ナツメの義兄へ転生   作:アステロイドベルト

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九話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たにまの発電所って名前、なんかエロいよね。

 

 そんなことを呟いていると、ナツメが「またか」とでも言いたげな表情で深々とため息を吐いた。

 この流れならいける! と思って「ナツメの谷間も触らせて」と試しに言って手を伸ばしてみると、当然のごとくスカイアッパーを浴びた。痛い。

 

 現在、俺たちはメタングに二人して乗っかったまま谷間の発電所なる建物へ向かっている。

 理由は単純明快過ぎて以下略してしまいそうだ。

 

 俺とナツメがハクタイ方面へ向かおうとすると、俺のポケットから垂れていたナツメの下着を、どこからか流れてきた風船みたいなポケモンが奪い去っていってしまったのだ。

 勢いよく追いかけようとした矢先に胸倉を掴まれてしまったので見失ったのだが、飛び去って行った方向は見ていた。

 

「まったく……鞄の中で偶然絡まってただけだってのに」

 

「早とちりくらいは大目に見ろ。実刑は下さなかっただろう?」

 

「胸倉掴まれただけでも大分苦しいって……お、見えてきた」

 

 そこには、先ほどの風船みたいなポケモンから白い布(ナツメの下着)を受け取り、困ったように首を捻る男性がいた。

 俺はその男性の元へ降り立つと、下着泥棒(仮)に向かって変態紳士らしい振る舞いで近寄る。

 

「おっさん、その下着の持ち主、そこにいるまだ特に凹凸もない子どもだぞ。そんなモン使えねーだろ? だから俺にく「違うだろう」ぶ?!」

 

 背中から蹴り倒された俺の背中を踏み台にし、ナツメは不機嫌そうな表情のまま男性から下着を奪い取る。

 

 心配そうにメタングが俺の顔を覗き込む。ああ、お前のご主人さまは義妹に足蹴にされてるぜ……無様だろう?

 

「すまないすまない、あのフワンテは時々ああして物を拾って持ってくるんだよ」

 

「義兄が勘違いをしたようだ。こちらこそ悪かった」

 

「ホントかよ。あいつ、俺のポケットから垂れてる下着奪い去ってったんだぜ?」

 

「ポケットから下着?」

 

 それもそれで滑稽か。

 まあこの件についてとやかく言うのはやめよう。

 起き上がり、座り込んでいる俺にメタングが腕を貸してくれた。ポケモンは優しいのに妹は冷たい。

 お兄ちゃん悲しいぞ。

 

「風車で発電を?」

 

「ええ。この辺りでは風がよく吹くのでね」

 

 ふむ。確かに北風小僧もビックリするくらい吹いてんな。

 だからあのフワンテとかいうポケモンも、ここらに来るのだろう。

 

 ほら、今もあの風車、あまりに勢いが強すぎる風でぶっ壊れ……あれ?

 

「こ、こんなに強い風まで吹くのか?! あばばばば、メタングが吹っ飛ぶ!」

 

「い、いや、こんなのは初めてだ!」

 

 強すぎる風に耐える俺たち。

 メタングに腕を地面に突き刺すよう命じ、引っ張る形で吹き飛ばされぬよう抑え込む。

 

 そんな騒がしい風の音だけの世界で、ナツメがキッと虚空を睨んだ。

 

「違う、これはポケモンによる物……ユンゲラー!」

 

「ポケモンによるって……さっきのオネーサンが使ってたポケモンでも、こんな規模は起きなかったぞ?!」

 

 伝説のポケモンでも現れたのか?

 一心不乱にユンゲラーと共に辺りへ目を向けるナツメ。俺もそこらへ視線を散らすが、風のせいで中々目を開けない。

 

 ふと、発電所従業員の男性がどこかへ向けて指をさしているのが見えた。

 一々確認する暇はない。電光石火の突撃で仕掛けましょうってな。

 

「ハッサム、きりさくッ!」

 

 開閉スイッチを押した瞬間、赤い鋼の弾丸が飛び出した。

 目にもとまらぬスピードで標的を捉えると、右腕のハサミで勢いよく切り裂いた。

 

 ズバッ! と。いやズバットじゃなくてね。

 鈍い音が鳴るかと思いきや、刃で切り合うような甲高い金属音が響いた。

 同時に風が止む。

 

 メタングの上に乗ると、俺はハッサムの向かった方向へ目を向けた。

 そこにいたのは……。

 

「何だアイツ……?」

 

 赤と緑の体と、丸っこい触手みたいな腕が四本。

 うねうねと蠢く不気味な両腕を持つ、歪なポケモン。

 

 どっかで見た気がするが思い出せない。

 敵意は感じられるかとナツメに尋ねるが、なんともいえない表情で返された。

 ハッサムが連撃を仕掛けようとするが、はじき返されてしまう。

 

 力量は相当と見える。だってそうだろう?

 ナツメが反応したってことは、つまるところエスパータイプ。そして、サイコキネシスか何かで今の暴風を起こした訳だ。

 災害レベルだよ、こいつ一体で。しかも野生ですか? はっはっは。笑えない。

 

 仕掛けてきた。

 

「ハッサム、メタルクロー!」

 

「ユンゲラー、サイケこうせん!」

 

 ユンゲラーのサイケこうせんは掻き消され、ハッサムの攻撃は呆気なく跳ね返された。

 ハッサムで歯が立たないのなら、メタングでも同じかもしれない。

 

「クソッたれがッ」

 

 二匹をボールに戻し、俺は三つめのボールに手を掛けた。

 

「三匹目がいるのか? だがこんな相手に……」

 

「賭けるしかねーだろ。どっちにしろ、このままじゃ皆お陀仏かもしれないんだしさ」

 

 おびえている男性を一瞥し、ナツメの眼の前へ立つ。兄貴らしいことなんて、こういう時しかできないからな。

 俺が戦うわけじゃないけど。

 

「頼むぞ新人!」

 

 ボールが開くと同時に、内側から光りが溢れる。

 

「やべ、太陽拳じゃんコレ。みんな目閉じろ!!」

 

 自らの目を塞ぎ、ナツメの視界を隠すように頭を胸に抱き、伏せる。

 耳鳴りがするくらい嫌な音が辺り一帯に響き渡り、それに反応してナツメの耳も塞いでやった。

 多分、視界が真っ暗で何が起こっているか分からないだろう。

 

 今の俺には見えるけどな。

 耳がごわんごわん言って音は聞き取れないが、視界ならある。

 傷ついて逃走する、不気味な触手を揺らすポケモン。そして……、

 

(戦闘不能になった、ジバコイル……)

 

 ぐったりしたそいつは、間違いなく俺が持っていた三つめのボールから出たポケモンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レポート

 

 

 名前 アンバー

 

 

 手持ち

 

 ハッサム Lv34 特性 テクニシャン

わざ メタルクロー れんぞくぎり きりさく

 

 メタング Lv28 特性 クリアボディ

わざ メタルクロー ねんりき てっぺき どくどく

 

 ジバコイル Lv33

わざ だいばくはつ

 

 

 名前 ナツメ

 

 

 手持ち

 

 ユンゲラー Lv30 特性 シンクロ

わざ サイケこうせん かなしばり めいそう

 

 バリヤード Lv26 特性 フィルター

わざ ねんりき リフレクター ひかりのかべ

 

 スリープ Lv25 特性 よちむ

わざ さいみんじゅつ ねんりき

 

 ラルトス Lv19 特性 トレース

わざ ねんりき しんぴのまもり おんがえし かげぶんしん

 

 ヒトデマン Lv20 特性 しぜんかいふく

わざ じこさいせい みずてっぽう こうそくスピン

 

 

 

 

 

 

 

 

 日記 アンバー

 

 親父がキレーなお姉さんに託したジバコイルのおかげで助かった。

 あれがなければ、俺はどうするつもりだったのだろう? 本当にナツメの兄としてあいつを守る意識があるなら、強くなることを真剣に考えるべきである。

 ていうか、なんでだいばくはつしか覚えてないの? 馬鹿なの? 死ぬの? 死んでるけど。

 

 

 

 日記 ナツメ

 

 もうダメかと思った時、あいつが私を守ってくれた。

 直後抱きしめられたので、その後の記憶が曖昧だ。覚えているのはあいつの胸が温かくて……いやいや、そんなこと思っていないっ。

 私はどうしてしまったのだろうか。むずむずした気持ちが最近渦巻いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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