僕とワシと俺達と
僕は吉井明久、三百六十五度どこからどう見ても美少年なはずなのに……みんなは僕のことバカバカ言って……なんでかな?
あ、そっか! 見た目と中身は違うもんね!
「さっきからなにぶつぶつ言ってんだ?」
そこに雄二が僕に聞いてくる。
「うん、ちょっと自分自身を見直していたんだ」
「そんな暇あるならさっさとこい、秀吉の体調も良くなったことだし、いろいろ聞きたいことがある」
あれから秀吉はすっかり体調を良くなって、僕と雄二とムッツリーニと秀吉と葉月ちゃんとこれで五人が集まった。
今から雄二は僕も含めて情報交換をしていくんだと思う。
僕は雄二に連れて行かれるがままさっさと歩いた。
「待たせたな」
雄二が戸を開け、皆に僕を連れてきたことを告げる。
「雄二さん遅いよー」
この子は雄二と仲良くしている古明地こいしというらしい。
詳しくは今から聞けるだろう。
「いや、そんなに待たせてないと思うんだが……」
かなり明るく活発な女の子だ。
真ん中にあるあの目が怖いけど……。
「………(コク)」
ムッツリーニもすでに座って待っていた。
「すまぬ、ワシのせいで色々と……」
「いいんだよ秀吉、今から秀吉になにがあったのか話してくれれば」
一体秀吉に何があったのかな……あ、そうそう、秀吉が持っていたあの危ない物はムッツリーニが処分してくれたみたい。
あと、秀吉がアレの使い方を知ってなくて助かったよ。
首につけて「こ、これはネックレスじゃ!」って、そんなネックレス誰も買わないと思う。
「あれ? 葉月ちゃんは?」
皆が円になって座っているのに対して、なぜか葉月ちゃんだけがこの場にいない。
「島田の妹ならぐっすり寝てる。起こすか?」
「いや、寝てるならいいよ」
「そうだな。さて、それじゃ始めるぞ!」
これからここ、幻想郷について僕らが経験したことを全部洗いざらいに吐いていくというものだ。
僕の経験も雄二たちに役立てばいいんだけど……。
「それじゃまず俺から話そう」
お、まずは雄二からか、一体どんな目に合ってきたのか楽しみだ。
「俺が目を覚ました時、博麗神社という神社の地下にて目を覚ました。そこでこいつ、古明地こいしに助けられたんだ」
「どーもー!」
雄二にとってこいしちゃんは命の恩人なんだね。
「こいしに連れていかれた場所が地霊殿という建物だった。そこではこいつの姉、古明地 さとりとそのペットの火焔猫 燐、霊鳥路 空というやつらに会った」
たくさんの~
人たちと~
出会った~。
「しかし、そいつらはここにいるこいしも含め、全員妖怪だった」
「え!?妖怪ってあの!?」
妖怪って簡単に言うと人外、つまり化け物だよね?
「そうなんだが、見た目は普通の人間で、翼が生えてたりこいしのようにさとりは第三の目が開いていたんだ」
第三の目?
こいしちゃんについてるアレのことかな?
開いていたということはこいしちゃんのは閉じてるから……あれ?
「つまりだ、その第三の目が開いていると相手の心が読めるらしい」
「「「!!?」」」
そんなバカな!相手の考えてることが全部お見通しだなんて……なんて恐ろしい妖怪なんだ!
僕たちの青春も恥ずかしい思い出も全て読まれるのか……。
「………危険人物」
ムッツリーニなんてその子と会ってしまったら……考えただけでも恐ろしい。
「しかし雄二よ、そちはこうして無事に今生きておるわけなのじゃから敵ではないのじゃろ?」
「確かに最初は俺を警戒していたがさとりの心の読む力で信用してくれた」
口が達者なだけでは返り討ちに合うということか。
「あれ、でもおかしいな」
「なにがだ?」
雄二が不思議そうに僕に尋ねる。
僕はここで一つの疑問が浮かび上がった。
「雄二のような醜く汚れきった心の持ち主が何故信用され御免なさい言い過ぎました!」
雄二の目、ここが幻想郷でなければ僕を人の形を維持出来ない状態にするつもりだったな。
全く、なんて恐ろしいんだコイツは。
「とまぁいろいろと世話になり、途中で水橋 パルスィという妖怪に襲われながらもこいしが頑張ってくれて、今の俺はこいつで成り立っているようなものだ」
「そんなに褒められると恥ずかしいよー///」
こいしちゃんも素直でなんだか可愛いな。
この子も妖怪だっていうんだから信じられないよね。
「博麗神社、もとい地上に辿り着いた俺は天狗に会った。やけにボロボロだったが、取材取材とうるさい新聞記者だった」
「その天狗って射命丸 文って言わなかった?」
「あぁ、確かにそんな名前だったが……なるほど、明久はあいつのネタにされていたな」
思い出したくない……嫌な事件だったね。
「………俺も見た」
「ムッツリーニも?」
「ワシも、多分直接ではないのじゃが会ったぞ」
なんだ、皆会ってるのか。
よかった。文はちゃんと仕事しているみたいだね。
「あいつは俺たちの何がしたいんだ?」
「僕が頼んでおいたんだよ。皆を見つけたら寺子屋に僕がいることを伝えてって」
「なるほど、だからあいつは明久や俺に関してやたら詳しかったわけか」
「俺からは以上だ。んじゃ次は明久」
「分かったよ」
といっても何から話そうか……こういう会議みたいなのって苦手だよ……。
事柄を順次に話すわけなんだから……まずは僕が目覚めた場所から話せばいいんだよね。
「次は僕の番だね、僕が気がついた場所はその博麗神社なんだ。そこで博麗神社の巫女を務めている博麗 霊夢に拾ってもらったんだ」
「なんだ、お前結構近くにいたんだな」
そうだね、あの時そんな穴があいてたなんて僕は気付かなかったけどね。
「それで霊夢の周りにはいろんな妖怪が来るらしくて伊吹 萃香という鬼に会ったんだ」
「…………ぅ」
ん?雄二の様子が少し青ざめた顔して危ない予感がするけど気にせず話をすすめよう。
「その鬼とは少し話したけど、この幻想郷には僕たち外の世界の人間から忘れ去られた物や妖怪が集まるということを知ったんだ」
「俺たち人間が忘れ去ったもの……?」
「うん、僕はよくわからないけどね。そこから色々あったんだけど霊夢に人里に連れて行ってもらってここ、寺子屋に無事に着けたというわけ」
「島田の妹はどうしたんだ?」
「葉月ちゃんとは人里で偶然会ったんだよ」
「明久、何を隠してやがる」
「え? 僕はなにも?」
嘘じゃないからね、偶然会ったんだ、うん。
「お前のことは人里の人たちから色々聞いたぞ? なんでも妖怪が偶然迷い込んで一人の女の子が襲われそうなところを明久、お前が助けたそうじゃないか」
なんだ、バレちゃったらしょうがない。
あんまりこういうのは言いたくなかったんだけど……。
「明久、やるのぉ」
「………感心」
あはは……やっぱりこういうの慣れてないから苦手だよ。
まぁバレちゃったんだし、話しちゃおうか。
「ま、まぁそうなんだけど僕はただ庇っただけで妖怪を倒したのは霧雨 魔理沙という魔法使いなんだ」
「魔法使い……? はて、どこかでそんな格好をした人と会ったような……」
秀吉が必死に思い出そうとしている。
「魔法使いか、確かに俺たちの世界じゃ笑い話だな」
雄二も自分で勝手に何かを納得している。
「そんなとこかな」
「他にいなかったのか? ここに連れてこられたやつらとか」
「うん、いなかったよ。いたとしても文が見つけ出してくれるよ」
「そうか……ならいい」
これで僕の番は終わったかな。
話を精一杯簡潔にしたんだけど、なんだかプレゼンみたいでやっぱり緊張しちゃった。
「………次は俺」
お、次はムッツリーニか。
ムッツリーニは身体能力も高いし、危険な目に合うなんてないと思うんだけど……。
「あぁ、頼む」
「………白玉楼という場所にて幽霊に世話になった。名前は魂魄 妖夢と西行寺 幽々子」
幽霊に!!?
「そんな非科学的なもんまで……ま、妖怪がいるんだから当然か」
「………人間の姿をしていて、妖夢さんは半分人、半分幽霊」
つまり人間と幽霊のハーフってこと?
え?どうやって……。
「ほぉ……」
雄二も気になるようだ。
そんなハーフが実在するなんてね……僕には考え付かなかったよ。
「………あと永遠亭という医療で医者の八意 永琳と鈴仙・優曇華院・因幡に世話になった」
医者か、なにかあった時に知り合いになっておいたほうがいいよね。
でもなんだか怖いな……変なクスリとか飲まされなきゃいいけど。
あれ?永遠亭……僕はその名前を聞いていたような……どこだっけ?
「………一人は生のウサミミをつけていた」
「ムッツリーニ、あとでその話kwsk」
「ちょっと黙れ」
「嫌だ!!」
是非とも一目見ておきたい!
「………幽々子は危険人物」
「え、そうなの?」
ムッツリーニはその人のところでお世話になったんだよね。
あ、実は幽霊だけに怖い人なのかな?
「………特大サイズのスイカを二つ」
「今からでも遅くはない! 早速見に行こう!!」
「黙れバカ!」
ボコッ!!
「ギャフン!!」
くぅ……仕方がない、今度こっそりムッツリーニに教えてもらって一人で行ってみよう。
「………幽々子さんから坂本へ伝言もある」
「俺にか?」
雄二に伝言?一体なんだろ……。
「………?」
「ん、どうしたんだ、ムッツリーニ」
「………ブシャ」
「おい、なぜこのタイミングで鼻血を出すんだ」
「ムッツリーニ! しっかりするんだ!」
くそ! ムッツリーニめ、一人だけなんてうらやましい想像してるんだ!
僕なんて布団で締められたりしたのに……!
「………すまない、忘れた」
「そうか、ならいい」
う~ん、ムッツリーニは災難とかはなかったみたいだね。
そこで、ムッツリーニに会った時から気になっていたことを口に出す。
「そういえばカメラはどうしたの?」
あのムッツリーニがカメラを無くすなんて、命を溝に捨てるようなもんだ。
ただでさえ鉄人に没収されたと言うのに、ムッツリーニにダメージは相当なもんだろう。
「………行方不明」
「おお! そうじゃった、カメラならにとり殿が今修理ちゅ――」
「すぐに取りに行く!!」
「待つのじゃ! 今は修理中、時期に届くからそれまで待つのじゃ」
「………ありがとう」
「よかったね、これでまたいろんな写真が撮れるよね」
主にムッツリーニの場合は限られるけど。
「………(コクリ)」
「さて、そろそろワシの番と行こうかの」
いよいよ秀吉か……やっと真実に辿り着ける!!
「ワシが気がついた時は深い山の奥にいたのじゃ。ワシは必死になってはぐれた姉上を探し続けた」
姉上というと木下姉妹の姉、つまり木下優子さんの方だね。
姉妹揃って美少女っていろいろと日頃の生活に影響与えそうだよね。
「その山は通称『妖怪の山』と呼ばれておる。途中ワシを助けてくれた犬走 椛という天狗と河城 にとりという河童に出会ったのじゃ」
「河童!?河童って、あのキュウリが大好きな?」
「そうじゃ。その河童じゃ」
山には僕らの知ってる妖怪がいるのか、天狗も聞いたことあるし。
山か……今の季節なら紅葉が枯れ始める頃、秀吉が遭難しなくて良かった。
「ワシはにとり殿に光学迷彩という物をもらい、姉上はこの山にはおらぬ故、仕方なく下山することを決めたのじゃ」
「光学迷彩? なんだそれ」
「あ、雄二、もしかしてあの服のことじゃない?」
多分だけど例のゴスロリ疑惑の服のことかな。
「あぁあれか、迷彩どころか派手なんじゃないか?」
「あれはにとり殿の作り始めたばかりで試作段階の物を放置していたようじゃった」
なるほど、未熟さ故の過ちというやつか、それなら納得できるけど……。
「試しに使ってみてくれるか?」
「おやすいご用じゃ」
そういうと僕らがひとまず放っておいたのを秀吉が着る。
洗濯しちゃったから壊れてなければいいんだけどね。
「………!!」
ムッツリーニがその姿に驚いている。
当然だね、あれ?僕の鼻から赤い液体が。
うん、一言で言うと可愛い。
「今から消えてみせようぞ!!その姿、とくと見よ!!」
秀吉がやる気満々で光学迷彩を使ってくれる。
いや、今から消えるんだから見れないよというツッコミは可愛いからスルーしよう。
「……………」
隣で雄二が冷ややかな目で見てるけど気にしない。
ヒュンッ!
「「「っ!!?」」」
バカな!!秀吉の姿が完璧に消えた……だと?
ヒュン……
「とまぁこんなもんじゃな」
すごい……あっという間に消えて、パッと出てきた……今の僕には理解できない。
「そいつはすげぇや! 秀吉、よくやった!!」
雄二が光学迷彩を見てなにやら感動している。
もしかして早速作戦でも思いついたのかな。
「ワシはこれを使い、ここまで辿り着いたのじゃが、その途中でも鍵山 雛というなんでも厄神とやらに出会ったのじゃ」
厄神……え?神様!?
「その鍵山さんに厄を吸い取ってもらい、人里に下山し、寺子屋まで来たのじゃが体力がの……」
「厄を………吸い取る……?」
雄二がボソっと呟く。
「ワシからは以上じゃ」
これで葉月ちゃんの話を除き全員の体験談を聞くことができた。
「皆ありがと。少しだがこの幻想郷にて知識を得ることができた」
「それで……姉上のことなのじゃがやはり、知らぬのか」
「あぁ、すまない……」
「………(コクリ)」
「そうか……」
秀吉が落ち込んでいる。
あんな秀吉は初めてみた。
ここは慰めて少しでも先のことを考えないとだよね!
「大丈夫だよ秀吉! 文がきっと守ってくれるから!」
「う、うむ……」
秀吉の表情は曇ったままだった。
僕がいながら情けないと自分の中で悔やむ。
僕のお嫁さんがこんなにも悲しんでいるというのに……!
「次に聞きたいことがあるんだが、ここ(幻想郷)に来る時、一人で来たか、もしくは二人以上で来たのかを知りたい」
雄二が次の質問を出す。
今のうちに全部聞けるだけ聞いておこう。
「僕は一人だよ」
「ワシは姉上とじゃな」
「ムッツリーニは?」
あれ、今思ったんだけど木下さんって秀吉とはあまり関わりたくないとか言ってた気がするけどなんで一緒に……?
雄二はそのことに疑問を持ってないのかな?
「………俺と島田と姫路」
………そんなことは今はよくなった。
「そうか、やはりな」
姫路さんたちも来てる……あの八雲 紫って人の言うとおりだ。
「………不甲斐ない」
ムッツリーニは姫路さんたちを守れなかった自分を責めているのだろうか。
しかしムッツリーニ程の人が負けるなんて相手が普通の人間でない証拠。
ムッツリーニは悪くないよ。
「俺たちを連れてきたあいつは妖怪の可能性が高いな」
「そうだね……」
こうして、僕の恥ずかしいエピソードを除いて、ある程度僕たちは話し合い、今は各自休憩をしている。
一旦休んで、今後の対策を練るそうだ。今は雄二も横に寝転がってゆっくりとくつろいでいる。
コンコン
「はい、どうぞ」
一段落が終わって間もない頃にふすまを軽く叩く音がした。
「お茶を淹れてきたんだが……」
そこにはお茶や和菓子が置かれたお盆を持って立っている慧音先生がいた。
「ありがとうございます」
「私にも何か手伝えることがあれば何でもいってくれ、私は先生だからな」
先生って……いいもんだね。
「いや、その必要はない」
雄二はそう言いながらさっきまでの姿勢を直し、慧音先生のほうへと向ける。
「これは俺たちの問題だ、極力俺たちに任せてもらえないか? これ以上迷惑をかけるのもいけ好かないんでね」
「そうか……頼もしい限りだな」
慧音先生も頼もしいですよ。
なんだかすごく安心感があるというか……なんだろう。
「それじゃ私は少し留守にする。留守番を任せたいんだが」
なるほど、それでついでにお茶やお菓子をだしに使ってってことかな?
「それくらいお安いご用だ」
雄二が賛成するのも別に悪くはない、反対する理由もないからね、秀吉たちも雄二の意見に賛成みたいだし。
「それじゃ、誰か来たら代わりに出ておいてくれ」
「「「はーい!」」」
かりかりかりかり………
「…………行ったようだな」
「………上白沢 慧音、外出確認」
ムッツリーニがいつの間にか部屋から出て行き慧音先生を監視していたようだ。
僕は慧音先生からいただいたお菓子を口にする。
うん、美味である。
「よし、頃合いを量り次第俺たちも行くぞ!」
「え? 雄二何をするの?」
「決まってんだろ! 俺たちも探すんだよ! 人任せなんて暇すぎる」
なるほど、たしかにここでじっと待っておくのは僕も賛成じゃなかったからね。
文に任せっきりというのもなんだか許せないしね。僕も動かないと。
「………俺も行く」
「ワシもついていくぞ!」
「おう、皆には無理をさせることになるかも知れないが、よろしく頼む」
「「りょうかい!」」
「明久、お前ももしもの時はよろしく頼む」
「オーケー、任せといてよ」
僕ができることならなんでも言ってよ!
「主に明久には身代わりとして頑張ってもらう」
前言撤回。
「僕の命はそんなに安くないんだからね!!」
こうして僕たちで皆を少しでも探すことになった。
――――★――――★――――★
時は少し流れ、僕たちは寺子屋の前にいた。
秀吉にはゴスロリ服を着てもらおうと思ったが、それだとムッツリーニの血が足りなくなるので今回は寺子屋に置いてくることにした。
僕らが来てもいいんだけど、やっぱ命よりプライドを選ぶよね。
「よし、ここらは大体見回ったし、なるべく遠くに行こう」
「え? 遠くってどこに?」
「そうだな……」
雄二が辺りを見渡して考えている。
「あの森の中なんてどうだ?」
そこは昼なのにうす暗く、不気味な森を指していた。
森の前には建物が見える。
あれはお店かな? 閉まっているみたいだけど……。
「確かに誰か迷い込んでいそうじゃが……大丈夫かの」
「………心配」
「僕もちょっと……まだ未練が……」
「誰もしなさねーよ、森の中でも迷わない方法がある。そいつを使えば餓死は防げる」
「なるほど、だけど妖怪に襲われたら?」
「大丈夫、そんときはお前を餌にする」
この雄二、あてにならない。
「とにかく、行ってみるしかない!!」
「あ、ちょっと待ってよー!」
雄二が先頭をしきりその後ろに僕がついていく。
僕の後ろにムッツリーニ、その後ろに秀吉と縦一列で森の中へと入っていった。
「折角出会えたんだ、またはぐれないようにしないと……その為には、前の人の肩を持つことだ、こうすれば後ろの人間に何が起きたか分かるだろ?」
って雄二が説明してくれたけど大丈夫かな……。
今の雄二は元神童のオーラが全く見えないよ。
ちょっと強引かもだけど僕たちはうす暗い森の中を進むことにした。
「………暗い」
「おーい! 誰かおらぬかー?」
ダメだ、目で見ようとしても木陰とかで人の姿なんてどこにもない!
「もう少し奥に行ってみるか……」
雄二のこの余裕はどこから……。
「ねえ雄二、ほんとにこんな森に誰かいるのかな?」
「さぁな、だが何か手掛かりがほしい……人が滅多にいかなそうな場所にそういうもんはあるだろ?」
確かに、ゲームの中でも隠し部屋みたいなところってお宝やレアな武器が手に入ることがあるけど……。
「心配すんな、いざとなれば俺がぶっ飛ばしてやる」
さすが雄二、喧嘩にはめっぽう強いんだよね。
相手が刃物とか持ってない限り雄二の勝ち星は決まったようなもんだ。
「………いない」
あれから少しだけ時間が経ち、道を進めど全く変化がない。
僕たちは手が入れば足も入るように歩いていった。
「ねぇ……僕たち迷ってないかな?」
「心配するな、俺たちは餓死はしない」
「さっきもそう言ってたけどどうやって帰るのさ」
「俺たちはまっすぐ歩いている。だから、帰りはまっすぐ歩けばいいんだ」
なるほど。
「………おかしい」
「へ? 雄二のこと?」
「俺は正常だバカ」
「バカって言われたくないよ! いっつも雄二はそうやって――」
「………!!!」
突然後ろのムッツリーニの様子が豹変した。
「え、どうしたの? ムッツリ――」
気がついた時にはムッツリーニと秀吉の姿は無かった。
「大変だよ雄二!!ムッツリーニたちが!!」
「あ? ムッツリーニたちがどうしたんだ?」
「いつの間にかいなくなってる!!」
「………………は?」
こっちが言いたいよ!!
なんで?ムッツリーニは僕の肩を掴んでいたはずなのに。
「明久、お前何か感じなかったのか?」
「分からない、一瞬の出来事すぎて……なにが起きたのか」
いったいなにがどうなって――
ガサガサ
い、今向こうの草むらが揺れたような……。
「ッチ!!これは俺の失態だ……!!作戦を変更する! 明久は俺の横にいろ!!」
「わ、分かった……」
まさか次に消えるのは僕なんじゃないかな……そんな気がして仕方がない。
というより、ムッツリーニたちはどこに……。
「急いで戻ってあいつ等を捜すぞ!」
「おう!」
こんな時のコイツは頼もしい。
試召戦争の時も幾多のピンチを乗り越えられたのも雄二のおかげでもある。
ガサガサ!
「っ! 近くに何かいやがる……絶対に離れるなよ!?」
「意地でもくっついてやるさ!!」
何かが来る!!
ガサガサガサガサガサガサ!!
『よぉぉぉしぃぃぃいいいいーーーッ!!!』
「イヤァァアアアアアアアーーーッッ!!!」
なに今の!!僕を呼んでる!?怖い!!!
「よっしゃ!!明久! 後はお前に任せたぁ!!」
「逃がすかぁ!!!」
あいつ、僕が目的だと分かると一目散に僕を置いて逃げようとした。
だが意地でも離れない!!さっきそう言ったばかりなのにね。
「離れろ明久!!大人しくあの怪物の餌になれ!!」
「絶対やだ!!」
捕まるときはお前も一緒だ!!
『待たんかぁぁッ!!!!』
「まだついてきてる!!」
後ろを見ればすぐにでも捕まりそうな勢いで追いかけてくる謎の物体。
薄暗く、その姿がうまく確認できない!
「明久には犠牲になってもらう!!」
「死ぬならお前もこい!!」
「死んであの世で一生石を積んでろ!!」
「断るっ!!」
どこまで鬼畜なんだ!!
「お前が死ねば俺が助かるんだよ!!」
「ならば!!僕が生き残る!!雄二が生け贄になれ!」
「お前のような単細胞が生きたところで意味ねーんだよ!!」
「あるわボケ!!」
存在否定までされるとは……この戦い、絶対に生き残ってやる!
『なにをぶつぶついってるんだぁーッ!!』
ヤバい!あの怪物め、もうこんなところまで追いついていたのか。
僕の逃げ足でも差が開けない!
「この足手まといが!!さっさと走れ!!」
「これが全力だ!」
とはいえどうする?
このまま逃げ続けてもきりがない。
「明久! 奴との距離はどれくらいだ?」
雄二に言われ僕はあいつとの距離を測る。
「ヤツは今――あれ!?」
「ッ? どうした?」
「奴がいなくなってる…………」
「なんだと?」
雄二と僕は走るの止め後ろを振り返る。
「ほんとにいなくなってるな……」
「諦めたのかな?」
「だといいな。とりあえず一安心だ」
ひとまず僕らは休息を得ることにした。
さっきの全力ダッシュで少し疲れが出てしまっている。
「さっきの奴が秀吉たちをさらっていったのかな?」
「恐らく、その可能性が高いな」
「じゃああいつをぶっ倒さないと!」
急がなきゃ秀吉たちが!
「落ち着け、何か手を打たないとまた逃亡生活が始まるぞ」
っく、なにかあいつを倒す方法を考えないと!
「とはいったもののどうしたら……多分奴は妖怪、妖怪の弱点をつけばいいんだがそんなもん持ってない……明久、お前何か持ってないか?」
「残念ながら何一つ持ってないよ……」
「畜生!!どうすれば……」
「こうなったら手段は一つ……一か八かだ!!」
「なにをするつもりだ?」
うまくいけばかなりこちらが有利になる。
だが成功するとは思えない……たとえゼロパーセントの確率だろうと僕はその可能性にかける!!
「明久、ゼロになにかけてもゼロだぞ?」
「吉井明久、いきます!!」
「試獣召喚(サモン)!!!」
僕は声を張り上げ森全体に響かせるほどの大きな声を出し毎度お馴染みのキーワードを唱えた。
「……………」
しかし なにもおきない。
「なん……だと?」
「そりゃそうなるわな。教師どころかここは学園外のわけ分からねえ森だ。召喚獣が出るはずがない」
「そんなぁ!!こんなピンチな時は理不尽でも筋を通すのが主人公でしょ!?」
「……………拾い食いでもしたか?」
「僕はいつもどおりだよ!」
どうしよ、こうなったら奴に拳を一発喰らわすしかないのか?
雄二は召喚獣が出ないと分かったらなにかまた考え始めた。
何か策が出るといいんだけど……。
ガサガサ……
「っ!!また出やがった……」
「雄二、気をつけてね」
「………………いや、お前が気をつけろ」
「大丈夫、僕なら平気だから!」
「やっぱりバカだな。どこにそんな確信が? 第一お前が狙いなのに」
「僕は主人公!!ミー ハ シュジンコーウ!!HAHAHA」
「ダメだこいつ早くどうにかしないと」
「ねえ雄二、今思ったんだけど寺子屋には誰が留守番してるの?」
「そこはこいしに任せてある。心配するな、あいつは悪い奴じゃない」
「うん、僕もこいしちゃんはいい子だと思う」
ちゃんと留守番している人がいてよかったよ。
僕たちがいなくなったら、その時はこいしちゃんに葉月ちゃんを任せよう。
もちろん、そんな最低なことはしたくない、させない!!
ガサガサ!
「行くぞ雄二!」
僕は覚悟を決めて草むらの中に飛びこんでいく。
「とうッ!」
「おい待て! 一人で勝手に――」
『明久君!!』
「………………ほぇ?」
「明久! どうしたんだ?」
勢いよく草むらの中に飛びこもうとした瞬間不意に聞こえた優しげな声に驚いて止まってしまった。
ドス!
「あイテっ!」
くぅ……ジャンプしてたから落ちた衝撃で顔が……。
「なにやってんだ……」
『明久君! 聞こえますか!?』
この声はもしや……姫路さん!?
「もしかして姫路さんなの!?」
『はい! そうです!』
よかった!!姫路さんが無事で……早く顔を見て安心したい。
「今行くよ姫路さん!!」
「俺の勘は当たってたのか……?」
『すみません、今こちらから動けないもので……』
「いいんだよ! 待っててね!」
まずは姫路さんを救出だ!!
これで僕らの未来が少し明るくなったと思えた。
しかし、僕は気付くべきだった。
姫路さんは兎の髪飾りをしていることを。
文の証言によるとその女の子は永遠亭という場所にいることを――
『捕 ま え た ぞ ! 吉 井 明 久 ぁ!!』
「な……!!」
「明ひ――!!」
僕の前に突如現れたのはターザン衣装をした鉄人だった。
「ぅ……」
そして、僕は意識を失った。
「……ん………あれ? ここは……」
目が覚めたら僕はうす暗い森の中……あれから対して時間が経ってないのか、場所がただ変わっていないのか……。
「ここは……?」
「目が覚めたようじゃの」
「鉄人め! 僕はおいしくないぞ!!」
「誰が食べるかバカ共が!」
失礼な!食べられる価値はあるぞ!!
「ていうかなんだよその格好! 完全に馴染んでない!?」
「気にするな」
「先生、なぜ僕はさらわれたのですか?」
「気にするな」
「気になるわ!!」
「冗談だ、やっとお前らに会えて少しばかり嬉しいんだ」
え……あ、そっか。
「もしかして僕たちを探しに?」
「お前と坂本はまだ補習が残ってるからな、これでお前たちを補習室に連れていける」
「こっちだって来たくてこんなところにいるんじゃない!」
鉄人め、一体なにが言いたいんだ……。
「明久!」
不意に聞こえたその声は毎日聞いている声。
「秀吉!!」
「よかった、気がついたようじゃ」
「秀吉! 今すぐこの猛獣から逃げよう!」
「誰が獣かもう一回言ってみろ」
バキバキ
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
僕の頭蓋骨がズタボロにされていく!!!
「……うぅ………」
「………目が覚めた」
「ん……ムッツリーニ……お前、無事だったのか?」
僕の大事な脳細胞が粉砕★玉砕★大喝采されている間に雄二も目が覚めたようだ。
「………無事」
ムッツリーニたちは全くの無傷でいた。
「ところで何があったのか教えてくれないか?」
バキバキバキ……
「……………ついでにそこの変態教師とその生徒について」
「誰が変態教師だ!」
「せめて服とか着てから言え!!」
「おまえらの格好もずいぶん趣味が偏っていると思うが?」
明久:巫女服(脇露出Ver)
雄二:メイド服
「「気にするな」」
「……差別は良くないぞ、お前ら」
そういえば僕と雄二の衣装について暫く触れられていなかったなぁ……すっかり馴染んでしまったのか。
恐るべし、幻想郷。
「実はじゃの、ワシたちが一列になって探しまわっていた時のことじゃ」
僕の頭蓋骨を少しリカバーしたところで秀吉がさっき何があったのかを説明する。
「ワシたちがゆっくり歩いていた時――」
『おーい! 誰かおらぬかー?』
ワシは声を出して探したのじゃがどこにも人らしき気配がしなかったのじゃ。
(むぅ……誰もおらぬ……本当にここにはワシらの知っておる人物がいるのかの?)
ワシは少し不安になりながらも雄二たちについていった。
じゃがその時、急に何者かがワシの口を塞ぎ、連れ去ったのじゃ。
「鉄人てめぇ!!」
「話は最後まで聞け!」
つ、続けさせてもらうぞ?
ワシは苦しくて必死に暴れていたのじゃがその犯人が西村先生と分かったのでワシはとりあえず落ち着くことにした。
『西村先生、一体なぜこのような真似を……』
『お前らを保護しようと思ってな、やむを得なく強行手段にでた』
「やっぱり鉄人は俺たちの敵だ!!」
「人の話は最後まで聞かんか!」
う、うむ……
そこでワシは西村先生がワシたちを捕k……保護しようと知ったので協力することにしたのじゃ。
「………それで俺も」
その通りじゃ、ムッツリーニも油断していては西村先生にかなわなかったのじゃな。
あっさり連れてきたのじゃ。
「なるほど、ムッツリーニがなにか異変に気がついたときだね」
そうなるの。
再び回想に入らせてもらうぞ。
『ムッツリーニ! 落ち着くのじゃ!』
『………秀吉?』
『そうじゃ、ワシは木下秀吉じゃ!』
『………鉄人』
『西村先生と呼べ』
『ワシたちを助けようとしたようじゃ。詳しいことはあとで、まずは明久たちを連れてくるのじゃ』
『………了解』
まだワシの回想シーンは続くぞ?
『お前たちは俺についてくるだけでいい。ふらっと消えたりしないように』
『『了解』』
そこで遠くにいる明久たちを西村先生は拉t……保護しようとしたのじゃが逃げてしまって……。
「仕方ないじゃない! 怪物だったんだもん!」
「俺は立派な人間だ」
………んん!
『よぉぉぉしぃぃぃいいいいいーッ!!!』
『イヤァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
『あ! こら待たんか!!お前たちもついてこい!』
『『了解(じゃ)!』』
ワシも明久たちを追ったのじゃが早くてのぉ……西村先生も追いつかなかったのじゃ。
「えっへん!」
「その逃げ足のせいで少々手荒な手口を使うはめになったんだがな」
「いや、すでにやり方が荒いです」
その後は明久たちはどうなったのか知らぬがワシらは必死に走ったのじゃ。
『西村先生! 明久たちは……』
『っく、あのバカ共! なぜ逃げる!』
『………(そりゃ逃げる)』
『む、なにか言いたそうじゃの、ムッツリーニ』
『………何でもない』
『しかし、次見つけられたとしてもあいつらの逃げ足だと追いつけない……木下、なにか手はないか?』
『そうじゃの……』
『確か木下は演劇部に所属していたな……お前の演技でダマせられないか?』
『それならお安いご用じゃ、明久だと姫路の声が妥当じゃな』
「まさかあの時の姫路さんの声って秀吉!?」
「うむ、そのとおりじゃ」
そしてワシたちは明久を見つけ、作戦通りに施行したのじゃ。
秀吉はさっき終えたことのおおよその流れを話し終えた。
「なるほど、僕らはそうやって鉄人たちの魔の手につかまったというのか……」
「だがなぜ鉄人は服を着ていないんだ?」
「気にするな!」
「「気にするよ!!」」
「吉井は分かるが、なぜ坂本までそんな女装を?」
「気にするな」
「僕はもう鉄人の中では汚れてるの!?」
「……お前ら変なキノコでも食ったか?」
さて、秀吉の話も済んだことだし、もうなにも起きないよね……?
「ところで鉄人はどうやってここに?」
あ、それ僕も気になってたんだよね。
でも鉄人もここにいると言うことは紫に連れてこられたってことじゃないのかな?
「自力で来た」
さすが鉄人凡人では出来ないことを平然とやってのける。
って、えぇ!?
「自力……だと? どうやって!?」
「校庭に何やら怪しい裂け目みたいなのがあったから手を入れてみたらそのまま吸い込まれてしまってな。すぐに帰ろうとしたんだが消えてなくなっていた」
「恐らく八雲 紫が残していったのか、忘れていたものを偶然西村先生が見つけたのか、あるいはこうなるよう仕向けたか……ダメだ、まだ確信にたどりつけねぇ」
「でも雄二、鉄人がこうしているんだし、一応試しておかない?」
こうして文月学園の教師がここにいるんだし、ちょっとくらい息抜きに。
「ん、あぁ……もしかしたら明久の召喚獣が役に立つかもしれん……西村先生、召喚許可を」
「まぁ、非常事態だ。たっぷり召喚するように!」
「よーっし!!久々の召喚だ! 張り切っていこー!!」
「「「おーう!!!!」」」
鉄人の許可をもらったことだ、あとはお決まりの台詞を唱えるだけだ!
「承認します!!」
鉄人が右手を宙に突き出し召喚フィールドを展開させる。
僕の周りでは雄二たちが召喚させていく。僕も皆に続こう!
「行くよっ!!試獣召喚(サモン)!!!」
ポワッ!(明久の召喚獣が出て来る音)
「おぉぉ!!懐かしき相棒!!!」
『b』
「こっちでも教師の許可さえあれば召喚は可能ということか……」
僕の召喚獣が僕の声に反応して親指を立ててこちらに突き出した。
「おぉそうだった。お前らに渡しておくものがあった」
そう言うと鉄人はある物を取り出しながら召喚フィールドを取り消した。
あぁ、僕の見慣れた召喚獣が……。
「こ、これは……白金の腕輪じゃないか!!」
「特別に学園長から譲りいただいた物だ。壊れる可能性を最小限に抑えこんでいる」
「ありがとうございます!!」
「これはどっちの機能のものだ?」
「『起動(アウェイクン)』と唱えれば教師の承認無しでも召喚することができる方だ」
説明あざーっす!
「それじゃ、俺が持とう」
「坂本、壊すなよ?」
西村先生が白金の腕輪を雄二の方向に放り投げる。
ガシッ!
「おう!」
その白金の腕輪を雄二が片手で受け取る。
「さて、俺はもう少しこの森で救助活動に入るとする。お前たちはこの道を真っ直ぐ歩いて行け。森から出られるはずだ」
「随分この森に慣れているみたいですね、さすがターザン!」
「西村先生と呼べ。それじゃあな、無事に補修を受けに帰ってこいよ!」
「「へい!!」」
そう言い残すと鉄人は森の奥へと姿を消した。
「明久、やったのう!!」
「あぁ、あれがあれば妖怪だろうと何だろうと戦えるはずだ!」
あの鉄人に勝ったこともある僕の召喚獣なんだ、妖怪だって勝てるはず!
鉄人もそうだけど、他の皆も心配してるはず、あまり心配させてると帰ってきた時どうなるやら……。
「さて、それじゃここは鉄人に任せて俺らは帰りますか!」
「「「おーう!!!」」」