"――ハクタイの森――"
得体の知れない見たことのないポケモンを撃退した俺たちは、手持ちの仲間を回復させた後にとぼとぼとすり減った精神と共にハクタイの森へと辿りついていた。
空は青いのに気分は曇り空。正直あの戦闘は疲れてしまった。
「どうした、いつもの無駄なテンションはどこへ行ってしまったんだ?」
「心配してくれてありがとうな」
頭を撫でてやると、ナツメは「勘違いするな」と言って不機嫌そうにそっぽを向いてしまった。
こうしてナツメを心配させてしまうのも悪い。
さて、先を目指すとするか。
虫取り少年が勝負をしかけてきた。
虫取り少年が勝負をしかけてきた。
虫取り少年が勝負をしかけてきた。
虫取り少年が勝負を以下略。
虫取り少年が以下略。
虫取り以下略。
以下略。
何人いるんだよ、が簡単な感想だろう。うん。
なんて容赦ない輩だ。
力量が上がることを除けば拷問以外のなんでもない。
そんなこんなで目的の場所へ辿りついた。見ているだけで背筋がゾクゾクするような人工物。
"もりのようかん"だ。
「来たな」
「さて、次の街はすぐそこだぞ?」
「何を言っている我が妹よ。ここを通らずしてこの先何を楽しみにしようというのかね?」
「ぐ……冗談じゃない! こんなの無駄足だろう?!」
「俺には娯楽の館に見えるけどな」
「この鬼畜愚兄が!!」
「鬼畜で結構。さ、行くぞ」
森へピクニックに行く小学生並にきらきらした目をしつつ、俺はナツメを引っ張っていく。
冗談抜きでお化けでも出そうな雰囲気の館は、化け物染みた空気と共に俺たちを迎えた。
俺も入った瞬間の異臭には顔をしかめざるを得なかったが、必死に恐怖を我慢するナツメの顔を見てしかめっ面は吹き飛んでしまった。
「怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない」
暗示掛けてやがる。
暗がりの道を進んでいく。木々の隙間から射すわずかな光ですら、今は逆に怪しさを感じさせていた。
まだぶつぶつ言っているナツメを気にかけつつ、俺は辺りを見回す。
(思った以上に淀んだ館だな……)
「くそ……よくも私にこんな仕打ちを……」
「そうやって俺にひっ付いてれば大丈夫だって。それより、何か感じないか?」
「な、何かって……ダメだ。何も考えられない何も見えない。あそこにある画の両目が私を追いかけてるなんて見えない」
「やっぱ何かいるって。ハッサム、メタング、ジバ…………無理か」
二体のポケモンをボールから出し、三つの視点からくまなく廊下中を見渡す。
「あの部屋か……行くぞ!」
「何も見えない聞こえない」
二人(一名ただのシンボル)と二匹で目的の部屋へ駆け込むと、その瞬間から体の隅から隅までが感じていた違和感が確信に変わった。
てか、電気で体毛が逆立ってただけなんだけどね。
テレビから聞こえるあの嫌な音。水平発振回路から発せられる音が聞こえる。
簡単に言うと、あの「キーン」って音だ。
そして、テレビに映る電気的な刺々しいフォルム。なんだあれ。頭ににんじんでも付けてんのか?
「あいつだな。ナツメ、ユンゲラーを……って、気絶してやがる……」
ぐったりしたナツメを背負い、ハッサムにテレビを切り裂けと命じる。
ハッサムはこくりと頷くと、勢いよくハサミを構えてにんじんへ向かって突進していった。
いける。そう思った直後、ハッサムとテレビ画面が接触する瞬間。
「やべ」
テレビが凄まじい光量で発光し始めた。
同時に、強烈な電撃がテレビから炸裂する。
にんじんは猛烈な抵抗をした!
煙を上げるほどダメージを受けてしまったハッサムは、すぐさま下がって俺の隣まで退いてきた。
利口だな、とハサミに手を置き、ボールに戻ってもらう。
正直、予想以上の強敵だ。なぜ今日はこう何度も何度も苦難ばかり……。
「メタング、ねんりきで引っ張り出せ!」
鋼の体を光りの輪郭が包み、両目が淡く輝いた。
刹那、にんじんと名付けていたポケモンが姿を現す。ヌッ、とテレビ画面から強力な磁力に引っ張られるように出現する。
思った以上にイメージ通りの体色してんのな。
「メタルクロー!」
多少無茶な攻撃だったか、見事鋭い鋼の爪は敵に直撃した。
直後、ピギャー! と怪音波のような鳴き声をまきちらしながら、そのポケモンは廊下の窓から飛び出して行った。
結果的に、あのポケモンがいなくなった途端、洋館を包んでいた異様な空気は消えてしまった。
しかし、それがあのポケモンが発していた物だったからか。それとも、あのポケモンが存在することによる二次的な物なのかは分からない。
知る必要も特にないだろうし、こうして柔らかい女の子を背負って歩けるだけで、俺はもうお腹いっぱいです。
「時々心配してくれて、バトルも強くて。これでちっとは言葉遣いを女性らしくしてくれれば無問題なんだがなぁ……」
冗談抜きで悩みどころである。昨日はそれで二時まで悩み続けていたのだから。
仕草や俺に対する態度もとげとげしい上に、男性口調で罵られるのはいかがなものか。
夢と言ってもいい。もしもそうしてくれれば、ナツメがお兄ちゃんと呼んでくれる嬉しい。
だがどうすれば良いのだろう。俺にはさっぱり分からん。
「こういう喋り方、私には似合わないでしょう?」
「?!」
一瞬、背筋がゾクッとした。
目を覚ましているらしいナツメは、そのまま俺の背中に顔を埋めた状態で続ける。
「けど、今日は二回ともカッコ良かったわ…………お兄ちゃん」
だからご褒美にね? と付け足し、そこからは何も言わなかった。
今日はこのまま、ハクタイについたら宿を探そう。
レポート
名前 アンバー
手持ち
ハッサム Lv35 特性 テクニシャン
わざ メタルクロー れんぞくぎり きりさく
メタング Lv32 特性 クリアボディ
わざ メタルクロー ねんりき てっぺき どくどく
ジバコイル Lv33
わざ だいばくはつ
メモ 育てようがないんだけど。
名前 ナツメ
手持ち
ユンゲラー Lv32 特性 シンクロ
わざ サイケこうせん かなしばり めいそう じこさいせい
バリヤード Lv28 特性 フィルター
わざ サイケこうせん リフレクター ひかりのかべ みがわり
スリープ Lv28 特性 よちむ
わざ さいみんじゅつ ねんりき サイケこうせん
ラルトス Lv22 特性 トレース
わざ ねんりき しんぴのまもり おんがえし かげぶんしん
ヒトデマン Lv26 特性 しぜんかいふく
わざ じこさいせい みずてっぽう こうそくスピン スピードスター
日記 アンバー
み な ぎ っ て き た
日記 ナツメ
いつまでもうだうだ言われるのは面倒だし、今日から口調を正そうと思う。
決してデレてなどいないわ。決して思考を読んだりしていないわ。