【未完終了】魔法少女リリカルなのは ━三途川に落ちる少年━   作:針鼠

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格好をつけたい。だって男の子だもの

「へえ、お前ヴェロッサっていうのか」

 

 

 先程唐突に話しかけてきた人物と、何故か俺は仕事をサボってくっちゃべっている。

 

 

「ロッサでいいよ。親しい人はみんなそう呼ぶし」

 

 

 おぉ……ナチュラルに心の間合いを詰めてきてる。こんなイケメンスマイルでそんなこと言われたら男でもドキッとくるわ。いや俺は普通に女の子が好きだけどね? ほんと。

 

 それにしても、初対面の人間捕まえて親しい人とは……世間知らずの箱入りなのか。それとも根っからのお人好しか。

 

 

「ロッサってさ、実はどっかの王子様とか貴族だったりするのか?」

 

「あはは、面白いねユッキーは」

 

 

 笑い飛ばされてしまったが割りと本気だったりして。それほどにロッサからは気品というか、一般人らしからぬ雰囲気が溢れ出ているのだ。だって笑うと後ろにバラとかキラキラした光とか見えるんだもん。

 

 まだ話して間もないが、すでにロッサと俺は気安い仲になっている。あだ名で呼び合うくらいには。それもこれもロッサの人格か、はたまた異様なコミュ力というやつか。羨ましい。このルックスだ。さぞおモテになるのだろうさ。畜生。

 

 まあ初対面の人間にチョコねだってきたりと元々図々しい上に変わり者なのだろうけど。ただ悪い奴ではなさそうだ。

 

 

「そういうユッキーはここの警備の人なのかい?」

 

「まあそんなところ」

 

 

 正確には警備員ではなく応援だが。

 

 

「機動六課って部隊なんだけど、知ってる?」

 

「ふーん」

 

 

 そういえば、六課はこの世界ではどれほどの知名度があるのだろうか。スバル達が言うには有名人が多いとのことだったが、いうても新設だし、今のロッサの反応をみてもそれほどではないのかもしれない。

 

 

「ああ、そういえば聞いたことあったよ。たしか八神 はやてって子が総隊長なんだろ?」

 

「やっぱ有名人なんだな、あいつ」

 

 

 ロッサはきょとん、とした顔をしていた。

 

 

「あいつだなんて……そんなこと言っていいのかい?」

 

「同僚にもよく注意されてるんだわ」

 

 

 双銃使いのツインテールを思い出す。想像の中でも怒っている。ごめんなさい。

 

 

「八神 はやては頼りないかい?」

 

 

 そう問い掛けてくるロッサ。どうやら彼は勘違いしているらしいので訂正する。

 

 

「そんなことねえよ。ただどうにもはやては上司っぽくないというか……。いやお偉いさんとかと会ってるときはそれっぽいんだけどなぁ」

 

 

 正直年齢が近すぎる。元々はやての容姿が幼く見えるのだから尚更。今更『はやてさん』などと呼んでいる姿は想像すら出来ない。

 

 

「なんで魔導師ってのはどいつもこいつも若いのかね」

 

 

 言って、ロッサに『そういう君だって』と苦笑された。御尤も。

 

 

『ユキカゼさん』

 

「どうした?」

 

『敵影を捕捉。ロングアーチから戦闘準備の命令がきてます』

 

「本当に来たのかよ」

 

 

 なんだかんだ今日は何も起きないのではないか、という予想は外れた。

 

 

『ユキカゼ君、聞こえる?』

 

「シャマル先生ですか?」

 

 

 念話だ。

 

 

『ええ。フォワード陣はティアナの指揮でホテル前の防衛ラインを守って欲しいの』

 

「了解っす」

 

 

 命令なら仕方ない。それに遅れるとまたティアにどやされる。さっさとホテル前の入り口に向かうとするか。

 

 

「仕事かい?」

 

 

 ルビーやシャマル先生の声は外部であるロッサには聞こえていない。それでも俺の受け答えと空気から察したのだろう。

 

 

「ああ。お前も建物の中入っとけよ。危ないから」

 

「そうするよ」

 

 

 両手をあげて大人しく従う様子を見せるロッサ。不意に、今までにないほど真剣な顔を向けてきた。

 

 

「気をつけて」

 

「おうさ。任せとけ!」

 

「今度僕の作ったお菓子をご馳走するよ」

 

「手作りなら女の子の方がいいなぁ」

 

 

 シャマル先生とか、ギンガとか。

 

 

「作ってくれる子はいないのかい?」

 

「いねえよ畜生! お前さっさと建物の中入れ! 今すぐ! ハリアップ!」

 

 

 これ以上の会話は戦闘前にダメージを受けると判断してぶった切る。手すりに足をかけ、逃げるように駆け出した。

 多分、ロッサは最後までその背を見送ってくれていたと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達に課せられた役割は最終防衛ライン。フォワード陣はみんなバリアジャケットを纏って戦闘態勢を維持。俺もセイバーモードで待機しているわけだが……これ出番あるのか?

 

 遠くで爆炎があがる。

 

 シャーリーの報告では敵の数は30を越える大軍。中には先日の列車襲撃事件のときの飛行型や大型も複数混じっているらしいのだが、今の状況ではまるで脅威に感じられない。――――それほどまでに六課は圧倒的だった。

 

 シグナムとヴィータの副隊長コンビ、それにあのザフィーラが前線で戦っている。

 

 ヴィータはあの小柄な体格に似つかわしくないハンマーを振り回してガジェットを破砕していく。シグナムも、俺とエリオとキャロ、3人がかりでも手こずった大型を一刀のもと切り伏せている。

 

 普段の訓練ではわかりにくかったが、実戦でこそわかる彼女達との力量差。力が強いとか、動きが速いとかではない。

 判断が早い。そして敵の急所を的確に貫く精密な攻撃。これに尽きる。

 ほとんどを一撃で、それも最も効率良く倒していくが故に生まれる余裕は、次の敵に備える時間を作る。

 

 これが六課……いや、本当ならここになのはさんやフェイトさん、はやてだっている。

 この部隊の実力は今更ながら異常なのだと認識した。

 

 いよいよもって出番が無いと油断しているところに、キャロが声をあげる。

 

 

「遠隔召喚! ――――来ます!」

 

 

 キャロが示す先に展開される紫色の魔法陣。そこからわらわらとガジェットの軍団が這い出てきた。なんだこりゃ。

 

 

「優れた召喚士は、転移魔法のエキスパートでもあるんです!」

 

「なにそれ卑怯くせー!」

 

 

 こんな方法があるんなら包囲は意味を成さない。事実圧倒的な戦力で前線を支えるヴィータ達の壁を奴等は苦もなくすり抜けてきたのだから。

 

 

「そんなこと言ってもしょうがないでしょ」

 

 

 ティアが銃を構える。

 

 

「全員迎撃準備!」

 

 

 ティアの言葉を皮切りに戦闘が開始された。

 

 仕方がない。その通りだ。もうやるしかない。

 

 

「スバル!」

 

「うん!」

 

 

 先陣をきるのは俺とスバルのフロントアタッカー。

 

 応戦とばかりに放たれるお馴染みのレーザーを蛇行しながら走ることで狙いをつけさせず回避。なおも直進。間合いを詰める。

 止まらないとみるや伸ばされるアームを身を低くして躱し、両手で持つ剣を切り上げ半ばから切断。もう一方のアームも、切り上げた剣を翻し、切り下ろす。一瞬で敵の両の腕を奪う。

 

 2本の腕を失ったガジェットはそれでも俺への攻撃の意志を見せるが、それより速くローラースケート型のデバイス《マッハキャリバー》を駆るスバルが懐へ潜り込み、拳の一撃を貫通させる。

 

 ガジェットの破壊方法は主に2通り。AMFに干渉されない物理攻撃で壊すか、干渉を上回る魔力を込めた攻撃を叩き込むか。

 

 セイバーモードの切り札であるエクスカリバーなら、ここら一帯の敵を一掃出来る自信があるが、あれを使うとしばらく俺は疲労から動けなくなってしまう。今も次々と敵が増え続けているこの状況でそれは足手まとい以外何者でもない。

 故に俺やスバル、それにエリオは直接叩く物理攻撃がメインになる。

 

 ティアの射撃を支点に、俺とスバル、エリオとキャロのダブルチームが今の俺達の基本戦術。

 

 脳裏にチラリとシグナムやヴィータの無双が掠めるが、意識的に忘れる。俺達はあいつらのようにはいかない。訓練通り。1機ずつ確実に潰していく。

 

 

「次行くぞスバル!」

 

「おうさ!」

 

 

 己の分を再確認した俺は新たな獲物に接敵。剣を振り回して、

 

 

「はれ?」

 

 

 盛大に空振りした。

 

 今までの訓練ならば確実に当てられていたはずなのに。明らかに動きの()が変わった。それに、意識していたのに、少しばかり大振りになった?

 

 いや、違う違う違う! 今はそれどころじゃない。

 

 攻撃を外した。最接近していたのに。

 つまりそれは、

 

 

「――――――――」

 

 

 敵の目の前で無防備を晒しているということだ。案の定、チャージされた光の矢が俺の眉間に狙いを付けていた。

 

 

「――――ま、ずっ!!?」

 

「でりゃああああ!」

 

 

 真っ白になった頭が再び思考力を取り戻したのは、スバルが先程蹴り飛ばしたガジェットを撃破した後のことだった。

 

 右の耳が熱い。痛い。

 見れば背後に立つ木の幹に穴が穿たれていた。

 ガジェットの攻撃はスバルの蹴りで狙いが逸れたようだった。

 

 

「ユキカゼ大丈夫!?」

 

 

 心配して駆け寄ってきてくれたスバルに片手だけをあげて応じる。声を出して強がる余裕は無かった。

 

 まったく、忘れていた。俺はついこの間まで学生をやっていたのだ。こんな剣やらレーザーやら飛び交う戦場には場違いな人間なんだと。

 最近は少しばかり訓練機を相手に上手く立ち回れていたからって勘違いしてしまっていた。列車事件のときだってほとんどなのはさん達におんぶに抱っこで戦っていたに過ぎない。

 

 考えを改めなくちゃいけない。忘れてはいけない。

 気を抜くな。集中しろ。常に怯えて一歩下がれ。

 

 俺はシグナムやヴィータ、スバル達とは違う。あんな風に敵をバッタバッタと薙ぎ倒すヒーローにはなれない。

 

 だから、かっこ悪くていいから、みっともなくていいから、やれることだけをやればいい。必死になれ。

 

 

「動きが、変わった……?」

 

 

 気合を入れ直して頭もようやく冷静になってきた。心臓の音だけがまだうるさいが、周囲の音も戻ってくる。

 ちょうどティア達がガジェット達を牽制しているところだった。

 

 動きが変わった。明らかだった。一見ランダムに見えても一定のパターンが存在したガジェット達の動きに予測できない動きが加わっている。互いのフォロー、1機を囮にした戦術、よくよく見ればフォーメーションのようなものまで組んでいるではないか。

 攻撃が簡単には当たらなくなった。追い詰めたと思っても別の奴が邪魔をしにくる。

 

 

「なんなんだよクソッ!」

 

 

 苛立ち紛れに突いて出た悪態。

 ルビーがなにかを探知した。

 

 

『新たな敵を捕捉。場所は地下駐車場……ホテル内部です』

 

「嘘だろ!?」

 

 

 1機漏らした? ……いや、確かにガジェット達の動きは今までにないもので、俺を含めて確かに動揺もしたがまだ俺達の方が優位だ。包囲網を抜ければ誰かが気付く。

 

 

「内部に直接召喚されたのか?」

 

『うーん、おそらくそれはないと思いますよ?』剣の形状になっているルビーが『この建物には転移魔法の対策が施されているみたいです』

 

「なら別ルートから入ったのか……」

 

 

 どちらにしても、最終防衛ラインを任されている俺達の責任だ。

 数秒、戦闘を止めて考える。

 

 

「シャーリー! 聞こえるか? ホテルの中に敵がいる!」

 

『ええっ!?』

 

 

 向こうもまだ把握しきれていないのか、困惑と、慌ただしく動く音だけが聞こえてくる。

 

 

『ま、待って。今ヴィータ副隊長が……』

 

「待てねえ!」

 

 

 敵はすでに中にいる。そしてヴィータは未だホテルから最も遠い最前線だ。いくらあいつが強いっていっても、物理的に間に合わなければどうしようもない。

 

 先程の数秒の思考で出した答えを口にする。

 

 

「俺が行く」

 

『ユキカゼ!?』

 

「ここはひとりくらい抜けても平気だ。で、誰が行くって言ったら俺しかいないだろうが」

 

 

 ああもう、さっき反省したばかりなのに。どうして俺はこんな風にでしゃばっているのだろうか。

 ――――それでも、ここで行くのは俺だ。

 

 ここの戦況は有利。だがそれはあくまで現状を維持するならば、だ。俺一人分くらいの負担ならまだ五分に保てる。

 ティアはチームの司令塔。スバルは前線を保つアタッカーの要。エリオとキャロは単独行動には向かない。

 

 

『で、でも!』シャーリーが悲鳴のように叫び『この包囲網を誰にも気付かれずに抜けたんだよ!? 多分ただのガジェットじゃない! ひとりじゃ危険だよ!』

 

「大丈夫、無茶はしない」

 

 

 マジで。さっき痛い目にあったばっかだし。

 

 シャーリーとの回線を切ると、ルビーが笑う。

 

 

『うふふ、ユキカゼさんは優しいですね』

 

「……うっせー」

 

『なんだかんだと理由をつけてますけど、結局は他の人に行かせたくないだけのくせに』

 

 

 ――――ああそうだ。ルビーの言う通りだ。ティアは司令塔だから。スバルは戦況を維持するのに必要だから。エリオとキャロはふたりだからこそ力を発揮出来るから……そんなもの全部建前だ。

 俺はただ、女の子や自分より年下の子供に危ないことをさせるくらいなら、自分がやろうと思っただけだ。

 

 

『この期に及んでツンデレ属性とは。ハァハァ、ワタシを萌え殺しさせるつもりですか』

 

 

 無視。

 

 

「スバル!」

 

 

 隠れていた場所から一度戦線へ。孤軍奮闘していたスバルの側へ。

 

 

「一旦俺抜けるわ! あとヨロシク!」

 

「ええ!? それどういうこと!!?」

 

「ちょっとそこまで」

 

「なにそのちょっとそこのコンビニに行ってくるみたいなノリ!」

 

 

 掛け合いをこなしながらもガジェットを蹴散らしていく。意外とスバルは余裕があるのかもしれない。

 

 改めて考えても、俺なんかよりスバルの方がずっと強い。

 彼女だけではない。ティアにも、そしてエリオやキャロとくらべても俺は誰にも敵わない。みんなの方が俺なんかよりずっと上手く立ち回れる。

 

 それでも、ここで行くのは俺だ。誰かに任せるくらいなら俺が行く。

 無謀は百も承知。つまらないプライドだってのもわかってる。それでもここは譲らない。譲れない。

 

 

「任せた相棒」

 

 

 スバルの青い瞳がじっとこちらを見てくる。次の瞬間、ニッ、と心底嬉しそうに笑った。

 

 

「うん、任された!」

 

 

 俺がスバルの実力を疑ってないように、彼女の返事もまた俺への信頼がうかがえた。こんな俺のどこをそこまで信用しているのかわからないが、まあ悪い気はしない。

 

 互いに背を向けて、それぞれの方向に走り出す。振り返ることは、しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホテル内部の地図は全てルビーが把握していた。

 

 

「なんでだよ」

 

『ユキカゼさん、乙女には秘密の100や200あるものなんですよ?』

 

「乙女隠し事しかねえじゃん」というか「そもそもお前って女なのか?」

 

『身も心も乙女じゃないですか!』

 

 

 剣の姿で言われても説得力皆無である。

 

 

『そこを下れば目的地です』

 

 

 傾斜道をややゆっくりした速度で下りる。するとすぐに2人の男性警備員に鉢合った。

 

 

「なんだい君は。ここは子供が来るようなところじゃないぞ」

 

 

 どうやらこのホテルを巡回している人達らしい。襲撃は知らされているだろうが、外で完全に食い止められていると思ってるのか警戒心も薄い。

 俺が身分を明かすと一転、敬礼をして対応を改める。権力万歳。

 

 敵がこの地下に侵入していることを伝え、ついでに誰か他に魔導師はいないかと訊く。いれば加勢して欲しかったが、残念ながらいなかった。

 

 2人にはこの事を他の者達にも伝えてもらい、すぐに避難するよう指示する。はっきり言って一般人じゃあガジェット1機相手でも荷が重いだろうし。

 

 戦力アップは望めないまま駐車場を散策する。地下ということもあって辺りは薄暗い。範囲もかなり広く、こうして目的もなく歩き回るのは得策ではない。

 そうだ。そも敵は何故こんなところに来たのだろうか。

 

 

「車でも盗むのか?」

 

 

 まあ確かに、オークションの客層通り、ピカピカの高級車はたくさん停まっているが。

 

 

『おそらくオークションに出品されるロストロギアでしょうね』

 

「ここにあるのか。でもレリックじゃないんだろう?」

 

『はい』

 

 

 ルビーが索敵。示された方向に進むと、高級車が並ぶ中、1台だけある無骨なトラック。あの中にロストロギアがあるらしい。

 

 

『ユキカゼさん!』

 

 

 ルビーが叫ぶと同時に前面に障壁を展開する。直後衝撃と光が炸裂。張った障壁が破砕、余波で後ろに吹っ飛ぶ。

 

 

「敵!?」

 

 

 ルビーのおかげでダメージも少なく、踏みとどまって剣を構えるが――――、

 

 

「ぐっ!!」

 

 

 背中に衝撃。

 衝撃に逆らわず前に転がる。反転と同時に構えるが、すでに敵の姿はない。

 

 

『右です!』

 

 

 ルビーの指示に反応して適当に剣を振る。当然空振り。横っ腹に打撃らしい攻撃を受けるも、目を向けた先にはやはり誰もいない。

 

 ――――ヒュン。

 

 いや違う。いる。絶え間ない風切音。壁や床を蹴る音。

 おそらく俺が目で追いきれていないだけ。それほどに敵は速い。

 

 

『後ろです!』

 

「なくそ!」

 

 

 盾にした剣が偶然攻撃を受け止める。だがまずい。この暗闇も相俟ってまったく見えない。夜目も利き、スピードタイプのアーチャーなら追えるかもしれないが、この状況で隙のあるフォームチェンジは怖すぎる。

 

 幸いなのは、敵の攻撃力よりセイバーの防御力が僅かに勝っていることか。痛いが根性で耐えられなくはない。

 

 最悪レリックではないロストロギアは奪われても仕方ないが、今は粘れるだけ粘る。かっこつけてきた以上、もう少しくらい……

 

 

「そこに誰かいるんですか?」

 

「!!?」

 

 

 第三者の声。先程とは別の警備員。おそらく連絡が回る前に来てしまったらしい。

 

 

「逃げろ!!」

 

 

 叫んで、俺は亀のように縮こめていた構えを解除。警備員のもとへ走る。

 状況が理解出来ず呆けている警備員。その背後に影を見た。

 

 

「そ、こだああああああああ!!」

 

 

 一閃。

 

 硬いなにかを打った手応え。手が痺れただけで敵は倒せていない。だが、防いだが故に敵の足も止まった。

 

 そいつは人のように四肢を持ち、2本の足で立っていた。『ような』と表現したのは、全身を覆う黒い甲冑というより甲羅のような装いと、頭部はまるで昆虫かなにかのようだったからだ。

 

 一瞬だけ見えたそいつは黒いトランクケースを抱えており、すぐに視界から姿を消した。

 しばらく身構えていたのだが、それきり攻撃は無かった。

 

 

「ぶはああああぁぁぁぁ」

 

 

 情けない声をあげながらその場に座り込んだ。




閲覧ありがとうございますー。

>さてさて、なんとかかんとかアグスタが終わりました。隊長達の無双具合を表現する為にもうちょい書いてもよかったかも、と執筆直後なのに考えちゃうあたり駄目な子!ごめんねザフィーラ!数少ない(ガチで)出番だったのに

>ロストロギアが盗まれた経緯は捏造です。今の実力だとこんな感じが妥当かな、といった具合でした。

>ではまた次回ー
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