【未完終了】魔法少女リリカルなのは ━三途川に落ちる少年━ 作:針鼠
「はあああ!!」
槍を前に突き出してエリオが突貫。その体にはキャロの支援魔法も施されている。なのはさんの障壁さえ貫いてみせた一撃だが大型ガジェットの装甲に阻まれる。地面に着地すると同時にエリオは横へ飛んだ。打ち合わせ通りだ。
「このデカブツ!」
「フリード!」
エリオが斜線から逃げたのを確認して、今度は俺の砲撃魔法とフリードの火炎が大型ガジェットを呑み込んだ。大型は飛行型と違って動きが遅い。ならばと選んだ手札。
手応えはあったが再び姿を見せたデカブツはアームとワイヤーを破損しつつ目立った傷は見えない。硬すぎだろ。それにデカブツから一定範囲に到達した途端火炎と光線の勢いが減衰したように思えた。
「AMFってやつか」
「今までの奴らより範囲も広くて強力です!」
通りで。今までのならエリオの攻撃が弾かれることもなかったはずだ。ティアやなのはさんなら多少威力を削られようが遠距離砲撃であの壁を突破することも出来るんだろうが、今の俺じゃあたとえキャロの支援があっても無理だ。結論としてこの距離じゃあ勝負にならない。
敵の射程に入らないよう気を付けながら列車の屋根へ足を下ろす。
「ルビー、モード・セイバー」
『了解でっす』
右手の甲に嵌っている珠が声と共に明滅。視界が光に埋め尽くされた次の瞬間には俺の格好は白銀の騎士に変わっていた。
遠距離が駄目なら近くに行って斬るのみ! ティアが聞けば単純馬鹿だと言われそうだが思いつく方法がこれしかないなら仕方がない。覚悟を決めて屋根を蹴った。
デカブツも俺の存在を認識すると、AMFを展開しながら新たに生やしたベルトアームで迎撃体勢。AMFの領域に入った瞬間体が重くなったような感覚に襲われるも構わず突進。先行するアームを潜り抜け、そのまま伸びたアームを半ばから両断。部品を散らして引き千切る。
「一閃必中!」
後方から、キャロの支援魔法を帯びたエリオが再度突貫。エリオのデバイス、ストラーダに搭載されたジェットエンジンによる推進力も相俟ってあっという間に先行していた俺を追い抜きデカブツに着弾。AMFなどお構いなしの物理力で槍の半ばまで突き刺さる。
「おおおおおおおおお!!」
吠えたエリオは貫いた敵をそのまま槍を無造作に旋回。列車の外にデカブツを投げ出した。大型にこの高所に対応出来るような飛行機能がついていないことは事前の情報でわかっている。このまま崖下に叩きつけられて終わりだ。だが往生際悪くレーザーの砲口が動いている。空中に投げ出されながら狙った先は攻撃直後で硬直しているエリオ。あわよくば刺し違えようとでもいうのか。
「――――いい加減にしやがれ!」
どこまでも仲間を傷付けようとするこいつにいい加減頭にきた。昂ぶった感情に呼応するように腹の底から熱がせり上がってくる。熱は腕を伝い、収束するのは手にした剣へ。
狙いは空中の大型。大上段へ振り上げた剣を、詠唱と共に振り下ろす。その名は、
「約束された勝利の剣《エクスカリバー》!!!!」
視界の全てが光に覆われた。重い手応えを覚えながら、徐々に光が収まっていく最中唐突に体に力が入らなくなる。明滅する意識の中で最後に見たのは、数多のガジェットの残骸の向こうにある、裂けた空だった。
「ざまあみやがれ」
暗転。
★
今の状況は、一体どういう状況なんだろう。
「ユキカゼさん、気分はどうですか? タオル変えましょうか?」
とキャロ。
「ユキカゼさん、お腹空いてないですか? りんご剥きますか?」
とエリオ。
「あ、うん。大丈夫大丈夫」
優雅にベットに寝転がる俺。えっこらと周囲で世話を焼く子供がふたり。…………え、これ最悪じゃね?
初実戦。セイバーモードの必殺技を放った直後、気を失った。気が付けば帰りのヘリの中で、もう一眠りしてていいとなのはさんに言われて眠りに落ちた後、次に目を覚ました場所はすでこの六課の医務室だった。医務室の天使、シャマル先生が言うには疲労が原因とのことだ。
なのはさんから今日一日は大人しく寝てなさいとのお達しで今に至るのだが。
しばらくしてやってきたのはチビーズ(キャロとエリオ)。いつもなら訓練の時間なので訊いてみると、なんでも昨日が六課での初実戦だったので今日の訓練は朝練のみ。日中はデスクワークだけとのことだった。
基本俺達に任される書類は簡単なものが多く、なによりチームで分担して任されている。ので、ティアとスバルが書類仕事をしている間、自由になったのでお見舞いにきたと言うのだ。
「ふたりとも自由時間なら俺なんかに構ってなくていいんだぞ?」
せっかくだから遊んでくればいい。そう言ったらふたりは首を横に振る。
「やりたくてやってるんです」
「それに元はと言えば僕が頼りなかったからユキカゼさんが駆けつけてくれたわけですし」
「そんな風に言うなって。約束しただろ」
なにこの天使達。可愛くて健気で可愛いってどういうこと。どういうこと! 落ち着け俺。
どうやらいくら言っても彼等が遊びに行くことは無いようなので、子供に世話をさせるという若干心苦しくはあるがもう好きにさせることにする。ちょいちょいと手招き。
「エリオ、キャロ、ありがとな」
わしわしと頭を撫でると揃って嬉しそうにするものだから撫で甲斐もあるってもんだ。
「ふたりともりんご食うか?」
★
「それじゃあユキカゼさん、失礼します」
「ゆっくり体休めて下さい」
相も変わらず礼儀正しいふたりはお辞儀して退室する。途中シャマル先生が戻ってきたのだが、なんか温かな目でこちらを見た後そっと回れ右してしまった。俺以外患者いないけどもそれでいいの?
まあ、じゃあそろそろ寝ようか――――
「ユキカゼくーん。総隊長が直々に御見舞いにきたでー」
入れ替わりでやってきたのは関西弁少女。
「仮にも病人相手に満面の笑みで入ってくんなよ」
「えー? でも暗い顔しとっても気が滅入るやん? 病は気からっていうし」
ズズイ、と間合いを詰めてくるはやて。ニヤニヤしてる。
「それにこーんな可愛い子が御見舞いに来たらそれだけでテンション上がるやろ?」
くそう。否定出来ない。正直嬉しかったとか言うと負けな気がする。
「なにが病人だ。貧弱過ぎるテメエが悪いに決まってるだろ」
この生意気な声はやはりチビっ子――――もといヴィータ。それと一緒に入室してきたのはシグナムとペットの狼、ザフィーラ。
「そう言ってやるな。今回はなかなか頑張っていたとなのはも言っていただろう」
マジか。なのはさんが褒めてたの!?
「……シグナム、それ本人には言うなって言ってなかったか?」
「おっと。そうだったか? ということだユキカゼ、今のは忘れてくれ」
もうバッチリ聞いてしまった。忘れられるはずがない。そっかー、褒めてくれたのかー。人に褒められるのはもちろん嬉しいが、それがなのはさんからだと嬉しさもひとしおだ。
それにしてもなんというか、シグナムはいつでも余裕のあるお姉さんだな。仕草のひとつひとつが綺麗だ。本物の騎士みたい。
「おっと。次の会議までもう時間無いやん。それじゃあなユキカゼ君、ゆっくり休みいや」
「いいか貧弱。戻ってきたらまたバシバシ鍛えてやるからな!」
「邪魔したな。ゆっくり休めよ」
突然やってきたと思ったら去るときも唐突な団体だ。さてと、これでようやくゆっくり――――、
「ユッキカゼー! 元気にしてるー?」
「スバル、あんた一応でも病人にその質問がおかしいでしょ」
――――あれだな。多分今日は休めないんだな。でもまあ、こんなふうにみんなに気遣われるのは嬉しくもあるわけで。
見舞いの品を振る舞って、その後はスバルとティアと談笑するのだった。
閲覧ありがとうございましたー。
>てなわけでここまでが大まかな第一章になりますかね。多分。きっと。ちなみに今回のタイトルで言ってる必須の場所とは医務室です。
>セイバーさんといえばこの技は外せない。最早代名詞といってもいいです。エクスカリバーをなのはさんの世界風に言い換えるとどうなるんでしょうね。収束と砲撃?まあブッパからの薙ぎ払いはロマンがありますよね。
>最後は蛇足感も否めませんが、おまけ要素として。六課でなかなかユキカゼ君が受け入れられている図です。ちなみにユキカゼ君の八神家の呼び方はシャマル先生以外呼び捨て。しかもザフィーラは未だペットだと思ってます。もしかしたら最後まで……。
ではでは次回から第二章(気分的に)です。ついでにざっとした設定集をそのときにでも一緒に投稿しようかと思ってます。ようやく全部のモード出たわけですし。