お互いの生活を乱されないように、それぞれルールを決めますが・・・・・
相手は、思ったように対応してくれません。
入れ替わり、ドタバタ劇が始まります。
朝、自分の体で目覚めると、いきなり猛が尋ねて来た。そして、ここ数日の異常な現象についての説明を始めた。
「ええっ?お・・俺は、あの三葉って女と入れ替わってたの?」
「うむ・・・どうやら、そのようだ。」
「そうか・・・違う次元に行ってるんじゃ無く、入れ替わって・・・・でも、何でそんな事が?」
「それは分からん・・・・だが、既に2回入れ替わってるって事は、今後も同じ事が起こるかもしれん・・・・」
「う・・うん・・・・」
「だから、お互いの生活を乱さないように、2人でルールを決めた方がいい。」
「あ・・ああ・・・」
「それと、この間渡した装置は持ってるな?」
「え?・・・ああ、これか・・・」
俺は、ポケットから、先日渡されたポケベルのような装置を取り出して、見せた。
「またいつ、ショッカーに襲われるか分からん・・・あの娘も、巻き込んでしまって申し訳ないが、俺が必ず守る。彼女にも、その装置を常に持ち歩くように言っておいてくれ。」
「わ・・・分かった・・・・でも、何故、今頃ショッカーが?日本のショッカーは、3年前にほぼ全滅したんだろ?」
「うむ・・・確かに3年前、日本のショッカー残党のアジトを突き止め、一網打尽にした。その後、何も無かったから、全滅したと思っていたんだが・・・・・・」
その後、学校に来て考えていた。ルールと言っても、何を決めれば良いのか?
「おい、滝、何物思いに耽ってるんだ?」
圭一が、突っ込みを入れて来る。
「別に・・・何でもねえよ。」
「ところで、例の覆面軍団は、その後襲って来ないのか?」
「ああ・・・来ないな・・・・」
「滝君、今日は無愛想なのね。」
今度は、瑠璃が突っ込んで来る。
「俺は、いつもこうだろ?」
「でも、最近妙にしおらしい時があるし・・・・」
「そうそう、俺の事“圭一君”って呼んだり・・・・」
「あたしの事も、“瑠璃ちゃん”って呼んだり・・・・」
「はあ~~~っ?」
そうか、三葉の奴・・・・猛も“さん”付けだったそうだしな・・・・この辺は、統一してもらわないといかんか?
「あと、時々言葉訛ってない?」
訛りも、気を付けてもらないといかんか・・・・・気が重くなって来た・・・・・
数日後、また入れ替わりが起こり、三葉の体で目覚めると、スマホに三葉側の禁止事項が記載されていた。
< 滝君へ 禁止事項その1 >
・ お風呂絶対禁止
・ 体は見ない・触らない
・ “俺”って言わない
・ 座るとき脚を開かないように
・ その他の女の子にも触らない
・ 喧嘩はしないで
風呂は、怖いから入らねーよ・・・・“体を見ない・触らない”って、それで、どうやって着替えるんだ?何も考えてねーだろ、あいつ・・・・
また、滝君の体で目が覚めた。スマホを確認すると、滝君も禁止事項を記載してあった。
< 三葉へ 禁止事項Ver.1 >
・ 学校に遅刻するな、いい加減に道覚えろ
・ 訛るな
・ “圭一君”とか“瑠璃ちゃん”とか、キモいから言うな、俺は知り合いは基本呼び捨てだ
・ なよなよするな、俺がオネエに見られる
・ 猛に惚れるなよ、後で後悔するぞ
遅刻するなって・・し・・仕方が無いでしょ、東京なんて、生まれて初めて来たんだから・・・こんなごちゃごちゃした町、一度で覚えられないわよ!
き・・キモいって何よ?知り合いは、基本呼び捨て?偉そうに・・・・猛さんまで、呼び捨てになんかできる訳無いでしょ・・・・それに、“惚れるな”って、いくらヒーローだからって、あんなオジさんに惚れないわよ!
こうして、お互いの生活を乱さないようにルールを決めたってのに・・・あの男はっ!
喧嘩をするなっていうのは、この間の嫌味野郎の件だろうな・・・・仕方が無いから、しばらく大人しくしていようと思っていたんだが・・・・いきなり、そうはいかない事態に陥ってしまった・・・・・・
その日の帰り道、テッシーとサヤちんと一緒に歩いていると、突然、2m近い背丈の、やたらごつい男が現れ、道を塞いだ。
「宮水三葉ってのは、お前か?」
「はあ?」
何だ?この大男、三葉の知り合いか?
「ワシの舎弟が、えろう世話になったそうやの?」
「舎弟?・・・誰の事?」
と、その男の後ろを見ると、木の陰から、この間の嫌味野郎がこちらを伺っている。なるほど・・・・この間の、仕返しって訳ね。しかし、女の子(実際中身は違うが)相手の報復すら自分でできないとは、本当に情けねえ奴だな・・・・・
「あ・・あんた、影月やろ?」
テッシーが、男に問いかける。
「ほう、ワシを知っとんのか?」
「誰?影月って?」
俺は、小声でサヤちんに問いかける。
「三葉も知っとるやろ、“影月信彦”、番張ってて先生も手が付けられなかった、糸守高校史上最悪の不良と呼ばれる、伝説のOBやよ・・・・だから、大丈夫って聞いたのに・・・・」
ああ・・・サヤちんは、この事を心配してたのね・・・・だけど・・・同級生の女の子締めるのに、伝説の不良まで連れて来ないといけないとは・・・・全く情けねえ、呆れてものが言えねえ・・・・・
「三葉に何の用や!」
伝説の不良相手にも怯まず、テッシーは俺を庇って、影月の前に立つ。
やるねえ、テッシー・・・・いよっ!男前!
「てめえには、用はねえよ!」
影月は、いきなり殴り掛かって来た。
「ぐへっ!」
左の頬にキツイ一発をもらい、テッシーは吹っ飛ばされる。
「危ない!」
頭から倒れそうなところを、すかさずサヤちんが受け止める。
「きゃああああっ!」
しかし、勢いがあり受け止めきれず、尻餅を付いてしまう。
「なんや、威勢だけやな・・・」
一発で倒れたテッシーを、嘲るように笑いながら、影月は言う。
「な・・・なんやと・・・」
そう言って、テッシーは起き上がろうとするが、それを制して、俺は影月の前に立つ。
「で・・・私に何の用?」
「ふん・・・今のを見てもビビらんとは、肝の据わった女やな・・・流石に、女相手に本気で殴ったりはせんよ・・・ただ、ちょっとばかり、恥ずかしい思いさせるかもしれんな・・・・・」
「ほう?・・・例えば、どんな?」
「いつまで、強気でおれるかな?」
そう言って、影月は俺に右手を伸ばす。だが、俺は素早くその手首を掴み、思い切り捩じり上げる。
「うぎゃあああああああああっ!」
まさか、女の力に負けるなんて、思ってもいなかっただろう・・・・しかし、間接技はタイミングが重要、力などそれ程必要無い。
「こ・・・このアマっ!」
早くもキレた影月は、もう片方の手で思い切り殴り掛かって来る。何だよ、女相手に本気で殴らないんじゃなかったのか?
俺は、最小限の動きで大振りパンチを交わす。ついでに極めてた右手も離してやったので、勢い余って影月は地面にダイブする。
「ははは・・・自分が、恥ずかしい思いしてんじゃん!」
その倒れ方が余りにも滑稽だったので、つい、いらない事まで言ってしまった。
「こ・・・この野郎っ!」
起き上がった影月は、顔を真っ赤にしてこちらを向く。
おいおい・・・誰を相手にしてるかも、分からなくなってるのか?誰が、“野郎”だよ?
「ぐうあああああああっ!」
今度は押し潰そうとでもする気なのか、両手を上げて突進して来る。流石に捕まったらヤバイから、ここらで決めとくか・・・・・
俺は影月の両手を交わして懐に入り込み、鳩尾に一撃を入れる。
「ぐふっ!」
影月が蹲って顔が下がったところで、一歩下がってから右足で顎を蹴り上げる。
「がはっ!」
影月は、そのまま仰向けに倒れる。そして、白目を出して完全に気を失う。
「す・・・すげえ・・・・・」
「み・・・三葉・・・・・」
テッシーとサヤちんは驚いて茫然としている。まあ、普通の高校生ならいざ知らず、こちらと幼い頃から猛に鍛えられてるんだ。こんなド田舎の不良ごときに、遅れを取るこたあねえよ・・・・さて・・・・
俺は、木の陰でこちらを伺っていた、嫌味野郎の方を睨みつける。
「ひっ・・・ひいいいいいいいっ!」
嫌味野郎は、一目散に逃げ出して行った。最後の最後まで、情けない野郎だ・・・・
でも・・・やっちまったな・・・・後が怖い・・・・・・
案の定、次に入れ替わった時の、スマホのメッセージは・・・・・
“喧嘩はしないでって言ったでしょ!何やってんのよ!それも、スカート姿で、足を思い切り蹴り上げたですって?周りに大勢人が居たら、どうするつもりだったのよ?いい加減にしてっ!”
し・・仕方ねえだろ、あの状況で、手を出さなかったら、もっと恥ずかしい目に合ってたぞ!それに、あのでかぶつ相手に非力な女の腕力じゃ、アッパー打っても一撃じゃ決められねえんだよ!脚力でも使ってカバーしねえと・・・・・
って、俺ばっかルール乱してるように書いてるが・・・・あの女はっ!
“てめえ、三葉、いったい何に使ったんだ?財布の中がすっからかんじゃねえか!”
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“ごめん!圭一君と瑠璃ちゃんに、カフェに誘われて・・・どれも、見たことも無い、美味しそうなメニューばかりだったから・・・・・でも、食べてんのは滝君の体なんだから、いいでしょ?”
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“いいわけねーだろっ!”
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“ちょっと、滝君、あんたが伸した不良、子分にしてくれって言って来たわよ!どうすんのよ!“あねさん!”って付きまとわれて、困るんですけど!“
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“三葉、てめえ、勝手に瑠璃のバックに、ハリネズミの刺繍なんかすんなよ!俺はそういうキャラじゃねえよ!”
状況報告というより、滝君とのスマホのやりとりは、文句の言い合いになっていた。
そんなある日、圭一君達とカフェに寄った帰り、またショッカーに襲われた。
2人と別れてひとりになったところで、いきなり物陰から、例の覆面軍団(ショッカーの戦闘員らしい)が現れた。
「イーッ!」
このパターンも、何回目だろうか?例によって私は、戦闘員達に背を向けて全速力で逃げる・・・・逃げながら、例の装置で猛さんに助けを求めた。
他人を巻き込まないよう、人気の無い方にわざと逃げ込む。すると、反対側からも戦闘員軍団が現れ、囲まれてしまう。見た目には、万事休すだが・・・・・そこに、凄まじい轟音と共に、猛さんのバイクが飛び込んで来る。
「イイーッ!」
数人の戦闘員を跳ね飛ばし、猛さんのバイクは私の前に止まる。
「イーッ!」
戦闘員軍団は、一斉に襲い掛かって来る。猛さんは、素早くバイクから降り・・・・
「とおっ!」
襲い来る戦闘員軍団を、瞬く間に掃除する。
「ギエエエエエエエエッ!」
そこに、お約束のように遅れて、怪人が現れる・・・・どうせ戦闘員じゃ適わないんだから、勿体付けずに最初から出て来ればいいのに・・・・・
「ライダー、変身!」
猛さんは、仮面ライダーに変身する。
「とおっ!」
強い、本当に強い仮面ライダー、怪人はボコボコにされる。
「ライダーキィィィック!」
そして、止めのライダーキック。
「イィィィィィッ!」
断末魔の叫びを上げ、怪人は木端微塵に砕け散る。私は、テレビのヒーロー番組でも見ているような感覚で、この戦いを見学していた。戦闘が終わり、猛さんは、変身を解いて私の方へ歩いて来る。
本当に、猛さんは頼りになる・・・なんせ、ヒーローだもんね・・・・・でも、恋愛の対象って感じにはならないかな?優しいお兄さんって感じ。恋愛対象っていうなら、滝君の方が・・・・・え?な・・・何で滝君が対象なのよ?何考えてんの?私・・・・・今の無し!絶対に無し!
「どうした?滝・・・いや、今日は三葉か?」
目をつぶって、顔の前で手を振る私を見て、不思議そうに猛さんが聞いて来る。
「え?・・・いえ、な・・・何でもないんです・・・・・」
今回は、糸守側にもオリジナルキャラを出しました。気付いている方もいると思いますが、“影月 = シャドームーン”です。だからといって、この後ショッカーに改造される訳では無いですが・・・・ただ、いろんな意味でキーになるキャラです。滝側のオリジナルキャラも、歴代仮面ライダーの登場人物を捩ってます。“緑川瑠璃 ← 緑川ルリ子”、“志度圭一 ← 志度敬太郎”ってな風に。