今の段階ではひとまずこれで……後がつかえてますからね。
少し遅れてしまいましたが、いよいよヒロインの登場です。
ウチとメイドと紅魔館
『パチュリー様、調子はどうですか?』
『このところずっと眠りこんでいるわ』
『そうですか……』
『…………これで二日目ね』
『外で美鈴が見つけた時から眠っているようですが……何か起きたのでしょうか』
『それは私にも分からない。この子から直接聞くしかないわね』
『パチュリー様もお休みになられては? ずっと外来人の看病をなさって……』
『私は大丈夫よ。それより、レミィはどうなの?』
『はい、今はごゆっくりと眠っております』
『そう……もういいわよ』
『分かりました、なにかありましたらすぐに向かいます』
『そうしてちょうだい』
――――☆――――☆――――☆
「…………ん……」
あ、あれ……ウチ、なにしてたのかな……すごく、頭が痛い。
「なによ、ここ……」
ここは一体……辺りを見渡すと身の毛がよだつ部屋だった。それはこの場所が鮮血のように赤い色に染まっているからだ。
「………そうだ! 瑞希! 瑞希はどこなの!?」
ここで暢気に眠ってる場合じゃないわ! 早く瑞希を探しださないと! あの子の事だから、早くしないと……!
ガチャリ
「お目覚めのようね、私が少し目を離した内になにをしようとしてたのかしら」
突然ドアが開けられるとそこには帽子を被って片手に辞書のような本を持った少女がこっちを見ている。
「あなたは……」
扉を開いた先にいたのは全身紫の服を着こなし、片手に分厚い本を持つ女の姿がいる。
帽子も薄いが紫色で、月の飾りをしていた。
この子……日本語を喋ってる……ほんとに日本なのね……少しでも外国に飛ばされたのかと思っちゃった。
「私はパチュリー・ノーレッジ、しがない魔女よ」
あ、あれ?この子、魔女なの?
というより本当なのかしら?
いや、そんなことない、非常識すぎる。
「魔女? ウチをからかってるの!?」
ここは日本、魔女なんて一部のコスプレでしかしないわ。
それともこの子コスプレでそのキャラになりきっちゃってるわけ?
「残念だけど、本当の魔女よ。魔法も使えるし、空も飛べる」
「だったら飛んでみてよ! ちゃんちゃらおかしいわ!」
ドイツにいた頃でも、魔女といっても衣装が違うし、嘘にきまってる。
「では、その目でしっかりと見ておきなさい」
そう言うとパチュリーと名乗る少女はウチの目の前でふわふわと飛んで見せた。
「え……」
この子、本当に浮いてる……き、きっとインキチにきまってるわ!
「次はこれ……」
そう言うとなにやら怪しげな構えをとる。
今から何をするのかしら……。
「弾幕というものよ、しっかり覚えておきなさい」
バシュッ!
「――ッ!!!」
な、なにあれ……光る弾みたいなのがウチを当てようと……。
「これが魔法という名の弾幕……理解できたかしら」
「…………あんた、本当に魔女?」
「さっきからそう言ってるわ。あなたはもう少し冷静になった方がいい」
「ウチは常に冷静よ!」
「じゃああなた、名前は?」
「う、ウチは島田 美波!」
「島田さんね、これからよろしく」
ガチャ……
そう言うと魔女は静かにこの部屋からでていった。
「……なんなのよ、ここ」
瑞希を見つけ出す前に、ウチがおかしくなりそうだわ!
「………………」
ここは一体……あの子は何者?
瑞希は……土屋や坂本、木下は今頃どうしてるかな……。
「アキ……」
もう! ヒロインがこうして困ってるんだから助けに来てよ!
「……………皆……」
そのまま私はいつの間にか眠りについていた。
――――☆――――☆――――☆
「……………」
TNTN……TNTN……
「………鳥の……鳴き声……よね?」
なにかしら……ウチは窓の外が気になった。
「もう朝か……」
今日は何月で、何曜日の何分なんだろ……。
コンコン
「誰?」
またあの魔女かな……。
一つ溜め息を漏らす。
「失礼します、私ここで働いているメイド長の十六夜 咲夜と申します」
違った……ただのメイドか……。
え、メイドさん!?
そのキーワードにウチはひどく驚いた。
「あの~、紅茶を淹れてきましたので冷めないうちに召しあがって頂きたいのですが……」
紅……茶……?
「毒とか入ってない……よね?」
扉越しに会話を進める。
「滅相もございません。そんな物騒で、小童がするような真似しませんわ」
と、とりあえず入れてみましょうか……何だか信用できそうな気がする。
「失礼します」
ウチはメイドを部屋にとりあえず入れることにした。
確かにメイド服を着ているし、紅茶を銀色のカップに淹れているのが見えたけど……飲めるのかな。
「どうしました? ジロジロと……」
「い、いえ……なにも……」
「外の世界ではメイドは珍しいですか?」
ウチはふとメイドが口にした言葉が気になった。
「外の世界?」
「あ、説明が遅れましたね、っと、まずは自己紹介をしてもよろしいでしょうか?」
「は、はい……」
このメイド……かなり礼儀正しいわね。
まるで本物のメイドみたい。
「改めまして、私は十六夜 咲夜と申します。あなたのお名前はパチュリー様から聞きました」
パチュリー?
あのいかにも怪しい魔女ね!
「そして、ここは幻想郷と言って、あなたがいた世界とは別の世界なのです」
別の……世界?
「……つまり外国ってこと?」
「多分島田さんの意味の外国とは異なると思います」
……んー、ウチの頭だとこれ以上考えるとパンクしそうだわ。
「そして、ここはとある湖の近くに建っている紅魔館という館です」
「紅魔館?」
何かの世界遺産だっけ?
普通建物に名前が付くのって、何か特別な物っていうイメージがあるんだけど……。
「そして、私はアナタの味方です、ご安心ください」
メイドの十六夜さんはウチの目を真剣に見て話している。
こういうのは嘘じゃなく、本気の訴えなんだと分かった。
「……分かった、とりあえずお世話になるわ」
そう言うと十六夜さんは「良かった……」とホッと胸を撫で下ろした。
「信用していただけて何よりです」
「それじゃ、早速紅茶貰える?」
「分かりました」
ウチは十六夜さんたちを信じてみることにした。
幻想郷だなんて意味が分からない所に連れてこられていい迷惑よ!
まずは十六夜さんたちと協力して、情報を得る!
「紅茶、美味しかったです」
その前にまずは十六夜さんが淹れてきた目の前の紅茶を飲んだ。
朝の少し体が寝ぼけている時に最適な味だったわ。
「気に入ってもらえて何よりですわ」
これがかなりの美味だったから驚いた。
最初疑ってた行為に罪悪感が……。
「もう一杯お飲みになりますか?」
「えぇ! 是非!」
何杯でも飲めちゃうわ!
「見事な飲みっぷりですわ」
「十六夜さんの紅茶が美味しいからですよ!」
「十六夜さんだなんて、咲夜でよろしいのに……」
「んじゃ咲夜で、ウチのことも美波でいいわ!」
「それは出来ません、お客様にタメ口はメイドとして許しません」
完璧なメイドね……。
メイドの鏡とはこの事ね。
「では、館内をご案内致します。お体はよろしいですか?」
ウチの体の事まで心配してくれるなんて、このメイドは本当にすごい!
「ウチは平気よ!」
「では、付いて来てくださいませ」
ウチは言われるように部屋を出た。
「うわぁ……」
部屋を出ると、視界に映った廊下や壁、全てが真っ赤で染められていた。
目眩がしそう。
咲夜には悪いけどこの館の趣味悪すぎだと思うわ。
でも奥行きが全く見えないくらい広い……部屋も沢山あるみたい。
「ここらの部屋は全てメイドの個別部屋です」
「え? これ全部!?」
どれだけのメイドがここにいるの!?
この悪趣味な館の主人はすごい金持ちなのね……。
「まぁ私が主に館の掃除やお嬢様のお世話をさせてもらっているのですが」
あ、ここの主人って女性だったのね。
てっきり変態男爵とか想像してたわ。
「今からそのお嬢様の所に行くのだけど失礼の無いようお願いしますよ?」
「大丈夫よ! お世話になってもらってる身だし、きちんと礼儀くらい正して見せます!」
敬語を使えば楽勝よ!
「それは頼もしいですわ」
あ、でも教師に使う敬語とかで大丈夫かな?
たしか、この前の授業で謙譲語とか聞いたような……。
そういうちょっと難しめに言った方が良かったりする?
「さぁ、着きましたよ」
ってまだどうしようか考えてるのに着いちゃったじゃない!
と、とりあえず敬語よ、うん、デスマスよ!!
コンコン
「誰かしら?」
扉の奥からお嬢様らしき人物の声が聞こえる……。
子供のような幼い声ね……。
「咲夜です。外来人を連れてきました」
「そう、入りなさい」
ここの館のお嬢様から許可をもらいウチは部屋へと案内される。
ガチャ
「失礼します」
咲夜が入る際に挨拶をした。
ウチも続かないと!
「し、失礼致します!」
ウチが足を踏み入れた部屋はウチが寝かされていた部屋の何倍の広さがある。
きっとロビーなのね。
でも、やっぱり赤いわ。
「あなたが美鈴が連れてきた外来人ね。んじゃ、あなたにいくつか聞きたいことがあるのだけど、いいかしら?」
ん?ウチに聞きたいこと?
どっちかって言うとウチが色々教えてもらいたいんですけど。
「……いいですが、ウチからも色々聞かせてくれませんか?」
「それは私の気分次第で決めること」
むぅ、ちょっとムカつくわね……。
まあお嬢様というくらいだし、こういう性格なのかしらね。
「良いわ、それでなにを聞きたいのですか?」
若干イラつきながら敬語を維持する。
「そうね……まず、私に何か言わなければならないことがあるんじゃないかしら?」
言わないといけないこと?
「普通拾われた子犬はその主人に対し懐くものだわ」
「こ、子犬!?」
ウチは犬なんかじゃない!!
で、でも今は堪えないと……なにせ休ませてもらったんだし、お礼の一つくらい……。
ん? お礼……。
あ、そうか!
ウチってば失礼のないようにとばかり考えて……。
「すみません、お嬢様」
「レミリア、レミリア・スカーレットよ」
え? あ、名前ね。
いきなりだから少し驚いてしまった。
外国人……かな? ハーフかなにかなの?
そういえば時々チラッと見えるあの黒い羽は……人間じゃないっていうの?
「紅の悪魔、と呼ばれているわ」
紅の悪魔……化け物かなにか?
レミリアと名乗る少女は見た目で判断すると子供にしか見えなかった。
「あ、今ちっさい癖に何が紅の悪魔とか思ったでしょ?」
「い、いえ! あ、ありがとうございます!!拾ってもらってウチは……」
「別にいいわよ、今後ウチのメイドとして働いてくれれば」
え、メイド!?
それは困るわ!
ウチにも帰る場所があるわけだし!
「困ってる顔してるわね、冗談よ」
あ、なんだ冗談か。
ホッと一安心だわ。
「まぁここにいる間はメイドとして働いてもらうわ」
「それぐらいなら別にいいわよ! ウチに出来る範囲でね」
ウチとしても、恩返しはしておかないと気が済まないのよね。
「そう、仕事内容は咲夜から聞いてね」
「分かったわ!!」
「では、そろそろ部屋から出て行ってくれるかしら?」
最後までレミリアさんはお嬢様って感じで終わろうとしているわ。
……お嬢様なんだし、さんはおかしいかな?
「分かりました、では島田さんは此方に」
「了解!」
最初は不安だったけど、どうにか終わりそうだわ。
ところで何か忘れているような……まぁ咲夜に聞けばいいか。
ガチャ
「失礼いたしました」
それにしても、なんだか不思議で生意気っていうかよく分からない子だったわね。
あんなお嬢様に仕えてる咲夜もそうだけど、一体なんなのかしら、ここは。
まぁ、思うだけならレミリアって呼んでもいいわよね。
ウチは正直あのレミリアは苦手、お礼はしてるけど……。
さて、それじゃさっさと働いてウチの元いた世界に帰りましょうか!
………
……………
…………………
『うー☆』
私「ハーメルンにやってきたんだし、一つの章が短めの方が読みやすいよね?」
さとり「さぁ……」