【未完終了】魔法少女リリカルなのは ━三途川に落ちる少年━ 作:針鼠
「どうやら、なのはさん達の方も一筋縄じゃいかないみたいね」
神妙な顔をするティア。原因は先程の通信だろう。
ティア達と合流後、ロングアーチから通信が入った。海上に出現したガジェット群。対して出撃したのはなのはさん、フェイトさん、そしてシグナムとリイン。
これだけなら、たとえガジェットの中に新型が混じっていてもなんの問題もなかっただろう。しかし、ガジェットの数が突如として増えた。それも100や200ではきかないほど。
だが現場にいるなのはさん達が言うには、どうやらそれらは本物ではないようで。
「幻術でそんな数……出来るのか?」
この中で唯一幻術魔法を扱うティアに問う。彼女は難しい顔で答えた。
「少なくともあたしには無理。しかも目視と機械、両方を騙すだなんて並みの術師じゃないわ」
敵が全て本物の反応を示していることにシャーリーは酷く困惑しているようだった。しかし実際に敵と対峙しているなのはさん達は敵を幻と断定した。――――のだが、本物を見分ける術が無い以上、全てを本物だとして対処しなくてはならない。あのメンバーに心配は無用だが、防衛戦となれば向こうにかかりきりになるだろう。
つまりこちらのロストロギア回収は、俺達でやるしかないってことだ。
「推定位置はこの辺りです」
「じゃあ、みんなで探しましょう」
キャロの索敵から、地下水道を散策する。大して時間もかからずそれは見つかった。
「ありましたよー」
キャロがみんなに聞こえるように叫ぶ。持ち上げたのはゴツい形状のケース。あの中にロストロギアが入ってるとのこと。
なんにせよさっさと本部に持ち帰って任務終了。まったく、とんだ初休暇になってしまった。
「ん?」
なにか聴こえる。アーチャー・モードはセイバーとは違い五感も鋭くなる。強化された耳がその音を拾った。
断続的に鳴っている。壁を蹴る音。それも徐々に大きく。ってことは近付いてきてる!?
「全員構えろ! なにか来る!」
まずは叫ぶ。みんなはまだ気付けていない。
音を頼りに方向にあたりをつける。それにしてもこの音どこかで聞いたことがあるような……。
「っ……キャロ!」
「え? きゃっ!?」
あたりをつけていた方向の柱を影が蹴った。影は真っ直ぐキャロを狙っていた。
俺は咄嗟にキャロを抱きかかえるようにして飛びつく。
ケースが落ちるのが見えたが今は構っていられない。
「大丈夫か? キャロ」
「は、はい」
まだ状況が理解出来ていないのか、腕の中できょとんとした顔をしているキャロは、ようやく自分が狙われたこと。そして自分がケースを落としてしまっていることに気付いたようだ。
キャロをその場に下ろして、俺は先程までキャロがいた場所に立っている奴に目を向けた。
「お前、アグスタのときの……」
あのときは一瞬しか姿を見ることは出来なかったが、どうやらあの顔は仮面などではなく本物らしい。ということはあれは人ではないということだ。人外がこちらの世界では珍しいのかどうかはわからないが、わかっているのはあれが決して味方ではないということ。兎に角剣を構えて……、
「あ、ダメ!」
「キャロ!」
振り返るより先にエリオとキャロが吹き飛ばされる。見ればエリオ達と同い年くらいの髪の長い女の子が、ロストロギアの入ったケースを持っていた。
こんな場所で偶然も無いだろうし……。敵か味方か、もうわけがわからん。兎に角ケースを取り返さないと。
『ユキカゼさん!』
「くっ!」
俺が少女に向かおうとしたら、虫野郎が襲ってきた。ルビーの声に助けられてなんとか防御出来た。
「庇ったってことは、あの子もそっち側ってことでいいんだな!?」
訊いたところで答えは返ってこない。まあ期待もしてなかったけど、な!
向こうが押し込むタイミングに合わせて剣を傾かせる。そうして体勢を崩した的に右の白剣を振り下ろす。当然それは止められてしまうが、そこまでは予想通り。
崩された体勢を保つ為に踏ん張り、かつ攻撃を受け止めた敵は動けない。
がら空きの急所目掛けて右の黒剣を薙いで、
「がはっ!?」
虫野郎は下がるどころか踏み込んできた。肩から突進してきて腹部が押される。剣の間合いの内側に入り込まれた。これではまともに剣が振れない。
アーチャーはスピードタイプ。パワー勝負ではこいつに勝てない。
二対の赤い目がギラリと光る。
反撃の拳はしかし、横やりを入れたスバルによって止まる。しかし流石の超反応でスバルの拳を躱した。
「はああ!」
それを追ったギンガが拳を振るう。追い打ちの拳を敵は両腕を交差して受ける――――が、初めて敵がグラリと揺らいだ。防御を崩すまではいかないまでも押し返す。流石。
スバルはキャロ達の援護へ。虫野郎には俺とギンガが対峙する。スバル達の方も気になるが、こいつ相手に余所見はしていられない。今は目の前に集中する。
ギンガがいる以上、俺は援護に回ったほうがいいと思う。ギンガとは連携の練習をしたことなどないし、あまり出しゃばればギンガの邪魔になりかねない。となれば、
「せー、のっ!」
両の手に持った双剣を敵に向かって投げつける。敵はその硬い装甲で防げると判断したのか動かない。動いてそれがギンガに対する隙になることを嫌ったのだ。目論見通り!
「
叫ぶと同時に剣が爆発。俺が未熟なのか威力は低いが、相手の意識を少しでも奪えれば上等。
たたらを踏んだ相手を見てギンガが特攻。俺も新たに双剣を生み出して間合いを詰める。
その間に少女を相手取っていたスバル達から確保の声があがる。よし、これで後は数で押してこの虫野郎を抑え込めば――――、
「スターレンゲホイル!」
突如視界は光に塗り潰された。
敵の攻撃!? ダメージは無いから目眩ましが目的か。でも今の声、虫人間でも先程の少女からではなかった。ということは新手の敵か。
「ティア!」
「わかってる!」
この機に乗じて逃げようとする少女にティアが銃を向ける。しかしそれを虫野郎が横から邪魔する。蹴っ飛ばされて転がるティア。
「てめえ!」
まだ完全に視力は回復していないが、ティアへの追撃を防ぐために特攻。ほとんど勘で振り回した剣は、やはり当たらない。それでも後退させることに成功した。
一方、後方にふっ飛ばされたティアはあくまで術者っぽい少女を狙って射撃。すると俺の前にいた虫人間は、目の前にいる俺を放って少女への攻撃を身を挺して受けた。明らかに庇ったのだ。つまりこれで完全に少女と虫人間は仲間だということになる。そして、
「まったくよー。ルール―もガリューも、勝手に出掛けたりしたらダメじゃねえか」
割り込んでくる第三者の声。声の主は先程の閃光を放った者だろう。そちらへと目を向けて、唖然とする。
「あん? なに見てんだよ」
ガラの悪い口調でそう突っかかってきたのは、手乗りサイズほどの、蝙蝠のような羽根の生えた赤い髪の少女だった。リインが妖精のようだとしたら、こっちは小悪魔といった印象を受ける。
リインにしても彼女にしてもそういう種族みたいなものなのだろうか。
「このちっこいのも敵ってわけか」
「バカにしてんのか!」
思わず突いて出た言葉に、小悪魔少女は激昂する。
「お前らまとめて、この烈火の剣精アギト様が相手してやるからな!」
そんな啖呵をきって、アギトと名乗った少女は一体どんな魔法を使ったのか、自らの登場を演出するように周囲に花火を散らせる。
「うわぁ……すげーばかっぽい」
あ、やべまた思ったことがポロリと。
「てんッッめええええ!!」
案の定アギトは怒り狂ったわけだが。
アギトは火の玉を出現させて俺に目掛けて撃ってくる。意図せずして引きつけることに成功。あちらではギンガが虫野郎――――ガリューとか呼ばれてた――――を相手している。この間にティアに作戦を考えてもらう。もし思いつかなくてもこのまま時間さえ稼いでいればいずれ、
『よし、よくやった』
魔法による念話の声の主は、天井をぶち抜いて現れた。赤いゴスロリ服のバリアジャケットを纏ったヴィータは、派手な登場で相手が硬直した一瞬を突いて、ガリューへと一撃を見舞う。
「なにっ!?」
「隙みっけ!」
こっちは動揺したアギトの隙を突く。が、間一髪防御壁に阻まれる。ならもう一撃、そう思って剣を振りかぶったところに新たな声。
『下がってくださいなのです!』
俺は振り上げた剣を止めて後ろへ飛んだ。入れ替わりで土煙から現れたのは我等が小さき上官。
「捕えよ、凍てつく足枷――――フリーレンフェッセルン!」
長い髪の少女、ルールーとアギトを氷の球体が包み込む。
「ぶっ飛べええええ!」
ヴィータと撃ちあっていたガリューも最後はヴィータの一撃に耐えられず吹き飛ばされる。柱を貫通し、壁に激突して沈黙した。
鎚で煙を払って肩に担ぐ。口角を吊り上げてドヤ顔。
「待たせたな、ヒヨッコ」
ぐぬぬ。俺が手こずったガリューを圧倒。副隊長の名は伊達じゃない。でもヴィータだけには絶対敬語を使いたくない。なんとなく。
閲覧ありがとうございますー。
>ようやく敵側の主力登場!アギトはリインと同じくいじりがいのあるかわいい子。
>新技も登場!でも本物みたいにブーメランみたいには投げられないユキカゼ君は直球勝負です!
>そういえば前回書き忘れましたが、運営様よりこの作品にクロスオーバータグ追加の通知がきたわけですが、これってクロスオーバーなのかなぁ、と疑問に思ってしまいました。
まあ作品としては確かに2種類を採用しているわけですが、クロスオーバーって2作品の世界観やキャラを共有させてコラボさせることだと思ってたので。自分の認識が間違っているのかもしれないのですが。
>さて次話は実は少し原作の展開から改変があります。これはまあ後々の物語の都合です!
ではではー