アラクニド&パンツァー ~蜘蛛から戦車乗りになる話~   作:φζΩ

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実はこの話はみほが転校してくる前です。もちろん登場させるつもりですがアラクニドのキャラが大洗の生徒達と馴染む必要があると思いインターバルを用意しました。


第2話 知るか、そんなこと

「アリス様、お願いがありますの」

 

 藤井アリス達が学園艦に入港し、荷解きを終え、アリスの部屋で仲良く話に花を咲かせている最中に沖めぐみが話の流れを変えた。

 

「はい、なんですか?」

 

 アリスもめぐみがこれから真面目な話をすると理解した。今まで共に戦ってきた戦友だからか雰囲気ですぐに察した。

 

「実は…学校では私に話しかけてこないでほしいですの」

 

「……」

「へ?」

 

 アリスの目が涙目へと変わった。

 

「いえ!別にアリス様のことが嫌いになったとかそういうわけではありませんわ!断じて!」

 

「じゃ、じゃあどうして…どうしてそんなこと言うんですか…!」

 

 アリスの目に涙が少しずつ溢れていった。

 

「ああああ!泣かないでくださいアリス様ぁ!今言いますから!理由は私の趣味なんですわ!」

 

「……趣味?」

 

「…前にもアリス様には言いましたが私には私を嫌ってる人間を屈服させたい性癖がありますの…そしてそれはアリス様と一緒では間違いなくできませんわ…」

 

「…つまり…沖さんは私といるよりも…他の子をいじめる方が…好きなんですね…」

 

 アリスの涙が大粒に変わり声も吃り始めた。

 

「うああああ!!違う!違いますの!いやこの状況で違うと言っても信じてくれないかもしれないですが!」

「アリス様のためを思って言ってるんですわ!」

 

「…私の…ため…?」

 

「…本当はアリス様を襲えれば一番良いのですがそれはできないですよね…?」

(今のアリス様の力じゃ不意を突いたところで私は勝てませんし…)

 

「はい、ダメです」

 

 さっきまでの動揺が嘘かのようにハッキリと答えた。

 

「うぅー…。ズバッと言われると傷つきますわー…」

 

「じゃあ…沖さんは捌け口として他の女の子を狙うというわけですか?」

 

「捌け口というか憂さ晴らしですわー。溜まってる性欲を吐き出す感じですの。安心してください、迷惑はかけませんから」

 

「…私と離れる必要はあるんですか?」

 

「アリス様が一緒にいるとアリス様まで嫌われてしまいますわ。それはアリス様にとっても、そして私にとっても良くないことですの!」

 

「私は…沖さんと一緒でも…!」

 

「無理しなくていいですわ。あとアリス様に下手なことして『兜蟲』に痛い目遭いたくないですのー」

 

「……っ!」

 

 ここまで押しきろうとするめぐみを見てアリスは説得はもう無駄と理解した。

 

「あ、もちろん寮では仲良く睦まじくさせていただきますのでご心配なく」

 

「…沖さんがそこまで言うなら…分かりました」

「ただし、乱暴なことはダメですよ。暴力とか振るってはいけません」

 

「それぐらい分かってますの。『兜蟲』に痛いほど忠告されたので」

 

 

 二人は準備期間の間『兜蟲』からいくつか『約束』されていた。

 一つ目は暴力、特に殺しの技術は絶対に使わないこと。

 二つ目は留年しないこと。

 三つ目は食費等は自分達で払うこと。

 四つ目は卒業するまでに友達を最低でも一人作ること。

 以上が『兜蟲』が出した『約束』である。

 実はこの忠告は二人を少しでも全うな人間へ更正させようと考えた『兜蟲』の苦肉の策であった。『兜蟲』自身は『組織』が無くなりはしたものの『蜘蛛』から貰った多額の金があるため、自信の預金と合わせれば働かなくてもよいほどの資産があった。これも二人の長い経歴と卓越した技術があったからだろう。

 

 だが、アリスとめぐみは別だった。二人はかなり若く、所持金も『兜蟲』に比べてかなり少ない。つまり働いて稼ぐ必要がある。その際に殺人鬼のままでは間違いなくどこの会社にも採用されない。そうなればまた裏社会へ戻ることになってしまう。この事を危惧した『兜蟲』は学校、特に生徒達の自主独立心を養う学園艦に目をつけた。

 

 

「一つ目は破る要素が無いですし、二つ目も私は『組織』での教育の一環として勉強は問題ない。三つ目はバイトすりゃあいいですわ。四つ目が少々難点ですが…まあ心配ありませんわー」

 

(…このままだと沖さんは四つ目は無理なんじゃ…?いや、沖さんの意見も尊重しないと!)

「…そうですね。保護者も以前とは違い、『兜蟲』さん達がいるのでバイトでお金を稼げるようになりました。あ、もしよかったらバイト先は一緒にしませんか!」

 

「う~ん…。それぐらいなら問題無さそうですわ。こちらこそお願いしますわー!」

「それではもうすぐ夜なのでパーっとご飯でも食べに行きましょう!近くの店を知っておく必要もありますし!」

 

「はい!ご飯食べたら散歩でもしてここを楽しみましょう!」

 

 二人は財布とケータイ、ルームキーを持って部屋を出て、駆け足ぎみに階段を下りていった。

 その後帰って来た二人は管理人に「騒ぎすぎ」と軽く注意された。

 

 

 数日後、登校日がやって来た。二人は新しい制服を身に纏い、晴れ晴れとした天気でアリスは楽しんでいたがめぐみは鬱蒼とした表情をして学校へと進んでいた。

 

「うぅー…。まさかクラスまで別々とは…。ここまで来たら次はなんですの…?バイトのシフトがバラバラなんですの…?」

 

「あの…沖さんの目的としては私がいない方が都合が良いのでは?」

 

「そうですが!それでも同じ空間にいないというのは寂しいんですのー…!」

 

「寂しいのは私も同じです。ですが私は沖さんと学校では話さないことも約束したんです。なので沖さんも頑張って下さい」

 

「冷たいですわーアリス様…だけどそれも良いですわー!」

 

「沖さん…」

 

 めぐみに対して更なる不安が湧いてくるアリスであった。

 

 

 

「えー皆さんお静かに。もしかしたら知っている人もいるかもしれませんが、これから転校生を紹介します」

 

 1年D組のホームルームの時間、担任の発言に生徒達は皆ざわつき、全員近くの友達と驚きと期待を共有していた。

 

「どんな子かなー」

「面白い子だったらいいね」

「なんか他のクラスにも転校生来るらしいよ!」

「えー!あとで見に行ってみよーよ!」

 

 クラスメイトの反応をドアの前でアリスは聴いていた。

 

(はあ…ちょっと緊張してきたな…。それに沖さんの事も知ってるなんてすごい情報網…)

 

「それでは入ってきてくださーい」

 

「あ、はい」

 

 担任の呼び掛けに気づき、軽く返事をする。ドアを静かに開け教壇を進んでいく。クラスメイトの方を見ると当然の事だが皆の視線がアリスへ集まる。その中には意外そうな顔や予想通りと言ったような顔が沢山あった。

 

「…想像してたより可愛いわ」

「確かにっ!それにめっちゃおとなしそうじゃん」

 

「ちょっとそこの二人、前向きなさい」

 

 担任の注意に生徒達は「はーい」とか「ごめんなさーい」など対して気にかけてない様子だった。それに対して担任もやれやれといった表情でそれ以上の注意はしなかった。

 

(…すごいマイペース。…学園艦の子達は皆ああなのかな?…)

 

 生徒と先生の軽いやり取りを見て、有栖は注意された少女達に興味が湧いた。

 

「あ、それじゃあ藤井さん、自己紹介お願いします」

 

「はい、わかりました。」

 

 後ろに振り向いて手頃な大きさのチョークを掴み、自身の名である『藤井有栖』をできるだけ丁寧に書き、改めて正面を向いた。

 

「皆さん初めまして。藤井有栖と言います。陸地から来たので学園艦は分からないことばかりで迷惑をおかけするかもしれませんが、これからの二年間よろしくお願いします」

 

 軽くお辞儀をしてアリスは自己紹介を終えた。落ち着いて語ったためかクラスメイト達も口を挟むことなく真面目に聞いていた。

 そして、

 

「こちらこそよろしくねー藤井さん」

 

 一人の生徒の言葉を皮切りにクラス中から歓迎ムードが沸いた。

 

「アリスって名前良いねー!やっぱり童話の!?」

「騒がしいクラスだけど早く溶け込むことを期待してるわ藤井さん♪」

 

 先程注意された生徒達も好意的な反応をしている。よく見ると彼女達の後ろの席が一つ空いていた。まさかとアリスは思った。

 

「こほん…。藤井さんはあそこの空いてる席に座ってください」

 

 やはりだ。

 

「気を付けてくださいね、彼女達かなり手間のかかる子ばっかりですから!」

 

「やだなー誰が手間のかからない品行方正な子ばっかりだって?」

「誉めてもなにも出ませんわよ」

 

「もう、全く!あなた達が他の授業でも自由なせいで私に皺寄せが来るんですよ!」

 

「怒らないで先生!まさにシワが増えちゃうよ!」

 

 その発言が担任の怒りを火に油を注ぐように増してしまった。

 

(やっぱりすごい…学園艦…!)

 

 アリスは自由すぎる生徒達に圧倒され、これからの学生生活の先の読めなさに驚嘆していた。

 

 

 

 一方、1年C組の教室では

 

「私は沖めぐみ。私に害する奴、迷惑をかける奴、邪魔する奴は誰だろーとぶちのめしますわー。以上」

 

(な、なんて危ない人がうちのクラスにやって来たんでしょうか…!!)

 

 物騒な自己紹介をしためぐみを見て秋山優花里はこれからの学校生活が大変なものになる予感がしていた。

 

 

 

「ねえねえ華!他のクラスに転校生が来たらしいよ!それも二人!」

 

「まあ…!どんな方々なんでしょうか?あとで見に行ってみましょう!」

 

「カッコいい人だったらいいなぁー!もしかしたら運命の出会いかも!」

 

「沙織さん、ここは女子校ですよ」

 

「分かってるよ!冗談に決まってるじゃない、もー」

 

 1年性の各教室ではアリス達の話題で持ちきりだった。転校生、それも陸地との事もあってか興味を示す者は多いのだ。ここ、1年A組でもその話ばかり話されていた。授業の準備をしている彼女達、武部沙織と五十鈴華も同様のようだ。

 

「一時間目は移動授業だから昼休みにでも行こっか…ってあれは!」

 

 沙織が不意に窓を見るとよく知る人が外を歩いていた。

 

「どうしたんですか沙織さん…?あ、あの人は冷泉さんですね…」

 

「もー麻子ったら…また遅刻して…」

 

 登校時間を遥かにオーバーして校門前へふらついている彼女の名は冷泉麻子。麻子は成績は学年トップだが低血圧なため遅刻常連者として風紀委員に目をつけられている大洗学園でも一風変わった少女だ。

 

 

 

「冷泉さん!あなた今日も遅刻じゃない!しっかりしなさいよ!」

 

 校門前で麻子をがなりたてるのは最近風紀委員長となった園みどり子。毎日同じやり取りをしているため最早説教が挨拶代わりとなっていた。

 

「そど子ー…。人間はなぜ朝に起きねばならないのだろうな…」

 

「知らないわよ!それに私の名前は園みどり子!変な名前で呼ばないで!」

「とにかく!明日からはちゃんと早く学校に来なさい!あなたのせいで私はここであなた一人を待つ羽目になってるのよ!」

 

「…ならそど子。お前が私を起こしに来ればいい。それでWinWinの関係だ」

 

「何がWinWinよ!?いいから早く教室へ行きなさーい!!」

 

「お前から突っ掛かってきたんだろうが、そど子」

 

「だからそど子って呼ばないで!というか私は先輩よ!敬語で話しなさい!」

 

「知るか、そんなこと」

 

 みどり子を余計に怒らせたことを気にせず麻子は自分のクラスである1年F組へと進んでいった。

 

「全く…!冷泉さんといいバレー部の『あの子』といい…!どうして今年の一年生は厄介な子ばかりなのよー!」

 

 みどり子は最近の悩みの種である一年生の愚痴を溢したが、どことなくまだまだ解決しないだろうと感じていた。

 

 

 

「かーしま。例の二人はどう?」

 

 放課後、生徒会室では角谷杏が珍しく真面目な顔で書記の河嶋桃に尋ねた。

 

「それがですね…。藤井アリスの方は無事クラスメイトと関われたようですが…」

「沖めぐみの方は誰も近寄っていませんでした。クラスの者に聞いたところ自己紹介で「ぶちのめす」と言ったようです」

 

「へぇー…不良少女?一匹狼気取りかな…?」

 

「さあ…そこまでは分かりませんが。…とにかく藤井の方はおそらく大丈夫でしょうが沖には注意すべきかと思います」

 

「だね。あ、小山そこの干し芋取って」

 

「わかりました、会長」

 

 今食べている干し芋が無くなったため、副会長の小山柚子に新しい干し芋を取らせる。

 

「会長、もし沖さんが喧嘩でも起こしたらどうしますか…?そうなればやはり我々が介入するんですか?」

 

「んー…そうなったら…」

「風紀委員に任せよっか」

 

 柚子の質問を聞いて杏はあっさりと他人に任せることを貰った干し芋を食べながら決めた。

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