔で小首を傾げる。

そうだよな…一人じゃ守れなくてもみんなとなら守れる。

今度こそ、誰一人として欠けることなく戦いを終わらせる…絶対に。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「美味しいアイスクリーム屋…ですか?」

 

「ああ。

バナージの顔を見たら急にアイスクリームが食べたくなったんだ。

きっとあいつが「インダストリアル7の美味しいアイスクリームを奢ってやる」って言ったのを思い出したんだろうな」

 

簪と晩御飯を一緒に食べた次の日の朝、マリーダさんに顔を見るなりそれはもう必死な形相で俺に駆け寄ってきた。

今は平静を保っているが会ってすぐの時はホントに命を駆られると思ったよ…

 

「ところで今までマリーダさんどこに居たんですか?」

 

「アンディグア・バーブーダ」

 

「へ?」

 

マリーダさんの口から国名とは言い難そうなよくわからない単語が出てきた。

アンディ…なに?

 

「カリブ海東部の島国だ」

 

「なんでそんなとこからわざわざ日本に…」

 

「冗談だからだ」

 

「は?」

 

説明が冷静の一言で完結する表情のマリーダさんは俺の瞳をまっすぐ見つめてそう言った。

冗談…だと…?!

 

「まさかあなたの口からその台詞が出てくるとは思ってもいませんでしたよ」

 

「この世界に来てから私も変わったんだ。

全ては身寄りのない私を拾ってくれた先代の楯無様のお陰だよ。

それに楯無…いや、刀奈お嬢様と簪お嬢様のお世話も任されていたのもあるかもな」

 

そう言えば空とアムロさんも先代の楯無(簪のお父さん)に拾われてお世話になったとか言ってたな…寛容さがオカン級だな…

 

「先代の命で亡国企業の尻尾を掴むために世界中を歩き回っていたのは事実だな。

アンディグア・バーブーダに行ったのもその任務の内だし、そのお陰で色々な国の言葉を話せるようになったな」

 

「俺のフランス留学なんかとは比べ物にならないッスね」

 

ふふんと少し誇らしげに胸を張るマリーダさん。

しかしすぐに首を横に振ると再び真面目な顔に戻る。

 

「話が脇道に反れたな。

私もバナージもこの辺りの地理に明るくないのでな。

出来れば案内して欲しいのだが…」

 

「バナージも来ること確定してんのか…

そうだ、オードリーも誘ってみんなで街に行きましょう。

俺もその手のことに詳しい奴誘っておきますから」

 

「ありがとう。

10時半に学園の正門前に待ち合わせでいいか?」

 

「了解しました」

 

それじゃあと一言告げてその場を後にする。

さて…誰を誘おうか…

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「美味いアイスクリーム屋か…

サーティ●ンでも良いんじゃないか?」

 

「流石の私でもそれは怒るぞ?」

 

「さぁっせんしたぁ!!」

 

あれから数時間後、俺と簪、シャル、空、マリーダさん、バナージ、オードリーの7人で街に繰り出した。

既に昼ご飯を終え、色々なお店を見て回っているうちに時間は夕方に。

しかし当初の目的だった美味しいアイスクリーム屋を探すことは未だに敵わず…正確にはどのお店かはわかってはいるものの場所が見つからないのである。

商店街の先に見える夕日がとても眩しい…昨日は結構遅くまで外出歩いてたから今日は早めに帰らないとなぁ…

 

「で、シャル。

その美味いアイスクリーム屋ってのの名前は何だったっけ?」

 

「ええっとねー…」

 

シャルが色々な噂などをメモしている手帳をペラペラとめくる。

 

「あった!!

『ディランダル』、だって」

 

「やけに名前がデュランダルに似てない?

まさかあそこのアイスのことだったりして…」

 

「それはないよ!!

このお店移動販売らしいし、それにその販売の蛍光グリーンのトラックにはしっかりディランダルって名前が書いてあるらしいんだ」

 

シャルがここまで言うんだからきっとそうではないのだろう。

 

「あれじゃないか?」

 

マリーダさんが近くの太陽とは真逆の方角を指差した。

この商店街、大きな公園と面しておりその公園は皆川という名の武将の家の跡地に作られた公園と言うことで「皆川公園」と言う名前で、それからとって「皆川商店街」と呼ばれている。

本当は「西多前商店街」という名前なのだが、いつの間にかその名前で浸透していったらしい。

その指の示す先には蛍光グリーンで彩られた軽トラック、その側面には確かにディランダルと書いてある。

 

「あった!!

シャルロット、あれじゃないか?!」

 

「あれだよあれあれ!!」

 

「善は急げ!!

行きましょうみんな!!」

 

オードリーの背を追いかける形で俺達はそのトラックへと走り出した。

そしてそのトラックの裏手のひさしの下へと向かう。

 

「いらっしゃい。

…希くんじゃないか。

また会ったね」

 

「あれ…議長?」

 

カウンターには白くて小さい帽子を被った議長が立っていた。

 

「何でマスターが?

と言うよりもお店は?!」

 

「ああ、毎週土曜日は定休日なんだ。

それで私がここに来てこうして店を開いていると言うわけだ。

これもデュランダルの営業拡大のための作戦さ」

 

「じゃあ、裏のディランダルってのはなんですか?」

 

「業者に頼んだら「ュ」と「ィ」を間違われてしまってね」

 

はははと笑う議長。

いや…それって笑い事じゃ済まないと思うんですけど…

 

「…取り敢えずバニラアイス7つお願いします」

 

「いつもありがとう」

 

その後俺達はアイスを食べて寮へと戻った。

特に新しい発見という物はなかったがいいものは見れた。

 

「こ、これはもの凄く美味しいじゃないか!!」

 

「本当に美味しい…」

 

「良かったじゃないですか2人とも。

…本当だ…これ凄く美味い!!」

 

あっち側の世界ではなかなか見ることの出来なかったマリーダさんやバナージ、そしてオードリーの笑顔。

それが見れただけで今日財布から出て行った2100円のもとはとれたという事にしよう。




誤字脱字、文法的な間違い、感想、その他出して欲しいキャラクターのリクエストなど色々お待ちしてます。
次回もお楽しみに~
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