物語の一年前の登場人物たちのある日の話

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ハロウィーンネタ

前に上げたのをもう一回上げなおしました


ND2017

これはレプリカルークが旅立つ前、シンクがまだ前の世界にいたころにあったかもしれないはなし。

 

 

 

ND2017 シルフリデーカン ローレライ 1の日

 

オールドラントではある世界的にあるイベントが開催されていた。それはこの時期に収穫され太古にはローレライへの供物とされていた食べ物を使い、魔を払うという儀式だ。

 

だがその儀式を行っているのは世界でも特にローレライ、ユリアなどへの信仰が厚く、多くの巡礼者が集まるダアトくらいなものだろう。さらに時が経ち、その儀式のことを知っているのはダアトに来る巡礼者の中でも極々一部くらいなものだった。それゆえ、ほかの地域では、せいぜい何か大規模な祭りが開かれるくらいにしか思われていないようだ。

 

実際多くの村ではその食べ物を顔の形に彫り、中にロウソクを立てる、彫ったものを被る、魔物の仮装をして楽しむ。そういったイベントとしてとらえられているようだった。

 

このイベントが近づくと喜ぶのはエンゲーブなどの村々である。この時期は天候や気温の影響からか大きく育ち、かなりの量が採れてしまうため市場には手頃な値段で、しかも大量に売り出されるのである。

 

その食べ物--カボチャと呼ばれる食べ物はこの日飽きるほど食べさせられるのだ。

 

世間ではこの日を“ハロウィーン”と呼んでいた。

 

そしてここ、ダアトの朝の市場では

 

「そこのお・じ・さ・ま❤ この大ーきく実ったカボチャ、今なら安く売られてますよー?」

 

「お!お嬢ちゃん若いのに感心だねえ、どれ今年はここでカボチャを買っていこうかな。」

 

「毎度ありー!また来てねー❤」

 

普段の導師守護役(フォンマスターガーディアン)としての制服ではなく、普通の女の子のような格好をしたアニスは、何故かダアトの市場でカボチャを売っていた。

 

「主人がいない間、店番ありがとう、アニスちゃん。はいこれお駄賃ね。」

 

「いえいえ、これもおかn…イオン様のためですから❤」

 

アニスは給料袋をポケットにいれ、店をあとにする。そんなアニスをみて女性は苦笑いすると

 

「それじゃ、アニスちゃんのママとパパによろしくね。」

 

「はい!」

 

そう言うとアニスはすぐに店を後にし、自宅へと帰った。玄関の扉を開け、ただいまーと言うとすぐに自分の部屋に行き、机からメモ帳とペンをとりだしてポケットから出した袋の中身を数えてメモした。アニスは満足気にメモ帳を机の中に戻しお金も袋に戻すと

 

「今月の目標金額まであと少しだなー、今月はちょっと早かったかも」

 

もっと稼げるかもなー、などと考えていると

 

「あ!やば!もうそろそろイオン様のところにいく時間だ!」

 

アニスは服を脱ぎ、下着姿のまま鏡をみて、自分の平坦さにため息をつくといつもの制服を取り出して着た。そしてリビングのテーブルの上に教団のところに行く、という内容のメモと先ほどの袋を置いて扉を開けて教団へと走っていった。

 

 

 

そのころ神託の盾(オラクル)の騎士たちが行き交う教会の中ではアッシュが廊下を歩いていた。兵士たちはアッシュを見ると直立しあいさつをしてくる、が兵士たちはすぐに兵士たちはアッシュを怪訝な目で見る。それをアッシュは煩わしく思いながら目的の場所に向かっていく。そんなアッシュの右手には顔が彫られたカボチャがまさしく顔を覗かせているカゴが握られていた。

 

アッシュが会議室のドアの蹴り開けると中にいた数人がこちらを見た。そしてその右手に持っているものを見て笑いを堪える。その様子を見てアッシュは額に青筋を浮かべながら叫ぶ。

 

「これを俺の部屋の前に置いた奴は誰だ!!」

 

そのカゴにはデカデカと『至急会議室まで。』と書かれている。リグレットが少し口元を緩ませながら答える。

 

「置いたのは恐らくお前の部下だろう。」

 

それを聞いてラルゴがアッシュに背を向けて笑う。その笑い方は普段のラルゴからは想像もできない笑い方だ。おそらく笑っているのを見せてしまうのは

申し訳ないと考えたのだろう。

 

「あんた部下に舐められてるんじゃないの?」

 

シンクはそう言うとくっくっく、と笑う。仮面で表情は見えないがおそらくバカにしたような笑みを浮かべているのだろう。

 

「はぁーはっはっは。アッシュ、ざまーないですね。あなたは早く部下のところに行きお菓子を貰ってくるのですよ。」

 

ディストがそう言い笑っていると、アッシュがカゴをディストに目掛けて投げつける。するとカボチャが入ってなかなか重量のあるカゴはディストのおでこに当たり、ディストを椅子から落とす。そしてアッシュはあいつらぶっとばす、と言い会議室から出て行く。

 

そんななかアリエッタだけが不思議そうな顔でラルゴを見る。

 

「ラルゴ、どういう、こと?」

 

そう言うとラルゴはアリエッタにどう説明しようか迷って、うーむ、と唸る。すると横からリグレットが口を挟む。

 

「アリエッタ、これはお祭りよ。そもそもはローレライへの供物として…」 

 

「理屈っぽいなぁ、要するにカボチャを使って色んなことをする祭りだよ。」

 

話が長くなりそうだ。と思ったシンクがさらに横から説明を入れる。するとアリエッタが首を傾げる。

 

「じゃあ、さっきの、アッシュのは、なんなの?」

 

「『トリックオアトリート』って言って子供が家に行ってお菓子をくれなきゃイタズラするって言うのがあってね、さっきのはそれを少し変えてあいつの部下がイタズラ目的で送ってきたんじゃない?」

 

「あ、ありがとう、シンク」

 

それを聞くと満足したのかアリエッタは人形を抱き目を伏せる。シンクも腕を組む。しかしほかの大人組は珍しいもの見たかのような目をシンクに向ける。その視線にシンクが気づくとなに?と言う。

 

「いや、まさか」

 

「おまえがアリエッタに」

 

「そこまで丁寧に教えると思わなかったのですよ。」

 

リグレット、ラルゴ、ディストは口を揃えて言う。その言葉にシンクは確かに、と思い理由を考え始めた。アリエッタも言われてみればと思ったようだ。

 

「よくわかんないね。」

 

シンクはそう言うと立ち上がり、扉を開けて出て行った。シンクが出て行った後ラルゴが口を開いた。

 

「アッシュの部下が急に来て会議室に集まれと言うからなにかと思ったが、こういうことだったか。」

 

「そうね、まさかイタズラをしているとは思わなかったわ。」

 

「まあ、面白いものも見れたので私は満足ですよ。」

 

そんな中、またアリエッタだけが不思議そうな表情を浮かべている。それに気づいたラルゴがアリエッタに尋ねる。

 

「どうした、アリエッタ」

 

「シンク、今日は、優しい、です」

 

「気になるのか?」

 

「うん…」

 

そう言うとアリエッタは人形を強く抱きしめる。

 

「ならシンクに聞いてみるといい。あいつは今日は休暇だから部屋にいるだろう。」

 

「でも、絶対話してくれない」

 

「なら私に作戦がある」

 

リグレットはそう言うと作戦を話し始めた。

 

 

 

ところかわってアニスはとイオンの執務室で今日に行われるパレードのことについてイオンと話し合っていた。

 

「……という段取りです。イオン様大丈夫ですか?」

 

「えぇ、大丈夫ですよ。ところでアニス、今日のお祭りを楽しまなくていいのですか?」

 

「大丈夫です!アニスちゃんはイオン様といれるだけでいいんですよー❤」

 

「あはは、ありがとうごさいます」

 

アニスはこういったが本当はイオンと街を歩いて見たかった。だがひとたびイオンが街に出ると熱心な信仰者のおかげで祭りを楽しむことが出来なくなる。そんな葛藤を見せずに冗談めかすがイオンはそれになんとなく気付いていた。

 

「アニス」

 

「ほぇ?なんですかイオン様」

 

「僕と一緒にお祭りを見て回りませんか?」

 

「えぇ!?でもでも、そんなことしたら人が集まって大変なことになっちゃいますよ?」

 

「大丈夫ですよ。髪を隠せればバレませんから。」

 

「うぅー、イオン様はずるいです。」

 

アニスは頬を膨らませて非難する。だがすぐにその表情は笑顔になった。

 

「まあ…でもイオン様が行きたいならいいですよ?」

 

「えぇ、僕が行きたいんです。」

 

「なら、私が色々案内しますよ!こう見えても昔はけっこうお店を回ってましたから!」

 

「お願いします、アニス」

 

こうして導師と守護役の秘密の話し合いは終わった。2人はこの夜、出店を楽しむことは出来たが、途中でバレて追いかけ回されることになったそうだ。

 

 

 

シンクは自室で先程のことを考えていた、何故教えたのか、しかもアリエッタに、だ。考えて考えてもわからなかった。そんなことをしていると部屋のドアがノックされた。シンクは誰?と聞くと小さな声でアリエッタ、です。と聞こえた。仕方なく部屋の扉を開けると確かにアリエッタがいた。確かにいたがなぜか格好がおかしかった。頭には猫の耳を付けていて、手には大きな肉球の付いた手袋をしていた。そしてアリエッタは小さな口を開くと。顔を真っ赤して

 

「と、トリックオア、トリート、です。部屋に入れてくれないとイタズラする、です。」

 

シンクは数秒呆然としていたが、我に返り、アリエッタに言った。

 

「なに?その変な格好。」

 

「リグレットとディストが、こうすれば、シンクから話、聞けるって…」

 

「あの女狐め…」

 

あとでディストはとりあえず殴っておこうと考えて、アリエッタをどうするか考えた。とりあえずこのままにして、兵士たちに見つかり変な噂が立ったら癪なので部屋にあげることにした。

 

「で、なんのようなの?そんな格好までしてさ。」

 

アリエッタは顔を赤くしながら俯いている。シンクはため息をついて返答を待ったが返ってこなかったのでもう一度聞くことにした。

 

「あのさ、答えてくれないと話にならないんだけど。」

 

そう言われアリエッタはシンクを向いた、羞恥で少し涙を浮かべているアリエッタは格好も相まって小動物のようだった。それを見たシンクはイタズラ心が芽生え、少しイタズラしてやろうと考えた。

 

「まったくさ、恥ずかしくないの?そんな格好して

さ。誰かに見られてたら明日から噂がたつよ?妖獣のアリエッタは猫の仮装をする変態だってね。」

 

それを聞くとアリエッタはさらに目に涙を浮かべる。これ以上は泣くな、と思ったシンクは話を切り、だからなんで来たの?、と聞いた。

 

「今日、シンク、優しかった、です」

 

「僕が?君に?」

 

「いつも、アリエッタが聞いても、教えてくれない、のに、今日は、教えてくれた、です」

 

それはシンクが自分でもわからないと考えていたことだ。だからシンクはアリエッタに先手を打つことにした。

 

「言っておくけど、僕にも理由はわからないよ、あるとすれば気まぐれかな。」

 

「それでも、アリエッタは、嬉しかった、です。」

 

そう言うアリエッタの表情は既に涙はなく、微笑みが浮かんでいた。シンクは何故かわからないがその表情を直視できずに目を逸らした。

 

「まったく、せっかく部屋に入れたのにトリートされるなんてね。」

 

「アリエッタ、イタズラした、の?」

 

「したよ、今日一のやつをね。」

 

「ごめんなさい、です」

 

アリエッタが申し訳なさそうに頭を下げると、シンクはやれやれ、といった表情で立ち上がった。そしてポケットからリグレットに貰ったカボチャのお菓子を取り出すと、アリエッタに投げて言った。

 

「はい、トリック。これでもう帰ってよね。」

 

それをアリエッタは受け取るとまた微笑んで言った。

 

「やっぱりシンク、優しいです。」

 

そう言うとアリエッタもイスを降りてドアを開けて、お邪魔しました、といって去った。それを見届けた後、扉の鍵を閉めてシンクは仮面を外し、ベッド倒れ込んだ。

 

「ハロウィーンって、疲れるんだね…」

 

そう言うとシンクは睡魔に襲われ眠ってしまった。

 

 

 

もちろん後日、噂は流れたが、内容が異なっており『六神将、烈風のシンクが同じく六神将、妖獣のアリエッタに仮装をさせて部屋に連れ込んだ』という噂が流れたおかげでシンクは一週間誤解を解くのに使ったと言う。

 

 

 

余談だが、アッシュはあのあとイタズラをしてきた部下の訓練を倍にしたそうだ。

 

 



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