ナツメの義兄へ転生   作:アステロイドベルト

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 さて、次回からはいつ更新になるのやらと。
 受験やバイトで色々忙しいので、まったりお待ちになられればと思います。
 感想等、本当に有難うございます。励みになってます。


十五話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 区切りの朝に、俺とナツメは当分ないであろう朝の身支度を始めた。

 

 現在午前十時。カントーへの高速船が出るのは午前十一時三十分。今用意を済ませておけば、多分簡単に間に合うだろう。

 ふわふわと浮いているメタングとジバコイルをボールに戻し、今度はハッサムの頭の上に乗っているクチートと、そのハッサムと、

 

「さて、そろそろ出るか。ナツメ」

 

「ええ……」

 

 また来る。そんな、気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆらんゆらんと巨大な顎を揺らすクチートを、ハッサムが鬱陶しそうにしている。

 

 どこかで聞いた話だが、あの口は元々ツノで、それが変形した姿らしい。

 

 

 それをナツメに教えてやると、どうでもいいとでも言いたげな表情で流された。酷い。

 

 

「それより、あなたはこれからのことを考えたらどうなの?」

 

 確かに、計画くらいは立てておいた方が良いのかもな。

 ナツメと一緒にいるために、ナツメの傍から離れるのだから。彼女を寂しがらせるに値する結果を残さなければならない。

 

 今のところ考えているのは、初代主人公のようにシロガネ山にでも籠ってみるという物だ。

 あそこなら辺境で生きた屈強なポケモンも出るし、それ相応の実力も身に着くだろう。

 

 

 飛行タイプのポケモンを持っていれば移動も出来るし、いざとなればヤマブキに帰る事も難しくはない。

 だけど、そんな軽い気持ちで強さなんて手に入らないから。

 

「全部聞こえているのだけれど……?」

 

 不意に、考えを巡らせながら降り積もった雪に足跡を残す俺の顔を、ナツメがひょこりと覗き込んできた。

 

「オマエに頭覗きこまれるくらい、俺は気にしないさ」

 

「随分と私に甘いわね」

 

「好きだからに決まってんだろ。今さらだ」

 

「ふふ……知ってる」

 

 こう、突然素直になられると慣れない。くぁいいからいいんだけど。

 

 それに多分、今までは忘れていたのだろう。

 母親が死に、周りの人間からは奇異の目で見られ、閉鎖的な環境で育った彼女は、無意識の内に表現と受け止め方を忘れていた。

 

 だから言葉が年齢や性別とズレ、感情表現も気難しい顔になる。

 

 

 今はそれを思い出して、逆に感情へ素直になり過ぎたくらいだ。

 でも、それでいい。まだ年ごろの女の子として、自分の思いを相手へ素直に伝えられるのはいいことだ。

 

 俺が彼女に教えたんじゃない。ナツメ自身が、自分の手で取り返した本来の心だ。

 

 

 船が見えてきた…………ん?

 

 俺とナツメが足を止め、顔を合わせた相手。昨日とは違うふなのり。

 

 そのふなのりには、見覚えがある。ミオシティで、最初にナツメが感謝の意を受け止め兼ねたあのふなのり。

 

 

 ナミキだ。

 

 彼は俺たちの顔を見るや否や、騒々しく「探しました!」と口にしながらナツメの方へ歩み寄る。

 そして手を取り、本当に優しい顔でナツメの目を見つめた。

 

 

「あなた方が来た次の日、あの子が目を覚ましたんです! 夢の中で、長い髪のお姉ちゃんが助けてくれたって言いながら…………もう私は嬉しくて嬉しくて……あなたに、一言お礼を言いたくて…………」

 

 

 涙をぽろぽろ流しながら、ナミキはナツメの手を柔らかく握る。

 

「あなたのおかげで、私たちにも笑顔が戻りました…………本当に、ありがとうございます!」

 

 

 ナツメはどうしていいのか分からない表情で、でも嬉しそうで、恥ずかしそうで、泣きそうで。

 

 多分、今度は正しく、本当の意味で受けとめたんだと思う。

 

 

 そうだろ? ナツメ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 船の甲板の上で、俺とナツメは流れゆくシンオウ地方を眺めていた。

 見送るように飛び去る、数十匹のムクバード。それを見つめながら、ナツメがなびく髪を押さえていた。

 

 多分、悪夢を覚ますことが出来る羽根を持つというポケモンが、ナツメを感じてあの家に現れたのだろう。

 

 根拠はないけど、何でかそんな気がした。

 

「たった数日だったけれど、名残惜しいものね」

 

「また来ればいいさ」

 

 そう、また来ればいい。また今度。

 

 

 たくさんをくれた北の大地へさようならを言い、俺たちは再び始まりの地へ帰る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 クチバに着くと、少年は親友であるハッサムをボールに戻し、大顎を持つクチートを頭に乗せた。

 

 ハッサムと入れ替えるようにメタングが姿を現す。

 

 

「そんじゃ、行くわ」

 

「え…………?」

 

 予想外だった。

 

 何を言っているのか、一瞬分からなくなる。

 

「家に顔…………出さずに行ってしまうの……?」

 

 青い鋼のポケモンに飛び乗る少年へ、手を伸ばす。

 

 少年の方も手を伸ばし、ナツメと硬く繋ぐ。指をからみ合わせる。

 

「俺もそう思ってたんだけど、家に帰ると揺らいじまいそうでさ。オマエから離れたくなくなるかもしれないんだよ」

 

 一瞬、それでもいいと口走りそうになった。

 でも止める。彼の心が命じている事なら、それに自分の意思を介入させるべきではない。

 

 

 だが、しかし、でも、だって。

 

 そんな否定のことばかり浮かび上がる自分の思考を捻りつぶしながら、ナツメは笑顔で彼を送り出す。送りだそうと決めた。決めたんだ。

 

 

「きっと、帰って来るわよね……?」

 

「帰るさ。ナツメと一秒でも長く一緒にいたい。だから、納得したらすぐに飛んで帰る」

 

「その時は抱きしめて。腕に抱いて。絶対に……」

 

 少年は笑うと、指を一本一本解いていく。

 

 

「約束するよ」

 

 

 最後に、跳んだ。

 

 自分の足が、クチバを包む砂を蹴る。

 

 

 そっと口で触れる。それだけ。

 

 虚を突かれたような顔をしていた彼は、泣きそうになって、それでもう一度笑った。

 

 

 

 

 

 さようなら。また今度。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レポート

 

 

 名前 アンバー

 

 

 手持ち

 

 ハッサム Lv44♂ 特性 テクニシャン

わざ メタルクロー シザークロス てっぺき バレットパンチ

 

 メタング Lv42 特性 クリアボディ

わざ メタルクロー サイコキネシス てっぺき どくどく

 

 ジバコイル Lv33 特性 じりょく

わざ だいばくはつ こらえる

 

 クチート Lv42♀ 特性 いかく

わざ かみくだく てっぺき バトンタッチ まもる

 

 

 

 

 名前 ナツメ

 

 

 手持ち

 

 ユンゲラー♂ Lv38 特性 シンクロ

わざ サイケこうせん かなしばり めいそう じこさいせい

 

 バリヤード♂ Lv36 特性 フィルター

わざ サイケこうせん リフレクター ひかりのかべ みがわり

 

 スリープ♂ Lv33 特性 よちむ

わざ さいみんじゅつ ねんりき サイケこうせん ずつき

 

 キルリア♀ Lv31 特性 トレース

わざ ねんりき しんぴのまもり おんがえし かげぶんしん

 

 ヒトデマン Lv34 特性 しぜんかいふく

わざ じこさいせい バブルこうせん こうそくスピン スピードスター

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日記 アンバー

 

 ナツメとまた会う約束をした。

 

 

 日記 ナツメ

 

 アンバーとまた会う約束をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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